SDGsに対する先進的な取り組みがあり、働く人たちのワークライフバランスも大切にしている企業にインタビューする本企画。今回は、関西エアポート株式会社にお話を伺いました。
関西3空港の運営を担う新たな会社、関西エアポート株式会社
関西国際空港、大阪国際空港(伊丹)、神戸空港と、関西エリアの3つの空港の運営を担っている関西エアポート株式会社。関西国際空港をとりまく海の環境保全や、建物や導入設備は設計段階から省エネにこだわるなどSDGsの推進役としてさまざまな取り組みを進めています。2015年に設立された新しい会社でもあり、フルフレックス勤務など多様なプライベートを両立できる働き方を実現させています。
会社名 | 関西エアポート株式会社 |
---|---|
住所 | 大阪府泉佐野市泉州空港北1番地 |
事業内容 | 関西国際空港および大阪国際空港の運営業務、管理受託業務等 |
設立 | 2015年12月1日 |
公式ページ | http://www.kansai-airports.co.jp/index.html |
働き方 | フルフレックスタイム制度(コアタイムなし、6:00-21:00) リモートワーク可(業種による) |
今回は、関西エアポート株式会社の管理本部グループ人事部人材開発Gの石原花菜さんと佐藤大剛さんに、関西エアポート株式会社の空港運営会社ならではのSDGsにまつわる取り組み、ワークライフバランスを実現できる社内体制についてお話を聞かせていただきました。
関西国際空港の周りには、豊かな「藻場」環境が保たれている
▲関西国際空港周辺の藻場の様子。海の生態系が保たれている
編集部
はじめに、関西エアポートさんの事業について教えてください。
石原さん
簡単に説明すると、関西エリアの空港の運営全般を担っている会社です。関西国際空港、大阪国際空港(伊丹)、神戸空港の3空港を運営しています。
編集部
これから大阪・関西万博も開催されますので、ますます賑わいそうですね。
石原さん
そうですね。海外からも全国各地からも多くのお客様がいらっしゃると想定しているので、私たちとしても力を入れて取り組んでいます。
編集部
まさに国際的な感覚が必要な職場だと思いますが、関西エアポートさんではSDGsについてはどのように取り組んでいるのでしょうか。
石原さん
3空港とも環境に配慮した空港ですが、特に関西国際空港で例を挙げるとすると、「藻場」の取り組みが象徴的だと思います。
編集部
藻場というのは、植物の藻の場所という意味ですか?
石原さん
はい、そうです。そもそも関西国際空港は、航空機騒音の影響が周辺地域に及ばないように作られた世界初の本格的な海上空港なんです。平均水深18~20mの海域を埋め立ててつくるために、計画当初から海域環境との調和を目指した造成がなされています。
埋め立てをするときに、太陽の光が均等に差し込むように傾斜を作ることで、空港島周辺の豊かな藻場環境を保っています。2022年3月のモニタリング調査では、藻場面積が54haであることが確認できました。大阪湾の藻場の約2割を占めています。
編集部
豊かな藻場があることで、空港周辺の海では多種多様な生き物が生息できるわけですね。
石原さん
はい、仰る通りです。さらに藻場そのものが、海洋生態系に取り込まれた炭素「ブルーカーボン」として非常に重要な役割を果たしていることも認識され始めています。2022年には、関西国際空港周辺護岸に生育する海藻によるCO2吸収量を定量化し、Jブルークレジットの認証・発行も受けました。
編集部
地球環境との共生を、建設時から実行している空港なんですね。
空港全体でCO2削減に配慮、メガソーラーや水素ステーションも設置されている
▲関西国際空港の「KIXメガソーラー」
編集部
SDGsに関連して、関西エアポートさんではエネルギー問題に関する取り組みもありますか。
石原さん
空港は大量のエネルギーを消費する施設であるため、空港全体でCO2削減などの環境に配慮した取り組みを行っています。
例えば、関西国際空港には「KIXメガソーラー」というかなり大規模な太陽光発電システムがあります。関西国際空港と大阪国際空港には、燃料電池自動車(FCV)・燃料電池バス(FCバス)用の水素ステーションも設置されています。他にも、照明のLED化、空調の高効率化、館内トイレでの再生水利用なども行っています。
