東大発ベンチャー「NABLAS株式会社」に有能なAIエンジニアが集う理由

エンジニアの仕事とその働き方に特色のある企業をご紹介する本企画。今回登場するのは、AI人材の育成から研究開発・社会実装までを幅広く手がけるAI総合研究所「NABLAS株式会社」。才能あふれるエンジニアが集う企業のあり方と、フルリモートワークのメリットをお伝えします。

NABLAS株式会社とは

NABLAS株式会社は「AI総合研究所」と銘打った東大発の企業です。その名の通り、多岐にわたるジャンルの最先端AI技術を社会と結びつけ、「人が人らしく生きることができる社会を実現すること」をミッションとして掲げています。

2017年にAI分野における人材育成組織としてスタートした「iLect」と、自社でのAI技術研究開発の二本柱。さまざまな分野の企業へのAIの実装を手がけ、AIによって社会をよくする事業を展開しています。

会社名 NABLAS株式会社
住所 東京都文京区本郷6-17-9 本郷綱ビル1F
事業内容 ・AI技術開発、実装・コンサルティング
・DX/AI人材育成
設立 2017年3月
公式ページ https://www.nablas.com/
働き方 フルリモート

今回は、代表取締役所長の中山浩太郎さんと、執行役員でありAI人材を育成する「iLect」部門の責任者である佐野まふゆさんに、NABLAS株式会社に優れたエンジニアが集まる背景と、社内での働き方について伺いました。

また、2022年までオフィスワークを原則としていた同社がフルリモートワークに舵を切った経緯と、それによって得られた利点についてもお話しいただいています。

本日お話を伺った方
NABLAS株式会社代表取締役所長の中山浩太郎さん

NABLAS株式会社
代表取締役所長

中山浩太郎さん

NABLAS株式会社執行役員でiLect部門責任者の佐野まふゆさん

NABLAS株式会社
執行役員・iLect部門部門長

佐野まふゆさん

「AI人材の育成」と「企業とのAI開発」を軸とするNABLAS

NABLAS株式会社の企業メッセージ
▲ミッションは「最先端のAI技術を社会に届け、人が人らしく生きることができる社会の実現」(公式サイトから引用)

編集部

まず最初に、御社の事業内容についてお話しいただけますか?

中山さん

弊社は、AI総合研究所NABLAS株式会社と申します。社名は∇(ナブラ)に由来します。ナブラというのは、AI技術で最も重要な数学的シンボルの一つで、より良いAIモデルを作るために少しずつ変化させる量を示すものです。この社名には、私たちの技術で社会をより良く・あるべき方向に少しずつ進めるために貢献したいという決意が込められています。

私たちは「AI総合研究所」と名乗っているとおり、AIに関して培ってきた知見があります。そして、これから研究開発をしていくことでさらに新技術を生み出し、ナレッジを蓄積し活用していきます。

私たちの事業には、「iLect」というAI人材育成サービスと、企業さまとAIに関する共同研究開発を行う「R&D」という2つの柱があります。

これまで蓄積してきたAIのナレッジを提供するだけでなく、企業さまと共に実際の現場で役立つモデルを研究開発する過程でさらにAI技術を深掘りし、「iLect」という育成の場でかみ砕いてお伝えする。シナジーの高いこれら二つの事業を軸として展開しています。

編集部

AI人材の育成と研究開発を両輪のようにして、企業運営を行われているわけですね。

AI人材を育成しながら、同時にビジネスの現場で使えるAIを開発

2022年よりリモートワークを本格導入しているNABLAS株式会社のオフィス
▲NABLAS株式会社内のオフィス。2022年よりフルリモートワーク化している

編集部

先ほどお話しいただいた、NABLASさんの2つの事業について詳しくご説明いただけますか?

