歴史と新しい挑戦の両方を重視する神奈川県鎌倉市のアイデアを大切にするカルチャー

若手の成長を促しながら働きやすい環境作りを進めている企業や自治体にインタビューする本企画。今回は神奈川県鎌倉市にお話を伺いました。

伝統と革新のまち「神奈川県鎌倉市」

神奈川県鎌倉市庁舎の外観

源頼朝が鎌倉幕府を開いた地としても知られるまちが、神奈川県鎌倉市です。歴史を感じさせる景観が残り、海と山に囲まれた土地でもあるため、まち並みからは独特の風情が感じられます。

歴史と文化にあふれたまちは海外での知名度も高く、国内外から多くの観光客が訪れています。

自治体名 神奈川県鎌倉市
住所 神奈川県鎌倉市御成町18-10
公式ページ https://www.city.kamakura.
kanagawa.jp/

同市は職員のキャリアを大切にし、成長を後押しする体制が整っています。職員が心の余裕を持ちながら生き生きと働いており、前向きに仕事に取り組める環境があるのです。

今回は、鎌倉で公務員として働く魅力について、健康福祉部障害福祉課主事の喜多見さん、総務部職員課人財育成担当主事の中村さんにお話を伺いました。

本日お話を伺った方
神奈川県鎌倉市の喜多見さん

神奈川県鎌倉市
健康福祉部障害福祉課主事

喜多見さん

神奈川県鎌倉市の中村さん

神奈川県鎌倉市
総務部職員課人財育成担当

中村さん

民間企業から転職、市役所だからこそできる仕事に楽しさ感じる

笑顔でインタビューに答える神奈川県鎌倉市の喜多見さん
▲自分の働き方を見直した結果、鎌倉市役所に転職したという喜多見さん

編集部

喜多見さんは民間企業から鎌倉市役所に転職されたとのことですが、転職の背景と現在担当されているお仕事について伺わせてください。

喜多見さん

鎌倉市役所に入庁するまで、私は食品会社に8年間営業として勤めていました。とても楽しい8年間だったのですが、全国転勤がある会社で3~4年に一度転勤がありました。

先輩や上司の方が単身赴任する姿を見て、自分の働き方を見直してみようと考えた結果、公務員に転職することを考えました。

そのなかでも鎌倉市役所を選んだのは、携われる仕事が楽しそうだったからです。例えば、鎌倉は観光に強みを持っています。自治体が観光の全てを担っているわけではありませんが、鎌倉だからこそできる仕事があるのではないかと思い入庁を決めました。

入庁後は市民税課に2年半ほど所属し、現在は障害福祉課で障害のある方の社会参加や暮らしに関する業務を担っております。

編集部

実際に入庁されてみていかがでしょうか?

喜多見さん

市役所の職員でなくては携われないであろう仕事が予想以上に多く、そこに楽しさを感じていますね。

前職では、お客様の属性がある程度固定化されていましたが、市役所で応対する市民の方はさまざまなバックグラウンドをお持ちで、それぞれ違った事情を抱えています。今まで関わることのなかった方々と関わることができるという点に難しさを感じつつ、面白みを感じています。

編集部

具体的にどのようなやりがいを感じられていらっしゃいますか?

喜多見さん

私は入庁して5年目ですが、日々こんな新しいことを知れて、経験することができるのかという驚きがあります。

例えば、今の課で働くまでは、「手話通訳をお願いして話をすれば、手話を使う方とも音声で話すのと同じように伝わる」と思っていました。しかし、言わなくても伝わるだろうと思ったことが原因で誤解を生んだり、生活してきたバックグランドの違いから、伝えたい内容を正しく理解してもらえないことがあり、日本語の読み書きをする日本人同士ではありますが、言語や文化の壁を感じることがありました。

課内でも簡単な手話を学んだり、ろう者とのかかわりを増やしたりして、「どのようなことに困りやすいか」や「どう話すと伝わりやすいか」を学んでいます。来庁された方の悩みに寄り添い、問題を解決していくことにやりがいを感じています。

編集部

日々新しいことを吸収していく点にお仕事の魅力があるのですね。

課題解決のためのアイデアを聞き入れてもらえスピード感を持って動ける環境

身振り手振りでインタビューに答える喜多見さん
▲「庁内の課題を解決し、市民の方から良い声を頂けるとうれしい」と話す喜多見さん

編集部

さまざまな業務を経験されてきたと思いますが、なかでも印象に残っているお仕事は何でしょうか?

