先進的な事業に取り組み、独自の社内文化を持つ企業に焦点を当てるこの企画。今回は、ドライバー、建設作業者、警備員といった「ノンデスクワーカー」を雇う企業に向けて、人材採用システムの運営や業務のデジタル化を通し、人材確保、生産性向上などをサポートするX Mile(クロスマイル)株式会社を取材しました。
X Mile株式会社とは
X Mileは、物流、建設、製造といったブルーカラー産業が抱える課題を、独自の事業構築力とテクノロジーを使い解決することで、従事者や消費者の生活の質を向上させ、社会への貢献を目指しています。
ノンデスクワーカーに特化した人材プラットフォームの運営で深刻な働き手不足の解消を試み、ノンデスク事業者向けのSaaSの開発と提供で業務効率化、売上アップなども支援しています。
| 会社名 | X Mile株式会社 |
|---|---|
| 住所 | 東京都新宿区四谷4-34-1 新宿御苑前アネックスビル3F |
| 事業内容 | ノンデスク産業向けの人材、ITプラットフォームの運営 |
| 設立 | 2019年2月 |
| 公式ページ | https://www.xmile.co.jp/ |
今回は、そんなX MileのCOOの渡邉悠暉さん、HRソリューション事業本部キャリアアドバイザーサブリーダーの石川さんに、仕事に込める思いや求める人材について話を伺いました。
独自のノウハウと技術でノンデスク産業をアップデート
▲X Mileが取り組む各種事業
編集部
まずはじめに、X Mileさんの事業内容について教えていただけますでしょうか？
渡邉さん
当社は「テクノロジーの力でノンデスクワーカーが主役の世界を」というビジョンを掲げています。ノンデスクワーカーとは、いわゆるホワイトカラーではないブルーカラーの方々を指します。
物流や建設、製造といった衣食住を支える方々は、我々の生活の基盤をつくってくれています。しかし、業界としては、国内外問わず世界で一番DXが進んでいないと感じています。
少子高齢化、人口減少が急速に進む日本にあって、その成長を支えてきたノンデスク産業の人手不足は深刻です。DXの浸透が進んでいないノンデスクの領域を我々がテクノロジーと事業によってアップデートしていくことで、社会課題の解決、ひいては日本経済低迷の打破に繋がるのではないかと考えています。
ドライバーらの転職を支えるプラットフォームを運営
▲世界と日本における労働人口の割合。日本ではノンデスクワーカーが約6割を占める（公式サイトより引用）
編集部
X Mileさんの主軸事業として、ノンデスク産業専門の人材プラットフォームがあると思います。こちらを立ち上げた経緯について、お聞かせ願えますでしょうか？
渡邉さん
簡単にご説明すると、「このサービスにニーズも社会的意義もあったから」ということになります。
一例を挙げると、物流を支えるドライバーさんって、労働時間が非常に長くて忙しいんですよね。「なかなか求人を探している暇がない」「知人の紹介やハローワークで転職活動をしている場合が多い」といった話をよく聞いていました。
いわゆる総合系の大手求人サイトは、ブルーカラーからホワイトカラーに転職を希望するような人には参考になると思うのですが、ブルーカラーからブルーカラーといったような、ノンデスク産業内の転職は、あまり得意にしていないと感じます。ブルーカラーの方にとっては、ウェブでうまく転職に活用できるドンピシャのサービスがなかったんです。
そこで、ノンデスク業界専門の「クロスワーク」や、ドライバー、トラック運転手の転職サイト「ドライバーキャリア」を立ち上げました。キャリアアドバイザーから求人の具体的な提案をしたり、求職者自身が調べるだけでは手に入らないような魅力的な情報を伝えたりもできるようにしました。
■「クロスワーク」の詳細はこちらから！
https://x-work.jp/
■「ドライバーキャリア」の詳細はこちらから！
https://www.xmile.co.jp/service/drivercareer
編集部
ノンデスクワーカーの方々にとっては必要だったものの、今まで不十分だった分野に着目されたのですね。
キャリアアドバイザーが企業と求職者のミスマッチを解消
編集部
