宮崎県を政策面でリードする都城市。若手職員が能力を発揮するための「フィロソフィ」とは

働く人のワークライフバランスを重視しながら、若手が能力を発揮できる職場づくりを進めている企業や自治体にインタビューする本企画。今回は、宮崎県都城市役所にお話を伺いました。

ふるさと納税納入額、マイナンバーカード交付率ともにトップの宮崎県都城市

宮崎県の南西端に位置する宮崎県都城市。人口は南九州では鹿児島市、宮崎市に次いで3番目の約16万人です。「市民の願いがかなう 南九州のリーディングシティ」を目標に掲げ、南九州の中心都市としての発展を目指しています。

市役所職員のさまざまな取り組みの甲斐もあり、都城市はふるさと納税の納入額が4年連続で日本一、また、マイナンバーカードの交付率も全国の市区で初めて90%超となりました(下記リンク先参照)。

■都城市の2つの「日本一」の詳細については、公式サイトをご覧ください。
https://www.city.miyakonojo.miyazaki.jp/soshiki/80/56631.html
https://www.city.miyakonojo.miyazaki.jp/soshiki/24/47868.html

自治体名 宮崎県都城市
住所
(本庁舎)
宮崎県都城市姫城町6街区21号
公式ページ https://www.city.miyakonojo.
miyazaki.jp/

今回は、都城市役所の総合政策部総合政策課総括・デジタル化推進担当の河野さん、総合政策部デジタル統括課スマートシティ担当の牧田さん、総務部職員課人事給与担当の安藤さん、総務部フィロソフィ推進課フィロソフィ推進担当の堀之内さんにお話を聞かせていただきました。

本日お話を伺った方
都城市総合政策部総合政策課総括・デジタル化推進担当の河野裕樹さん

都城市総合政策部総合政策課総括・デジタル化推進担当
副主幹

河野 裕樹さん

都城市総合政策部デジタル統括課スマートシティ担当の牧田貴大さん

都城市総合政策部デジタル統括課スマートシティ担当
副主幹

牧田 貴大さん

都城市総務部職員課人事給与担当の安藤英孝さん

都城市総務部職員課人事給与担当
主査

安藤 英孝さん

都城市総務部フィロソフィ推進課フィロソフィ推進担当の堀之内千絵さん

都城市総務部フィロソフィ推進課フィロソフィ推進担当
副主幹

堀之内 千絵さん

「人に優しいデジタル化」を進行中の都城市

編集部

都城市さんは、令和3年に打ち出した「都城デジタル化推進宣言2.0」をもとに変革を続けているかと思います。「都城デジタル化推進宣言2.0」の詳細をお教えいただけますか?

牧田さん

「デジタル化推進宣言2.0」では「市民サービス」「自治体経営」「地域社会」の3分野でデジタル化を推進することとしています。「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」をテーマに、デジタル技術を活用して高齢者の生活の質を向上させたり、地域の中小企業のデジタル化を促すなど、多岐にわたってデジタル化を推進しています。

ただ、新しいデジタル技術は日々生み出されていますが、新しいものならどんなものでも率先して導入していくというわけではありません。都城市が持つ課題を解決する手段がデジタルである場合は導入するという考えのもと、デジタル技術を導入しています。

業務の効率化については、例えば、都城市では70歳以上の市民に温泉券を発行していたのですが、紙の券を発行していたため、毎年更新する必要があり、市民と職員双方の負担となっていました。この課題を解決するため、紙から磁気カードに変更し、毎年更新しなくてもいいようにしました。これにより、毎年更新に要していた人員や時間を他の事務に割くことができ、効率化が図られました。

このように明確な課題があり、解決するための選択肢の一つとして、デジタル技術の活用を検討する仕組みが都城市に根付いてきています。

公式:都城市「『都城デジタル化推進宣言』をアップデートします!」

マイナンバーカード交付率日本一を達成するための施策とは

編集部

次に、マイナンバーの利活用についてお伺いしたいと思います。都城市さんでは、マイナンバーカードの交付率が日本一とのことですが、工夫した点があればお教えください。

牧田さん

都城市では、マイナンバー制度が開始された当初からマイナンバーカードの普及促進と利活用を同時並行で進めてきました。

普及促進については、カードに対する住民の疑問や不安を解消し、カードを取得いただきたいとの思いから、公民館やイベント会場、職場等に職員が出向いて申請を受け付ける出張申請補助に力を入れており、これまでに約2,600回実施しています。また自宅まで出向いて申請を受け付けるマイナンバーカード申請専用車両も導入するなど、申請しやすい環境づくりを心がけてきました。

取得するメリットも重要であるとの考えから、カードをかざすことで各種証明書を取得できる「コンビニ交付」サービスの手数料を、窓口発行の半分以下に設定しました。また、市役所に行かずともオンラインで各種申請が可能なマイナポータル「ぴったりサービス」では、1,000件以上の手続きが可能となっています。

