業界のトップランナー・一般財団法人日本気象協会を進化させる新たな挑戦とは

社会的意義の高い、独自性あるサービスを展開する企業を紹介するこの企画。今回は「tenki.jp」を始めとする気象サービスを展開する一般財団法人日本気象協会にお話を伺いました。

気象業界のリーディングカンパニー・一般財団法人日本気象協会

一般財団法人日本気象協会は1950年に誕生した、気象テクノロジー業界におけるリーディングカンパニー。天気予報を提供する「tenki.jp」をはじめ、自然災害へのリスクマネジメント、太陽光・風力発電などのエネルギーマネジメントなど、気象・防災・環境エネルギーにおける多角的な事業をワンストップで提供しています。

昨今、世界的な気候変動が問題となる中、気象テクノロジーに求められる役割も増しています。日本気象協会では“気象情報提供会社”の枠を超え、AIやビッグデータなど最先端の知見を活用しながら気象予測の精度向上に取り組み、持続可能な社会づくりに貢献しています。

会社名 一般財団法人日本気象協会
住所 東京都豊島区東池袋3-1-1サンシャイン60・55階
事業内容 気象・防災・環境分野における企画提案・調査・データ解析・情報提供・コンサルティング
設立 1950年5月10日
公式ページ https://www.jwa.or.jp/

日本気象協会が提供する気象サービスの基盤となる技術開発を行っているのが、技術戦略室です。今回は全体の統括を担う井上さんと、技術戦略室の瀬川さん、金さんに、技術戦略室の業務を中心に、若手エンジニア活躍の秘訣や会社カルチャーなどについてお話を伺いました。

本日お話を伺った方
一般財団法人日本気象協会の井上さん

一般財団法人日本気象協会
最高技術責任者(CTO)

井上 実さん

一般財団法人日本気象協会の金さん

一般財団法人日本気象協会
技術戦略室

金 和妍さん

一般財団法人日本気象協会の瀬川さん

一般財団法人日本気象協会
技術戦略室

瀬川 出さん

高度な気象予測サービスで、気象・エネルギー・防災に貢献

一般財団法人日本気象協会の井上さん▲最高技術責任者(CTO)の井上さん

編集部

まずは日本気象協会さんの事業内容を簡単にご説明いただけますか?

井上さん

日本気象協会は高度な気象予測サービスを中心に、調査・データ解析・情報提供・コンサルティングまでをワンストップで提供できる、業界唯一の気象コンサルティングカンパニーです。大きく「社会・防災」「環境・エネルギー」「メディア・コンシューマ」の3つの事業を展開しています。

「社会・防災」に関しては、気象予測に基づく防災・減災への取り組みはもちろん、気象条件が大きく影響する交通において、道路や鉄道、船舶、航空の事業者様への情報提供を通じて運行支援を行っています。「環境・エネルギー」に関しては、環境アセスメントの実施や電力の需要予測、発電量予測データの提供など、風力・太陽光発電の検討段階から運用まで一貫したコンサルティングを行っています。「メディア・コンシューマ」の事業としては、ウェブサイトやスマホアプリで天気予報を提供する「tenki.jp」やテレビでの解説などがあります。

編集部

日本気象協会さんというと天気予報サービスの提供が広く知られていますが、気象予測データを活かしてかなり多角的な事業展開をされているんですね。

サービスの技術基盤を提供する「技術戦略室」では、AIなど先端技術を活用

編集部

技術戦略室は、日本気象協会の中でどのような役割を担う部署ですか?

井上さん

今説明した大きく3つの事業を、技術面でサポートしていくために設けられた部署です。当協会で提供するあらゆる気象サービスは、技術戦略室が開発した『JWA統合気象予測』を基盤として提供されています。

昨今、気候変動に伴う災害が激甚化しています。当協会のテクノロジーを活かして少しでも皆さんの安心・安全に役立つような情報を提供できるよう、技術戦略室では気象予測データの精度向上に取り組んでいます。

また気象予測データを企業のビジネスに活用する点でも、予測の精度向上は欠かせません。普通に生活を送る上では、雨が何mm降るかまで求められる場面はあまりないかもしれません。しかし企業様のビジネスに活用いただくためには高精度な気象予測が必要です。当協会では気象データを活かした企業様のビジネスへの寄与にも注力しており、その点でも精度向上のための取り組みに重点を置いています。

