「all as one」をカタチにする株式会社リジョブ。業界貢献を追求したビジネスモデルと想いを実現するプロジェクト

事業の成長と社会貢献を両立すること、また独自のSDGsに関する取り組みなどで注目される企業を紹介する本企画。今回は「人と人との結び目を世界中で増やし、心の豊かさあふれる社会を創る。」をソーシャルビジョンに掲げる株式会社リジョブにインタビューしました。

業界課題を解決するソーシャルビジネスとともに、ソーシャルプロジェクトとして展開している「咲くらプロジェクト」や「つぼみプロジェクト」「真鶴サテライトオフィス」について、また「LOVE&POWERの両立」をテーマにした採用や人材育成方針を中心にお聞きしています。

株式会社リジョブとは

2009年11月に設立された株式会社リジョブは、当初、美容・リラクゼーション業界に特化した求人サイト「リジョブ」を展開する企業としてスタートしました。業界で初めて「成果報酬ウェイト型」のビジネスモデルを導入したことで、設立から約5年で業界トップクラスのシェアを獲得する求人サービスに成長しています。

また、2014年には株式会社じげんの連結子会社となり、現代表である鈴木さんが代表に就任しました。この代表就任をきっかけに、リジョブが目指す経営の在り方を「事業を通してより多くの人に貢献でき、社会性のある会社にする」という方向性におき、従来のビジョンの見直しをはかり、ソーシャルビジョンを策定しました。

その後、創業10周年を機に改めて刷新したビジョン「人と人との結び目を世界中で増やし、心の豊かさあふれる社会を創る。」を掲げ、CSV推進プロジェクトをスタート。現在はSDGsの一環として、事業活動とソーシャルコミュニティづくりを通じた社会全体の課題解決に取り組んでいます。

会社名 株式会社リジョブ
住所 東京都豊島区東池袋3-1-1 サンシャイン60 47F
事業内容 ・求人メディア事業
『リジョブ』『リジョブケア』
・キャリアデザイン事業
『moreリジョブ BEAUTY』『moreリジョブ HEALTH&CARE』
・CSV推進プロジェクト
『咲くらプロジェクト』 
など
設立 2009年11月
公式ページ https://rejob.co.jp/

今回は、リジョブがSDGsへの取り組みとして展開しているCSV推進プロジェクトの概要や進捗状況、今後の展望などをメインにお聞きしました。さらには、若手の登用や人材の育成方針、また採用のポイントなどについて、取締役の長南さんと広報の藤森さんにお話しいただきました。

本日お話を伺った方
株式会社リジョブの取締役である長南岳彦さん

株式会社リジョブ
取締役

長南 岳彦さん

株式会社リジョブの広報担当である藤森由莉沙さん

株式会社リジョブ
広報担当

藤森 由莉沙さん

「経済性と人とのつながり」を包括した価値を提供

株式会社リジョブが運営する美容・リラクゼーション業界向け求人サービス「リジョブ」のトップページの画面
▲リジョブが運営する美容・リラクゼーション業界向け求人サービス「リジョブ」のトップページ。

編集部

本日はよろしくお願いいたします。最初に、リジョブさんの事業内容と将来的な目標についてお話しいただけますか?

藤森さん

当社はビジョンとして「人と人との結び目を世界中で増やし、心の豊かさあふれる社会を創る。」を掲げています。そしてこのビジョンを念頭にして、「ビジネスの力で社会の課題を解決し、社会を豊かにすること」を目指しています。

そのための取り組みの方向性としては、「ソーシャルビジネス領域」と「ソーシャルコミュニティ領域」の二つがあります。まずソーシャルビジネス領域ですが、こちらの主力事業は、美容・リラクゼーション領域の求人メディア「リジョブ」、そして介護・看護・リハビリ領域の求人メディア「リジョブケア」などです。

株式会社リジョブが展開している介護業界向け求人サイト「リジョブケア」の画面
▲リジョブが運営する介護・看護・リハビリ業界向け求人サービス「リジョブケア」のトップページ。

長南さん

もともと当社は2008年に、リラクゼーション業界向けの求人メディアを運営する会社としてスタートしました。その当時のリラクゼーション業界には、人材採用のコストが高騰し続けているという採用における課題があったんです。また、離職率が高く、採用をしても人が定着しないという課題も業界全体にありました。

