株式会社SAGOJOの成長要因は、新しい働き方にフィットした“旅×シゴト”の提供

企業が取り組むSDGsや、成長要因を紹介するこの企画。今回は全国の自治体・地域事業者と旅や地域貢献に関心の高いユーザーをマッチングし、地域活性化に繋げるプラットフォーム「SAGOJO(サゴジョー)」を運営する株式会社SAGOJOを取材しました。

旅とシゴトのマッチングサイト「SAGOJO」を運営する株式会社SAGOJO

株式会社SAGOJOは、“旅 × シゴト”をコンセプトに、関係人口の創出を図る地方自治体や人手・スキルを求める企業と、旅が好きで地域活性化に関わりたい “旅人” をマッチングさせる人材プラットフォーム「SAGOJO」を運営する企業です。

過疎化や人材不足などの課題を抱えた企業や自治体と、スキルのある旅人をマッチングする「SAGOJO」は、“現地の人と交流しながらリアルな情報を発信できる”、“外側からの目線で地域の魅力を発掘できる”といった、旅人ならではの強みを活かした企画を通し、自治体・企業のあらゆる課題を解決へと導きます。

地方自治体や企業の依頼に合わせて最適な“旅人”を紹介する人材プラットフォーム「SAGOJO」に登録するユーザーは、記事執筆や写真撮影、営業代行、SNSプロモーション、情報提供などのさまざまなスキルを持ち、質の高いアウトプットを提供しています。

会社名 株式会社SAGOJO
住所 東京都品川区西五反田5-1-10 不動前ホワイトレジデンス508
事業内容 「 SAGOJO(サゴジョー)」の企画・運営
設立 2015年12月
公式ページ https://www.sagojo.link/
働き方 リモートワーク

働き方そのものが見直される昨今、旅と仕事を掛け合わせた株式会社SAGOJOの取り組みは多方面から注目されています。

そこで今回は、同社の成長要因や、それを支える働き方、地域貢献に関するSDGsへの取り組みなどについて、代表取締役の新拓也さんにお話を伺いました。

本日お話を伺った方
株式会社SAGOJO代表取締役の新拓也さん

株式会社SAGOJO 代表取締役

新 拓也さん

サービスの登録ユーザー数2万7,000人。急成長中のSAGOJO

株式会社SAGOJOの公式サービスサイト
▲「旅とシゴトのマッチングサイト」SAGOJOのトップページ

編集部

SAGOJOは、“旅人という生き方をつくる”をミッションに掲げ、全国の自治体や地域事業者と、旅や地域貢献に関心の高いユーザーをマッチングさせるプラットフォーム「SAGOJO」を運営されていますが、サービス開始から今日に至るまで、ユーザー数などに変化はありましたか?

新さん

「SAGOJO」に登録している旅人は現在、約2万7,000人に上り、時代の追い風も含め、非常に伸びている実感があります。当社は広告宣伝費を一切かけていないため、口コミで毎月安定した登録数を得ています。なかには“旅”と“仕事”をキーワードに検索をかけ、登録いただいている方もいるようです。

また、募集においても10人の募集をかけると50人程度の応募があるといったことからも、企業成長を感じます。

成長要因は“テレワーク”の拡大。会社員でもワーケーションができる!

編集部

人材プラットフォーム「SAGOJO」は2016年にサービスを開始されたとのことですが、大きく飛躍したタイミングはどこにあったと思われますか?

新さん

コロナ禍の影響は大きいですね。もともと、「SAGOJO」の登録ユーザーは、フリーランスや個人事業主など、働き方を柔軟に選べる方が多かったのですが、コロナ禍でリモートワークを導入する企業が増えたことで、会社勤めの方でも場所に縛られず、空き時間を利用して旅をしながら仕事ができるようになったことが、ユーザー数の増加につながっていると感じています。

コロナ禍を機に、Work(仕事)とVacation(休暇)を組み合わせた“ワーケーション”という言葉が広まったことからも、そのポテンシャルの高さがうかがえます。

また、登録だけではなく、企業や自治体の依頼を受けて活動をするアクティブユーザーも増加しています。

編集部

なるほど。コロナ禍によって働き方そのものが見直され、会社勤めの方でも旅先で仕事ができるようになったことで、SAGOJOの事業に興味を持ち、登録する方が増えたということですね。

地域課題に共に取り組む“関係性”を大切にするユーザーが登録

編集部

旅人として「SAGOJO」に登録するユーザーは、どのような思いで参加されていると思われますか?