佐野さん

まず「iLect」は、AIを実際にビジネスの現場に持ち込み、自社の業務に合うようカスタマイズして課題解決まで到達できる人材を育成するものです。弊社はそもそも東京大学発のスタートアップ企業なのですが、このAI教育のサービスがルーツです。

NABLAS株式会社が提供する「iLect」の概要
▲NABLAS株式会社が提供する実務で使えるAI技術を学べるプログラム「iLect」

佐野さん

そしてもうひとつが「R&D」、すなわち「Research&Development」ですね。私たちのAI技術を用いて、様々な業態の企業さまとともに、課題解決のためのAIツールやプログラムを研究・開発するものです。

NABLAS株式会社の顧客企業との「R&D」の実装例
▲NABLAS株式会社は、様々な業態の企業と共にニーズに応じたAI技術を開発/提供している

編集部

生成AIというと、2022年末あたりからChatGPTなどでビジネスの領域を超えて話題になりましたね。

佐野さん

まさに企業さまからもニーズの高いジャンルですね。2年前より、特に私たちが注力してきた領域のひとつに「ディープフェイク検知」があります。ディープフェイク技術でつくられた架空の画像や動画、音声データが実在するかどうかを検知する技術です。

編集部

これはマスコミやメディアなどで使われるのですね。AIが画像や動画を生成するようになっている一方で、それを見破る役割もAIが担うのは面白いですね。

NABLASでは、LLMなど様々な領域のエンジニアが活躍中

NABLAS株式会社執行役員でiLect部門責任者の佐野まふゆさん
▲「iLect」部門の責任者として、佐野まふゆさんにエンジニアチームについて語っていただいた

編集部

今回のテーマのひとつであるエンジニアの働き方についてうかがいたいのですが、NABLASさんでは、現在エンジニアの方は何名ぐらい在籍されているのですか?

佐野さん

全社員が二十数名なのですが、うち7割弱がエンジニアや研究者です。ソフトウェアエンジニアもおりますが、多くは機械学習エンジニアですね。そして、それぞれが異なる得意分野を持っています。

たとえば、先ほど話題に出たChatGPTなどでメインで使われている「LLM(大規模言語モデル)」を研究しているメンバーがいます。LLMは人間が普通に使う自然言語を理解し、文章を生成する役割を持つモデルのことです。

あるいは、音声を作り上げる「音声生成」や声や音を聞き分ける「音声分離」などの技術開発に携わるメンバーもいます。これらは、ディープフェイク検知に関わる研究です。

また、例えば自動運転でクルマが障害物を検知したり、画像から人物を区別したりするときに使う画像認識の研究者もおります。大学で専門的に研究してきた延長線上にあるプロジェクトを当社で担当している人が多いですね。

編集部

NABLASさんのエンジニアでありつつ、現役の研究者でもいらっしゃるわけですね。

佐野さん

はい。活動としても非常に研究者に近いんですよ。当社では機械学習をメインに企業さまと「R&D」を行うメンバーを「リサーチャー」と呼んでいます。というのも、お客さまとの共同開発を行う際、機械学習分野の論文を綿密にリサーチして取り組む、という仕事の進め方をしているからなんです。

こうしたリサーチャーとお客さまとの間に立って、プロジェクトを進めるプロジェクトマネージャーもいますし、変わったところではロボティクス(ロボット工学)分野の研究を経てジョインしたメンバーもおります。

また、ソフトウェアエンジニアも重要なメンバーです。われわれの研究開発をよりスムーズにするための既存のシステムをより軽く速くするなどのカスタマイズや、研究開発で培った技術をアプリケーションに落とし込み、一般に広く使えるようにプロダクト化するのに、必要不可欠です。

あとは、たとえばIIT(インド工科大学)出身のメンバーのように、機械学習の知識とソフトウェアエンジニアリングの言語を理解できて、双方を俯瞰的に見られるエンジニアもいます。

エンジニアの半数が外国籍メンバー。社内では日本語・英語で会話

NABLAS株式会社のオフィス内で語り合う海外出身のエンジニアたち
▲NABLAS株式会社のエンジニアの約半数は海外出身者。ミーティングによっては公用語が英語になることも

編集部

まさに多彩なメンバーですね。ちなみに、海外出身の方は何名ぐらいいらっしゃるんですか?

佐野さん

エンジニアチームの半数ぐらいでしょうか。インド以外にも、中国・韓国・オーストラリア出身のメンバーがおります。

編集部

社内の共通言語としては何を採用されているのですか?

佐野さん

状況に応じて日本語と英語を使い分けています。バックオフィスや人事労務系の業務は、日本人スタッフが中心ですので日本語になりますし、外国人スタッフ中心のエンジニアチームのミーティングでは英語でのやりとりが多いです。

編集部

社員の方々はみなさんバイリンガルでいらっしゃるんですか?

