メンバーのワークライフバランスを重視し、若手の成長を促しながら成長を続ける企業をインタビューする本企画。今回は、アスリート向け座学研修事業などを展開している株式会社ホープスにお話を伺いました。
株式会社ホープスとは
▲アスリート向けの座学研修事業を展開している(公式ページより)
株式会社ホープスが手掛けているのは、アスリートのパフォーマンス向上を目指した座学研修事業です。プロ野球チームやプロバスケットボールチームなど、一流のアスリートに向けて「考えることの重要性」を伝えています。
顧客は今やアスリートだけに限りません。20〜30代の若手リーダーを育成しようとしている一般企業からも依頼があるとのことです。
会社名 | 株式会社ホープス |
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住所 | 東京都渋谷区代々木1-25-5 BIZ SMART代々木342号 |
事業内容 | ・スポーツ選手向け研修事業 ・一般企業向け研修事業 |
設立 | 2000年12月25日 |
公式ページ | https://hopes-net.org/ |
株式会社ホープスのメンバーの多くは、自分の得意分野に関する副業をしています。一人ひとりが自分の好きなことを追求できるよう、メンバーのワークライフバランスを重視しているのです。
代表取締役社長の坂井伸一郎さん曰く、「みんなが6~7割の力で働けるような会社にしたい」とのことです。この言葉に込められた思いや株式会社ホープスのカルチャーについて、坂井さんにお話を伺いました。
本日お話を伺った方
株式会社ホープス
代表取締役社長
坂井伸一郎さん
さまざまな競技のプロアスリートの座学研修事業を展開
▲アスリート向けの座学研修サービスを展開している
編集部
初めに、ホープスさんの事業内容についてお教えください。
坂井さん
ホープスは人材育成の分野でサービスを展開しています。手掛けているのは、スポーツ選手やスポーツチームに対する座学研修事業です。
スポーツ選手が成長し、試合に勝つために必要なこととして「心・技・体」の重要性が語られてきました。ホープスはそこに「智」を加え、「アタマを使って強くなる」という場を提供しています。
これまで読売ジャイアンツ様や埼玉西武ライオンズ様などのプロ野球チーム、日本陸上競技連盟様などに所属する一流アスリートに向けて860回(2023年7月末日現在)を超える研修を実施してきました。
これらの実績から一般の企業様からも研修を実施してほしいという要望をいただいており、現在は新入メンバー研修や管理職研修なども手掛けています。
編集部
アスリートと普段接することがない私たちからすると「アスリートは練習漬け」というイメージがありますが、座学の研修なども受けられているのですね。
坂井さん
あまり知られていないことですが、プロの選手たちは身体や競技技術のトレーニングをするだけでなく、その後にみんな研修を受けたり勉強したりしています。
こういった一流アスリートの勉強の場を作っていけるというのが、ホープスの仕事のおもしろさですね。
編集部
さまざまな一流アスリートたちを、「学び」という分野で陰から支えているのですね。
▲オンラインでも研修を実施している
ホープスでは若手メンバーを積極採用し、組織の若返りが進行中
編集部
ホープスさんのメンバーの年齢層について伺わせてください。
坂井さん
ホープスのコアメンバーは私を含め9名です。2023年12月にベテランメンバーが定年退職する予定となっていることもあり、2023年に入って若手の人材を数名採用しました。会社全体として若返りを図っているところです。
2023年に採用したメンバーは、24歳の女性と30歳の男性です。ほかにも、27歳と37歳のメンバーが在籍しています。
編集部
多くの若手メンバーが活躍されていますね。やはりスポーツ経験者が多いのでしょうか?
坂井さん
ホープスにはスポーツを経験したことのあるメンバーも多いですが、未経験の方も採用しています。2年ほど時間をかけて人材業界での仕事を覚えてもらうイメージですね。
新規営業はないため自分の習熟度に合わせて無理なく仕事を学べる
編集部
さきほど2年かけて仕事を覚えてもらうというお話がありましたが、どのようにメンバーの教育を進めているのでしょうか?
坂井さん
新たなメンバーに仕事を覚えてもらうにあたって、まずはアスリートに対して実施している研修や一般企業向け研修にオブザーバーとして同行してもらい、見て学んでもらいます。特に入社して3カ月から半年ほどは、見学する機会を積極的に作っています。
また、商談についても入社していきなりメインで担当になるのではなく、既存メンバーのサブという立場で同行してもらっています。なのでお客様へのホープスの紹介の仕方やサービスについては、実際の商談の場で学んでもらうことになりますね。
メンバーによって習熟度も違うので、独り立ちするタイミングはそれぞれが自分で大丈夫と思った時点になります。
編集部
基本的にはOJTで学んでもらうのですね。商談についてお話がありましたが、新規のお客様と商談に至るまでには営業も必要だと思います。新しく入社した若手メンバーも新規の営業を担当することはあるのでしょうか?
