スポーツビジネスで躍進するブースト。インターンが活躍する要因は「任せる」姿勢

独自のビジネスと若手の活躍を応援するカルチャーの両輪を回し、成長を続けている企業をインタビューする本企画。今回は、スポーツイベントの企画運営やアスリートのマネジメントなどスポーツに関するビジネスを展開している株式会社ブーストにお話を伺いました。

株式会社ブーストとは

株式会社ブーストのホームページに掲載されているイメージ画像

スポーツイベントの企画運営やアスリートのマネジメント、エージェント業務を展開している株式会社ブーストは、2017年3月に設立されました。企業が提供する福利厚生の一環としての社内運動会を企画するなど、普段スポーツをする機会が少ない層にもスポーツの魅力を届けています。

会社名 株式会社ブースト
住所 東京都世田谷区用賀2-39-17用賀駅ビル3F
事業内容 ・イベントの企画・制作・運営
・アスリート、タレントなどのマネジメントおよび活動サポート
・アスリート、クラブなどの契約および移籍のサポート
・スポーツ関連のコンサルティング
・WEBサイトの制作・運用およびWEBマーケティング
設立 2017年3月1日
公式ページ https://boost-inc.jp/

設立以来、売り上げを順調に伸ばしている株式会社ブーストですが、新型コロナウイルスの影響により企画していたスポーツイベントが次々と中止に追い込まれました。それでも、事業の存続に成功し、再成長を実現しています。

成長を続けられている要因や、インターンを含めた若い世代が活躍している点について、代表取締役の松尾佑樹さんにお話を伺いました。

本日お話を伺った方
株式会社ブースト代表取締役の松尾佑樹さん

株式会社ブースト
代表取締役

松尾 佑樹さん

スポーツイベントの企画・運営からアスリートのサポートまで広く展開

株式会社ブーストが企画運営した多摩川ハーフマラソンの様子
▲マラソンやサッカー、ヨガなどさまざまなスポーツイベントの企画運営に携わっている

編集部

はじめに、ブーストさんの事業内容について教えてください。

松尾さん

私たちブーストは、スポーツに関するマーケティング事業を手広く手掛けています。スポーツマーケティングでは、サッカーやマラソンなど特定の競技に特化してビジネスを展開している会社が多いのですが、ブーストは競技を問わずビジネスに結び付けています。

事業の一つとしてまず挙げられるのが、スポーツイベントの企画および運営です。サッカーやバスケット、マラソン、ヨガ、あるいはフェンシングなど、さまざまなスポーツイベントを手掛けさせていただいています。また、国内の卓球リーグ「Tリーグ」の演出なども実施していますね。

編集部

ジャンルを問わずスポーツビジネスを展開されているのですね。ほかに、手掛けている事業はあるでしょうか?

松尾さん

ブーストでは、スポーツ選手のマネジメントとキャスティング事業も展開しています。

マネジメントにおいては、選手の練習環境の整備からスポンサー獲得の交渉、選手のSNS運営など、選手が競技に集中できるためのあらゆる業務を担っています。スポーツマーケティングという切り口でビジネスを展開しておりますので、SNSや選手のWebサイト制作といったクリエイティブな部分では強みを持っています。

キャスティングは、いわば企業とアスリートを結びつけるビジネスです。例えばアスリートを起用したCMの制作を検討している企業がいたとして、その企業の要望をお伺いし、イメージにぴったりのアスリートをご紹介しています。

そのほか、スポーツ選手のエージェントもビジネスの一つとして展開しています。現在はJリーグのJ2、J3の選手約25人のエージェント業務を担っており、クラブの移籍交渉などの契約周りの代理人を務めています。

編集部

イベントだけでなく、アスリートのサポート業務も展開されているのですね。スポーツが好きで幅広い領域から関わりたいと思っている方にとっては、ブーストさんはすごく魅力的だと感じました。

「福利厚生×スポーツ」に魅力を感じ社内運動会の企画運営に携わる

株式会社ブーストが企画運営を手掛けた社内運動会の様子
▲社内運動会の企画運営も手掛けている

編集部

さまざまなスポーツに関係する事業を手掛けているブーストさんですが、設立のきっかけは何だったのでしょうか?