喜多見さん

入庁3年目で市民税課に所属していたころ、「歳入確保プロジェクト」というプロジェクトチームに入りました。市役所はお金稼ぎがメインの仕事ではありませんが、市役所でもできることをやっていこうというのが歳入確保プロジェクトの趣旨でした。例えば、多くの自治体さんも取り組んでいることですが、担当課の職員に協力してもらい、公用車に企業の広告を掲載して広告費を得ることに成功しました。

また、プロジェクトとは別の取り組みですが、確定申告の会場で市民の方が2~3時間待つという状況が発生していましたので予約制の導入に動きました。上司に予約制導入について相談して、上司と一緒に予約制を導入している他市を視察し、導入することができました。

編集部

かなりスピード感を持って新しいことに取り組まれているのですね。

喜多見さん

入庁前は一つ一つの決定に時間がかかるイメージがあったのですが、スピード感を持って動いていると思います。前年度に決めた予算の枠で動くこともあり、悪く言えば融通の利かない部分もありますが、イメージよりやれることも多くスピード感をもって取り組めていると思っています。

編集部

障害福祉課に異動されてからは、具体的にどのような業務に取り組まれていらっしゃるのでしょうか?

喜多見さん

タクシー券やガソリン券といった助成券を、社会参画を促す目的で、障害がある方に助成する業務を担当しています。私が異動してきたときは、助成券に名前や住所、生年月日を職員で全部手書きしていました。券は1,000人分以上あり、作業時間が非常に膨大でした。

業務改善を図ろうということで、これまでの運用ルールを少しだけ変えました。その結果、申請された方への助成券の交付も早くなったと思います。

2024年度からは紙の申請だけでなく、電子申請も開始するので、より一層の業務効率化と申請される方の利便性の向上に繋がるかなと思っています。

編集部

改善点を提案して実際に反映される環境があるのですね。

喜多見さん

市役所のわかりにくい手続きを簡略化しようと動いている先輩職員もいますし、前向きに仕事をしている人は多いと思います。また、相談に乗ってアドバイスをくれる上司も多いと感じています。

庁内にはさまざまな課題がありますが、課題を解決できるとうれしい気持ちになりますね。課題を解決したことで、市民の方が便利に感じてくれて、何かしらの良い声をいただけると、市役所の職員として大きなやりがいを感じます。

自分のリズムで仕事を進められることで心に余裕が生まれる

笑顔で業務に当たる喜多見さんと職員の皆さん

編集部

ご自身の働き方を考えて転職されたとのことでしたが、ワークライフバランスについてはいかがでしょうか?

喜多見さん

入庁後は課内のメンバーのフォローもあり、子どもの行事や家族の休みに合わせて有給休暇を取得できていますし、自分のライフサイクルに合わせた働き方ができていると感じます。

そして何よりも、心の余裕があることがとても大きいと感じています。市役所に入庁して前職と比べて労働時間が大きく変わったということはないのですが、心に余裕が生まれたことで家族と関わる時間や仕事以外のことを考える時間が増えました。

土曜日は妻が働いているのですが、毎週2人の子どもと出かけています。子どもにしっかり向き合えるほど、仕事と家庭のバランスが取れていると感じています。

編集部

心の余裕が生まれている要因としては何が挙げられるでしょうか?

喜多見さん

転勤がなく、安心して働けていることと、数字的な結果に追われていないというのが、心に余裕が生まれている要因に挙げられるのかなと思います。前職では、競合他社とのシェア争いや為替の影響による商品の価格改定等、面白さを感じつつも精神的に疲弊する場面も多かったです。

その点、市役所は自分のリズムで仕事を進めやすいです。もちろん取り組まなければならない業務は数多くありますが、その中でも心に余裕を持ちながら働けるというのが市役所で働く一つの魅力だと思います。

編集部

一定の仕事量はありながら自分のペースで仕事を進められる環境にあるのですね。

男性職員の育休取得を推進、ポイントは仕事の復帰のしやすさ

編集部

2人のお子さまを育てられている喜多見さんから見て、子育て中の職員さんへの鎌倉市役所のサポートはどう感じられていらっしゃるでしょうか?

喜多見さん

鎌倉市役所は子育て世代への理解が深いと思います。障害福祉課でも2023年に1名、市民税課でも2名の男性職員が育休を取得していました。男性職員が1年近い育休を取得するケースもありましたね。

編集部

やはり子育て中の職員に対してポジティブな言葉が投げかけられているのでしょうか?