佐藤さん
風力発電もあります。発電した電力は空港内の外灯に利用されています。
編集部
あらゆる方向・手段で、エネルギー問題に取り組んでいるんですね。
石原さん
新しい設備を導入する際には、技術系の部門で環境への負荷を分析した上で検討するんですよ。
佐藤さん
例えば関西国際空港は、とても窓が大きくて自然光が入りやすい設計になっています。そこも、館内の電力使用量を減らすための意図的な設計になっています。
編集部
省エネへ取り組む徹底した姿勢を感じますね。
ゴミを出さないよう工夫、スーツケースの回収事業など空港ならではの取り組みも
▲関西国際空港の小型風力発電の様子
編集部
佐藤さんは昨年、2023年8月に入社されたとのことですが、空港におけるSDGs関連の取り組みで、新鮮に感じた部分はありましたか。
佐藤さん
関西国際空港内にあるゴミ箱のゴミは全て分別・回収されていまして、例えば利用客の皆さんが捨てた可燃ゴミは空港外に持ち出さずに、島内にあるクリーンセンターで処理しているんです。
私たち関西エアポートだけではなく、航空会社や空港業務を支えるいろいろな事業者と協力して、ごみの削減やリサイクルに取り組んでいるところに驚きました。
石原さん
ゴミを増やさない努力もしています。例えば関西国際空港の場合、世界中の方々が集まってくるので、実はスーツケースを捨てる方が多いんですよ。ゴミ箱の横にスーツケースを置かれてしまうと不審物と見分けがつきにくいという問題もあるので、スーツケースのリユースサービスを行っています。
編集部
他にはない、国際空港ならではのサービスですね。スーツケースを空港に捨ててしまう方がいるとは知りませんでした。
石原さん
タイヤが壊れてしまって捨てるなどの場合もありますし、世界中の方が集まるので、さまざまなお考えがあるのだと思います。リユースサービスがあればリサイクルなどができますし、カウンターにご自身で持ってきてくださるので、保安上の問題も改善されました。
空港でSDGsを学ぶ親子バスツアーが人気、自治体との取り組みにも積極的
▲関西国際空港での関西エアポート株式会社による親子環境ツアーの様子
編集部
関西エアポートさんでは環境問題、エネルギー問題、ゴミ問題についてさまざまな取り組みをされていますが、地域の皆さんに対する情報発信もありますか?
石原さん
先ほどお話した風力発電や藻場などを地域の小学生や住民の皆さんに見ていただけるよう、親子環境ツアーなどの企画があります。お子さんの中には、将来空港で働く方もいらっしゃるかもと想像しながら、啓蒙活動に力を入れています。
編集部
空港の知らなかった一面を見ることができて、楽しみながらSDGsに親しめる機会ですね。
石原さん
子ども達だけでなく、自治体との連携にもいろいろ取り組んでいます。2023年4月には、空港の対岸にある阪南市と協力して大阪・関西万博「TEAM EXPO 2025」プログラムの共創チャレンジに登録した「大阪湾の海の森(藻場)保全・再生プロジェクト」の一環として、関西国際空港で採取した海藻を阪南市へ移植しました。
編集部
子ども達の未来のためにも、地域の活性化にも貢献されていて、二重三重の意味でSDGsにつながる取り組みですね。
職種を問わず、コアタイムなしのフルフレックス勤務が可能
▲関西国際空港の様子
編集部
関西エアポートさんで働いている皆さんについて伺います。社員数は何名ほどいらっしゃるのでしょうか。
石原さん
2024年3月現在、623名で働いています。勤務先はグループ会社への出向を含めますと、関西国際空港、大阪国際空港、神戸空港の3空港に分かれています。
編集部
配置人数が多いのは、やはり規模の大きい関西国際空港ですか。
石原さん
そうですね。関西国際空港をベースとしている社員がほとんどですが、プロジェクトによって大阪国際空港や神戸空港に行くこともあります。
営業系部門や設備部門の大多数は、関西国際空港と大阪国際空港で別れていますが、CS推進などお客様の声を取りまとめる部門は3空港で共通しているなど、部署によっても勤務先が異なります。
編集部
勤務体系は、どのような制度ですか。
石原さん
基本的には、全員6時~21時、コアタイムなしのフルフレックス勤務です。
