新素材でサスティナブルな社会を目指すBioworks株式会社のカルチャーに迫る

躍進する企業の成長や、SDGsへの取り組みを紹介するこの企画。今回は、カーボンニュートラルに貢献する新素材「PlaX™️」の研究・開発を軸に、地球と人類が共存する未来を育むマテリアルクリエイションカンパニーとして、持続可能な循環型社会の実現を目指すBioworks(バイオワークス)株式会社を取材しました。

新素材「PlaX™️」を提供するBioworks株式会社

Bioworks株式会社は、サトウキビを原料とするバイオプラスチック「ポリ乳酸(PLA)」に、独自開発の植物由来の添加剤を加えたカーボンニュートラルな新素材「PlaX™️」の研究、開発や販売、またその技術を活かし、エンドユーザーに向けた製品ブランド事業を展開するマテリアルクリエイションカンパニーです。

生分解性を有する「PlaX™️」は、石油由来のポリエステル繊維の代替として、これまでに多くのアパレルブランドなどに採用されています。

会社名 Bioworks株式会社
住所 【本社・研究所】
京都府相楽郡精華町光台1-7けいはんなプラザラボ棟7F

【東京オフィス】
東京都千代田区有楽町1-2-2東宝日比谷ビル7F
事業内容 改質ポリ乳酸コンパウンド(PlaX™️)および製品の開発・製造・販売
設立 2015年10月21日
公式ページ https://bioworks.co.jp/

従来の合成繊維の特徴を活かしつつ、乳酸由来の抗菌性など新たな個性が加わったことで、次世代の繊維として国内外から注目される「PlaX™」には、どのような可能性が秘められているのでしょう。

Bioworks株式会社の事業展開、それに伴う企業成長について、クリエイティブコミュニケーションマネージャーの小栗周作さんと、コーポレート部人事・採用担当の坂田裕美さんにお話を伺いました。

本日お話を伺った方
Bioworks株式会社のクリエイティブコミュニケーションマネージャーである小栗周作さん

Bioworks株式会社
クリエイティブコミュニケーション
マネージャー

小栗 周作さん

Bioworks株式会社コーポレート部人事・採用担当の坂田裕美さん

Bioworks株式会社
コーポレート部人事 採用担当

坂田 裕美さん

新素材「PlaX™️」の開発により循環型社会の実現を目指す

Bioworks株式会社の自社ブランド「bio」のタオルとルームウェアを着たモデル
▲Bioworksが展開するライフスタイルブランド「bio」の製品。「PlaX™️」の高い抗菌性を活かしている

編集部

石油を消費しない地球環境に優しい新素材「PlaX™️」を展開されているBioworksさんですが、はじめに、設立の背景をお聞かせください。

小栗さん

2015年に設立した当社は、バイオプラスチックの1つである植物由来のポリ乳酸の研究開発を行ってきました。

研究を重ねる中、ポリ乳酸に独自開発の植物由来の添加剤を加えたカーボンニュートラルに貢献する新素材「PlaX™️」の開発に成功し、現在はプラスチックや合成繊維を「PlaX™️」に置き換えることを目指し、その普及に取り組んでいます。

また、素材開発だけでなく、ものづくりや分解・リサイクルの仕組み作りなど、スタッフ一丸となって持続可能な循環型社会の実現を目指しています。

編集部

Bioworksさんが開発したポリ乳酸新素材「PlaX™️」は、ポリエステルに代わる素材としてアパレルをはじめ、あらゆる業界から注目されていますが、従来のポリエステルには、どのような課題があるのでしょう。

小栗さん

世界中に普及している合成繊維・ポリエステルは、安価で利便性に優れていることから、繊維の生産量のおよそ6割を占めているとも言われています。ただ、石油由来であるため資源の枯渇問題や、生産時の多くの二酸化炭素の排出、廃棄問題などから、環境に対して悪影響を及ぼすことが徐々に指摘されるようになりました。

ポリエステルは価格と利便性に優れているため需要が多く、代替が難しいとされる素材でした。それに対し当社は、環境負担を軽減する植物由来の「PlaX™️」を展開していくことで、持続可能な社会の実現に向けて取り組んでいます。

