今まさに成長中の企業、SDGsに真摯に取り組んでいる企業にインタビューする本企画。今回は、株式会社サラダコスモにお話を伺いました。
独自の野菜プロダクツを作り続ける老舗、株式会社サラダコスモ
岐阜県中津川市に本社を構え、1970年代に業界で初めて販売を始めた「無添加・無漂白もやし」をはじめ、安全でおいしい野菜プロダクツを作り続けている株式会社サラダコスモ。カット野菜やスプラウトなどの商品開発・販売のほか教育型観光生産施設「ちこり村」の運営など、野菜と農業を軸に幅広い事業を展開しています。
| 会社名 | 株式会社サラダコスモ |
|---|---|
| 住所 | 岐阜県中津川市千旦林1-15 |
| 事業内容 | ・野菜づくり農業 ・教育型観光生産施設「ちこり村」の運営 ・酒類製造・販売 ・通信販売の運営 ・給食弁当、仕出料理の製造・販売 |
| 設立 | 昭和20年12月（昭和55年8月株式会社設立） |
| 公式ページ | https://www.saladcosmo.co.jp |
今回は、株式会社サラダコスモの人事部兼広報部の山下芙実子さんと株式会社サラダコスモの人事部兼営業部の北野泰基さんに、野菜を軸に成長を続ける理由と、自然体で取り組む同社のSDGsについてお話を聞かせていただきました。
43年連続で黒字を続ける、発芽野菜のリーディングカンパニー
▲品質保証の検査をしている、株式会社サラダコスモの社員
編集部
まずはじめに、サラダコスモさんの事業について教えてください。
山下さん
1973年に開発した無添加・無漂白のもやしをはじめ、発芽野菜のリーディングカンパニーとしてかいわれ大根やスプラウトの製品を数多く生産しています。カット野菜の製造・販売、教育型観光生産施設「ちこり村」の運営など、第一次産業から農業の六次産業化まで、農業を軸に幅広い事業を展開しています。
編集部
多方面に事業展開される中、会社の業績も成長されているのでしょうか。
山下さん
43年連続で黒字を達成しています。売上高は、2013年に74億円でしたが23年には203億円となり、10年で3倍に迫る上昇となっています。
編集部
40年以上、ずっと黒字というのはすごいですね。特に直近10年で急成長を遂げられているのは、何かターニングポイントがあったんでしょうか？
山下さん
売上高が上昇したターニングポイントのひとつは、2013～14年にカット野菜の事業をスタートし、アイテム数が圧倒的に増えたことです。
さらに2015年に機能性表示食品の制度がスタートしたことも追い風となりました。既存の商品を機能性表示食品にしたことで、売り上げが販売から2年後には1.8倍に上がったんです。
編集部
カット野菜事業への新規参入と、機能性表示食品制度という社会的な背景が要因となったわけですね。
山下さん
まだ売上としては多くないのですが、普通のもやし、スプラウト、カット野菜だけじゃなく、オーガニックのもやし、スプラウト、カット野菜を始めるなど、付加価値をつけることにも挑戦しています。
最近はプライベートブランド商品が主流になっているので、プライベート商品としての受注が増えたことや生鮮野菜メーカーとしては珍しく全国47都道府県へお届けする流通網を構築したことも売り上げを支えています。
編集部
消費者のトレンドに合う商品を開発することで、売上を順調に増やしているんですね。
社員発信が多い商品開発、「やりたい！」と手を挙げた人が中心となる
編集部
トレンドに合わせた挑戦が会社の成長を支えているとのことですが、サラダコスモさんでは、新たな事業を始める際、どういったプロセスで社内決定が進むのでしょうか。
山下さん
事業によってさまざまな決定プロセスがあります。例えば、観光施設「ちこり村」の事業などは経営陣と担当社員が主導をしながら、会社一丸となって「どうしていこうか」と考えて、運営を進めています。
その他の商品開発については、社員発信が多いですね。それぞれの部署において、「やりたい！」と手を挙げた人が中心となって進めていく形です。
編集部