ノンデスク産業は古くから日本の経済を支えてきた歴史がある分、その商慣習も強い業界だと思うのですが、そこで事業を行うに当たって苦労された経験はありますか？
渡邉さん
仕事でお話をした顧客の代表や経営者、人事の方から「ドライバーなんてどうやっても採用できる」という雰囲気を感じる瞬間は、ゼロではありませんでした。そういった事業者側の姿勢を変えていく必要があると、常々思っていました。
そこに対しては、「今、他の業界はこんな状況になっています」「運送業界も今のうちに採用や組織に対する投資をやっていくべきです」と粘り強くお伝えしていくしかありません。
編集部
そういった状況の改善に向け、X Mileさんの社員の方はどのようなアプローチを行っているのでしょうか？
渡邉さん
状況を是正する機能としては、キャリアアドバイザーが担う役割が大きいと感じています。実際に求人を預かると、入社前の条件と入社後の待遇に、若干ずれが見つかることがあります。ノンデスク業界は少しその割合が高いように感じます。
それを確認する度に逐一、第三者的に「求職者とのミスマッチを生み、早期離職に繋がってしまうので変えてください」と指摘させていただいています。また、運送会社の求人ではエリアごとの相場観を鑑み、「このままだと採用が難しいので、労働条件の見直しが必要です」といったことも強気に伝えていくようにしています。
編集部
事実への認識をすり合わせることから始め、業界の労働環境の改善を見据えて根気強く取り組んでいるのですね。
目指すのは令和を代表するメガベンチャー
▲「令和を代表するメガベンチャーを創る」というミッションを掲げている（採用サイトから引用）
編集部
X Mileさんが目指す企業としての理想像はありますか？
渡邉さん
X Mileは「令和を代表するメガベンチャーを創る」というミッションを掲げています。人口減少に伴い日本の経済規模が今後、衰退していく恐れがある中、イノベーションを生み出して既存の産業構造を良い方向に変えていくことが重要という考えが、代表（野呂寛之CEO）や私にあるからです。
そのためにはスタートアップベンチャーの数を増やし、ユニコーン企業（※）を生み出すなど、企業がより大きく成長していくような環境をつくっていかなければなりません。
（※）評価額が10億ドル以上で、設立10年以内の未上場ベンチャー企業
そこで我々にできるのは、一つの成功事例をつくることだと感じました。まず我々が先陣を切って成功事例になることで、次々とベンチャー企業が生まれるきっかけとする。そんな会社になりたいと思っています。
売り上げ、ユーザー数ともに急成長中。要因は現場主義の徹底
編集部
X Mileさんは創業2年目の2020年から21年にかけて、売り上げは5倍、人材プラットフォームのユーザー数は4倍に急伸したと伺いました。何故それほど急速に事業を拡大できたのでしょうか？
渡邉さん
一番の要因は、業界の課題が非常に大きくて緊急性を伴っていることではないかと思っています。デスク、ノンデスク問わずだと思うのですが、いろいろな業界ごとに商慣習があり、IT系の新参企業は、最初はあまり相手にされません。
それでも創業から5年目で、東証プライム上場の企業さんとも取引させていただくまで成長できたのは、取り組んでいる課題が、いま社会に求められているからではないかと強く感じています。
加えて、創業当初に大きな社会情勢の変化に見舞われても成長できた理由としては、徹底した現場主義があると思っています。
人材プラットフォームの事業は、顧客取引先の担当者さんから、どういう人材が欲しいのか、どんなところで困っているのかといった話を伺い、採用の支援をしていきます。その商談の際に、仕事の効率化のニーズや、現場で改善に着手できていない取り組みについて、話が及ぶことがあるんです。
現場で顧客と直接お話をしなければ、そういった課題について聞ける機会はほとんどありません。そこで、X Mileとして何かできることはないかという流れが、ITプラットフォーム「ロジポケ」（※）の開発に繋がったと思っています。
（※）ノンデスク産業の経営や労務、書類の管理を一括して行うX Mileの開発したクラウドサービス
採用支援とITプラットフォームによる支援は、連続的に関わり合っていると感じます。様々な企業が顧客の効率化やDX化にチャレンジして、営業の電話などに粘り強く取り組んでいる中、当社は採用支援の取引があるからこそ、企業様からお声掛けいただけることが非常に多いと思います。