その後、同様の業界課題を抱える美容業界のクライアント様に向けて事業を展開していきました。具体的には、3年以内の離職率が8割にも及ぶという業界であるうえに、多くの美容事業者が広告費の掛け捨てリスクの高い「掲載課金型」の求人広告を出しており、店舗経営をするオーナー様にとって採用にかかるコストは、経営上の大きな負担になっていました。

そこで弊当社は採用単価を1/3に下げることを目標に、労働集約型とされる美容業界全体を豊かにする構想を持ち、業界初の「成果報酬ウェイト型」のビジネスモデルを導入しました。簡単に説明をすると、月額で固定費としてかかる広告費を極力下げて、採用時の成果報酬を職種や経験に応じていただくというモデルです。

この取り組みが業界で採用に関わるオーナー様やスタッフ様に受け入れられて、設立から約5年で業界トップクラスのシェアを誇る求人サービスに成長することができたんです。

その後は、美容業界をより良くするために、「雇用支援」のほか美容専門学生に奨学金を支給する「育成支援」、業界応援Webマガジンの運営による「活躍支援」を行い、「育成→雇用→活躍」の各ステージを一気通貫で支援する「美容業界のSPA構想」を構築しています。

また、グループ会社の株式会社リザービアによる、サロンの自社集客システム事業を展開し、「活躍支援」をさらに加速させ、業界全体のご支援をしています。

編集部

もう一つのソーシャルコミュニティ領域では、どんな取り組みをされているのですか。こちらはSDGsにもゴールとして設定されている「社会課題へのアプローチ」というイメージが、非常に強いようにも感じます。

藤森さん

まず、当社では持続可能性と豊かさの広がりのためのソーシャルビジネス領域の深耕とともに、人とのつながりに価値を置き、ご縁のある社会課題に向き合うソーシャルコミュニティ領域の取り組みを推進しています。具体的なコミュニティの取り組みとしては、「咲くらプロジェクト」や「つぼみプロジェクト」、そして「真鶴サテライトオフィスの運営」があります。

はじめの「咲くらプロジェクト」ですが、これはSDGsのゴールの1つ目『貧困をなくそう』や、8つ目『働きがいも経済成長も』という課題に本質的にアプローチをすることを目指したプロジェクトになります。

途上国での雇用を創出して、現地の方々の経済的な自立を支援するもので、2015年にスタートしました。現在はフィリピンで、現地パートナーであるNPO法人アクションのご協力のもと、3カ月間受講料無料のセラピスト養成講座を運営しています。

また「つぼみプロジェクト」は、「事業以外の側面からも社会に価値提供をしたい」という想いで2019年にスタートしました。埼玉県の遊休農地から3反の田んぼを借り、地域のコミュニティづくりを目的に、社員や地域の皆さまをご招待しての田植えや稲刈り体験イベントなどを開催しています。

当プロジェクトで収穫したお米は、サテライトオフィスがある真鶴町のひとり親家庭や地域の子ども食堂など、当社とご縁のある地域の方々に寄付(2万食分/2021年)したりしています。

そして「真鶴サテライトオフィス」は、東京一極集中型の仕事を“仕事不足による労働人口流出が課題”の地方に分配し、地域の雇用を生み出すことを目的として、2020年に神奈川県真鶴町に設立しました。

過疎地域の働き方の幅を拡げる持続可能な仕組みづくりを実現し、リジョブの拠点がある東京や大阪などの都市部で行っている業務を切り出し、真鶴町に住む方々に就業いただいています。

社会課題と事業・コミュニティの関係性を可視化した「ビジョンマップ」

株式会社リジョブのビジョンマップ
▲リジョブさんの「ビジョンマップ」。

編集部

公式ページに掲載されている「ビジョンマップ」は、今ご説明いただいた事業やコミュニティと、その取り組みが解決を目指している社会課題との関係性を、見える化したものという理解でよろしいでしょうか。

藤森さん

おっしゃった通りです。

編集部

最下段に書かれている「美容業界のSPA構想」ですが、このSPAはいわゆる製造小売業のことを指し、「企画から製造、製造から小売」という流れを一貫して行うビジネスモデルなんですね。この仕組みをそのまま美容業界に落とし込もうという構想なのですか。