佐野さん

いえ、日本語だけのメンバーもいますし、英語だけのメンバーもいます。バイリンガルの社員が間に立って通訳するケースもよくあります。社内では英語は普通に使われていますし、みなさんが使えるような素地が作れるといいなと思っています。

「Kaggle」や「AtCoder」で世界トップクラスの実績を持つエンジニアが揃う

NABLAS株式会社でのミーティングの模様
▲NABLAS株式会社のミーティングの様子

編集部

NABLASさんのエンジニアの方々は、みなさんすごい実績があるそうですね。

佐野さん

ありがとうございます。大学での研究はもちろんですが、同業者がハッとするような“称号”を持っているメンバーもいます。たとえば、世界中のデータサイエンティストが集まってデータ分析の精度を競い合う「Kaggle」というプラットフォームで「マスター」のバッジを取得していたりします。

あるいは、「AtCoder」という世界最高峰の競技プログラミングサイトで、参加者のランクが上がると表示される色が変わる仕組みなんですが、ここで上位に入っているメンバーもいます。

編集部

武道で段位が上がると帯の色が変わるのと同じようなシステムですね。

佐野さん

「Kaggle」や「AtCoder」で評価されているエンジニアと一緒に働くことで、勉強になることも多いそうです。

中山さん

私はエンジニアの採用をずっと担当してきているのですが、ほとんどの人が共通して「優秀なエンジニアがいるところで働きたい」と言いますね。私もエンジニア出身だからよく分かるのですが、エンジニアにとって優秀な人材のいる職場に在籍することは非常に重要なんです。一緒に働くことが、自分の成長につながると考えている人が多いんですよ。

そういう意味でも、NABLASにとって、やはり「人」が一番の資産だと思っています。だからエンジニアの技術者集団としてのクオリティは常に高くあるよう、面談では相当厳しく見ているつもりですね。

編集部

能力の高いエンジニアの方々が自然に集っているのではなく、質を担保し続けることで、さらに能力の高いエンジニアの方々が志望されるという流れなんですね。

中山さん

実際に面談しても、社内のエンジニアの質の高さには良く言及されますね。「だから入りたい」と言ってくださるので、ありがたい限りです。

編集部

エンジニアである中山さんの面談以外に、能力の高いみなさんに入社していただけるポイントはありますか?

中山さん

面談において「ライブコーディング」というものを行っています。候補者のみなさんに、我々の前で実際にプログラミングをしていただき、技術力をしっかり見るようにしています。

編集部

実技をチェックされるというのは確実ですね。腕のいいエンジニアが入社される背景がよく分かりました。

オフィスワーク中心の体制からリモートへ180度転換

NABLAS株式会社のオフィス内観
▲NABLAS株式会社のオフィスには、ボルダリングのできる壁やハンモック、芝生などを完備したスペースも。デザインを手がけたのは代表の中山さん

編集部

この記事のもうひとつのテーマであるリモートワークに関して伺います。NABLASさんでは2022年の春以降、オフィスワークからリモート中心の働き方に切り替えられたそうですね。

中山さん

はい。実はずっと私の考えとして「オフィスで働く文化を大切にしたい」というものがあったんです。コロナ禍に入ってからもそうでしたし、IT業界はリモートワークとの親和性が高いということもわかっていたのですが、オフィスで働くことにこだわっていたんです。そのため、オフィスのデザインにも力を入れました。

でも、もしオフィスにこだわる文化がもはや古いのであれば、中途半端なところに価値観を置くわけにはいきません。どうせなら思い切って大改革を行ったほうがいいのではないかと考えて「リモートワーク中心の会社にする」という意志決定をしたんです。

今、エンジニアはほとんどリモートワーク100%で勤務しています。リモートにはリモートなりの課題もありますが、そこは一つひとつ対応しながら取り組んでいます。

編集部

たとえばどのような課題が発生したのですか?

