大学発の医療ベンチャー、ジークス株式会社が「建設的な対立」を推奨する理由とは

テクノロジーの力で社会課題の解決に挑む注目企業を紹介する本企画。今回は、小児科に特化したオンライン診療サービス「あんよonline」の開発・運営を行うジークス株式会社をインタビューしました。

ジークス株式会社とは

ジークス株式会社は、名古屋大学・名古屋工業大学公認のベンチャー企業として、ヘルスケア領域のサービスを手がけています。

2023年6月に正式にスタートした「あんよonline」は、小児科に特化したオンライン診療サービスで、子育てをする保護者と在宅で勤務したい医師をつなぐサービスとして注目されています。

会社名 ジークス株式会社
住所 愛知県名古屋市中村区名駅1-1-3JRゲートタワー27階 名古屋大学オープンイノベーション拠点
事業内容 小児科オンライン診療システム「あんよ」の開発・運営
設立 2019年9月
公式ページ https://www.gecs.tech/

ジークス株式会社は「カスタマーファースト」を掲げ、患者と医師を第一に考えたプロダクトづくりを推進しています。そのため、「肯定だけでは良いサービスは生まれない」と考え、社内の会議で積極的に反対意見を出すなどの「建設的な対立」を歓迎しています。

今回は、代表取締役CEOの村上嘉一さんと、取締役CTOの成川喬朗さんに、企業風土やエンジニアの活躍状況、インターン制度について聞きました。

本日お話を伺った方
ジークス株式会社 代表取締役CEOの村上嘉一さん

ジークス株式会社
代表取締役CEO

村上 嘉一さん

ジークス株式会社 取締役CTOの成川喬朗さん

ジークス株式会社 取締役CTO

成川 喬朗さん

小児科オンライン診療「あんよonline」が正式スタート

ジークス株式会社が運営する「あんよonline」のサービス画面
▲ジークス株式会社は小児科に特化したオンライン診療サービス「あんよonline」を運営する。(公式サイトから引用)

編集部

まずはじめに、ジークスさんの事業内容についてお伺いできますでしょうか?

村上さん

私たちは、在宅で働きたい医師と診療を必要とする患者さんを、オンライン診療という形でマッチングするアプリを開発しており、2023年6月に小児科に特化したオンライン診療サービス「あんよonline」の提供を正式に開始しました。

編集部

「あんよonline」について、詳しく教えてください。

村上さん

小児科にかかりたい親子と、在宅で働きたい小児科医をつなぐオンライン診療サービスで、小児科医は弊社が連携している医療機関へ保険医登録をしたあと、自宅からオンラインで診察を行うことができます。

保護者と子どもは自宅で診察を受けることができるほか、薬の受け取りは提携する薬局から自宅に無料配送するか、薬局に取りに行くか選ぶことができます。

親子がオンライン診療を受けるようす
▲「あんよonline」では、スマートフォンを使って医師のオンライン診療を受けることができる。

編集部

保護者は医療の専門知識を持っているわけではないので、子どもの体調が少し悪そうな時に「受診すべきなのかどうか、わからない」と迷うことがありますが、オンラインならもっと気軽に受診できそうです。

村上さん

そうですね。ほかにも、病院によっては混んでいて長い待ち時間を必要としますし、感染症のリスクを警戒して病院に行くことをためらう保護者もいます。オンライン診療であれば、ビデオ通話で5分から10分の診療を受け、薬を受け取るだけなので、このような心配が不要です。

また、診察に対応する時間は医師が自由に設定できるため、夜間や休日に対応している医師とマッチングすれば、子どもが急に具合が悪くなった時もすぐに診療してもらうことができます。

編集部

サービスを小児科に特化した理由はありますか?

村上さん

弊社は、子どもの健康に関する悩みや相談に小児科医が回答するQ&Aサービス「あんよ」を以前から運営していたのですが、ユーザーから「もう少し詳しいことを聞きたい」という声や、「診療や薬の処方までサポートしてもらえるサービスがほしい」という声をいただいたことをきっかけに、小児科のオンライン診療サービスが生まれました。

編集部

「あんよonline」の医師側のメリットとしては、どのような点があげられますか?

村上さん

女性医師は、出産などをきっかけに医療の現場から離れる人が多く、男性医師より離職率が高い現状があります。また、妊娠中や子育て中は当直ができないため、収入が減ってしまうという問題もあります。

在宅で診療するという新しい選択肢を提供することで、医師がライフイベントでキャリアを中断することなく、活躍し続けられると考えています。

編集部

患者さんと医師、それぞれが抱える課題を解決できるサービスなのですね。

登録医師も利用者も拡大中。ジークスの今後の成長戦略とは

ジークス株式会社代表取締役CEOの村上嘉一さんが「あんよ」のロゴが表示されたタブレットを持つようす
▲村上さんは、名古屋大学の学生だった19歳の時にジークス株式会社を創業した。

編集部

「あんよonline」のサービスに対する、利用者や医師の反応はいかがですか?