サラダコスモさんの成長のターニングポイントとなったカット野菜事業への参入についても、社員の皆さんからの発信があったのでしょうか。
山下さん
カット野菜に関しては、サラダコスモ同業他社の中で最後発ぐらいの遅いスタートだったんです。そのため最後発で始めてシェアが取れるのか懐疑的な意見もありました。
しかし、営業側としては売上を上げるためにカット野菜をやりたい、生産側も同じく売上を上げたいという思いがあり、社員から会社を動かしました。事業参入にせよ、ある一つの商品開発にせよ、やはり社員の力で作っていくところが基本ですね。
編集部
後発としてスタートしたにも関わらず、サラダコスモさんのカット野菜が成功された要因はどこにあったとお考えですか。
山下さん
サラダコスモには元々もやしやスプラウトを作る技術があったので、野菜を加工するだけではなく、自社生産の野菜を利用できるというところがひとつ、あとは商品開発力が要因だったと思います。
例えば生野菜のカットサラダの場合、サラダコスモで作っているスプラウトを入れて、「日本初、スプラウトが入った生野菜サラダ」と打ち出したり、袋のままレンジでチンできる商品、容量の多い「メガ盛り」の商品など、柔軟な発想で新商品を開発しています。今でも、毎年カット野菜の新商品を出しています。
編集部
独自のアイデアと、それを支える技術力の両方があるので、後発でも成功できたということですね。
O-157がきっかけで事業を多角化、やるべきことは「社会問題の解決」
編集部
10年間で売上が倍増する中、事業形態も多角化されていますが、こちらもターニングポイントがあったのでしょうか。
山下さん
多角化に踏み切ったのは、1996年に起こったO-157問題がきっかけなんです。当時はかいわれ大根がO-157の犯人のような風評が起き、全国のかいわれ大根業者が打撃を受けました。サラダコスモでも、かいわれ大根を作っておりまして、もやしやスプラウトとともに販売していました。
もし、かいわれ大根だけを作っていたのであれば倒産していた、と危機感を持ったことが、多角化経営に踏み切るターニングポイントとなりました。少数でもいいので多角的に経営していかないと会社は存続できなくなる、と考えたんです。
編集部
主力商品がひとつだけだと、危機があったときに乗り越えられないということですね。
山下さん
そこで、商品開発だけではなくチコリという西洋野菜の国産化を2006年からスタートしたり、チコリ生産に付随する観光施設を運営したり、野菜会社ですがパンも焼いてみたり、幅広くやっていく動きが活発になりました。
編集部
多くの事業に進出されるにあたって、サラダコスモさんではどのような方向性を持っていらっしゃいますか。
山下さん
ひとつの軸は、「いいものをお求めやすく」です。お客様に喜ばれる高品質で便利な商品をお求めやすい価格で提供します。そしてもうひとつの軸は、社長が常々言っている「お客様・社会のお役に立つこと」です。この2点を軸に、さまざまな事業に取り組んでいます。
編集部
社会にとって必要なことを行うお考えなのですね。海外への展開も、今後増やしていくイメージでしょうか？
山下さん
海外展開は、アルゼンチンにある種子農場がメインになっています。
編集部
アルゼンチンに特別なご縁があるのでしょうか。
山下さん
ちょっと昔話になるのですが、アルゼンチンには日本人の移民農家さんが多く行かれている歴史があり、サラダコスモの本社がある岐阜県からも多くの農家さんが移住されています。そこで岐阜県が日本で食糧危機が起きたときに国外で食糧を確保するプロジェクトを始めたのですが、県では存続が難しくなり、私たちを含む複数の民間企業で取り組むことになったんです。そこから、アルゼンチンとの繋がりがスタートしました。
2011年の東日本大震災の際には、現地の農協から支援の声が上がって、アルゼンチンで作っている大豆を弊社で輸入して、岐阜県内の豆腐会社さんで加工したものを被災地にお届けするプロジェクトを行いました。現在も、日本人移民農家さんたちが作っているワイン、マカダミアナッツ、大豆などを輸入して、弊社のちこり村や通販サイトで販売しています。