運用系部門のオペレーションを担っているグループは、夜中に地震が起こったときなど、緊急の事態の対応を想定して24時間体制のシフト制勤務ですが、それ以外の社員はフルフレックス勤務で働いています。
編集部
例えば、佐藤さんや石原さんはどういった勤務時間で働くことが多いですか。
佐藤さん
私は大阪の茨木市に住んでいまして、やや遠いので、10時~10時半ぐらいに出社することが多いですね。
石原さん
私は大阪市内に住んでいるのですが、やはり出社は10時~10時半ぐらいです。
佐藤さん
フレックス勤務の制度はあるけど実際は使えない、という会社も世の中には多いと思うのですが、関西エアポートでは臨機応変にフル活用することができます。出社時間もそうですし、帰るタイミングも、その日に合わせて働くことができます。
編集部
いいですね。リモートワークの利用も可能なのでしょうか。
石原さん
はい、業務によってはリモートワークと出社を使い分けています。難波にあるサテライトオフィスを利用することもあります。
編集部
空港運営のお仕事というと、とくに技術職などは時間厳守で出退勤しなければならないイメージがあったのですが、関西エアポートさんでは想像以上に自在な働き方をされているんですね。
石原さん
事務系、技術系など職種に関係なく、自分の裁量で勤務時間を調整できるので、プライベートと業務を両立しやすい職場だと思います。自身で業務をコントロールしやすいため、働きやすさを優先できているのかもしれないですね。
育児休業は男女ともに取得実績あり。休暇制度を活用しやすいムードも先進的
▲神戸空港の入口の様子
編集部
フレックス勤務、リモートワーク以外にも働きやすくするための制度はありますか。
石原さん
休暇制度は整っています。シックリーブという自分の体調不良や家族の看護のために使える休暇もありますし、有給休暇を時間単位で取得できます。育児休業も、男性・女性関係なく取得しています。
佐藤さん
私も、子どもが昨年に生まれたので、育児休業を活用しました。年末年始の休暇と合わせる形で1カ月弱ぐらい休みました。
2023年8月1日にキャリア採用で入社したばかりだったので、気持ち的に育児休業は取りにくいなと思っていましたが、関西エアポートだと同僚や先輩から「取らないの?」と育児休業を推奨してくれるムードだったので、気持ちよく取ることができました。
編集部
制度も大事ですが、職場のムードも大事ですよね。
佐藤さん
会社・部署としても、同僚の皆さんからも応援してもらっている雰囲気があります。一緒に働いている産業医も背中を押してくれたので、休んでいる時も気持ちよく育児に集中できました。
編集部
佐藤さんは、他社から関西エアポートに入社されて、他にも驚いた点はありましたか。
佐藤さん
入社初日から、有休が付与されることに驚きました。
編集部
すごいですね。通常は、入社から半年経たないと有給は付与されないですよね。
佐藤さん
通常の会社の場合、中途入社した社員は半年以内に熱が出た場合などは欠勤になると思うんですけど、関西エアポートでは初日から有給が付与されていたので、急な事情で休むことになっても欠勤ではなく有給休暇で休むことができます。
また、有給休暇が非常に取りやすいことにも驚きました。上司から「休むように」と言われますし、そもそも、皆さん言われる前に有給は取っているんです。
石原さん
私も、有給休暇はちゃんと使い切っています。
佐藤さん
どこの会社でも有給休暇を消化しきれずに消滅してしまうパターンが多々あると思うのですが、関西エアポートの場合、皆さんきっちり休んでいます。
石原さん
有給休暇は4月に23日付与されます。付与されるだけではなくて、5日間の連続休暇を推奨しているので、例えば月~金曜日で休暇を取得すれば、土日を入れると9日以上の休暇を取ることもできます。また、ゴールデンウィークの間の平日で使い切ったり、社員それぞれが休みたいときに休みを取得できる制度が会社として整っています。
編集部
関西エアポートさんでは、社員の働きやすさに力を入れているんですね。
石原さん
かなり力を入れています。関西エアポート株式会社としては設立されてから若い会社ですし、働き方改革を推進する専門の部署があることも、効力を発揮しているのかなと思います。
フルフレックス、中抜けOKなので、時短勤務なしで育児と仕事を両立できる