村上さん

稼働している登録ドクターの数は、現在(2023年9月時点)15名で、ウェイティングリストには100名以上の医師が登録しています。

患者さんの数は、ここまで前月比50%から70%増で成長しており、サービス開始から延べ2,000名近くに診療を行ってきました。

診療科を拡大し、家族全体の健康をサポートしたい

ジークス株式会社代表取締役CEOの村上嘉一さん

編集部

ヘルスケアスタートアップとして注目されているジークスさんですが、サービスの今後の展開や成長戦略についてもお伺いできますでしょうか。

村上さん

小児科オンライン診療については、子どもの健康のさまざまなニーズにお応えできるように、行政や医療機関などと連携しながらサービスを充実させたいと考えています。

また、現在は小児科を中心に、皮膚科と内科にも対応していますが、さらに診療科の拡大を行い、家族全体をトータルサポートできるようなサービスにしたいと思っています。

編集部

事業を拡大するうえで、大切にしたい姿勢や考えはありますか?

村上さん

私たちが掲げるバリューのひとつに、「顧客の理想から考える」というものがあります。自分たちのエゴではなく、ユーザーや医師の声を聞く姿勢を大切にしながら顧客ファーストのサービスを提供したいと思っています。

編集部

医療サービスの革新に取り組むジークスさんの、今後の展開が楽しみです。

ジークスにはエンジニアが成長できる環境がある

ジークス株式会社 取締役CTOの成川喬朗さんがプログラミングをするようす
▲成川さんは、名古屋大学在籍時に村上さんと一緒にジークス株式会社を起業した。

編集部

続いて、ジークスさんで働くエンジニアについてお伺いしたいと思います。まず、現在何名のエンジニアが勤務しているか教えてください。

成川さん

弊社は全体のメンバー数が15名で、このうち私を含めて3人がエンジニアとして働いています。私以外の2人は、副業の形で参加しています。

編集部

開発環境についても教えていただけますか?

成川さん

私たちが開発しているものは4つあります。

まず、医師・薬局向けのWebアプリについては、Next.jsを使って開発しており、患者さん向けのiOSとAndroidネイティブアプリはReact Native(Expo SDK)、患者さん向けのWebアプリはReact Native for Web(Expo SDK)、患者さんがLINEでサービスを使うためのアプリはReact Native for Web(Expo SDK)で開発しています。

プログラミング言語はTypeScriptを使用し、クラウドサーバーはAWSを使っています。

自分の提案がプロダクトに反映される醍醐味がある

ジークス株式会社 取締役CTOの成川喬朗さんがパソコンに向かって作業するようす

編集部

エンジニアとしてジークスさんで働く際、どのようなところに成長の機会がありますか?

成川さん

私たちは、フロントエンドエンジニアに寄せた技術選定にしているので、フロントエンドエンジニアの方であれば、プロダクトがどのように動いているのか、全体像をつかめるのではないかと思います。会社によってはフロントエンドとバックエンドを完全に分けているところもありますが、弊社の場合は「全部やるぞ」というスタンスなので、プロダクトがどのように動いているかを学べます。

また、弊社はベンチャーなので、提案がプロダクトに反映されるまでの時間が短く、自分がプロダクトに貢献しているということを実感しやすいと思います。

編集部

自分のアイデアをもとにプロダクトが出来上がっていくのは、面白みがあって刺激的ですね。

仕事に慣れたらリモート勤務も可能

編集部

エンジニアさんの勤務スタイルについても教えてください。

成川さん

弊社では、エンジニア以外も基本的にはオフィスに出社して働いています。特に初めの頃はしっかりキャッチアップするためにも、対面でコミュニケーションした方がいいと考えています。仕事に慣れてきたら、状況に応じてリモート勤務も可能です。

編集部

勤務時間についてはいかがですか?

成川さん

フレックスタイム制を採用しているので、始業や終業時間はそれぞれの都合に合わせて柔軟に決めています。

ジークスはエンジニアと営業部門でインターンを積極採用

ジークス株式会社代表取締役CEOの村上嘉一さん

編集部

ジークスさんでは、インターン生が多く働いていると伺いました。

村上さん

はい。創業時からインターンの受け入れを行っており、現在は8名が働いています。

編集部

インターンを受け入れようと考えた理由は何でしょうか?

