持続可能な社会をつくるためのビジネスを展開し、社員が成長できる環境を整備している企業にインタビューする本企画。
今回は、再生可能エネルギーや自然循環型農業などの事業を展開している株式会社翔栄クリエイトにお話を伺いました。
本質的な社会課題の解決に向けた事業を展開する翔栄クリエイト
▲自社農場「翔栄ファーム」では、農薬・化学肥料を使わない自然循環型農業を手掛けている
株式会社翔栄クリエイトが手掛けているのは、再生可能エネルギーの開発・設計・施工や自然循環型農業、オーガニックカフェの運営など持続可能な社会づくりにつながる事業です。
社会的にSDGsが注目される以前からクリーンエネルギー事業を展開しており、理念だけで終わらない、本質的な社会課題解決型ビジネスを追求しています。
| 会社名 | 株式会社翔栄クリエイト |
|---|---|
| 住所 | 東京都新宿区西新宿1-8-1 新宿ビルディング1F |
| 事業内容 |
|
| 設立 | 1997年8月 |
| 公式ページ | https://syouei-corp.net/ |
「しっかり働き、しっかり休む。」というスタンスを掲げている株式会社翔栄クリエイトは、労働時間に捉われない働き方を推奨しています。社員の健康促進のための福利厚生も用意されており、生き生きと働ける環境が整えられているのです。
同社の理念や働き方について、代表取締役の宇佐神慎（うさみ まこと）さん、常務取締役の宇佐神功美（うさみ いさみ）さんご夫婦にお話を伺いました。
（※）記事中では宇佐神慎さんを「宇佐神さん」、宇佐神功美さんを「功美さん」と記載しています。
クリーンエネルギー事業を先駆けて展開。社会の真のニーズを追求
▲SDGsが注目される以前から再生可能エネルギーに関する事業を展開してきた
編集部
翔栄クリエイトさんはいつから再生可能エネルギーの開発、設計、施工の事業を展開されていらっしゃるのでしょうか？
宇佐神さん
翔栄クリエイトは、1999年からクリーンエネルギー事業を展開しています。
地球温暖化の問題というのは30年以上前から存在していて、ヨーロッパで開催された国際会議をきっかけに大きく取り上げられ、解決のため各国が動き出しました。
その中では「データを見ると寒冷化している」などいろいろな議論も出ており、世界中で方針が定まらない期間も長かったのですが、弊社は一貫してクリーンエネルギー事業を続けています。
編集部
事業を続ける上では逆風もあったのではないかと推察されますが、事業を継続できた要因としては何が挙げられるでしょうか？
宇佐神さん
クリーンエネルギー事業を続けてこられた背景としては、翔栄クリエイトが掲げている理念が関係しています。それは、弊社の理念のひとつである「真の意味で、時代のニーズに応えうる事業を行う。」というものです。
この「真の意味」というのが重要で、時代のニーズに合わせて儲かるビジネスをしたいという企業は数多くあるでしょう。弊社はそのような目先のニーズは追いません。みんながまだ気づいていないような、根本的なニーズを大切にしていきたいと考えているのです。
例えば、多くの人々は「健康でありたい」と願っていますが、実際には市場のマーケティングにより生み出された数々のアプローチに影響され、食事面などで不健康なライフスタイルを送ってしまうという、悪い循環ができあがっているのではないでしょうか。
私たちはこの循環の外から本質を見極めて、長いスパンで社会全体を良くしていくために、クリーンエネルギーをはじめとした多くの事業を展開しています。
編集部
SDGsが世の中で注目を受ける以前から、社会の持続可能性を考えてビジネスを展開されてきたのですね。
宇佐神さん
実は私は、個人的にはSDGsという言葉があまり好きではありません。どうしても経済が目先にある考え方のように思えてしまうためです。
2012年に国が固定買取価格制度（※）を始めたこともあり、一時期クリーンエネルギービジネスを展開する企業が増えました。しかし、買取価格が安くなってきたこともあり、ビジネスから手を引く企業も出始めています。
（※）再生可能エネルギーで発電した電力を電力会社が一定額、一定期間買い取ることを国が保証した制度。
こういった現象は、本質的ではありませんよね。翔栄クリエイトはただ利益を追うのではなく、そしてクリーンな企業としてPRするためでもなく、社会的な課題を解決するために事業を続けてきました。その中に、SDGsの考え方と重なっている部分があるのだと思います。
