教育やIT業界出身者も多い認定NPO法人CLACK。貧困家庭の高校生支援に力を集結

新しい働き方の制度や独自の取り組みをする企業・団体を紹介するこの企画。今回は、困難を抱える高校生にプログラミングによる”自走支援”を提供し、子どもの貧困課題に挑む、認定NPO法人CLACK(クラック)をご紹介します。

認定NPO法人CLACKとは?

認定NPO法人CLACKのホームページ
▲「生まれ育った環境に関係なく、子どもが希望とワクワクを持てる社会」を掲げる(公式ページより)

認定NPO法人CLACKは「生まれ育った環境に関係なく、子どもが希望とワクワクを持てる社会」をビジョンに掲げ、経済的・環境的に困難を抱える高校生を対象としたプログラミング学習支援とキャリア支援を行っています。

理事長の平井大輝さんは自分自身が経済的事情で苦しんだ中高時代の経験から、中高生たちへの学習支援に携わっていました。しかし、学習支援や居場所支援だけでは、将来的に経済的・精神的に自立して生きていくための力が培われないと感じます。

そこで、義務教育を終え、支援の手からこぼれ落ちやすい高校生に対し、”自走力”をつける支援を行いたいと、2018年に団体を設立しました。

認定NPO法人CLACKが提供するプログラムは、高校生が経済的理由で学びを諦めることのないよう、教材費や参加費は無料で、交通費も支給しています。これまでに体験会には500名超の、3ヵ月以上の継続的なプログラミング学習支援には200名を超える高校生が参加しました。

このような取り組みの継続により、2023年2月には本社を置く大阪市より高い公益性が認められ、「認定特定非営利活動法人(認定NPO法人)」として認定されました。

会社名認定NPO法人CLACK
住所大阪府大阪市淀川区西中島3-8-15 EPO新大阪ビルディング1001号
事業内容経済的・環境的に困難を抱える高校生を対象としたプログラミング学習支援とキャリア支援
設立団体設立:2018年6月1日、法人設立:2019年3月29日、認定取得:2023年2月8日
公式ページhttps://clack.ne.jp/
働き方支援は対面で行い、運営はテレワークを活用している

事業・組織ともに拡大フェーズにある認定NPO法人CLACKについて、事務局長の中川さんと事業統括部長の井上さんに伺いました。

本日お話を伺った方
認定NPO法人CLACKの中川公貴さん

認定NPO法人CLACK
事務局長

中川 公貴さん

認定NPO法人CLACKの井上泰孝さん

認定NPO法人CLACK
事業統括部長

井上 泰孝さん

貧困家庭の高校生に無料でプログラミング学習とキャリア支援を提供

認定NPO法人CLACKの高校生支援の様子
▲経済的困難を抱える高校生に対して、無料でプログラミング学習を教えている

編集部

はじめに、CLACKさんの事業内容についてご説明いただけますか?

中川さん

CLACKは主に経済的困難を抱える高校生に対して、無料でプログラミング学習支援とキャリア支援を行っています。メインが3ヵ月のプログラムで、その中で、ITのスキルはもちろんのこと、自己肯定感や学習意欲、問題解決能力も身につけてほしいと思って活動しています。

編集部

”自走支援”という言葉をホームページで拝見しました。高校生が将来自走するための支援として、プログラミング学習を選ばれたのはなぜだったのでしょうか?

中川さん

プログラミングは小さな成功体験を踏みやすい、という点が一番大きいと思っています。CLACKに来る高校生たちは、5教科の勉強には目的を感じられない子も多いです。しかし、プログラミングは自分で作ることでわかりやすいアウトプットが出ます。

また、IT人材が不足するこれからの時代、プログラミング技術は自立に役立つスキルとなります。こういった理由から、彼らのモチベーションを保ちやすいのです。

編集部

プログラミングはどのように学習していくのでしょうか?

中川さん

プログラミング技術を習得するためには、自分で調べて自分で勉強していくサイクルが必要です。そこで、高校生には教材を見ながら自分でやってもらい、わからないところや詰まったところがあれば教室にいる大学生がサポートして解決したり、勉強の仕方をフォローしたりしています。

編集部

年齢の近い大学生がサポートに入られているのですね?