編集部
社会問題の解決がベースにあって、それに伴って事業を拡大するのが、サラダコスモさんのスタイルなんですね。
独自のプロダクツと会社の理念に惹かれて、優秀な人材が集まって来る
編集部
サラダコスモさんが成長するにあたっては、御社の社員さん、アルバイト・パートの活躍も大きなファクターだと思いますが、サラダコスモさんの社員の皆さんの様子、社風を教えてください。
北野さん
私は入社8年目なのですが、上司の皆さんも、自分の後輩社員も、非常に優秀な方が多い印象を持っています。中津川という地方都市の食品メーカーではあるのですが、人材の優秀さは全国規模で見てもひけを取らないと考えています。
編集部
優秀な人材が集まる理由は、どのようなところにあると思いますか。
北野さん
「安全安心、食べて健康」という理念テーマであったり、そのテーマに基づく多角的な経営方針、ユニークな取り組みなど独自の特徴に惹かれている社員が多いと思います。給与面などの条件というより、みんなサラダコスモそのものに魅力を感じています。
社員みんなの根幹に、共通する軸があるので、同じ目標に向かってスタートを切れるという面で社員の挑戦がしやすい環境だと思います。根幹にあるものが同じだから、団結力も出るんです。チャレンジを歓迎する風土もあり、みんなが一緒に走っていける組織力があると感じています。
編集部
実際に北野さんが働いている中で、社内の団結力を感じることもありますか。
北野さん
今、私は人事と営業でフェーズが変わってチャレンジしている最中なのですが、例えば商品開発をするときに、手を挙げた人ががんばるのはもちろん、その周りの各拠点であったり、他の販売支援の方を巻き込んでいく力がすごいと思っています。職場を超えた団結力を、よく肌で感じています。
編集部
サラダコスモさんならではのプロダクト愛、やりがいを持って働かれている方が多い印象なんですね。
北野さん
僕はそう感じています。
山下さん
手を挙げた人が、たとえ若手でもチャレンジさせてもらえる風土があります。私は今年10年目になりますが、若いうちからいろいろな挑戦をさせてもらっており、自分で育てた事業には愛着があるので、自然と熱を持って話せるようになっていきます。
編集部
若手からベテランとして成長するまで、長く在籍される社員の方が多いですか。
山下さん
8年前から採用数を増やしていまして、10年前と比べると100名ぐらい社員が増えているので、そういう意味では社歴が浅い方も多い環境です。
編集部
カット野菜に参入するタイミングぐらいから、社員数も増えているんですね。新しく入って来た方も、理念への共有があるのでしょうか。
山下さん
そうですね。会社のプロダクトや、社長の発信する考え方に共感して入ってきてくれるメンバーが多いと思います。
サラダコスモのSDGs、安全で安心なものを届けることは使命
▲株式会社サラダコスモの教育型観光生産施設「ちこり村」で働くパート社員
編集部
サラダコスモさんでは、SDGsに関係する特別な取り組みはありますか。
山下さん
食品会社なので、安全で安心なものをお届けすることが使命なんですよね。利益を出すのは会社として当たり前なので、その利益を出す上で、結果的にSDGsにも関係するというか、社会に貢献できる事業に繋がっているところはありますね。
編集部
特別な取り組みとしてではなく、「結果的」にSDGsにつながるという点が、サラダコスモさんの文化なんですね。
山下さん
そうですね。サラダコスモのホームページではSDGsの取り組みとして、「安全安心な野菜作り」と掲げていますが、それも生産の現場としては当たり前のこと、という感じがします。
編集部
生産者の皆さんも、当たり前のこととして安全安心な野菜作りに取り組んでいるんですね。
山下さん
安全安心がクリアできてないと出荷できないので、当たり前にしたいという思いはあります。
北野さん
クリアし続けることは簡単ではないのですが、食品会社の使命としてやり続けています。