一般財団法人日本気象協会の『JWA統合気象予測』
▲技術戦略室が開発した、高精度・高頻度・高解像度の気象予測を提供する『JWA統合気象予測』

編集部

技術戦略室で気象予測の精度を上げていくために、具体的にどのようなことに取り組んでいるのかを教えてください。

一般財団法人日本気象協会の金さん▲技術戦略室の金さん

金さん

AIなど最新のテクノロジーを活用した気象予測精度の向上に取り組んでいます。例えば私が行っているのは、深層学習を用いた取り組みです。「晴れ」や「曇り」といった、天気の区別の精度向上を図っています。

天気の予測は計算機で行っているのですが、初期条件が少し違うだけでも何十パターンもの答えが導き出されるんです。機械学習を用いることで、その膨大な情報をインプットし、より正しい予測に導いていくことが期待されます。この技術は「tenki.jp」にも組み入れているので、企業ビジネスだけでなく普段の生活にも活用してもらえるようになっています。

編集部

瀬川さんは技術戦略室でどのような取り組みを行っていますか?

瀬川さん

気象予測の中でも細かく担当が分かれており、私は天気ではなく風力に関する技術開発を担当しています。風力では機械学習ではなくビッグデータを活用することが多いですね。

編集部

なるほど。細分化されたさまざまなジャンルで、AIやビッグデータなど最新のテクノロジーを活用した開発が行われているんですね。

未経験からのジョインでも裁量を持ち、エンジニアとして活躍

一般財団法人日本気象協会の瀬川さん▲技術戦略室の瀬川さん

編集部

続いて若手活躍のトピックについて金さん、瀬川さんに伺います。お二方は日本気象協会に入社して何年目なのでしょうか。

瀬川さん

私は5年目、金は2年目となります。

編集部

お二人とも、もともと気象に関する勉強をされていたのですか?

金さん

私は韓国の大学の修士課程を経て、京都大学でレーダーを用いた局地的な大雨に関する研究をしていました。局地的な大雨の研究は、集中的な降雨による事故や災害発生のメカニズムの理解が中心となります。しかし日本気象協会では先ほども言ったように「天気の判別」「ある気象条件下での気温パターン」など、より細かい部分を見ながら精度を向上させる必要があります。これまでの研究よりも日々の生活への関わりが近い部分で知識を深めていくことが求められていますね。

瀬川さん

私は元々気象に関する研究ではなく、コンクリートの研究をしていました。そちらでは実験をメインに行っていたので、日本気象協会に入社してプログラミングを行うことになり、正直最初は戸惑いました(笑)。不安もありましたが、上司の方のサポートのもとでだんだんとできることが増えている実感があります。

編集部

お二方とも、自身で進められてきた研究とはまた違う業務に携わることになったのですね。その中で苦労したこと、またはやりがいを感じたことなどはありますか?

金さん

自分でアイディアを考えて提案すると、すごく前向きに面白がってもらえるので、そこは仕事をしていてやりがいを感じるポイントです。毎週月曜日に行っている定例会で自分のアイディアが承認されると嬉しいですね。

瀬川さん

気象予測という、国全体に影響のある仕事内容自体に大きなやりがいがあると思います。加えて日本気象協会の、一人ひとりに裁量を持たせてもらえる環境も魅力です。自分で課題を見出し、テストしてプログラミングして実装するという一連の流れをすべて経験できることは大きな仕事のやりがいとなっています。

若手活躍を後押しする「フィードバック文化」

一般財団法人日本気象協会の瀬川さん、金さん

編集部

瀬川さんや金さんのような若手社員の方の活躍をサポートしていく上で、社内ではどのようなサポート体制がありますか?

金さん

入社してすぐに気象予報士研修という3か月の研修期間があり、そこで天気・気象を学ぶことができます。実際に受講してみて、本当に勉強になりました。オンデマンド型でいつでも見られるので、実務に入ってから復習できるのも魅力です。

瀬川さん

そういった研修機会に加え、社内で日々フィードバックを受けられる環境があるのも成長にとって重要なポイントです。技術戦略室が社内のあらゆるサービスの技術基盤を提供しているからこそ、他部署からの日々のフィードバックはとても重要です。さまざまなフィードバックを受けて、自分の成長にもサービスの改善にもつながっていると思います。

井上さん

技術戦略室では毎月予測精度の振り返りも行っており、「常にサービスを改善していこうという」機運が醸成されています。若い社員が中心となってその改善のサイクルを回してくれていますよ。

編集部

日本気象協会さんでは部署ごとに知識や情報を共有する機会もあるのでしょうか。

瀬川さん

年に数回、各部署の仕事の成果や新しい取り組みを全社で共有する機会を設けています。

また日頃から部署横断的に社内のメンバー同士で学び合う風土があるのも特徴です。例えば社内のコミュニケーションツール内に有志のAI部が立ち上がっており、AIに関して造詣の深い社員を中心に報告会などを行っています。そういったスキルやナレッジ共有の機会があるのは、成長していく上でとても重要だなと感じますね。

「必ず誰かが窓の外を見ている」日本気象協会特有のカルチャー

一般財団法人日本気象協会の井上さん、瀬川さん、金さん
▲社員が窓の外を見ている。日本気象協会さんおなじみの風景

編集部

御社のカルチャーについても伺います。気象データを取り扱う日本気象協会だからこその特徴や風習のようなものはありますか?