編集部
翔栄クリエイトさんとしては、経済的な活動というよりも、真の意味で持続可能な社会につながるような取り組みを進めるよう心がけていらっしゃるのですね。
赤字が出ても農業事業を進める背景は「身体に害のない作物を作りたい」という使命感
▲自然循環型農業により、「野菜の本来の生命力」を呼び起こしている
編集部
翔栄クリエイトさんが手掛けている、自然循環型農業についても伺わせてください。
宇佐神さん
翔栄クリエイトが自然循環型農業に取り組み始めたのは2016年のことです。野菜の種には固定種とF1種（※）というものがありますが、弊社は固定種、在来種の種のみを植え、農薬や化学肥料を使わない農業に取り組んでいます。
（※）固定種は人の手が加わらずに代々形質が受け継がれている種のこと、F1種は人工的に作った一代限りの種のことを指す。
正直なところ、自然循環型農業で利益は出ておらず年間で赤字が出ています。手間は10倍にもかかわらず、2倍の価格でも売れないという状況です。
農薬や化学肥料を使った農法のことを「慣行農法」と呼びますが、慣行農法に取り組んでいる農家さんでさえなかなか厳しいものがあるなか、人を雇って自然循環型農業をやっていれば赤字が出るのは当たり前でしょう。
しかし、先ほども申し上げた通り、弊社は利益を最優先にしておらず本質を追い求めています。赤字を出してでもこの事業を続けないと、固定種を守り、身体に害のない作物を届けることができません。
私たちは2022年までは150種類の果樹や野菜を作っていましたが、そういった厳しい状況もあって2023年は100種類くらいまで減らしました。それでもできれば50〜60種類ほどにして、弊社の野菜を必要としている人にちゃんと届けていきたいと考えています。
農薬・化学肥料を使わない自然循環型農業により、地球環境に良い影響も
編集部
自然循環型農業を採用するメリットとして、他にはどのようなものがあるでしょうか。
宇佐神さん
農薬や化学肥料を使わないことで、地球の環境にも良い影響を与えていると考えています。
植物は光合成によって炭素だけを残して、空気中に酸素を放出します。ところが農薬を使うと、地面にいる植物や動物などの有機物を分解し、地面に固定された炭素をどんどん大気中に放出してしまうことになるため、結果として温暖化につながってしまうのです。
また、化学肥料は窒素酸化物を大量に放出するものです。窒素やリン酸、カリウムは植物の栄養ですが、過剰に野菜に与えることで一酸化二窒素を出してしまいます。一酸化二窒素は、二酸化炭素の300倍の温暖化ガスといわれています。
今や世界の農業で化学肥料が使用されており、農業ができない土地になってしまっています。もともと肥沃な土地だった場所が砂浜のようになり、黄砂の問題にもつながっています。農業は地球温暖化の原因のひとつだと言われているのですが、それはこのような背景があるためです。
編集部
ありがとうございます。自然循環型農業は、私たちの食事だけでなく、地球全体の課題とも関連しているのですね。
「しっかり働き、しっかり休む。」を実践している職場環境
編集部
翔栄クリエイトさんに在籍するエンジニアの皆さんは、どんな業務を担われているのでしょうか？
宇佐神さん
翔栄クリエイトには現在、65名ほどの社員が在籍しています。その中でエンジニアは、主に太陽光やバイオマス、風力発電の開発やメンテナンスを手掛けています。
ですので、もし弊社でエンジニアとして働く場合は電験主任技術者、土木施工管理技士、電気工事施工管理技士といった資格が必要になってくるでしょう。
編集部
エンジニアとして働くことで、どのようなスキルが身に付くでしょうか？
宇佐神さん
弊社のエンジニアは、下請け業者さんや職人さんの立場に立ちつつ、施主の意向も汲んでスケジュール管理や調整をしなければなりません。そのような調整力は身に付くのではないかと思いますね。
弊社は理念の一つに「正直で、常に社会に必要とされる企業である。」というものを掲げています。この正直さというのは、下請け業者さんや職人さんに対しても求められる姿勢でしょう。
編集部
エンジニアが働きやすい職場にするために取り組んでいらっしゃることはございますか？
宇佐神さん
仕事に時間をかけているからといって仕事をしていることにはならないと考えています。