このように、都城市では、住民がマイナンバーカードを取得したくなるような環境づくりに力を入れてきました。

デジタル化やマイナンバーカードなどの施策で若手が活躍

編集部

デジタル化の推進やマイナンバーカードの活用促進などの施策において、若手職員の方々の果たした役割についてお聞かせください。

牧田さん

市役所に勤め始めてからまだ数年しか経験していない若手職員の方が、長年勤める職員よりも業務に対する課題を見つけることが多いと思います。業務に慣れていないからこそ客観的に眺めて気づくことがあり、こちらが見落としていた点を指摘されてはっとすることがあります。

また、デジタル化するにあたり、既存業務のBPR(※)も並行して実施することが多いのですが、その際に若手職員の気づきが的を射ていることがあり、大変重宝しています。
(※)ビジネスプロセス・リエンジニアリング。既存の組織や制度を根本的に見直し、業務フローや情報システムなどを再設計すること。

それからなんといっても、若手職員はデジタルリテラシーが高くデジタルに慣れていることから、デジタルなどの新しい仕組みの導入に前向きな姿勢を持ってくれている点も、大変頼もしく思っています。

若手を含め全職員が活躍できるようにするための「都城フィロソフィ」

宮崎県都城市のフィロソフィ研修
▲フィロソフィ研修の開催風景

編集部

若手職員の活躍を促進するような取り組みがあれば教えてください。

堀之内さん

都城市では「都城フィロソフィ」を策定し、職員全員が同じ方向を向いて業務に取り組んでいます。「都城フィロソフィ」とは、“市民の幸福と市の発展”を目標とした、都城市職員の“行動指針”のことです。

フィロソフィ推進課では、「都城フィロソフィ」を根幹とした人財育成を行っており、若手を含め、全職員がそれぞれの役割に応じて活躍できるよう、能力開発のための職員研修を年に20回ほど実施しています。

個人の成長に必要な学びの回数やスピード、環境、時間などは人それぞれです。しかし、組織の力を最大限発揮できるよう、備えて欲しいスキルの習得機会を全職員に平等に与えることが、フィロソフィ推進課の職務であると考えています。

さらに希望する職員には、広域圏(三股町、鹿児島県曽於市、志布志市)で実施する特定課題解決型研修や、外部機関が実施している研修情報を積極的に発信することで、自己啓発を支援しています。

また、意識改革のための職員研修(フィロソフィ研修)を、令和元年度から実施しています。これは、全職員の職位や年齢に関係なく、一人の「ヒト」または「組織」として“考える研修”です。

「都城フィロソフィ」の基盤は「ヒト」の成長

編集部

「都城フィロソフィ」の基本的な考え方について詳しく教えてください。

堀之内さん

「都城フィロソフィ」の根底にあるのは「ヒト」の成長です。社会をより良いものとするためには、「組織」の成長はもとより「ヒト」の成長が大切であるという価値観に基づいています。

「ヒト」が成長するために必要なものは、まずは自身の“心”です。人は社会生活をしていく中で、上手くいくこともあれば、つまずくこともあります。順調に物事が進んでいるときの前向きな“心”、反対に、困難な物事に対してそれを乗り越えようとする“心”、全てが“心”から始まります。

つまり、自分のことは全て自分自身の“心”が起点になることを理解した上で、「ヒト」としてどうあるべきか、「組織」としてどうすべきかを検討することが、とても重要なことだと考えています。その行動指針となるのが、「都城フィロソフィ」です。

都城フィロソフィに基づき策定された全ての政策と取組が、職員一人ひとりの活躍を可能にしていると感じています。

公式:都城市「都城フィロソフィ」

小さな成功の積み重ねを認識することが大切

編集部

「都城フィロソフィ」の考え方が体現化されていると実感できるエピソードはありますか?

堀之内さん

私が日々意識しているのは、職員一人ひとりの一つひとつの行動を分析するよりも、「楽しい」「嬉しい」「悲しい」という感情の裏にフィロソフィがあるということです。

例えば、先輩の仕事の成果に対して、後輩の私が「〇〇した方が見やすいですね」と伝えたことがありました。すると、次の日には改善したものを私に見せてくれました。そのとき私の心に、「すごい!」「早い!」「見やすい!」という驚きの感情が生まれました。

その感情の要因には、私の意見を真剣に聞く先輩の「傾聴と共感」、すぐに改善した「今できることは今やる」、とても見やすいと感じさせた「市民(後輩)目線」という都城フィロソフィがあったと思うのです。

また、自分も「本音でぶつかる」ことを実践できたことで、良い結果に繋がったのだと思っています。そのような感情に気づくたびに、私は「都城フィロソフィ」を実感しています。
※参考:都城市「都城フィロソフィ30項目の解説」
・傾聴と共感が改善を生む(「都城フィロソフィ」第2部第2章第5項目)
・今できることは今やる(「都城フィロソフィ」第2部第3章第5項目)
・市民目線を貫く(「都城フィロソフィ」第2部第1章第4項目)

・本音でぶつかる(「都城フィロソフィ」第2部第2章第1項目)

まだまだ未熟ですが、何に対してもできるだけ良い反応ができるよう心を鍛えています。自分の価値観に沿って、どうしたら前向きに考えられるか、その価値観を変えるべきではないかなど、成長するための問題点は、自分にはたくさんあります。小さな成功の積み重ねを認識することは、大きな成功を掴む上でとても重要なことと考えています。

新たな取り組みで育児休業を取得しやすく、職場の負担も軽減

宮崎県都城市の職員課での打ち合わせ風景

編集部

続いて、都城市さんのワークライフバランスに関する取り組みをお伺いできますか?