藤森さん

はい。「企画・製造・小売」というアパレル業界のSPAのモデルを美容業界向けにアレンジして、「育成支援・雇用支援・活躍支援」という流れに置き換えています。この構想を実現することで、技術やサービスを通してお客様に心の豊かさを届ける美容・ヘルスケア業界の課題を解決していきます。

そして、業界従事者のみなさまが長く活躍し続けられるよう、私たちがそれぞれのステージに応じたサービスを提供することで、業界をより良く、持続可能にしていきたいと考えています。

編集部

ビジョンマップには他にも「途上国の貧困問題解決」や「地域活性化」、そして「ケア業界の支援」といった課題が記されています。そこにリジョブさんの事業や取り組みがどう絡むのかということが、わかりやすくマッピングされていると感じました。

藤森さん

ありがとうございます。ビジョンマップが最終的にこの形に落ち着くまでには、かなりの試行錯誤があったので、そのようにおっしゃっていただき嬉しいです。事業とプロジェクトの関連性や、取り組みが本当にビジョンの実現に繋がっているのかということをすべて、マップとして見える化する必要があったからです。

そのために、長南を含むビジョンマップ策定の企画メンバーは、現場の最前線で事業創りをしているメンバーに何度も出向いてヒアリングを重ね、マップをブラッシュアップしていきました。

ソーシャルコミュニティへ取り組んだきっかけとは?

編集部

リジョブさんでソーシャルコミュニティ領域への取り組みがスタートしたきっかけは、どんなことだったのでしょう。

藤森さん

現代表の鈴木(代表取締役社長の鈴木一平さん)が新しいビジョンを創り、リジョブが経営において大切にする軸を確立させたことがきっかけといえますね。鈴木は就任早々、今後のリジョブはどういう方向に進むべきかを考えるために、当時の全社員約70名と個別面談を行い、価値観や想いに対する理解を深めていきました。

面談以外にも、様々なメンバーと食事に行くなどして、代表でありながらあくまでも一緒に会社を創る1人として対話を重ねて、新しいCI(コーポレートアイデンティティ)をつくり、事業の方向性を決めていきました。

そういったメンバーとのコミュニケーションの中で、「自分はこうなりたい」ではなく「会社をこうしたい」という風に『会社を主語に語るメンバーが多いこと』、また自分主体ではなく「社会や業界をこうしたい」といった『利他の心を持ったメンバーが多いこと』に驚いたと聞いています。

また、鈴木自身20歳の頃に創業した会社を利益優先で発展させた結果、経営が行き詰った苦い経験があったことも起因して、メンバーとのコミュニケーションの末に導き出された答えが「世の中には業界課題や社会課題があふれており、そういった課題に向き合い解決することで、事業も会社も成長する。だからこそ、より多くの人に貢献できるよう、事業性と社会性を両立していく」ということだったと聞いております。

同時期に美容業界だけではなく介護業界の人材不足の課題を解決しようと、新規事業として介護業界特化の求人メディア事業を立ち上げました。および、当社とご縁があったフィリピンへの現地視察を経て、現地の方々の経済的自立を根本的に支援したいと、2015年に新たな部署として「CSV推進室」(※)が立ち上がりました。
(※)CSV:Creating Shared Value=共通価値の創造

編集部

CSVへの取り組み開始が2015年ですか。日本の企業としてはかなり早かったのではないですか。

藤森さん

そう思います。ましてリジョブのような規模感のベンチャー企業となると、CSVの概念はまだほとんど浸透していなかったと思います。

途上国の貧困問題を解決する「咲くらプロジェクト」

株式会社リジョブの「咲くらプロジェクト」でセラピスト養成講座を受講した現地の方々
▲リジョブさんが実施する「咲くらプロジェクト」の受講メンバー。

編集部

では次に、個別のプロジェクトについて詳しくお聞きします。まず「咲くらプロジェクト」の概要についてご説明ください。

藤森さん

「咲くらプロジェクト」は2015年にスタートしました。当社と関わりの深い、日本の美容業界が持つ優れた技術力やサービス力を発展途上国に提供することで、現地における雇用の創造と貧困問題の根本解決を目指しています。

現状ではフィリピンのオロンガポ市に、セラピストの技術を3カ月間無料で学べる養成講座を開設しています。2017年からはフィリピンの国家機関であるTESDA(職業訓練庁)と連携しており、卒業生は正式な政府認定を受けることができます。すでに666名の卒業生を輩出しており、わかっているだけで155名がセラピストとして活躍しています。(数字は2023年6月時点)