坂井さん
ホープスでは基本的にコアメンバーがテレアポや突撃訪問といった新規開拓営業をすることはありません。なので、ベンチャー企業でイメージされがちな営業のつらさみたいなのはないと思います。
ホープスは、さまざまなスポーツチームとコネクションを持つスポーツ系ビジネス企業様と提携しています。なので、基本的にその企業様を通じて研修の依頼が入るのです。
ホープスの営業の仕事はお客様の話をよく聞いて、会社に持ち帰ってメンバーと相談しながら提案書を作るというイメージです。
そのため、新たなメンバーはしっかり段階を踏みながら仕事を覚えられます。サブ担当として見ることから始めて、提案を議論する会議に参加し、ヒアリングはできなくても提案書について説明してみるというように、仕事の過程を切り離して一つずつ身に付けてもらっていますね。
編集部
自分の習熟度に合わせて無理なく仕事を覚えられるというのは新たなメンバーにとってはありがたい環境ですね。
インセンティブを稼ぐことを強要しない給与形態
編集部
ホープスさんは自分のペースで働ける環境が整っていると感じましたが、そのような環境を象徴するような制度などはございますでしょうか?
坂井さん
制度ではないのですが、ホープスではメンバー一人ひとりのキャリアに合わせた給与形態を採用しています。基本給プラスインセンティブという形を取っているのですが、例えばインセンティブは必要なくてずっとサブの立場で働きたいというような働き方も認めているのです。
一方、早く成長してインセンティブを稼ぎたいという働き方ももちろん認めています。案件について新規で担当したり、他メンバーから引き継いだりするとインセンティブの対象となります。なのでモチベーション高く働くことも可能です。
編集部
多様な働き方を認めるという会社は多いですが、給与にまで反映されているのは珍しいですね。
坂井さん
メンバー全員に「早くインセンティブを稼げるようになりなさい」とは言いませんね。キャリアに関する考え方はメンバーそれぞれです。もしインセンティブを稼ぎたいということであれば、早く成長するためにもちろん周囲も協力します。
メンバーの多くが自分の専門分野に関する副業に取り組む
▲強豪チアリーディングチームの指導者も務めている若手メンバー。チア選手を持ち上げながら勉強中!?
編集部
ホープスさんのメンバーの多くは自分の専門分野に関する副業をされているそうですね。
坂井さん
ホープスに所属する9名のメンバーのうち、7名は何かしらの副業をしています。
さきほどご紹介したメンバーについていえば、27歳のメンバーは強豪チアリーディングチームの指導者も務めながら、自分自身もパフォーマーとして活躍しています。
また、入社したばかりの30歳のメンバーは、現役のアメリカンフットボールの選手です。平日の夜や土日はトレーニングと練習や試合に臨んでいます。ほかにも、現役のサッカー指導者や現役SNSコンサルタントとして活動しているメンバーもいますね。
▲現役アメリカンフットボール選手でもあるホープスの若手メンバー
編集部
それぞれが自分の突き詰めたい分野への取り組みとホープスでの仕事とのバランスが取れているのですね。
坂井さん
ワークライフバランスという観点でいうと、ホープスは産休育休についてもしっかり取ってもらっています。先ほどご紹介した2023年入社の女性メンバーは、現在産休育休を取得中です。復帰は2024年4月1日の予定です。
▲ホープスの公式X(旧Twitter)を運営している女性メンバーは現在育休を取得している
週の勤務時間の60%はテレワーク勤務、長野で働くメンバーも
▲テレワーク勤務が定着しているためオフィスにはデスクが3つしかない
編集部
それぞれのメンバーの方々が自分のライフスタイルを大切にしながら働けていますが、このような環境を実現できている理由は何でしょうか?
坂井さん
テレワーク勤務が定着していることが、メンバーのワークライフバランスを実現できている理由の一つとして挙げられます。ホープスは出社とテレワークのミックス勤務制を採用しており、平均して週の勤務時間の60%程度がテレワークとなっています。
オフィスのデスクは全メンバー9名に対し、3つしかありません。それでも十分に仕事が回せるほど、テレワークが定着しているのです。
編集部
テレワークによって、ホープスさんのメンバーは実際にどんな働き方ができているのでしょうか?
