社員の幸福を追求し、働きやすい環境を整え成長を続けている企業をインタビューする本企画。今回は、メカニカルコアパーツの開発・製造・販売を手掛ける株式会社TOKにお話を伺いました。
生活の利便性と安全性を支えるメカニカルコアパーツを展開
▲冷蔵庫の引き出しやトイレのふたなどに取り付けられているメカニカルコアパーツ
ゆっくり閉まるトイレのふたや、スムーズに出し入れができる冷蔵庫の引き出し。日常生活の何気ない一コマを支えるメカニカルコアパーツの開発・製造・販売を担っているが、株式会社TOKです。
普段は意識することのないメカニカルコアパーツですが、私たちの生活の利便性と安全性を支えています。
会社名 | 株式会社TOK |
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住所 | 東京都板橋区小豆沢1-17-12 |
事業内容 | メカニカルコアパーツ(機械要素部品)の開発・製造・販売 |
設立 | 1938年12月1日 |
公式ページ | https://tok-inc.com/ |
社員の働き方を考えるうえで、株式会社TOKが大切にしているのが仕事と生活の両方の充実を追求していくワークライフインテグレーションです。社員にとって良いと思う制度はトライアルで素早く実践に移し、社員の幸福実現のため積極的に挑戦し続けています。
同社の働く環境や理念について、代表取締役社長の吉川桂介さんにお話を伺いました。
「これまでにない動き」を目指す株式会社TOK
▲日常生活のあらゆる場面でメカニカルコアパーツが活躍している(公式ページより)
編集部
初めに、TOKさんの事業内容について伺わせてください。
吉川さん
TOKはメカニカルコアパーツというものを作っている部品メーカーになります。メカニカルコアパーツは名前に「コア」と入っている通り、さまざまな製品で核になる部品です。
例えば、冷蔵庫の引き出しを出し入れするときに「ゴロゴロ」という感覚があると思いますが、その感覚は何かしらの部品同士が作用しているために生じます。私たちはそのような、製品が機能するための部品を手掛けているのです。
冷蔵庫の部品以外では、トイレやピアノのふたの開閉を緩めるための部品というとイメージしやすいのではないでしょうか。開閉の動きがゆっくりですと安全性が担保されるだけでなく、高級感が出るといった効果も生まれます。
この事例においては、弊社の部品はトイレメーカーさんやピアノメーカーさんの求める動きを実現するために作用しているのです。
編集部
お話を伺う限り、お取引先としては家電メーカーさんや住宅メーカーさんが多いのでしょうか?
吉川さん
TOKのお取引先は家電メーカーだけでなく、さまざまな業界に渡ります。会社の方向性として、関わる業界を広げていきたいと考えていますね。
一般的な部品メーカーだと一つの業界に特化して開発を進めているケースもありますが、私たちの製品は非常に汎用性が高いものだと考えております。
最近では医療業界に参入していこうとしていますし、思いがけない業界からお声がけいただくこともあります。さまざまな要望に対し、既存製品だけでなく新製品も開発しながら、柔軟に対応していく方針です。
編集部
創業から間もなく100年になるTOKさんですが、現状に満足することなく新しい挑戦を続けていくということですね。
吉川さん
TOKは経営理念の一つに「”新しい価値”の提供で社会に貢献する。」を掲げています。この「新しい価値」というのは「これまでにない動き / Create New Motion」を指しています。
今実現できている動きを融合したり、新しい分野から技術を持ってきたりしながら、これまでにない動きを実現できる製品を開発していきたいですね。
社員の幸せ実現のためワークライフインテグレーションを重視
編集部
サービス面で新しい挑戦を続けているTOKさんですが、それは社員さんの働く環境を整備する上でも共通するものでしょうか?
吉川さん
TOKが考える「これまでにない動き」は製品だけでなく、社員の働く環境づくりにおいても意識している部分です。より働きやすい環境を作るために、これまでにない新しいものをどんどん取り入れていきたいと考えています。
編集部
社員さんのライフワークバランスを実現するためにさまざまな取り組みを進められているのですね。
吉川さん
私自身はワークライフバランスよりも、ワークライフインテグレーションという言葉を大切にしています。
ワークライフバランスは仕事とプライベートを完全に区切った考え方ですが、実態を考えると人生の半分以上は仕事に関わっているのではないかと思います。仕事に比重がかかっている状態だと、ワークライフバランスは実現しようがないのです。
一方、ワークライフインテグレーションは仕事とプライベートの両方を充実させることで、人生全体を充実させることを目指しています。人生のなかでやることはたくさんあって、あくまで仕事は幸せな人生を実現するための一つの手段なのです。
編集部
社員の幸せを第一に考えていらっしゃることが伺えますが、ワークライフインテグレーションを重視するに至った経緯は何でしょうか?