佐野さん

よくリモートでは言われることですが、やはりオフィスに一緒にいて、隣のデスクのメンバーに直接話すことでスムーズに進む部分というのがありました。でも、そこはエンジニアチームが自ら課題解決に動いたんです。

たとえば、事業開発の新しいプロダクトに取りかかるときには、特定のメンバーが最初だけ3日間オフィスに集まって、ある段階まで作るようにしたんです。そこで直接コミュニケーションをとり、その先はリモートワークに切り替えるんです。

佐野さん

毎日定時にプロダクトの開発状況を確認し合う「スタンドアップ」を行って、進捗や問題点を共有しながら進めていく。こちらからの提案ではなく、自発的にエンジニアチームからはじまったもので、これはうまくいった要因の一つだと思っています。

リモートだからこそ実った情報の可視化とコミュニケーション

NABLAS株式会社の懇親会「バーむらた」の開催を知らせるSlackの画面
▲リモートワークでのコミュニケーション手段として様々な懇親会を開催。これはPR部門の村田美南さんがママを務める「バーむらた」のお知らせ

編集部

リモートワークに転換されたことで、NABLASさんの企業運営においてプラスになったことはありますか?

佐野さん

情報や状況がより可視化されるようになったことですね。オフィスで直接コミュニケーションをとっていたときは、メンバー間に情報の格差が生じていたところもあったんです。伝えたつもりで伝わっていなかったり、限られたメンバー中心に進めてしまってその場にいないメンバーに共有ができていなかったりということもありました。

リモートだと、より注意深く情報を伝えるために、みんなが情報を可視化する必要が出てきたんです。それで、以前よりメンバーみんなが情報を共有できるようになったと感じています。

編集部

エンジニアのみなさんに限らず、社内全体でリモート化によって生じた問題はありますか?

佐野さん

やはりコミュニケーション不足はありましたね。そこで、今取材に同席しているPR部門担当の村田が、みんなが気軽に話せる場として、オンライン上に「雑談ルーム」をつくりました。オフィスワークのころにも定期的にランチミーティングを行っていたのですが、いわばその進化形です。さらに今では、「バーむらた」が“開店”しています。

編集部

それはどういう場なんですか?

佐野さん

村田がバーのママになったという想定での懇親会です。リモートワークではコミュニケーションが希薄だったり雑談しにくいと感じていたりするようなメンバーが、オフィスでお酒を飲みながらお話しするんです。

編集部

バーには何人ぐらい来られるんですか。

村田さん

月に一度のペースで開店していまして、前回はオンライン参加も含めて15人ほど集まりました。あとは、リモートワーク以前から使用していた「Slack」に、各個人で開設している「times」というチャンネルがあって、個々にはこれを使って雑談するようにも心がけています。

佐野さん

「バーむらた」以外の懇親会も増やしています。そのせいか否か、現状では、リモートワークゆえの不自由さや悩みなどの声はほとんど聞かれなくなりました。

NABLASが採用したいのは「人のためのAIをつくる」エンジニア

NABLAS株式会社代表取締役所長の中山浩太郎さん
▲代表の中山浩太郎さんは自身もエンジニア出身。NABLAS株式会社のエンジニア採用を担当する

編集部

最後に、記事をご覧いただいた方に向けての採用メッセージというのをいただきたいなと考えております。

中山さん

これまではオフィスにこだわった会社だったのですが、われわれはその価値観を180度転換し、リモートワーク中心の会社へと生まれ変わりました。オフィスワークを敬遠していた方も、ぜひ検討いただきたいと思っています。

編集部

関東圏以外にお住まいのスタッフの方もいらっしゃるんですか?

中山さん

はい。それだけでなく、リモートワークを活用して、日本中、世界中のエンジニアやデザイナーとコラボレーションする機会もあります。働く場所を問わず、能力あるさまざまな人々と一緒に働ける環境を整えています。

そして何より、今、社会に最先端のAI技術がいろんな形でどんどん入ってきています。だからこそ、人のためになるAIをつくることがとても大切なのです。

NABLAS株式会社が目指してるのは、「人が人らしく生きられる社会を創る」です。この目標は壮大かつ困難ですが、臆せずチャレンジしたいという気概と技術に自信のある方がいれば、ぜひ一緒にやりましょう!

編集部

採用試験においては中山さん自らがチェックされるコーディングの試験も行われますよね。試験は厳しいかもしれませんが、入社後には成長できる環境が待っているわけですね。本日はありがとうございました。

■取材協力
NABLAS株式会社:https://www.nablas.com/
採用ページ:https://www.nablas.com/recruit