編集部

すでにかなりの実績を上げているんですね。

藤森さん

ありがたいことに、多くの卒業生を輩出することができました。ただし、課題も見えてきました。それは「セラピストとして活躍している卒業生以外の人たちの生活が改善したのかが不明瞭である」ということです。

そこで「咲くらプロジェクト」の現地パートナーであるNPO法人アクションの横田宗(よこたはじめ)代表が、現地での就業支援を目的に、マニラ市内にスパを開業したんです。2023年6月にオープンしたこの施設は、養成講座の卒業生だけを雇用します。初年度は8名の卒業生を採用しました。

株式会社リジョブの「咲くらプロジェクト」卒業生
▲リジョブさんの「咲くらプロジェクト」卒業生。

編集部

途上国の貧困や雇用に関する社会問題の解決に向けて、また一歩前進したのですね。

藤森さん

そうですね。就業支援が第一の目的であることは確かですが、同時に日本式の技術やサービスにこだわったトップクラスのスパとして、現地の皆さまに末永くご愛顧いただけるように運営していく計画だと聞いています。

また、支援の一環としてリジョブのグループ会社である株式会社リザービアが、「集客できるお店づくりを支える」をコンセプトに開発した美容・ヘルスケアサロン向けの予約システムを現地に導入しました。これによりゆくゆくスパの安定的な集客が実現でき、働くセラピスト達の経済的な自立を積極的にサポートできると考えています。

編集部

「咲くらプロジェクト」はまさしく、御社が掲げる「ビジネスやコミュニティの力で社会の課題を解決し、社会を豊かにすること」を体現するプロジェクトですね。

藤森さん

そう思います。今回のスパのオープンで、リジョブグループとして「育成から就業まで」という一つのサイクルを、形にすることができました。このモデルを今後さらに発展させることで、途上国の貧困問題解決という大きな課題に、着実に向き合っていきたいと考えています。

遊休農地問題をお米を通したコミュニティの力で解決する「つぼみプロジェクト」

株式会社リジョブの「つぼみプロジェクト」で2023年に実施された田植えの風景

編集部

リジョブさんのソーシャルコミュニティ領域の取り組みである「つぼみプロジェクト」には、藤森さんも深く関わったと伺いました。

藤森さん

プロジェクトのはじまりは「田んぼが余っているのだけれど、何か有効活用できないか」という長南の知人からの話がきっかけでした。

実際にプロジェクトとして進めることになった時に、長南から「藤森の実家は農家だったよね。やってみない?」と聞かれたことで、祖父母が農家をやっていたこともあり、「面白そうですね!ぜひやってみたいです!」と当時入社2年目の私が推進者の1人として手を挙げ、関わらせていただいています。

長南さん

「つぼみプロジェクト」の田植え・稲刈りの活動は、社会課題の解決だと捉えています。友人からは当初、「米を作っても作った分だけ赤字になる。かといって農地以外への転用もできない。結局この土地は放置しておく以外にない」という相談を受けたのです。

そういった困っている状況があるのなら、リジョブで何か解決できないだろうかと考えたのです。そして、その土地をうまく活用する手法について、我々のプロジェクトとして取り組んでみようということで2019年に始めました。

収穫したお米の使用用途についても、藤森をはじめとする推進メンバーに任せています。そして、都内10箇所以上のこども食堂やリジョブがサテライトオフィスを構える真鶴町のひとり親家庭への寄付、社内イベントでのお米の活用など、お米を通した”心豊かな社会づくり”を目指し、プロジェクトを推進してきました。

編集部

当時入社2年目の若手に、こうしたプロジェクトの推進役を信頼して任せるところが、リジョブさんの社風なのですね。

新たな事業の開発を議論し、形にしていく「事業創造合宿」

株式会社リジョブの「事業創造合宿」のワンシーン

編集部

次に「真鶴サテライトオフィス」について伺いたいのですが、この発端となったのはリジョブさんの経営幹部候補の方が参加されている「事業創造合宿」だとお聞きしました。これは、どういった内容の合宿なのでしょうか。