村上さん

私と成川が大学生で起業したこともあり、周りにいる同世代の学生から、「自分もベンチャー企業の仕事に関わってみたい」という相談を受けることがよくありました。そこで、インターン制度を導入して弊社で実際の仕事を体験してもらうことにしました。

インターンと社員が分け隔てなく切磋琢磨する

編集部

ジークスさんのインターンでは、どのような業務を経験できますか?

村上さん

ひとつはエンジニア開発で、それぞれの能力に応じて成川が業務内容を判断しています。「これはできそうだから、ちょっとチャレンジしてみようか」という感じでどんどん挑戦してもらうので、スキルの向上が期待できると思います。

もうひとつはビジネス部門の業務で、主にオンライン診療サービスに登録する医師の獲得を担当してもらいます。参加者に医学部の学生が多いこともあり、月に数十人の医師とオンラインミーティングを行い、弊社の事業説明などをしてもらっています。ほかにも、患者さんを獲得するためのマーケティング業務として広告の運用やデザイン作成などをお願いしています。

編集部

今ある能力にプラスして新しいチャレンジができたり、村上さんや成川さんの近くで起業の現場を見ることができる環境なのですね。

村上さん

はい。私たちは「同じ釜の飯を食う」という感覚で、フラットな関係を築いているので、インターンも社員もみんなで切磋琢磨しながら一緒に成長できると思います。

良いプロダクトを作るためにジークスが重視するカルチャーとは

ジークス株式会社代表取締役CEOの村上嘉一さん

編集部

ジークスさんの企業カルチャーや社内の雰囲気について、お聞かせいただけますか?

村上さん

弊社には、「建設的対立を楽しむ」というカルチャーがあります。議論の場では、積極的に対立しようという意味です。

「いいね、いいね」と肯定するだけでは良いプロダクトは生まれないと思っているので、お互いが思っていることを率直に言ったり、賛同していたとしてもあえて別の視点から見て問題点を見つけ出すことを推奨しています。

編集部

多角的に物事を見ながら良いサービスを作り上げているのですね。ただ、対立すると社内の雰囲気が悪くなることはありませんか?

村上さん

そのときは殺伐とした雰囲気になることもありますが、私たちは3つ目のバリューとして「JUST DO IT!」を掲げているので、徹底的に対立・議論をした後は「一丸となってやり切ろう」という気持ちで突き進んでいます。

編集部

「顧客の理想から考える」、「建設的対立を楽しむ」、「JUST DO IT!」という3つのバリューがあるからこそ、ユーザー体験の向上や事業成長に向けて結束して取り組むことができるのですね。

好きなことに熱中できる「ギーク精神」を重視

編集部

ジークスさんで働くメンバーの特徴についても教えてください。

村上さん

「ギーク(※)」という言葉が似合うメンバーが多いですね。これから仲間になる人にもギークであることを求めています。
(※)ギーク:特にコンピューター関連分野において、卓越したスキルがある人を指す。

編集部

好きなことに熱中し、突き進んでいくような人を求めているのですね。

村上さん

はい。例えば、休日でも趣味でコードを書いてしまうような人ですね。

成川さん

仕事としてではなく、「好きだからやりたい」という思いが根底にある人と一緒に働きたいですね。熱意があるからこそ、顧客ニーズにとことん向き合うことができるのだと思います。

編集部

「ギーク精神」を発揮して顧客ニーズに向き合ったエピソードはありますか?

村上さん

一番最初のプロダクトが出来上がったときは、一刻も早くユーザーの反応を確かめたくて居ても立っても居られなくなったので、近くの公園に行き、そこにいる親子に声をかけてオンライン診療予約を体験してもらいました。

目の前で実際に利用してもらうことで、ユーザーがプロダクトのどこに使いづらさや分かりにくさを感じるのかを理解できましたし、使っている時の表情を見ることでプロダクトにどのような印象を持っているのかを感じ取ることができました。

編集部

プロダクトへの愛やこだわりを感じるエピソードです。このような熱い想いが、良いサービスへとつながっているのですね。

チームで協力しながら顧客ファーストで働ける仲間を歓迎

ジークス株式会社の社員が集合するようす

編集部

最後に、ジークスさんのお仕事に興味を持った読者の方に、メッセージをお願いします。

村上さん

私たちは、「自分が自分が」というよりも、チームで動くことを意識したり、患者さんや医師に真摯に向き合うことを大切にしたいと思っています。医療や子育てに興味があり、ユーザーを第一に考えながら良いサービスを提供したいと思っていただける方を歓迎します。

編集部

ジークスさんには、フラットな関係で議論を歓迎するカルチャーがあるので、意見やアイデアを積極的に出しながらチームで良いプロダクトを作り上げたいと考える人にとって、最高の職場だと感じました。

本日は、ありがとうございました。

■取材協力
ジークス株式会社:https://www.gecs.tech/
採用ページ:https://www.gecs.tech/recruitment