中川さん

高校生3人に対して大学生のメンターを1人付けて手厚くサポートしています。メンターはプログラミングを教えるというよりは、どちらかというと、寄り添って伴走していくことが仕事です。高校生1人ひとり家庭の状況や困難の度合い、プログラミングへの興味も違うため、各自の状況に合わせてサポートします。

編集部

メンターは3ヵ月間、高校生に伴走する役割なのですね。キャリア支援はどのように行われていますか?

中川さん

企業で高校生のキャリア支援をしていた方のサポートでベースとなるキャリア支援プログラムを作り、これをカスタマイズして使用しています。また、社会人のエンジニアの方にボランティアで来てもらい、普段どんな仕事をしているか、なぜこの仕事を選んだのかといった話を日常会話の中でしてもらっています。

編集部

かしこまって講義を受けるというよりは、隣にいる社会人から体験談を聞くというスタイルなのですね。参加する高校生は大学生メンターや社会人との何気ない日常会話から、キャリアの考え方を深めているのだと思います。

企業からの資金提供が年々増え、事業規模を拡大中

高校生に寄り添う認定NPO法人CLACKの支援の様子
▲CLACKさんの教室数は大阪・東京で拡大している

編集部

続いて、CLACKさんの事業成長について伺います。教室数や事業規模の変化について教えていただけますか?

中川さん

支援拠点は、コロナ禍でなかなか立ち上げが難しい状況でしたが、少しずつ拡大できました。2018年に大阪・西中島の教室から始まり、2021年に大阪・堺教室、2022年に東京教室を開設しました。3ヵ月のプログラムを終えた卒業生向けの教室も開催しており、卒業生向けを含むと5教室まで拡大することができました。

NPO法人なので売上拡大を目指しているわけではありませんが、事業規模では毎年およそ2倍のペースで成長しており、2022年度は5,000万、2023年度は1億円くらいの規模になってきています。

編集部

事業規模が拡大している背景については、どうお考えですか?

中川さん

1つは、高校生1人ひとりに向き合いながら、団体メンバーが支援を届けてきたことがあります。もう1つは、私たちがコツコツやってきた点を多くのステークホルダー(※)の方に評価いただき、資金提供を受けてさらに支援を広げるという循環ができたことです。
(※)資金提供者・行政・理事・職員・ボランティア・地域社会など利害関係者のこと

編集部

ホームページに支援を受けた企業を掲載されていますが、企業からの支援は増えているのでしょうか?

中川さん

はい。法人としての寄付のほか、使用済みPCの寄贈、アルバイトやオフィス見学の機会提供など、さまざまな形で支援してくださる企業さんはIT企業を中心に年々増えています。継続的に支援をいただいたり、金額を増やしてくださったりする企業もあります。

全国で100拠点を目指す。高校生支援のインフラに

認定NPO法人CLACKの支援現場の様子
▲日本全国に支援の現場を広げ、高校生支援のインフラになることを目指す

編集部

CLACKさんの支援対象となる高校生世代は、国内にどれぐらいいると想定されるのでしょうか?

中川さん

子どもの貧困問題でよく使われる数字としては、7人に1人の子どもが貧困状態であると言われています。われわれのメインターゲットはこれらの生徒たちです。

編集部

7人に1人という困難を抱える高校生の存在、社会からの評価、企業からの支援を受けて、CLACKさんはこれから拠点数を拡大されていくフェーズにあると思います。今後の展望についても教えてください。

中川さん

CLACKはミッションに「困難を抱える中高生に、デジタルを使った伴走支援のインフラをつくる。」を掲げています。「子ども食堂」のような存在までとはいわずとも、高校生支援のインフラになるぐらい広げていきたいと思っています。数字としては全国100拠点を目標にしています。

私たちは非営利活動としてやっているため、自分たちで100拠点を運営するのはお金の面からも難しいかもしれません。しかし、政策提言をして政策転換したり、形を作って仕組みとして日本全国に広げていったりしたいと思っています。

編集部

目指す世界を実現するために、CLACKさんが作ったものをみんなで広げていってもらいたいとお考えなのですね。

中川さん

はい。「プログラミング学習による高校生の自走支援」をしっかり仕組み化して、他の人が立ち上げたり、真似したりできるような形をつくっていきたいと思っています。

2018年の設立当初から運営はオンライン化

編集部

次に、CLACKメンバーの働き方について教えてください。2023年7月現在、社員6名、業務委託の方が20名以上いらっしゃると拝見しました。皆さん、どのような働き方をしていますか?