編集部

植物由来の「PlaX™️」はなぜ、環境負担を軽減することができるのでしょう。

小栗さん

まず挙げられるのが、優れた循環性です。「PlaX™️」のライフサイクルアセスメント(※)によると、ポリエステルと比較し、糸製造時のCO2排出量を35%削減できる効果があることがわかっています。
(※)ライフサイクルアセスメント:製品の評価を原料の調達から部品・部材の加工、廃棄に至る全ての過程で生じる環境負荷を分析して行うこと

「PlaX™️」は一定の環境下、微生物によって分解される「生分解性」を持ち、最終的には水と二酸化炭素になります。さらに、焼却廃棄時のCO2排出量を大幅削減でき、ダイオキシンなどの有害物質を発生させません。

また、廃棄物から同等の素材を再生産する「ケミカルリサイクル」によって資源を循環させるクローズドループ(※)の実現に向けた研究開発も進んでいます。
(※)クローズドループ:従来は廃棄されていた製品や材料を資源と捉えて循環させる考え方

編集部

石油由来から植物由来に置き換えることで、製造から廃棄までの全ての過程で環境負荷を軽減できるのが、「PlaX™️」なのですね。

小栗さん

おっしゃる通りです。ただ、ポリエステルにも安価、利便性といった優れた機能があるのは事実です。特に年齢の中央値が約19歳というデータもあるアフリカ諸国のような伸び盛りの国もあり、今後世界中で大量の繊維が必要とされるため、ポリエステルに頼る部分が非常に大きいのが実情です。

このようなシーンで必要となるポリエステルを「PlaX™️」に1%置き換えるだけでも、環境負荷は大きく減らせます。私たちはポリエステルをなくしたいというよりも、ユーザーやコミュニティがその環境にとって最適な素材を、自ら選択することができる社会にしたいと考えています。

編集部

ポリエステルの特徴を活かしつつ、「PlaX™️」を必要な場所に適宜、置き換えることで、Bioworksさんはまさに、地球と人類が共存できる社会を目指していることがわかりました。

サスティナブルに取り組むアパレル業界をメインマーケットに事業を展開

Bioworks株式会社の開発した素材「PlaX™️」を用いた製品イメージ

編集部

「PlaX™️」という素材を開発したBioworksさんは、事業としてどのように展開されているのでしょうか。

小栗さん

当社ではBtoBを主軸に「PlaX™️」を展開しています。アパレル業界は石油業界に次ぐ環境汚染産業と槍玉に挙げられることもあり、各種ファッションブランドのサスティナブルへの取り組みはもはや必須とされています。そのため、SDGsの目標達成などに対して、各企業が意志を明確にする動きが見られます。

このような状況下において、「PlaX™️」の引き合いは非常に多いです。アパレル会社が「PlaX™️」を使った製品を製造し、エンドユーザーに販売するといったビジネスモデルが確立されつつあります。

一方で、「PlaX™️」がいくら環境に配慮した素材と言っても、なかなか製品としてイメージできないことも事実です。着心地や触り心地などが重要なファッション分野において、BtoBでは製品化されるまでそれがわからないといった課題があります。

そこで当社では、製品事例として直接肌に触れるタオルやルームウエアなどに特化した、”着るスキンケアブランド” 「bio(バイオ)」を自社ブランドとして立ち上げました。オンラインストアのほか、ポップストアによる販売も並行して行っています。

海外のラグジュアリーブランドも大注目!パリ国際テキスタイル見本市に出展

編集部

サステナビリティへの取り組みは欧米諸国が先進的ですが、Bioworksさんでは海外マーケットを視野に入れた事業展開はされていますか?