吉川さん
コロナ禍をきっかけに、私もいろいろと本を読んだり勉強したりしました。読んでいた本の一つに「幸福学」がテーマのものがあったのですが、そこでは人の幸福について書かれていたのです。
何に幸せを感じるのかは人それぞれなので難しいところがあるのですが、幸福度が高いと感じている人は生産性も高いといいます。確かに生活で何か辛いと感じていることがあれば仕事はうまく進まないでしょうし、逆もまたしかりです。
ですので、社員の幸福を実現するというのは一つの目標としています。
例えば、仕事面では自分が処理できない仕事量を抱えるのではなく、ある程度の負荷がかかって程良く忙しい状態が望ましいでしょう。加えて、「自分は何のために仕事をしているのか」というのをしっかり自分自身把握して仕事に取り組めていることが重要になります。
逆に仕事の配分がうまくいかずに手持無沙汰にしている社員がいるのはあまり良い状態ではありません。「何のために自分はこの会社にいるのか」と疑問に持ち始めると離職のきっかけにもなりますので、繰り返しになりますが適度に忙しいというのが大切です。
編集部
仕事面で充実させるというのがワークライフインテグレーションを実現するために不可欠なのですね。
評価ポイントは売上ではなく会社に関する改善提案
編集部
仕事を充実させるために人事評価制度の在り方というのも重要だと思いますが、TOKさんはその点いかがでしょうか?
吉川さん
会社が掲げる目標というと売上高が一般的なものとして挙げられますが、TOKは売上ではなく会社に関する改善提案を評価のポイントとしています。
私たちが手掛けている製品は、一軒一軒家を回って営業すれば売れるというものではありません。家を回れば回るほど結果が出る業態ならば売上を目標にしても良いと思いますが、私たちの業界は個人が売上をコントロールできるものではないのです。
かつては弊社も売上を目標に掲げていましたが、私も含めそれを自分事として捉えられる社員はそれほどいなかったのではないかなと思います。
編集部
自分事として捉えられる目標と考えたときに、改善提案が評価項目として浮上したのですね。
吉川さん
TOKでは、改善提案自体は以前から実施していて報奨金も出していました。ただ、改善提案を個人の評価には結びつけていなかったのです。営業や技術者、管理部門などあらゆる部署の社員が自分事として捉えられる目標は何かとなったときに、改善提案が最適だと感じたのです。
改善提案については目標件数は立てていますが、何よりも大切にしているのは会社のありたい姿を打ち出すことです。
「これまでにない動きのものを使って他社と差別化していく」というような理想の会社の姿を掲げて、みんなの幸せのためにできることをしましょうという形で改善提案を募っていますね。
編集部
実際にどのような提案が社員さんから出されるのでしょうか?
吉川さん
社員から出される改善提案は、売上に直接結びつくものから、社内の環境整備に関するもの、安全に関する事項などさまざまです。
改善提案といっても、実際は「改善報告書」のような形を取っています。改善策を実施して、実際にどれぐらい改善したかというのを報告するという形を取っているのです。一人ひとりが会社に対して貢献できているという意識を持って提案してくれていると思います。
編集部
より働きやすい環境を作り幸せを実現するため、社員さん一人ひとりが自ら考え行動していらっしゃるのですね。
トライアルを経てさまざまな制度を導入、育休時の給与賞与昇給保証も実現
編集部
ワークライフインテグレーション実現のためワークの部分でお話を伺いましたが、ライフの部分を支えるための制度はございますでしょうか?
吉川さん
TOKではノー残業デーや時差出勤、有休の40日間までの積み立て、誕生月休暇制度などさまざまな制度を導入しています。これらは全て導入前のトライアルを経て正式に導入された制度です。
会社の就業規則を変えて制度を導入するとなると、導入までに時間がかかってしまうだけでなく、導入したのはいいものの活用されないという事態も考えられます。なので、まずは私の一存で制度の導入を決めて、しばらく試してみるという方法を取っているのです。
編集部
制度は社員の要望を受けて導入することもあるのでしょうか?