坂井さん
育休を取得中の女性メンバーは、長野県在住です。週に1回は新幹線を使って出勤してもらっていますが、それ以外は長野で勤務しています。また、都内在住ではありますが、親御さんの介護とお孫さんの世話をしながらテレワークで働いているメンバーもいます。
編集部
時間と場所を問わない働き方が実現できているからこそ、メンバー一人ひとりが自分の状況に合わせて働き続けられるのですね。
「ベストを尽くす」ことは求めていない、社長の経験が生んだカルチャー
▲「ホープスは止まり木のような会社」と話す坂井さん
編集部
給与形態やメンバーが副業に取り組んでいることからも働きやすい環境が整っているホープスさんですが、働くことについて坂井さんの思いが反映されていると感じます。
坂井さん
誤解を恐れずにいえば、私はメンバーみんなが6~7割の力を出して働けるような会社を作りたいと思ってホープスを立ち上げました。なので、「ベストを尽くす」「フルパワーを出す」ということはメンバーに求めていませんし、ホープスを何倍も成長させたいとも考えていません。
また、メンバーについても何十年もホープスで働いてほしいとも思っていないですね。ホープスで働くのは、例えば「自分が大好きなスポーツのプレーを続けつつ働きたい」という思いがある間だけで良いのです。
現役を引退して、仕事でさらに稼ぎたいというように考え始めたのであれば、ホープスではない次のステージに進んでもらって構わないと思っています。
ホープスのイメージは止まり木のような会社です。なので、入社から10年以内で巣立っていくような会社で良いと考えています。それでも在籍中はOJTをしながら成長してもらいます。
次のステージでどこに行っても恥ずかしくないような人材を育てることを理想として掲げながら会社を運営しているのです。
編集部
さまざまな企業のお話を伺う中であまり聞いたことのない考え方だと感じました。そのような考えに至った背景は何でしょうか?
坂井さん
私はもともと大手百貨店の高島屋で35歳まで働いていました。高島屋を退職後は「ITベンチャーで起業して株式上場を目指したい」と考えていましたね。しかし、起業するためのアイデアや人脈がありませんでしたので、メンバーが1人しかいないベンチャー企業に入社しました。
その会社で3年目を迎えるころ雇われ社長となり、3年間でメンバー数200名、年商135億円になるまで会社を大きくしました。そしていよいよ上場というタイミングになったころに、リーマンショックによる不況に巻き込まれてしまったのです。
急角度での成長が難しくなり、オーナー判断で株式上場を目指さないことになりました。私もそのタイミングで起業することを決意しましたね。
この会社には5年間在籍し、今よりも収入は2倍以上ありました。ただ、私自身が会社を急成長させること、そしてそれに伴って多くの人材が会社を去っていく光景などを目のあたりにし、少し疲れてしまった部分もあったのです。
そんなこともあって、今のホープスの働き方が形成されていきました。
編集部
坂井さんのご経験から今のホープスのカルチャーが作られているのですね。
ホープスでは「スポーツが好き」という気持ちが必要不可欠
編集部
採用にあたってこだわっていることはございますでしょうか?
坂井さん
ホープスでは人材を採用する際、メンバー全員で多数決を取って採用の可否を決めています。
ホープスの採用面接は、1次を私が、それ以降はメンバーが担当しています。月に1度全メンバーが出勤する日があるのですが、そのときに候補者をゲストとして呼んで、メンバーみんなと会う機会を設けています。
編集部
社長が1次面接を担当するというのは珍しいですね。狙いは何でしょうか?
坂井さん
私が1次面接、メンバーがその後の面接を担当することで、候補者にしっかりホープスについて理解してもらえます。私がホープスについて候補者にどんな会社か説明して、それが嘘ではないということをメンバーに補足してもらうイメージです。
編集部
ミスマッチを防ぐ狙いがあるのですね。最後に、ホープスに興味を持っている方に向けてメッセージをお願いいたします。
坂井さん
ホープスに入社するにあたっては、スポーツが好きであることが前提です。そうでないと、仕事のおもしろさが半減してしまうのではないかと思います。有名スポーツ選手と接する機会も多いので、スポーツが好きな人はモチベーション高く働くことができるでしょう。
また、これまでお伝えした通り、ホープスは歩き回って汗をかきながら営業をするという働き方ではありません。研修の現場に立ち会うなど、多くの学びの機会を得ることで若いころから成長できる会社です。
「自分の好きなことと仕事を両立させたい」ということが実現できる環境にありますので、何か極めたいことがあるという方はぜひ入社いただければと思います。
編集部
収入を安定させながら自分の道を究めたいという方にとって理想的な職場だと感じました。本日はありがとうございました。
■取材協力
株式会社ホープス:https://hopes-net.org/