編集部
採用支援から業務改善まで一気通貫してお客様を支える姿勢が、これだけの実績を生み出しているのですね。
渡邉さん
加えて、その姿勢に共感して事業を頑張りたい、個人としても成長したいという志のあるメンバーが多く集まってくれたのも、ここまで急成長できた要因の一つだと考えています。
編集部
会社としての顧客に寄り添う姿勢が、モチベーションあふれる社員を集めるといった好循環を生んでいるように感じます。
社員の女性比率は51％。男女問わず活躍できる社風
編集部
X Mileさんでは、社員の女性割合が51%と聞きました。女性の若手社員として、キャリアアドバイザーの石川さんは、どういった業務をされているのかを伺えればと思います。
石川さん
運送会社のドライバーの求人対応に取り組み、求職者の入社前後のサポートもしています。サポートの中で得た、働いている方の一次情報を、実際の社員の声として求人サイトでも活用しています。
▲業務に取り組む石川さん
編集部
女性と男性で、業務内容に違いはあるのでしょうか？
石川さん
弊社の場合、男女で特に区別をしているわけではないので特段、女性が多い部署もありません。どの部署もおそらく、男女半々ぐらいになっています。
編集部
育休や産休の取得状況はいかがでしょうか？
石川さん
社員の平均年齢が若いため、まだ利用者は1人しかいませんが、しっかり職場復帰を果たしています。
編集部
社員の家族の方々にとっても喜ばしい制度は、何かありますか？
石川さん
社内のバーベキューイベントには家族で参加する社員も多く、その機会に家族の方も、社員同士のやり取りが見られます。そういったフラットな関係性が、社員の家族にとっても安心できる材料になっているのではないかと思います。
理想のキャリア形成に向けたバックアップ体制も充実
編集部
先ほど、渡邉さんから志のあるメンバーが揃っているというお話がありました。X Mileさんには、社員の方々の成長をサポートする体制や仕組みなどはあるのでしょうか？
石川さん
社員個々のキャリアに関しては、どう歩んでいきたいか、そのためにこういうことができるんじゃないかといった相談ができるバックアップ体制を整えています。各々が進みたい道を確認しながら、それを叶えられる環境ではないかと思います。
社員一人一人、歩みたいキャリアは違います。なので、会社が指示をするのではなく、社員の理想のキャリアとそのために頑張るべきことを上長が引き出しながら、それを叶えるための応援をしてくれています。社員も必要なことを明確にしてもらいながら業務と向き合えるので、それぞれが思い描くキャリアと会社の方向性をマッチさせながら働けていると思います。
編集部
石川さん個人としては、どのような将来を思い描いているのでしょうか？
石川さん
今後、マネージャーになりたいという思いがあります。ただ、私も入社してまだ1年で、入社当初はできなかったことができるようになってきた面もあれば、足りない部分もあります。
ですが、自分の足りない部分、見えていない部分も、上長は教えてくれます。上長と話し合う機会は毎日のようにあり、コミュニケーションを密にとることで、マネージャーになるための道筋を一緒に組み立ててもらっているイメージです。その環境は自分にとって非常にありがたく感じます。
編集部
いつでも周囲に相談できる環境があるのですね。
石川さん
上長への相談はもちろん、シャッフルランチという普段の業務で関わらない社員と関わる機会もあります。そこで違う部署の社員のキャリアや夢を聞けるので、広い視野を持ちながら働くことができています。
編集部
社員のみなさんが生き生きと働いている雰囲気が伝わってきます。
誰でも経営陣と直接話せる「CXO Hour」を毎週開催
編集部
その他、X Mileさんの中で社員の方々への刺激や成長につながるような取り組みはありますか？
石川さん
成長意欲が高い社員に向けて毎週火曜日、経営陣と直接話ができる「CXO Hour」を設けています。大学で、教授が決まった時間に決まった場所にいて質問ができる「オフィスアワー」のようなイメージで、会社や経営陣がどういうことを考えているのか、ざっくばらんに質問もできますし、業務の相談もできます。