吉川さん
もちろん、制度導入に当たっては社員の声も参考にしています。誕生月休暇は「有休は家族のために使うことがほとんどなので自分のために使えるような休暇制度がほしい」という声を受けてトライアルを始めました。
自分の誕生月に1日休暇を取れるという形で1年間トライアルを始めましたが、9割以上の社員が取得したのです。「1人でも取得する人がいれば正式に導入しよう」と考えていたので驚きましたね。
編集部
社員さんの要望を受けて柔軟に対応された結果、制度が充実しているのですね。子育て世代に向けた制度などはございますでしょうか?
吉川さん
TOKは育休について給与賞与昇給保証制度を導入しています。これは男性の育休取得を推進するために、男性社員の給与を保証しようという国の動きに並行して導入した制度です。
現状、育休を取得した場合は通常の給与の6割ぐらいの報酬を支払うことが公的に制度化されていますが、弊社では育休から復帰した際に残りの給与について支払うようにしています。
産前産後も含め、育児に関わることは当社の仕事として捉えるという考え方のもと導入された制度です。
編集部
育休前の給与が保証されるというのは、子育て世代からするととてもありがたい制度ですね。
個人の裁量に任せたリモートワーク、「何をするか」が重要
編集部
TOKさんはリモートワークを導入されているそうですが、導入の経緯と現在の運用状況について伺わせてください。
吉川さん
TOKではコロナ禍に入る直前からリモートワークを導入する話が浮上していました。そのタイミングで緊急事態宣言が発令され、まだインフラやルールがしっかり整っていなかったのですが、とにかく出社を禁止にしたことからリモートワークが始まりました。
現在は特に出社日を設けることなく、それぞれの裁量に任せてリモートワークをしてもらっています。以前は出社日を設けていたのですが、出社したときに必ず打ち合わせを実施するような部署もありませんでしたので、今は用事があるときだけ出社するという形を取っています。
同席の秋場さん
出社するかしないかは、それぞれの仕事の状態から判断します。今は期末期初ということもあり、5割ほどの社員が出社しています。ほぼリモートワークをしている社員もいますが、設計業務に従事する社員は出社が多いです。
編集部
「どこで」というのを重視せず「何をするか」というのを重視されているということですね。
吉川さん
会社に行くのが仕事ではないというのがTOKの基本スタンスです。「家の環境が仕事をするのに適していない」「会社でお昼を食べたい」など出社の理由は何でも良いですが、出社して何をするのかというのを考えて仕事をしてもらいたいですね。
TOKは2018年に会社を引っ越して、楽しんで働けるようなオフィスを作りました。社員食堂も一新しておいしいものが食べられるようにしています。出社してコミュニケーションが生まれることを意識しましたね。
編集部
出社することに意味を持たせられるようなオフィスを作られたということですね。
▲2018年に引っ越しオフィスを一新した
求めているのは株式会社TOKにこれまでいなかった人材
▲「社風に合っているから採用するというスタンスは取っていない」と話す吉川さん
編集部
現在のTOKさんの採用状況についてお教えください。
吉川さん
TOKは来年、3年ぶりに大卒人材が3名入社する予定です。工場勤務の高卒人材については毎年1~2名コンスタントに採用を続けています。
弊社の平均勤続年数は18年と長めということ、そして会社の規模や事業内容なども加味して大卒人材については年数を置いて採用するという採用ペースとなっています。
編集部
最後に、TOKさんに興味を持っている方に向けてメッセージをお願いいたします。
吉川さん
考え方や経歴などは人それぞれだと思いますが、私たちは今までTOKにいなかったような人材を求めています。採用におけるスタンスとしては、社風に合っているから採用するというものではありません。TOKにいなかったタイプが入社することで相互作用が生まれると考えているのです。
弊社では社員が改善提案を行っていることもあり、意見をしっかりいってくれる方の入社を歓迎します。
編集部
新しいことに挑戦し続けるTOKさんだからこそ、新しい風を吹かせてくれるような人材が活躍できると感じました。本日はありがとうございました。
■取材協力
株式会社TOK:https://tok-inc.com/
採用ページ:https://tok-inc.com/recruit/index.html