喜多見さん

そうですね。育休を取得する職員に対しても子どもが生まれることを楽しみに待っていることを伝えますし、「行ってらっしゃい」と和やかに送り出す空気があります。

鎌倉市役所はフォロー体制もしっかりしていて復帰してからの仕事もきちんと用意されていると感じています。

編集部

復帰のしやすさというのはどういったところに要因があるのでしょうか?

喜多見さん

市役所の仕事の中には、定例的な業務も多くありますので、復帰後でも取り組みやすい業務を分担しながら、職場復帰後の環境に慣れていくことができます。そんな役所の環境というのも、育休から復帰しやすい要因の一つに挙げられると思います。

編集部

市役所の仕事の種類に幅があるので、子育て世代へ配慮ができるのですね。

入庁後10年で約20の研修を実施、市民の声を聴く機会も

笑顔でインタビューに答える中村さんと喜多見さん

編集部

喜多見さんをはじめ鎌倉市役所ではアグレッシブに働いている職員がたくさんいらっしゃると感じましたが、職員の成長を後押しするような研修はあるのでしょうか?

中村さん

鎌倉市役所には職員の階層別で実施する研修が豊富にあります。入庁してから年次を重ねるにあたり、求められる役割は変わっていきます。職務の遂行に必要な知識・能力の習得を目指し、入庁後10年ぐらいで約20もの研修を必修で受けることになります。

そのほかにも、通信教育など自主研修の助成、業務に必要だと市役所の方で指定した資格を取得した際の奨励金の支給など、職員の学びたい気持ちに応える制度を設けています。

編集部

新入職員向けのサポートはございますでしょうか?

中村さん

新規採用の職員については入庁後2週間の研修を実施しています。社会人のイロハから始まり、公務員として必要な姿勢、公務員の制度などの基礎知識、鎌倉市役所ってどんなところなのかを学びます。新卒・中途に限らず実りある研修になるように努めています。

また、新採用職員は入庁してから1年間はさまざまなことを吸収していくタイミングですし、ただ学ぶだけでなく、同期とのつながりを深めてもらうのも大きな意義だと考えています。そのため、入庁後の研修だけでなく、年4回新採研修を実施することで、年間を通して新採職員のフォローアップに努めています。

そのほか、新採職員にはメンターの先輩も付き、日々サポートに当たっています。

喜多見さん

中途での入庁ではありますが、私も新規採用職員の研修は受けています。グループワークの機会も多く、中途採用の身からすればありがたかったですね。新卒で採用された方とは年齢の差もありましたが、比較的スムーズにコミュニケーションを取ることができました。

編集部

さまざまな研修を実施されていますが、印象に残っているものはございますでしょうか?

喜多見さん

職員課に提案して、採用してもらった研修が印象に残っています。新採用職員向けの研修に「聴覚障害のある方への理解と手話研修」、「視覚障害をお持ちの方の声を実際に聞く」という研修を実施しました。充実した時間を過ごせたと思います。

ジョブローテーションが多いなかで自分を見つめ直せるキャリアデザイン研修

インタビューに答える中村さん

編集部

先ほど階層別での研修を実施されているというお話がありましたが、例えばどういった研修が実施されているのでしょうか?

中村さん

例えば管理職の場合だと、仕事と子育て両立支援研修というものを実施しています。ワークライフバランスを含めた働き方というのが主流になっていますので、その点の理解を深めるための研修となっています。

そのほか、キャリアデザインの研修というのも実施しています。自分が5年後、10年後にどうなっていたいかというのをロジカルに考えていく内容です。

編集部

喜多見さんもキャリアデザインの研修は受けられたことがあるのでしょうか?

喜多見さん

キャリアデザインの研修については私も受けましたが、将来のことを考えるきっかけとなった実りのある研修だったと感じています。市役所は頻繁に異動があります。そのなかには「なぜこのタイミングでこの部署に異動となったのか」と予想外のものもあるのです。

そんな環境にあるからこそ自分の将来が時に見えにくくなることもあるのですが、自分のことを見つめ直し、「このぐらいの年齢のときにはこんなことを考えなければならないんだ」と気づかせてくれます。

編集部

市役所の特性から見ても有意義な研修だといえるのですね。

鎌倉で働く誇りを胸により良いまちづくりを進めていく

鎌倉市役所の屋上から撮影した同市内の風景

編集部

鎌倉市は海も山もあり緑豊かなまち並みであると同時に、歴史のあるまちでもあります。働いていて、そのようなことを感じることはありますか?