松尾さん

プロのアスリートやスポーツ愛好家向けの事業から始まったと思われがちですが、ブーストを設立したきっかけは、「スポーツと福利厚生をかけ合わせたらおもしろそうだ」という思いからでした。

私はブーストを立ち上げる前からスポーツビジネスで起業していて、この業界には20年以上います。起業から10年経ったころ、「インターネットの普及でコミュニケーションが希薄になってきた」という風潮が世の中にあったのです。そんなときに、社内コミュニケーションの一環として社内運動会が注目され始め、企画運営に携わるようになりました。

そのときに、普段スポーツをやらない人にスポーツをするきっかけを生み出せるのは素晴らしいと感じたのが大きかったですね。もちろん現在でも、社内運動会などの企画運営は続けて手掛けています。

編集部

新型コロナウイルスでもコミュニケーションが希薄になるという点がピックアップされました。リアルの場での交流の価値が見直されているなか、社内運動会の需要は高まっているのではないでしょうか?

松尾さん

社内運動会を開きたい、またはコロナ禍で中断中だったものを再開したいという声は多くいただいていますね。リモートワークが一般的になりましたが、リアルな場で触れ合えて、健康にもつながる社内運動会の需要は高まっていると思います。

コロナ禍のピンチから復活する起爆剤となったマラソン事業

株式会社ブーストが開催したBOOSTランニングフェスタin国立競技場
▲自社主催で開催したイベント「BOOSTランニングフェスタin国立競技場」

編集部

さきほどコロナ禍でのイベント自粛のお話がありましたが、ブーストさんの全体の事業成績にも大きく影響したのではないでしょうか?

松尾さん

立ち上げから売上を順調に伸ばせていたのですが、コロナ禍によって売り上げは大きく下がりましたね。売上の構成としてはイベントが大きく占めていたので、難しい状況でした。

スポーツイベントにはクライアントが主催のもののほか、我々が主催のものもあります。コロナ禍により、社内運動会にしてもプロモーションイベントにしてもクライアント主催のイベントは全て中止となってしまいました。売上としては75%以上がなくなりましたね。

このままではブーストが潰れてしまうという状況で、起死回生の一手としてマラソン事業を立ち上げ、マラソンイベントを自主開催することになったのです。

編集部

なぜマラソンに注目したのでしょうか?

松尾さん

マラソンに注目したのは、「個人でできること」「競技人口が多いこと」の2つを両立できるからです。

私個人はチームスポーツが好きなのですが、コロナ禍で集団でいることがはばかられるなかで、個人でできるスポーツのほうが情勢的に適切と判断しました。また、ある程度競技人口がいるスポーツでないと、採算的にも厳しいものがあります。

ブーストとしてはもともとマラソン事業は手掛けていましたが、設立時に比べれば注力できていなかった領域でした。なので、ある意味で原点回帰でもありましたね。初回の開催時に1,000人ほど集めることができ、毎月イベントを開催するたびに1,000人以上の参加者を集めることができました。

コロナ禍が落ち着く中でイベントの規模も大きくしていき、2023年の3月と6月には7,500人ほどの規模のマラソンイベントを国立競技場で開催するにまで至りました。

編集部

ピンチのなかでもじっくりイベントを育てたからこそ、社会情勢の変化と合わさる形でビジネスを大きく発展できたということですね。

参加者の目線に立ち、より良いスポーツイベントの形を模索し続ける

株式会社ブーストが企画運営を手掛けるRUN SUP YOGA
▲参加者目線を大切にしながら、イベントの企画運営を手掛けている

編集部

大きな社会の変化を乗り切り、事業を軌道に乗せているブーストさんの強みは何でしょうか?