弊社のエンジニアは案件の管理者の立場にあります。職人さんは働く時間が決まっていると思いますが、管理者は時間よりも質が求められるでしょう。そういうこともあり、時間よりも仕事の質や結果を重視しています。
しっかり仕事をする分、しっかり休んでもらうことは当たり前です。弊社は旅行休暇制度があるだけでなく、有給休暇取得奨励日も設けています。また、最大20万円の資格取得⽀援制度もあるなど、個人のスキルアップも応援しています。
そして弊社ならではといえるのが、社員の健康促進制度です。オフィス内に施術が受けられる鍼治療院利用制度のほか、無農薬酵素玄米ごはん食べ放題制度、無農薬野菜や食材を使って調理して食べることもできるキッチンを整えています。自然循環型農業に取り組んでいる私たちだからこそ実行できる制度です。
編集部
社員さんが健康にいきいきと働けるようにするための制度が充実しているのですね。
人を蹴落とそうとする人がいない、社員が作る翔栄クリエイトの社風
編集部
翔栄クリエイトさんの社員の皆さんは、どのような方が多いでしょうか？
功美さん
翔栄クリエイトの社員はまじめな人が多いと思います。「人を蹴落とそうとする人がいない」というのは社員からよく聞く言葉です。弊社はさまざまな事業部がありますが、自分の部署のことだけ考えるという社員はおらず、相手のことをよく考えられる方が多いと感じます。
編集部
部署間の絆も深いということですね。
功美さん
弊社では部署間での交流も積極的に行っています。特に農業に携わっているメンバーは普段は畑にいるため、ほかの事業部と交流する機会は少ないです。そのため、年に2回半期ごとに会社で全体会議をし、全員が顔を合わせる機会を設けています。
農業のメンバーも「来て良かった」と言っていたりするので、社員同士のコミュニケーションでみんなが笑顔になっているとこちらも嬉しくなってきますね。
編集部
和気あいあいとした雰囲気があるのですね。宇佐神さんは、会社の雰囲気についてどのように感じられていますでしょうか？
宇佐神さん
翔栄クリエイトの職場の雰囲気は、時代ごとに変わっているんです。それは、私が社風を作っているのではなく、社員が社風を作っているためです。社員の姿勢が、会社の形を作っているのだと感じています。
編集部
会社の雰囲気作りの中心にいるのは社員の皆さんということですね。
インターン参加者も感動する、農業に対する社員の想い
編集部
翔栄クリエイトさんではインターン生の受け入れも実施されているとのことですが、今はどの事業でインターンシップを行っているのでしょうか？
宇佐神さん
私たちのインターンシップは、今は農業分野で実施することが多いですね。以前は他部署の長期のインターンシップも実施していましたが、今は農場での2日~1週間ぐらいの短期のものが多いです。
編集部
インターンシップに参加した学生さんの反応はいかがでしょうか？
功美さん
インターンシップに参加した方は、弊社の社員の作物に対する思いに感動されることが多いです。そもそもの農作業の体験自体に感動することもありますが、社員の農作業への姿勢を見て「素晴らしいと思った」という声は多くいただいていますね。
大量生産とは真逆のやり方をしているので、一つ一つ手作業で進めていく部分に心を動かされるのではないでしょうか。今後もインターン生の受け入れは継続していきたいです。
「人に貢献してこそ自分の存在意義を見出せる」という人材を求める
▲「固定概念に縛られず柔軟性のある方に入社してほしい」と話す宇佐神さん（右）
編集部
最後に、翔栄クリエイトさんに興味を持っている方に向けてメッセージをお願いいたします。
宇佐神さん
翔栄クリエイトが求めているのは、固定概念に縛られず柔軟性のある人材です。そして、人に貢献することが好きな方に応募いただきたいと思っています。人に貢献してこそ自分の存在意義を見出せるという方、自分のためでなく人のために成長したいと思える方と一緒に働きたいですね。
編集部
真の意味で社会に貢献していく翔栄クリエイトさんだからこそ、人に貢献する姿勢というのが重要になってくるのだと感じました。本日はありがとうございました。
■取材協力
株式会社翔栄クリエイト：https://syouei-corp.net/
採用ページ：https://recruit.syouei-corp.net/