金さん

オフィスで毎日誰かしら窓の外を見ているのは、天気を見る日本気象協会ならではの特徴です。私自身オフィスに出社すると窓側近くに座って毎日外を見ています。窓の外の実際の天気を見ながら「予測と合っているかな」と確認しています(笑)。

瀬川さん

オフィスがサンシャイン60ビルの55階にあるので眺望が良いんです。リモートワークも可能なので必ずしもオフィスに来る必要はないのですが、私は大体毎日出社して窓の外を見ています(笑)。

一般財団法人日本気象協会の井上さん、瀬川さん、金さん

温かく、フランクなコミュニケーションが日本気象協会の魅力

一般財団法人日本気象協会の井上さん、瀬川さん、金さん

編集部

日本気象協会の皆さんは、全体的にどのような雰囲気の中で働かれているのでしょうか。

金さん

気象という専門性の高い分野を取り扱っているため“お堅い”イメージをお持ちの方もいるかもしれませんが、実際は優しく、面白い人が多い会社です。私も入社前はあまりコミュニケーションを取る雰囲気ではないのかと思っていたのですが、仕事だけでなくフランクなコミュニケーションを取れる環境があります。そういう空気感があるからこそ、仕事上で困ったことを気兼ねなく相談できるのもありがたいですね。

瀬川さん

入社前に「真面目で優秀で、温かい人柄の社員が多い」という印象を持ったのですが、入社後も本当にそのまま印象の通りですね。温かい人たちの中で働けていけるのはありがたいなと感じています。

井上さん

日本気象協会には現場で24時間交代で気象観測をする部隊もあるのですが、そこでは若手からベテランまで一緒になって行動しており、技術指導はもちろん、楽しい昔話を聞かせてもらう良い機会にもなっています。そういうフランクなコミュニケーションが取れる風土は今もずっと続いていますね。

技術者に求めるデータサイエンスなどの“新しい視点”

一般財団法人日本気象協会の井上さん

編集部

日本気象協会さんの技術戦略室では、どのような人材を求めていますか?

井上さん

気象分野は物理法則をもとに予測を行ってきましたが、昨今ではそこにAI・ビッグデータなどのデータサイエンスを取り入れることで技術が飛躍的に進化しています。今後も最先端のテクノロジーを積極的に取り入れることで、さらに可能性を広げていけると思っています。

だからこそ、気象分野の知識に捉われず、新たな視点を持つ人材を求めています。瀬川や金のように、自信を持ってどんどん新しいことに挑戦できる人材と一緒に、さらに日本気象協会のサービスを進化させられたらと思っています。

国籍、年齢問わず、データ活用に興味がある方を歓迎

編集部

最後に、日本気象協会に興味を持った読者の方に向けてメッセージをお願いします。

金さん

私は入社するとき、日本語が堪能ではなくても働いていけるかをとても心配していました。特に専門的な単語を聞き取ったり伝えたりする点には困難もあったのですが、上司や同僚の方々が温かくサポートしてくれたことで、今では不安なく業務にあたれています。

日本気象協会は国籍や年齢に関係なく、皆が自分の意見を伝えられる会社です。気象分野に詳しくない方も、言葉に不安がある方も、興味を持ったのであればぜひジョインしていただければと思います。

瀬川さん

技術戦略室では気象データを中心に、関連したデータも含めたビッグデータを取り扱うことが可能です。そして自分たちで考えて手を動かして作ったデータを、自分たちのサービスに還元していけることに大きなやりがいを感じられます。気象に限らず、データ活用に興味がある方はぜひご入社いただければと思います!

編集部

気象に興味がある方はもちろん、気象を専門に学んでいない方でも新しい視点を活かして活躍できる環境があるのですね。本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました!

■取材協力
一般財団法人日本気象協会:https://www.jwa.or.jp/
採用ページ:https://www.jwa.or.jp/company/recruit/