藤森さん

この合宿に参加する経営幹部候補メンバーは、年に1回社内公募をし、決定しています。新卒社員のほか、中途入社メンバーから経営幹部候補になった方もいます。

幹部候補メンバーには、全社視点をもって当事者として会社を創る側になりたいという意思と、その責任を担う覚悟を持っていることが求められ、経営陣との面談を経て正式にメンバーが決定します。

長南さん

合宿の内容としては、社会課題をリジョブのリソースを生かして解決するという観点を大切に、「事業」の開発に重きを置いています。基本的には毎回「次の新しい事業をどう開発し、どうインカムを得ていくか」ということがテーマになり、経営陣やマネージャーを含めた参加者全員でミーティングやプレゼンテーションを行っています。

編集部

過去にはどんなテーマがあったのですか。

長南さん

例えば今運営している求人メディア「リジョブ」の次なる展開の戦略構築ですね。また組織に関することをテーマとした回もありました。今いる20代の若手メンバーもいずれ30代になり、いろいろと人生のフェーズが変わっていく中で、組織としてどうアップデートしていくかを、メンバーの内省を含め真剣に議論しました。

あとは過疎地域対策です。地方創生という観点で、我われとして何か役立てることはないかと。ただしボランティアではなく、あくまでも事業活動としてきちんと回していくことが前提です。それができなければ、地方創生を継続的に行うことが不可能だからです。そんな形で毎年テーマをいくつか決めて、みんなで議論して実行に移すという感じです。

事業創造合宿から生まれた地方創生プロジェクト「真鶴サテライトオフィス」

株式会社リジョブの真鶴サテライトオフィスの外観
▲古民家を活用した真鶴サテライトオフィス。(公式サイトより引用)

編集部

そして、事業創造合宿の議論の場から生まれたプロジェクトのひとつが、地方創生を目的とした「真鶴サテライトオフィス」なのですね。

長南さん

そうです。サテライトオフィスの設立は2020年2月でした。当時は、全国の自治体が企業誘致にかなり積極的でした。リジョブにも、いろいろな好条件で「サテライトオフィスを出しませんか」というお誘いを、たくさんいただいていました。

ただし当社としては最初から、「好条件だから」という理由だけで進出するつもりは、まったくありませんでした。本来の目的である社会課題の解決や、その町への持続的な貢献が実現できなければ、意味がないからです。

そんな中、「リジョブさんを誘致するからには、“真鶴町の活性化”という共通目標を持ち、パートナーとして伴走します」といってくださり、熱量を示してくださったのが神奈川県の真鶴町でした。

真鶴町のご担当者は当初から「金銭的な補助はしない。人と気持ちで支援します」という姿勢で一貫していました。それが当社の社風と合致したんですね。すぐに打ち解け合い、今でもパートナーとして良い関係を築けています。

編集部

「真鶴サテライトオフィス」の現在の状況はいかがですか。

長南さん

当初は真鶴町在住の4人の方の雇用でスタートし、それが2023年8月時点では7人にまで拡大しました。地域の方々には「町の中での存在感が増しているよ」「町に働く場所をつくってくれてありがとう」といった声をよくいただきます。私自身、定期的に現地へ赴きますが、感謝の気持ちを伝えられることが多く、取り組んでよかったと思っています。

子ども達の職業選択の幅を広げる「真鶴こども未来カレッジ」

株式会社リジョブが開催した「真鶴こども未来カレッジ」のようす
▲「真鶴こども未来カレッジ」の開催風景。

編集部

2023年1月に第1回を開催した「真鶴こども未来カレッジ」は、どんな内容なのでしょうか。

長南さん

これは町内の小中学生とその親御さんを対象に、美容師のお仕事をテーマとした体験交流イベントです。将来の職業選択の幅を広げることが、一番の目的です。サテライトオフィスのご縁を通した町内の美容師さんや、美容専門学校の現役学生などが講師を務めました。

編集部

子ども達にとっては貴重な職業体験の場になったのでしょうね。

長南さん

はい。そもそも開催のきっかけが、「真鶴サテライトオフィス」に関わっていただいている主婦のスタッフからの言葉でした。それは「真鶴町に住んでいる子ども達が将来の職業を選択するために、事前に体験したり学んだりできる場が少ない、もっと選択肢を広げたい」ということでした。