中村さん

やっぱり現場に出るときはすごく鎌倉を感じますね。職員課に異動してくる前は、都市調整課というところに所属していて、現場によく出ていました。国道134号線の海沿いや鎌倉らしいまち並みを車で走ったり、歩いたりするときは、鎌倉で働いているんだなと感じますね。

編集部

鎌倉はネームバリューのあるまちでもあります。そんな鎌倉で働く職員さんはどのような思いを持って働いていらっしゃるのでしょうか?

中村さん

鎌倉市はやはりブランド力がありますし、鎌倉で働く誇りを持ちながら働いている職員が多いと思いますね。先人が築き上げてきた歴史や自然がありますし、そこを大切にしたまちづくりに取り組めるというのが鎌倉市役所で働く魅力だといえるでしょう。

一方で、「古臭い」「保守的」というイメージを持たれる方もいるかもしれませんが、鎌倉市はさまざまなことに挑戦している自治体でもあります。

今でこそ多くの自治体が「SDGs未来都市」に選ばれていますが、鎌倉市は制度が始まった初年度に選出されています。そのほかにも、共生社会の推進、かまくらURTLAプログラムに代表されるような教育関連など、数多くのことに挑戦しています。

「鎌倉らしさ」と「新しいことへの挑戦」。この相反しそうなもののバランスを取りながらまちをつくっていくことが鎌倉市で働くことの魅力ですし、そういう気持ちを職員はみんな持っているのです。

編集部

喜多見さんは鎌倉市の将来についてどうお考えでしょうか?

喜多見さん

これからは、地方自治体が取り組んでいかなければならないことがさらに増えていくと思っています。鎌倉市も、より魅力を国内外に伝えていくことが大切になってくると感じています。

鎌倉市はありがたいことに既存のブランド力により、何もしなくても注目をしてもらえる一面もあると思います。

しかし、今後行政の運営は人口減少や財政面からどんどん難しくなっていきます。何をすれば現在より良くなるかをひとりひとりが考えていかなければいけないと思います。それを続けることで、成長し続ける魅力あるまちになっていくと信じています。

私に限らず、今行っているお仕事が必ずしも鎌倉らしさを感じられるかというとそうではありませんが、日々の積み重ねが大好きな鎌倉市の発展につながっていると思い働いています。

編集部

今でも人気の観光地ではありますが現状に満足することなく、さらに魅力的なまちにしていきたいと考えていらっしゃるのですね。

さまざまな仕事を楽しみ、前向きに挑戦する人材を歓迎

笑顔でインタビューに答える中村さんと喜多見さん

編集部

鎌倉市役所に合っている方はどのような方でしょうか?

中村さん

鎌倉市役所に限った話ではなく、市役所はジョブローテーションが頻繁にあり、3~5年を目途に異動があります。なので、さまざまなお仕事を経験できるという点に魅力を感じることができる方が合っていると思います。

福祉関係の仕事もあれば採用の仕事もありますし、ヘルメットを被って現場に出る仕事もあります。色々な仕事に興味をもって取り組める方を歓迎したいですね。

また、先ほどお話ししたように鎌倉市は色々なことに挑戦するまちです。そういった姿勢が好きな方には向いていると思います。

編集部

最後に、鎌倉市役所に興味を持っている方に向けてメッセージをお願いいたします。

喜多見さん

市役所は、法律に縛られる部分も確かにありますが、私の感覚では思っていた以上にやってみたいことができています。先ほど中村が申し上げた通り、市役所は異動も多いです。その分、経験や関わる人の範囲も広がっていくと感じていますね。

そのため、そういった市役所の性質を前向きに捉えることができる方であれば向いているように感じます。庁内の人間関係はとても良いので、助け合いながら仕事を進められる方のご応募をお待ちしています。

中村さん

鎌倉市役所の約半数の職員は入庁10年目未満です。つまり、若いうちから仕事を任せられるような環境にあるといえるのです。

そのため、向上心を持って自分で動くことが重要になってきます。前向きに挑戦できる方と一緒に仕事をしたいですね。

編集部

これまで積み上げてきた歴史を大切にしながらも、挑戦に前向きな環境が鎌倉市役所にあるのだと感じました。本日はありがとうございました。

■取材協力
神奈川県鎌倉市:https://www.city.kamakura.kanagawa.jp/
採用ページ:https://www.city.kamakura.kanagawa.jp/syokuin/saiyo-t.html