新さん

仕事の依頼を受ける際は「リターン」と呼ぶ報酬を得ることができますが、「SAGOJO」のユーザーは報酬以上に、地域との関係性を大切にされているように感じます。

旅と仕事という2つのキーワードのどちらか一方ではなく、2つを掛け合わせた体験を届けることを重視する当社は、ユーザーが旅先で観光客や消費者として関わるのではなく、地域課題に対して一緒に向き合い、取り組むことを目的としています。このような体験を求める方の登録が多いように思われます。

地域が抱える課題に対してパートナーとして取り組むことで仲間意識が生まれ、地域の方と深く関わることができます。その結果、「ありがとう」と言われるような旅となり、自己成長にもつながる旅を体験することができます。

“お手伝い体験”を通して地域住民と仲間になれる旅体験「TENJIKU」

編集部

人材プラットフォーム「SAGOJO」のサービスは、地方自治体と非常に親和性が高いとお見受けします。どのような取り組みに活用されているのでしょう。

新さん

自治体との取り引きは非常に増えており、現在40以上の都道府県でプロジェクトの実績があります。なかでも関係人口を増やすことや観光の文脈においては、認知度が高まっていると感じます。

代表的な事例としては、「TENJIKU(テンジク)」というサービスがあります。地域で旅人がお手伝い体験(=ミッション)に取り組みながら、地域の古民家やゲストハウスなどの宿泊施設に無料で滞在できる関係人口創出サービスです。当社は地域と旅人のオンラインマッチングに加え、実際に地域に場を設けるオフラインでの運営にも関わっており、「TENJIKU」の拠点は現在全国に15ヶ所あります。(2024年1月時点)

編集部

「SAGOJO」「TENJIKU」と、最遊記の世界観を彷彿させる御社のサービスはまさに孫悟空のように、各地を旅しながらそこでしか得られない体験を提供しているのですね。

旅人のスキルが地域活性化につながった「TENJIKU吉野」

編集部

実際に「TENJIKU」がある地域の取り組みなどをお聞かせください。

新さん

奈良県吉野町には「TENJIKU吉野」があり、オンラインで募集をかけ続けたり、マッチングをし続けたりしなくても、旅人がやってくる場を設けることで町に人の流動性を生み出しています。

吉野町にスキルやお手伝いの意欲を持った旅人が訪れ、彼らのアイデアが町の中で実現するうちに、移住者も増えるなど「TENJIKU」をきっかけに良い循環が生まれています。

編集部

「TENJIKU」のお手伝い体験ではどのようなミッションを担っているのでしょう。

新さん

吉野町の場合は、お寺の掃除を住職さんと一緒にやったり、農家さんの農作業を手伝ったり、ゲートボール大会のスコア付けをはじめとしたイベントのお手伝いなどがあります。時間は1〜3時間程度で、地域の方と触れ合いながらお手伝いをするというスタンスで関わっています。

編集部

お手伝いをすることで地域により深く関わることができるので、地域の魅力発掘にもつながりますね。

経験というお金以上の価値を得られるのがSAGOJOの強み

株式会社SAGOJOの新さんとメンバー

編集部

「SAGOJO」や「TENJIKU」など独自性のあるサービスを展開されているSAGOJOですが、御社の強みについてお聞かせください。

新さん

地方の副業マッチングは増加傾向にあるなか、当社の強みは、旅を軸にサービスを展開していることです。

副業という仕事だけではなく、旅に仕事を掛け合わせることでモチベーションが上がります。仕事なのでいくら稼げるかといったことは大切ですが、お金では得られない体験を提供しているのが、「SAGOJO」が多くのユーザーに利用されている理由と感じています。

例えば、地域の課題解決に貢献した場合の報酬は必ずしもお金だけではなく、お手伝い体験では地域の野菜などをいただくこともあります。また、「TENJIKU」のように宿泊施設に無料で泊まれることに価値を感じるユーザーもいます。