松尾さん

ブーストの強みとしては、イベントを開催する際に参加者側の視点を大切にしている点が挙げられます。

たとえばヨガのイベントでは、もともと社内にヨガの経験者はいなかったんですよ。なので実際にヨガをやっている方やヨガインストラクターにヒアリングするなどして、参加費やイベントの内容を考えていったのです。もちろん、現在でもイベント内容の改善は続いています。

ヨガに限らず、あらゆる競技のイベントにおいて、「どんなイベントだったら参加者が楽しんでもらえるか」というのは大切にしています。

編集部

参加者側の視点は、社内運動会の企画運営においても重要となってきそうです。

松尾さん

社内運動会でも、参加者側の視点は大切になってきますね。先ほどお話しした通り、社内運動会は普段スポーツに触れていない方が多いイベントです。「運動をやりたくない人が運動会についてどう思うか」というのは昔から考え続けています。あくまで参加者側に立って、社内運動会の競技を提案するよう心がけています。

運営者側が楽しんでいるからこそ、参加者が楽しめるイベントを作れる

インターンシップ生も参加した株式会社ブーストの打ち上げの様子
▲多くのボランティアやインターンシップ生がイベントに携わっている。その一人ひとりを大切にするのがブーストの基本姿勢

編集部

「参加者側の目線に立つ」ということのほかに、ブーストさんの強みとして挙げられるのは何でしょうか?

松尾さん

ブーストのもう一つの強みは、イベントを一緒に運営する仲間を大切にしている点にあると思います。

ブーストの社員は5人ですが、とてもこの人数では大規模イベントの運営はできません。なので、外部から多くのボランティアやインターンシップ生を募っています。国立競技場のイベントとなると、およそ200人ほどのボランティアやインターンが関わることになります。その多くが20歳前後です。

ここで大切になってくるのは、イベント運営に協力してくれている方へのケアです。ボランティアやインターンが参加者に笑顔でエールを送れるよう、一人ひとりのモチベーションを上げなければなりません。

編集部

運営側が笑顔だと、参加者もより楽しめますよね。

松尾さん

マラソンイベント参加者のレビューを見ても、「若い方に『がんばって』と言われたから走りきれた」という声をよく聞きます。運営側が楽しんでいることが参加者にも伝わっているからこそ、参加者を継続的に集められたのではないかと考えています。

編集部

マラソンイベントが国立競技場で開催できるまでに育った要因がよくわかりました。

インターンが集まる要因は、学生の立場に立った施策

株式会社ブーストが企画運営したスケートボードイベントの集合写真
▲インターンシップ生の協力もあり開かれたスケートボートイベント

編集部

さきほどボランティアやインターンシップ生の話がありましたが、イベントに協力してくれている方は何名ほどいらっしゃるのでしょうか?

松尾さん

ボランティアについては、ブーストで管理している名簿には1,000人ほどリストアップされています。参加者1,000人規模のイベントだと60人ぐらいは協力してくれますね。

インターンシップ生は約30人います。インターンについては、ボランティアの方よりも深い部分で運営に携わってくれているイメージです。

編集部

それほどの人数を集められるのはすごいですね。なぜそれだけボランティアやインターンが協力してくれているのでしょうか?

松尾さん

ボランティアやインターンのほとんどは学生です。実際に学生の声を聞いていることが、ボランティアやインターンを集められている要因として挙げられます。

例えば、今の高校生は何かしらのボランティアに参加しないと単位をもらえないというケースがあるそうです。そういった今の学生の事情を聞くだけでなく、どういう手段でボランティアの募集を探しているのかということについてもヒアリングしています。

ボランティアを探していくなかでブーストのホームページを見て、「楽しそう」と思ってくれているのも大きな要因と考えています。

編集部

ボランティアやインターンとはどのようにコミュニケーションを取っているのでしょうか?

松尾さん

ボランティアやインターンとは、主にLINEでコミュニケーションを取っています。やはり学生となると、連絡手段はメールよりもLINEが主流です。

LINEで気軽にボランティアやインターンシップに応募できて、相談もできる。さきほど「参加者側の目線に立つ」というお話をさせていただきましたが、学生についても同様の姿勢だと言えますね。

学生に貴重な対面でのコミュニケーションと現場体験を提供

株式会社ブーストが開催しているインターンシップの説明会
▲インターンシップ参加者向けの説明会風景

編集部

ボランティアやインターンシップに参加する学生は、スポーツビジネスに興味のある方が多いのでしょうか?