河野さん

育児休業を取得する職員が男女問わず増加している現状を踏まえ、対象の職員が安心して休みを取得できるようにするとともに、所属する職場の負担を軽減するため、令和6年度から育児休業者を職員定数に含めない取り扱いをスタートします。

安藤さん

男性の育児休業取得が推進されている中で、市においても男性の育児休業の取得者が年々増えている状況にあり、令和6年9月時点の取得率は約82%となっています。定数外の取り扱いが始まることで、男女問わず育児休業が取得しやすい環境が醸成され、育児休業を取得しても業務を滞らせることなく円滑に遂行できる職場となることが期待できます。

編集部

「育児休業者を職員定数に含めない取り扱い」について、詳しくお教えください。

河野さん

前提として、そもそも自治体の職員数は、条例によって必要な数いわゆる定数が定められています。当然それを超えた職員数になることは条例違反となります。そのような中、これまでは育児休業を取得する職員がいた職場は、会計年度任用職員が代替として働いていました。正規職員で代替しようとすると、その分の職員数が増えることになり、条例で定めた定数を超えることになるためです。

そこで、都城市では、育児休業を取得する職員を、条例で規定する「職員の定数に含めない職員」に加えることで、定数外とすることとしました。これにより、育児休業を取得した職員の代替として正規職員を充てることが可能となります。代替する正規職員については、新規に職員を採用して充てます。

一方で、育児休業から復帰した職員については、復帰した年度まで定数外とします。復帰により一時的に増える職員数については、翌年度の新規採用職員の採用数で調整していくため、条例上の定数を超えることにはなりません。

ただし、この制度の対象となるには、新規採用職員で調整ができる職員となるため、一般職や土木、建築、消防といった職員数が多い職種に限定して運用を開始することとしております。

編集部

職員の皆さんからの反応はいかがですか?

安藤さん

定数外の取り扱いはこれからスタートするため(取材は2024年3月)、職員からのフィードバックはまだありませんが、育児休業を取得しても業務を滞らせることなく円滑に遂行できる職場環境となるよう、職員の声も積極的に聞いていきながら、制度の円滑な施行に向けて取り組んでいきたいと思っています。

都城市で活躍する職員の声を紹介!

都城市で活躍中の職員の皆さんの声を、いくつか紹介いたします。

  • 妻の出産にあたって育児休暇を所得しましたが、スムーズに仕事に戻ることができました。周囲に子育て中の先輩職員も多いので、日ごろから相談ができて安心です!
  • 下水道敷設工事に関する業務を行っています。自分の設計したものが、市民生活を支えていると感じられる点が魅力のひとつです。
  • ふるさと納税関連の業務を担当中です。ふるさと納税は都城市を全国に知ってもらうチャンスと捉え、業務に取り組んでいますね。取り組みの成果が寄付額として現れるので、非常に刺激的な仕事です。
  • 消防署で、火災、救急、救助等の活動にあたっています。傷病者の家族から感謝の言葉をかけられたときには心が温かくなります!
  • 保健師として入職しました。保健指導や健康教育を通じて、対象者の意識や行動に変化が現れたときに喜びを感じます。

進化を続ける都城市では、「笑顔」で市民に貢献できる人を歓迎

編集部

最後に、採用について伺いたいと思います。都城市の職員さんとして望まれる人物像をお聞かせください。

安藤さん

都城市では、職員一人ひとりがあらゆる事業に「本気で挑戦」し、結果を出すために努力しています。こうした職員の努力の甲斐もあり、ふるさと納税日本一・マイナンバーカードの交付率日本一など、沢山の日本一の結果を出してきているところです。

求めている職員像は、ズバリ「明るく元気で素直かつ人間力溢れる方」です。都城市では、市民のためにチャレンジを続けていける「人財」を求めています。「笑顔あふれるまち=スマイルシティ都城」の実現に向けて、私たちと一緒に働いてくださる方は、ぜひ応募をお願いします!

編集部

「都城フィロソフィ」が職員の皆さんに浸透しているからこそ、都城市さんでは多くの日本一という結果が生まれているのですね。そのような環境で働くことは、自分自身の大きな成長にも繋がりそうです。本日はありがとうございました。

■取材協力
宮崎県都城市:https://www.city.miyakonojo.miyazaki.jp/
採用ページ:https://www.city.miyakonojo.miyazaki.jp/life/5/71/