編集部
関西エアポートさんでは働きやすい制度が充実していますね。参考として、実際にワークライフバランスを実現している方の例を教えてください。
石原さん
私と同じグループで、お子さんを4人育てながら働いている方がいらっしゃいます。プライベートはかなりお忙しいようですが、フルフレックス勤務制度に助けられている、とお聞きました。学校のイベントやお子さんの送り迎えに合わせて、朝早くから勤務を開始して15時~16時頃には終業していらっしゃいます。
佐藤さん
出勤・退勤時間がフレキシブルな上に中抜けも可能なので、普通の会社だったら時短にしないと働けないところが、関西エアポートでは時短にせずに働ける、というケースは多いと思います。
編集部
イベントやPTAなどがあるときに、有給を使わなくてすむのは助かりますね。
石原さん
例えば朝の10時から勤務をしていたとして、13時からどうしても用事があるときは、退勤の打刻を押さなくても1~2時間だけ抜けてもう1度業務を再開することが出来ます。上長に承認だけもらえば、申請は不要なので本当にフレキシブルです。
編集部
子育て中の方だけではなく、働くメンバーみんなにメリットがある体制ですね。
チャレンジ精神を持ち、チームワークを大事にできる方を歓迎
編集部
それでは最後に、この記事を読んで関西エアポートさんに興味を持った方に対して、採用に関するメッセージをいただければと思います。
石原さん
チャレンジ精神がある方に入ってきていただきたいな、と思います。大阪・関西万博に向けての動きはもちろん、関西エアポートでは常に新しいプロジェクトが動いています。例えばコロナ禍では、関西エアポートでの業務は止まっておらず、むしろ「考える時間が増えたからこそ、何ができるのかを考えて、次のプロジェクトにチャレンジしよう」という心を社員一人一人が持っていました。
社内公募制度で自分のキャリアプランを作ることができる環境も、関西エアポートの特徴です。自分が目指すキャリアに向けて、180度方向転換することもできる制度があるので、受身ではなく、ご自身でチャレンジをしたい方はぜひ入社していただければと思っています。
実は、私も社内公募制度を2回利用してキャリアアップをしています。
編集部
石原さんが社内公募制度を利用した経緯を教えてもらえますか。
石原さん
元々、2018年に関西エアポートのグループ会社に入社し、空港案内の仕事をしていましたが、自分で手を挙げて社内公募制度で異動し、出向という形で関西エアポート株式会社の人事職に2年半従事しました。2024年4月以降は、再び社内公募制度を活用して、管理系部門から営業系部門に異動します。
編集部
石原さんご自身、チャレンジが認められてキャリアアップが叶っているからこそ、チャレンジ精神のある方に入社をおすすめしたいということですね。
石原さん
私は、空港という世界中のさまざまなバックグラウンドを持った方が集まる空間が好きなので、その空間づくりに関わりたいという気持ちはずっと同じです。空港が好きという気持ちを大切にしながら、新しい業務にチャレンジできる制度が整っているのは、すごく幸せだと思っています。
編集部
空港という空間の特殊性も、関西エアポートさんで働く魅力のひとつですね。佐藤さんからもメッセージをいただけますか。
佐藤さん
チームワークを大切にできる方に入社していただきたいと思っています。どの部署でも、社内の部署を越えて調整する業務が非常に多いので、事務所内だけ、自分の力だけで解決するのではなく、周りとの協業が重要なポイントになります。
また空港運営という仕事の性質上、社外の方、ステークホルダー、お客様、協力会社の皆さんなどとの幅広い調整が必要なので、チームワークの中で力を発揮できる方が向いているのかなと思います。
編集部
関西エアポートさんは、SDGsに貢献する広い視野を持ちながら、社員の皆さん一人一人がワーククライフバランスを充実させて働ける会社だということがわかりました。本日は、ありがとうございました。
■取材協力
関西エアポート株式会社:http://www.kansai-airports.co.jp/index.html
採用ページ:http://www.kansai-airports.co.jp/recruit/recruit.html