中川さん

社員は東京と大阪に分かれており、働き方は完全テレワークです。業務委託のメンバーには大学生メンター、エンジニアの取りまとめ役、教材開発の方らがいます。高校生に対する支援活動は対面で行っているので、メンターは各地の教室で働いています。

編集部

支援活動と運営で、対面とオンラインを使い分けされているのですね。オンラインでの運営は設立当初からだったのでしょうか?

中川さん

そうですね。設立当初からオンラインでやっており、基本的にすべてオンラインでやり取りは完了する形です。情報は全部GoogleドライブやSlackに集約し、紙の資料は企業さんとの間で必要なとき以外はほぼ使いません。

情報はオープンにし、自律的に働ける環境を目指している

認定NPO法人CLACKのバーチャルオフィスの様子
▲運営メンバーはバーチャルオフィスを利用しながらテレワークで働いている

編集部

オンラインでの運営下で、メンバー同士のコミュニケーションで工夫している点などはありますか?

中川さん

週2回、バックオフィスのメンバーも現場のメンバーも集まって全社員で話す社員定例会を行っています。普段は業務以外の話をする機会がないため、この定例会では会議を始める前に、1人1~2分、最近あったことを話してからスタートする”チェックイン”をやっています。

また、最近利用し始めたのがバーチャルオフィスです。「火曜日と水曜日のこの時間帯はなるべくバーチャルオフィスにいよう」という形で使っています。

編集部

バーチャルオフィスの作り方にも組織のカルチャ―が現れると聞きます。CLACKさんのバーチャルオフィスはどうですか?

井上さん

必要以上に会議室を作りすぎない点は意識して作りました。会議室を作るとそこにこもって出てこなくなる可能性があり、コミュニケーションを取る場所という前提が崩れますよね。できるだけ情報をオープンにするため、姿が見えなくなる空間は少なくしています。

編集部

情報もコミュニケーションもオープンにしようと考えていらっしゃるのですね。

中川さん

はい。完全テレワークで、人数も増えてきているところですので、情報はオープンにし、メンバーが自律的に働けるような形を作っていきたいと思っています。

「CLACKの一番の特徴はスピード感」。裁量を持って働ける

認定NPO法人CLACKの社員集合写真
▲20~30代が中心となる運営メンバー。民間企業の出身者も多い

編集部

CLACKさんでは代表が20代と若く、メンバーも20代後半から30代ぐらいの方が中心になっていらっしゃると拝見しました。団体の雰囲気やカルチャーについても教えてください。

中川さん

CLACKは民間企業出身の人も結構多く、教育系出身の人とIT業界出身の人が半々ぐらいいます。私自身もIT企業出身です。これは1つの特徴かなと思っています。

そのため、NPOとして高校生1人ひとりに時間をかけて伴走していくことをもっとも優先順位を高くやっていますが、それ以外の部分では合理性や効率性を意識しています。例えば、「これは必要ないならスパッとやめてしまおう」とか「この会議は1時間もとらず30分でいいのでは?」といった意識や雰囲気はあります。

編集部

効率的にできるところは効率化し、より優先度の高いことに時間を割けるようにという意識があるのですね。井上さんが感じるカルチャーや特徴も教えてください。

井上さん

CLACKの一番の特徴はスピード感だと思っています。NPOだとどうしても資金調達や規模拡大に時間がかかってしまうという側面がありますが、CLACKでは「目的に対して今何をすべきか」「何をするのが一番効果的か」を考えることが多いので、NPOの中でもスピード感を持ってできていると感じます。

スピード感を出すために、各メンバーには一定の裁量を持たせています。ですので、裁量を持って働きたい、スピード感をもってチャレンジしたいという人には、すごく面白い環境だと思います。

IT業界や子ども支援のNPOからCLACKに参画した理由

認定NPO法人CLACKの中川公貴さん
▲民間IT企業から入職した中川さん

編集部

中川さんはIT業界出身と伺いました。おふたりは、どういった経緯でCLACKさんに入られたのでしょうか?