もちろん、解決策としては「町を離れる」という選択肢もあります。でもその方は「真鶴町の中でこれを解決したい」と。「それでしたら我々も協力しましょう」という話になり、町民の方々へのヒアリング会を経て、実際のプロジェクトとして走り出しました。

編集部

こども未来カレッジは、第2回の開催もすでに決まっているのですか。

長南さん

現状は、第2回目の開催の、構想をしている段階です。これは先の話ですが、「こども未来カレッジ」に関しては私たちのような民間主導の事業ではなく、町主導の展開が望ましいだろうと考えています。

はじめは、学習塾のような形式で、当社がインカムを得るモデルも考えました。しかしこれはあくまで当社の希望ですが、私たちが事業として推進するよりも、町が主導する魅力的なイベントとして位置づけることができれば、より大きな発展性があると考えています。

「みんなで一緒に決める」プロセスを重視

編集部

今まで伺ってきた各種プロジェクトの推進者は、どうやって決まるのでしょうか。

藤森さん

プロジェクトの規模や内容によって異なります。例えば「咲くらプロジェクト」は、一人で担当できるような規模のプロジェクトではありません。社内には委員会制度というものがあり、「咲くらプロジェクト」を運営するための委員会が、実際の運営を行っています。

編集部

「真鶴サテライトオフィス」はどうでしょうか。

藤森さん

サテライトオフィスプロジェクトの推進者は立候補で決まりました。基本的には前述した事業創造合宿で、推進者を決めています。このプロジェクトに強い思い入れを持ったメンバーが立候補をして、その気持ちを重要視し、参加者が了承するという流れでした。

長南さん

リジョブでは「みんなで一緒に決める」というプロセスを非常に大切にしているんです。例えば「こういうことをやりたい」といってボールを投げると、「それなら、こういうことが必要だ」というボールが即座に返ってくる。

あるいはボトムアップ的に上がってきた意見について、みんなから「こうすればいい」というような意見が寄せられる。そこには上下関係はまったくありません。いろんな議論が迅速かつ自然に交わされています。

編集部

そういう風通しのよさが、リジョブさんのカルチャーであり強みなのですね。事業性と社会性を両軸で大切にし続けるために、企業文化として何を大切にされていますか?

長南さん

当社では、創業当初からメンバーが「当事者意識」を圧倒的に持っており、この当事者意識はリジョブの土台を支える企業文化として根付いています。

利他の心があり「仲間のために」「部署のために」など、自分という枠を拡げて思考し行動を起こせるメンバーが多く、この枠の範囲を社内だけでなく、業界・社会にまで広げていくことができたら、社員とともに関わる方々の未来の選択肢が拡がり、結果として成長し続ける組織になっていけるのではないでしょうか。

それは、すべてはひとつにつながっているという「all as one」の精神ともいえます。

メンバーの共通資質は「LOVE&POWERの種」を持つこと

株式会社リジョブのメンバーが笑顔で話し合うようす

編集部

リジョブさんで活躍しているメンバーの皆さんには、共通する資質などはありますか。

藤森さん

それはもう、当社の採用キーワードである「LOVE&POWER」という、この言葉に尽きると思います。

私は、LOVEとは「誰かの役に立ちたい」ということだと考えています。例えば学生時代に地方創生を課題と感じていたメンバーは、「LOVEの種を持っている」と考えています。

しかしそういった原体験がないメンバーでも、「その課題を知ったからには解決したい」というように、自分事として転換できる姿勢があれば、間違いなく種を持っているのだと思います。

編集部

気付いた時に転換できるかどうかですね。

藤森さん

はい。ただ、当社では採用段階で、「想いだけがあっても仕方がない」とハッキリ言うこともあります。
願っているだけでは社会は変わらないし、社会の課題を解決できません。つまりLOVEはとても大切なのだけれど、実行するPOWERを合わせ持つことで、想いが形になるのだと思います。

編集部

それが「LOVE&POWERの種を持った人たち」ということですか。

藤森さん

はい。想いを実現する力とは、推進力だったり実行力だったりとさまざまだと思いますが、特に20代の若手メンバーは、そういう力をまだ持っていなくとも、想いを力に変えていく「種」を持っていることを大切にしています。