海外の取材依頼も!グローバルに活躍するSAGOJOの旅人

編集部

地域課題の解決以外では、どのようなニーズがあるのでしょう。

新さん

地方だけではなく、都市圏の企業から「旅人目線でこの地域の取材をしてほしい」といったニーズもあります。国内はもちろん、海外取材の依頼も仕事として発生しており、旅人が各地で活躍しています。

また、国内外に関わらず、SAGOJOをきっかけに仕事をした人が、別件でスカウトされ、他の地域に旅をしながら仕事を請け負うといった事例もあります。

編集部

海外旅行客が増加傾向にある昨今、今後はグローバルに活躍する旅人も増えそうですね。

旅人のスキルを上げ、地域経済の循環システムをつくることが目標

編集部

SAGOJOの今後の展望についてお聞かせください。

新さん

旅人と地域の経済をもっと盛り上げることに寄与する事業展開に取り組んでいます。新たなサービスとして始めたのが、世界中の地域課題を解決するプロフェッショナルな旅人をめざす「SAGOJOスクール」です。次世代の旅人に求められるスキルやマインドを伝え、新しい仕事や生き方をつくりだすことを目的としており、ユーザーのスキルアップに貢献します。

自治体や企業のプロジェクトに応募をしても、取材スキルや動画、写真の撮影技術がないため、採用されないというユーザーが一定数います。そこに対し、マスターと呼ぶクリエイターが講師となって必要なスキルを指導するのが「SAGOJOスクール」です。SAGOJOの関わりとして、ユーザーに対して提供価値を高めていくと共に、人材を育てることを目指しています。

編集部

「SAGOJOスクール」のシステムや、内容について詳しく教えていただけますか?

新さん

「SAGOJOスクール」は、学べる体験コンテンツを旅人へ有料(一部無料)で提供しており、地域にも利益を提供しています。体験コンテンツはオンラインもありますが、基本的には地域を訪れて学べる体験を提供しています。

例えば、石川県を訪れて取材のスキルを身につけたり、長野県を旅しながら滞在中にドローンを飛ばすスキルを身につけたりなどの体験講座があります。

「SAGOJOスクール」でスキルを身につけた旅人は、仕事のマッチングでも採用されやすくなります。また、仕事で得たお金を使って次の旅の費用にあてたり、地域の中で体験に使ったりすることも可能です。このように、「SAGOJOスクール」は経済の循環をつくることを目指しています。

編集部

ユーザーは旅を楽しみながらスキルを学ぶことで、自身の仕事に活かすこともでき、さらには旅を通して地域経済に貢献できるというわけですね。

メンバーは全国からリモートワークでジョイン

株式会社SAGOJOのメンバーのリモートワーク風景

編集部

続いて、SAGOJOの働き方やカルチャーについて伺います。はじめに、社員数と働き方についてお聞かせください。

新さん

社員と業務委託を含め、20名が在籍しています。働き方としては北海道や山梨、福岡など全国からメンバーがジョインしているので、基本はリモートワークとなっており、東京や関東在住者は週1、2ぐらいの頻度で出社勤務をしています。

1人ひとりが自立したプロ意識を持っており、オンライン中心でも積極的にコミュニケーションを図り、自らの力を生かして成果を出すことにコミットしようする意識を大切にしています。

編集部

SAGOJOのスタッフの仕事はどのようなものがあるのでしょう。

新さん

1つは開発です。プロダクトを手掛けるプロジェクトマネージャーやエンジニア、デザイナーがいます。その他では自治体や企業のクライアントサイドへの企画提案や、受注をするメンバーがいます。

ユーザーサイドでは、ディレクターとしてクライアントに代わってプロジェクトを運営し成功に導くメンバー、管理業務を担うコーポレートサイド、PRを担うメンバーがジョインしています。

編集部

SAGOJOのスタッフは、それぞれがプロ意識を持って仕事に向き合っているのですね。

持続可能なまちづくりに寄与するSAGOJOのSDGsへの取り組み

株式会社SAGOJOのメンバーが大阪の街中でPCを開いている風景

編集部

過疎化や人口流出などの課題に対し、旅人がソリューションになるSAGOJOの事業は、SDGsにも関連していると思われます。御社の取り組みについてお聞かせください。

新さん

SDGsというと大袈裟かもしれませんが、当社のサービスは持続的なまちづくりに貢献する事業と考えています。日本の人口がどんどん減少する昨今、その状況を踏まえたうえで「持続可能な地域づくりとは何だろう」ということを、各地域の方々と考えながら、その土地ならではのかたちにすることに取り組んでいます。