毎月、MVP表彰もあり、MVPに選出された社員は社長との食事会に行くことができます。締め会やシャッフルランチも、社内交流を促すために定期的に開催しています。
編集部
経営層と社員の方との距離が近い印象を受けました。石川さんも実際に「CXO Hour」に参加した経験はあるのでしょうか？
石川さん
ほぼ全社員が積極的に活用していて、私も毎週参加しています。特に新入社員にとっては、会社への理解がまだまだ深められていないこともあり、経営陣の話が直接聞ける機会は貴重です。
住宅、子供手当など手厚い各種補助制度を用意
編集部
X Mileさんでは、社員の方々の生活を支えるさまざまな補助制度も揃っているそうですね。
石川さん
成長意欲が高く、時間をすごく大事にしている社員が多いため、会社から3km圏内に住む社員に向けて月2万円の住宅手当の支給があります。その制度を使って、通勤時間を短縮させるために会社の近くに引っ越す人も多い印象です。
編集部
他にも、活用している方が多い制度は何かありますか？
石川さん
パソコンは必ず業務で使うので、全社員1人1台支給されます。あとは書籍購入補助制度があり、社内にも本がたくさん置いてあります。新入社員も含め、本を借りていく人は多いですね。私も、自分では買わないような本を借りて読んだりしています。
渡邉さん
他にも、お子さんがいる家庭には、子供手当として毎月1人当たり1万円を支援しています。ベンチャー企業としては手厚いと自負しています。
編集部
子育て中の人にとっては、非常に嬉しい制度ですね。
女性の積極採用でフラットな社会の実現に貢献
編集部
X Mileさんの採用について伺えればと思います。特徴や重視していることはありますか？
渡邉さん
X Mileは、男女比で男性3、女性7ぐらいの割合で採用していくと謳っています。それは、男女の不平等をなくすためのアファーマティブアクション（※）として初期から意識しています。
（※）性別や出自などで不利益を被る人の状況を改善する取り組み
日本では、男女が完全に平等に仕事ができる社会の実現には、まだまだ至っていないと感じています。当社はそれをフラットにしていけるような会社であり続けたいと思っています。
おそらく、男女比で1対1を志向するだけだと状況はなかなか良くなっていかないと思うんです。X Mileは中長期で、令和を代表するメガベンチャーになるミッションを掲げて、かつ海外への事業展開も目指しています。なので、グローバルに活躍する企業はどこもやっているようなアファーマティブアクションが必要だと感じています。
編集部
そのような社会課題の解決にX Mileさんが取り組んでいるのには、どのような背景があるのでしょうか？
渡邉さん
実は、私は母子家庭で育ちました。母がシングルマザーとして女手一つで子供を育てていく際に、風当たりが強かったり、働き口がなかなかなかったりして苦労していたようです。パートのような働き方で給料が低い中、私と妹を育ててくれたのですが、小さい頃の自分は、家庭が苦しいのは自分のせいだと申し訳なく感じていました。
でも、大学で専攻する社会学を学ぶにつれて、社会の構造に何か歪みがあると感じるようになりました。自分が会社を経営するようになったら、そのような社会の歪みや、それによって生まれる苦しみを少しでもなくせるような社会づくりに貢献していきたいという気持ちを持つようになったんです。
編集部
外的な要因で苦労をする方を1人でも減らしたいという思いが、採用の考え方の源となっているのですね。最後になりますが、X Mileさんが求める人材はどのような方になりますか？
渡邉さん
ジェンダーなどの差に関わらず、仕事を頑張りたい、成長したいと考えている方と一緒に働きたいですね。オンライン説明会やカジュアル面談の場も設けていますので、興味を持っていただいた方はぜひ気軽にご連絡いただければと思います。
編集部
女性に限らず、子育て世代への支援など、社員皆さんのキャリアや生き方に配慮が行き届いている印象を強く受けました。本日はありがとうございました！
■取材協力
X Mile株式会社：https://www.xmile.co.jp/
採用ページ：https://www.xmile.co.jp/recruit