編集部
安全安心は、皆さんが共有する、根幹にある理念なんですね。
山下さん
2013年から、国際的な食品安全マネジメント認証FSC22000を取得したので、外部の目が定期的に入るようになりました。改めて引き締めなければいけない点、管理しなければいけない点が見えてきたので、安全安心を究めていく上で刺激になっていると思います。
編集部
第三者の認証を得ることで、さらに精度の高い安全性を目指しているのですね。
サラダコスモでは地産地消を進めて、いろいろな地域の活性化に貢献している
編集部
サラダコスモさんは岐阜県に本社がありますが、農業や他の事業を通して国内外の地域活性化に携わっている事例はありますか。
山下さん
例えば、養老生産センターという岐阜県の養老町に作った工場では、産地パワーアップ計画を実践しています。サラダコスモのカット野菜で使うキャベツは、弊社で生産しているのではなく、いろいろな地域のJAさんや商社を通して仕入れているのですが、できるだけ現地のものを優先的に使って、地産地消にするようにしています。
また製造の工程で出る野菜クズもゴミとして捨てずに家畜の餌に回すなどの貢献もしています。私たちが運営しているレストランでも、地域に貢献したいという思いで、地産地消を推進しています。
編集部
そうした地域貢献のアイディアも、社員の方々が発信する形ですか。
山下さん
社員もいろいろ情報収集している中で、コストカットなどを進めながら、社会に還元できることを模索して進めている形ですね。
編集部
日頃から、SDGsに対するアンテナを張って、「こういうことができたらいいな」と思いながら働かれているのでしょうか。
山下さん
そもそも、サラダコスモの代表作ともいえる「無漂白もやし」を作ったところから、どのような野菜メーカーになれば世の中のお役に立つのかを基に事業展開しています。サラダコスモがこの地域に来てよかったな、と思ってもらえる工場だったり、会社でありたいという思いのもと、地域との連携も進めています。
編集部
創業当初から、チャレンジや安全安心、地域貢献という理念が脈々と受け継がれて、拡大して、今のサラダコスモさんがあるんですね。
食べることに携わり、会社とともに成長したい方を待っています
▲株式会社サラダコスモの栽培現場
編集部
最後に、この記事を読んでサラダコスモさんに興味を持たれた方に、採用に関するメッセージをいただきたいと思います。
北野さん
サラダコスモは、長い社歴の中でいろいろなチャレンジをしてきた会社です。今、自分がやりたいことは見つかっていないけれど世の中の役に立ちたいと思っている方、働く上で明確な志望動機がない方もいらっしゃると思うのですが、漠然としていても「人間的な成長」の欲求がある方は、ぜひ来ていただければと思っています。
サラダコスモはチャレンジしていく風土があるので、自分から手を挙げることができます。人間的にも大きくなれますし、会社のチャレンジ風土を体験しながら、一緒に会社の成長を支えていくことで、結果的に自分の成長にも繋がります。働く人と会社がWin-Winな関係を築ける環境ですので、弊社と一緒に人間的に成長していただける方でしたら、どなたでも大歓迎です。
山下さん
サラダコスモは農業の会社ですが、入社にあたって農業の知識は必須ではありません。中津川の本社には、全国からいろんなバックグラウンドを持った方が集まっており、未経験からスタートする方も多数います。自分に身近な「食べること」に携わって世の中を支えていくことに興味のある方は、ぜひ一緒に働いてください。社内には食にまつわるいろいろな仕事があるので、やりたいことが実現できるかと思います。
編集部
食と野菜を軸に、社員みんなが共通の理念を持ちながら、柔軟にチャレンジを続けているサラダコスモさんの魅力を感じることができました。本日はありがとうございました。
■取材協力
株式会社サラダコスモ：https://www.saladcosmo.co.jp/
採用ページ：https://www.saladcosmo.co.jp/recruit/