そして、時にはつまずくことがあっても、またそこから立ち上がり、前進する。その繰り返しを経て自らのPOWERとしていくメンバーが、非常に多いと思います。

強い組織を実現するために「現場の権限」を重視

編集部

リジョブさんでは、若手の種を育てていける組織であるために、どんな方針を持っているのでしょうか。

長南さん

組織を運営する上で、育成のための各種制度やルールは当社にもあります。ただ、新しい事業展開などの変化に的確に対応できる強い会社とは、制度やルールに頼り過ぎずに、自分たちが主体性と全体最適での判断軸を持って考え実行することのできる組織だと考えています。

編集部

では、主体性と全体最適での判断軸を持った組織を実現するためには、どんなことを重視すべきでしょうか。

長南さん

私は「当事者意識を持ち、日々事業を推進している現場メンバーにいかに任せるか」ということを重視しています。自分たちで考えて、自分たちで実行して、自分たちの成果に繋げる、主体性を持った組織を作るためにはこれが重要だと思っています。

その意味では、人材育成という観点からいえば、「思考停止を生むようなルールや制度はなるべく作らない」ことが正しいのかもしれませんね。

編集部

メンバーの意欲や高い意識をより引き出せるように、環境を整備するのですね。

長南さん

そうです。「正解は自分たちで導き出す」ということです。世の中の変化を見据えながら、自分たちで正解を探し続けること、もしくは自分たちが選んだ道を正解にすることを常日頃から意識できている組織が「強い組織」だと思います。

「働きがいがある組織」という評価を糧に、心の豊かさが持続可能な社会を目指す

株式会社リジョブが受賞した「働きがいのある会社ランキング『ベストカンパニー』」の受賞トロフィー
▲働きがいのある会社ランキング『ベストカンパニー』を3年連続で受賞している。

編集部

リジョブさんは「ホワイト企業大賞」(※1)の受賞や、「働きがいのある会社ランキング『ベストカンパニー』」(※2)に3年連続で選出されるなど、外部からも注目され高く評価されています。これについてはどうお考えですか。
(※1)「第9回ホワイト企業大賞特別賞『LOVE&POWER賞』」受賞(主催:ホワイト企業大賞企画委員会)
(※2)「働きがいのある会社ランキング『ベストカンパニー』」3年連続選出/2020~2022年(主催:GPTWジャパン)

藤森さん

まず「働きがいのある会社ランキング」は、企業におけるメンバーの「やりがい」と「はたらきやすさ」を評価する、60か国・約7,000社が参加する世界最大規模の従業員意識調査です。日本における上位100社に贈られる「ベストカンパニー」に3年連続で選出されたことは、私たちにとって、大きな励みになりました。

また、「社員の幸せと働きがい、社会への貢献を大切にする企業」を表彰するホワイト企業大賞には、「社会にホワイト企業の数が増えれば幸せな人が増え、社会はより良い方向に進化する」という想いに共感し、エントリーをさせていただきました。

特別賞受賞を糧として、メンバーひとりひとりが社会に対するLOVEとPOWERを大切にしながら、これからも「フラットで心の豊かさが持続可能な社会」づくりを目指していきたいと思います。

採用のポイントは「LOVE&POWERの両立」への共感

株式会社リジョブの採用ページのメッセージ
▲採用ページに掲載されているメッセージ。(公式サイトより引用)

理想を抱きながらも、その一方で現実もしっかりと見据えるリジョブさん。インタビューでお話しいただいた各プロジェクトなどから、「心の豊かさあふれる社会」の実現を本気で目指す想いが伝わったのではないでしょうか。

最後に、リジョブさんから読者の皆様にメッセージをいただきました!

今回の取材でお話しした、「LOVE&POWERの両立」「社会性と事業性の両立」をはかりビジョンを追い続けることは、本当に難易度が高い目標だと考えています。

その上で、いくら高い目標であったとしても、未来を信じて挑み続けるのがリジョブの在り方です。そして、当事者として本気で課題に向き合うのであれば、課題解決と同時に必要な資金を事業として生み出し続けることも、重要です。

この両立ができて初めて、継続的な課題解決が実現できます。当社には社会を良くしていくことや、だれかの困りごとを解決するために行動できるメンバーが集まっています。

そういった「同志」と呼び合える仲間をこれからも増やし、一緒に歩んでいきたいと思っています。

株式会社リジョブの決起会の集合写真

■取材協力
株式会社リジョブ https://rejob.co.jp/
採用ページ https://rejob.co.jp/recruitment/