当社の切り口は、人の流動性をつくることです。ただ人が来るだけではなく、訪れた人が活躍する場を作ることで経済活動や関係人口の創出に寄与し、地域が生き残る術を生み出したいと思っています。

編集部

SAGOJOのスタッフも、持続的なまちづくりに関心がある方が多いのでしょうか。

新さん

地域活性化と旅する人を増やしたいという2軸の使命をもつスタッフが多いように思われます。どちらの方が色濃いかはそれぞれですが、まちづくりに対する意欲が高い者が活躍しています。

「SAGOJO」のサービス開始当初は、旅する人を増やしたい思いがコアとしてありましたが、展開をするうちに地域に対して高い価値を提供できるポテンシャルがあると気づきました。

私自身、過去にNGOの手伝いをしていたこともあり、持続可能な世の中を作っていくため、旅を切り口に社会貢献ができることをコンセプトに、より良いサービスの構築に取り組んでいます。

旅人が開発支援をした福島県富岡町のスパークリング日本酒「萌 - KIZASHI - 」

編集部

各自治体が移住定住対策に取り組んでいますが、持続的なまちづくりに取り組むSAGOJOに対し、自治体や地域住民の方などからの反響はありますか?

新さん

例えば、福島県の富岡町という、東日本大震災の被災地にて、「SAGOJO」のユーザーがアンバサダーとして活躍した事例があります。全区域が避難地域となった富岡町は、避難解除になってもなかなか住民は帰還せず、町として危機に直面していました。

関係人口を創出するため、町と一緒に取り組んだのが酒蔵さんと一緒に新しい日本酒を一緒に作ろうというプロジェクトです。「とみおかアンバサダー」として就任した旅人が、新商品のコンセプトや企画を立案し、マーケティングストーリー、ラベルデザイン、Webページ作成の他、プロジェクトの様子をブログ等で発信する取り組みを担いました。

完成したスパークリング日本酒は「萌 - KIZASHI - 」という銘柄で商品化され、初回ロットは完売。現在も人気商品として販売されています。

編集部

「萌 - KIZASHI - 」の成功の要因に、旅人との関わりはどのように影響したと思われますか?

新さん

そもそもの商品のアイディアが良かったこともありますが、それ以上に開発から販売まで、当事者意識を持って関わる旅人を生み出せたことが成功の要因と思われます。

旅人が富岡町を訪れた時は、地域のことを教えてもらう側ですが、地域の方々と「萌 - KIZASHI - 」の開発に携わることで、自分が暮らす町では自分が富岡町について語る側になることができます。このような体験からコミットがどんどん高まっていった、良いプロジェクトだったと感じています。

開発に関わった旅人は今でも町を訪れたり、地域の方々と交流を深めたりしています。このような事例をもっと増やしていきたいと思っています。

編集部

とても素敵なお話ですね。富岡町での取り組みが事例として広がることで、地域活性化のヒントになることを期待します。

強みを生かして取り組める、自立したプロフェッショナルを歓迎

編集部

地域貢献に寄与するSAGOJOの取り組みや、旅と仕事を掛け合わせたユニークな発想に興味を持った読者は多いと思われます。最後に、転職を検討する方に向け、採用におけるメッセージをお願いします。

新さん

「旅人という生き方をつくる」という当社のミッションに共感いただける方を歓迎します。
自立したプロフェッショナルを重視する当社は、自分自身の強みを生かして活躍できる方を求めています。具体的には、自分のモチベーションの源泉を理解しつつ、それを得られる環境を自分のまわりに構築したり、成果にコミットできるような方です。

自己理解を深めることが好きなメンバーが多く、そうした仲間とコミュニケーションを図りながら業務に取り組める方と共に、成長できたら幸いです。

編集部

自らのスキルを活かし、仕事をしながら旅をすることは、旅人の経験値だけではなく、滞在先の地域活性や関係人口の創出に貢献できることを改めて実感しました。また、自立したプロフェッショナルがジョインするSAGOJOの環境は、働く方の自己成長にもつながると思います。

本日はありがとうございました。

■取材協力
株式会社SAGOJO:https://www.sagojo.link/