中川さん

元々NTTデータという会社でSEをしていた私は、2020年11月、2人目のフルタイム職員として入りました。入職の理由を一言で言うと、「代表の目がバキバキで、本気を感じたから」です(笑)。

代表とはSNSでつながっている知り合い関係で、話を聴いてCLACKのビジョン、ミッションに共感しました。学生時代にNPOを設立した社会起業家である代表に対し、民間企業出身・IT業界出身の私自身が力になれることがあるのではと思いました。

編集部

代表がお持ちでない経験を活かし、CLACKのビジョン、ミッションを実現しようと思われたのですね。井上さんも参画の経緯を教えていただけますか?

井上さん

私自身はNPOを自分で設立したり、他のNPOで働いたりした経験があり、子ども支援に長く関わってきました。小学生や中学生と関わることが多く、勉強や食事、生活のサポートを行っていました。その中で、貧困状態にいる子どもたちが自立していくサポートが明らかに足りていないと感じていました

そこで、自立サポートの手段としてITを使うCLACKのやり方を知り、チャレンジしてみると面白そうだなと思ったのがきっかけです。

編集部

お2人は民間IT企業、子ども支援のNPOと異なる分野から興味を持たれたのですね。CLACKさんではさまざまなバックグラウンドの方が経験を持ち寄り、課題に挑んでいらっしゃるのだと思います。

多様なセクターと協働しながら社会課題解決に挑む人を募集

認定NPO法人CLACKの井上泰孝さん
▲「若い世代に参画してほしい」と語る井上さん

編集部

CLACKさんは事業・組織ともに拡大フェーズにあるNPO法人として、採用を強化されています。最後に、こんな人に来てほしいというメッセージをいただけますか?

中川さん

私が民間IT企業からCLACKに来て感じた面白さは、行政、学校、民間企業、財団などさまざまなセクターの人と協力しながら社会課題に向き合い、変えていく経験ができることです。社会をちょっとでも良くしていきたいと思っている人に来てもらえると嬉しいです。

編集部

若い世代のソーシャルビジネスへの関心は高いと聞きますが、NPOを立ち上げたり、民間企業からキャリアチェンジする若手の方は多いのでしょうか?

井上さん

若い世代の関心は高まっていて、学生時代にNPOでボランティアをするとか、インターンとして関わる人の数は、この10年で結構増えたと思います。CLACKの代表はまだ20代ですし、私自身も20代で一度NPO法人を立ち上げた経験があります。ただ、20代でチャレンジする人はまだ少ないという印象です。

中川さん

NPOで働くことを”キャリアの休憩期間”などという人がたまにいたりしますが、私はそうは思いませんし、CLACKはそのような環境ではありません。これからは、人がセクターを移動していく流れになったら良いなと思っています。例えば、民間企業からNPOに来て3年働き、また民間に転職するといった形です。

ですので、今はNPOとは異なるセクターにいて「自分はちょっと遠いかな?」と思っている人にもぜひ来ていただきたいです。

編集部

お話を伺っていて、CLACKさんからはスタートアップ企業のような雰囲気を感じました。

井上さん

実はよく言われます。

中川さん

われわれNPOにはスタートアップのような急激な成長戦略はとれませんが、スタートアップと同じように「出口戦略」はあると思っています。「エンドゲーム」と呼ぶことが多いですが、これは例えば、NPOで取り組む事業が行政の事業に転換されることだったり、そもそも取り組んでいる社会課題が世の中からなくなることだったりします。若いうちにこのようなチャレンジができたら、面白いと思いませんか?

編集部

中川さん、井上さん、本日はありがとうございました!

■取材協力
認定NPO法人CLACK:https://clack.ne.jp/
採用ページ:https://clack.ne.jp/recruit