松尾さん

将来的にスポーツビジネスに関わりたくて、パワーを発揮してくれているインターンもいます。現在は業務との兼ね合いで行っていないのですが、コロナ禍の時期にはスポーツビジネスに興味がある学生に向けて、スポーツビジネス勉強会を開催していました。

編集部

実際にスポーツビジネスに携わっている現場の方からお話を聞けるのは、学生からすると魅力的ですね。勉強会を開催するきっかけは何だったのでしょうか?

松尾さん

勉強会が始まったのは2021年1月頃で、当時はコロナ禍で企業が採用を控えていた時期でした。スポーツの業界も同じく採用を抑えているという状況だったので、「今だからこそ学生とつながれるきっかけを作れるのではないか」と考えたのです。

勉強会に参加してもらった学生については、実際に現場の経験を積んでもらおうと、ブーストで開催しているマラソンイベントの手伝いをしてもらいました。当時はリアルの場で交流することが難しい状況でしたが、ブーストではあえて対面で話して、現場で体験してもらう場を作ったのです。学生にとって有意義な時間を作れたと思います。

編集部

コロナ禍の学生はオンラインで授業やイベントが行われるなど、リアルな場での経験が少なかったと思います。そんな状況にある学生からすれば、ブーストさんの勉強会やインターンシップはありがたい存在だったのではないかと思いました。

「失敗は経験」というスタンスでインターンを信じ、任せる

インターンシップ生が協力した株式会社ブースト企画運営のフットサルイベントの様子
▲フットサルイベントでもインターンシップ生が大きな力となっている

編集部

インターンシップ生のマネジメントについてはどのように行っているのでしょうか?

松尾さん

勉強会を開催していくうちにインターンの組織が大きくなっていったのですが、彼ら自身がシフトを管理しています。仕事や役割についても、どんどんインターンの自主性に任せていっていますね。

編集部

仕事についてもインターンの自主性に任せているとは驚きです。基本的にはインターンを信じて任せるというスタンスなのでしょうか?

松尾さん

ブーストは小さな会社ですので、インターンが自主的に取り組んでくれることは、マンパワー的にも助かります。たとえ失敗したとしても、それも経験だと考えていますね。

もちろん、イベントではアクシデントが発生することもあるので、そういった場面では社員が対応するようにしています。ただ、安全面以外で任せられるところはできるだけ全部任せたいというスタンスです。

編集部

多くのタスクを任せてもらえるからこそインターンシップ生の士気も高まり、より良いイベントが開催できているのですね。

スポーツを通して生活が豊かになるきっかけを作りたい

株式会社ブーストが企画運営に携わったFTW CUP 蹴り納めエンジョイフットサル大会 Presented by BOOSTの様子

編集部

最後に、ブーストさんが描かれている将来のビジョンについて伺わせてください。

松尾さん

私たちは、無理に「みんなスポーツをしよう!」とは言いません。しかし、私たちが活動することで「スポーツはやっぱりいいよね」と思っていただいて、誰かの生活が豊かになるきっかけを作りたいと思っています。

さきほども申し上げたことですが、社内運動会に力を入れたのは「普段スポーツに触れない人がスポーツをやるきっかけを作りたい」からです。実際に社内運動会に参加されている方が楽しんでいて、社内で知り合いでなかった方とコミュニケーションを取っている場面を何度も見ています。

そういった意味では、生活を豊かにするためのフックとなる場面を提供できているのではないかなと思っています。マラソンなどのイベントもできるだけ参加しやすい条件にしているので、今後も多くの「きっかけ」を与えられるような会社でありたいですね。

編集部

参加者やインターンシップ生など関わる全ての人の立場に立っているブーストさんだからこそ、多くの人の生活が豊かになるきっかけを与えられているのではないかと感じました。本日はありがとうございました。

■取材協力
株式会社ブースト:https://boost-inc.jp/
インターンシップ募集などの情報を発信している社内ブログ:https://boost-inc.jp/blog/