小栗さん

これまではコロナ禍の影響を受け、国内のマーケットを中心としたビジネスがメインでしたが、コロナ禍が収束する傾向にある昨今、海外マーケットに視野が広がっているような状況です。

2023年7月には、フランス・パリで開催された国際テキスタイル見本市に出展しました。そこでは、ファッションの未来を担うイノベーションやサステナビリティに特化したソリューションを提供する企業のみが出展できるエリア「SmartCreation」に厳正な審査を経た結果選定されたんです。

国内でサステナビリティに配慮した「PlaX™️」のような素材を販売するとなると、価格面がボトルネックになり、なかなか普及に進まないジレンマがあります。しかし、サステナビリティへの取り組みが進む欧米諸国では、サステナビリティに配慮した素材を使うことが企業ブランドとして重要であることが明確です。

このようなカルチャーが根付く海外に向けて「PlaX™️」の展開を急速に進めており、現在、多くの海外企業やブランドと商談が進んでいる状況です。

編集部

環境後進国とも言われる日本ですが、環境に配慮した製品への取り組みに注力する企業も増えています。Bioworksさんが国内マーケットで成長を実感されることはありますか?

小栗さん

海外同様、国内でもアパレル業界が「PlaX™️」に興味を持っていただいております。生地を染める会社、縫製をする会社など、アパレル業界のあらゆるサプライチェーンから「PlaX™️」について高い評価をいただくことで、結果的に川上から川下にかけて、事例がどんどん増えていくことが予想されます。

国内ブランドからコラボした商品が発売されることも決まっており、今後ますますこのような事例が増えると思われます。さらなる成長のきっかけになることを期待していますね。

編集部

Bioworksさんが開発・販売する「PlaX™️」の優れた循環性は、あらゆる業界から注目を集めているのですね。今後の展開がとても楽しみです。

アパレル業界の出身者を中心に、環境問題に関心が強い人材がジョイン

Bioworks株式会社の東京オフィス

編集部

Bioworksさんのメンバーは、どのようなタイミングでジョインされ、現在のような組織になったのでしょうか。

小栗さん

私たちを例にすると、2021年3月に私が入社し、坂田が同年7月に入社しています。現在のメンバーの多くもほぼ同時期の入社です。

当時はプラスチック中心の事業から繊維事業に舵を切るタイミングだったこともあり、アパレル業界に広い知見を持ったメンバーが続々とジョインし、現在は研究所がある京都本社と東京本社と合わせて約20名のスタッフが在籍しています。

坂田さん

当社は規模を拡大しているところですので、これまでは明確なルールや組織図などは存在していませんでした。人数が増えたことを機に、組織としてしっかりとした制度をつくろうというのが今のフェーズで、スタッフの働き方の希望や意見を聞きながら、柔軟に対応していく方針です。

編集部

坂田さんにお聞きします。Bioworksさんに入社したきっかけは何でしょうか。

坂田さん

繊維業界やアパレル業界出身者が多い当社のなかで、ブライダル業界出身の私は、業界の知識が全くない状態での入社でした。

ただ、ダイビングを趣味としていたこともあり、環境問題には強い関心がありました。コロナ禍で大量消費されたマスクが、最終的には海に流れて珊瑚に引っかかり、まるで珊瑚がマスクをしているような映像をニュースで見た時は、自分の中でかなり大きな衝撃を受けました。

きれいな海が人間によって汚されることに危機感を覚えたものの、私1人が海に潜って回収するだけでは解決にならないですよね。ニュースを見て思い悩んでいたその翌日に、Bioworksの存在を知ったんです。これは運命だと勝手に思い、すぐに入社を決めました。

編集部

坂田さんは現在、人事で採用を担当されているとのことですが、Bioworksさんにジョインされる方は坂田さんのように環境課題に関心がある方が多いのでしょうか。

坂田さん

もともと、繊維業界やアパレル業界出身の方が多いこともあり、開発した素材や自分が作った洋服が処分される際、環境汚染を招いていることに疑問を感じたことをきっかけにジョインする方や、使命感を持って入社される方が多い印象です。

編集部

Bioworksさんはミッションに“あたらしい「豊かさ」の種を蒔く ―新しい社会と環境の循環を「素材」からつくる─ 捨てるものづくりから、循環し続けるものづくりへ。”を掲げていますが、その思いに共感する方がジョインされているのですね。

それぞれの領域、価値観でサスティナブルに取り組むのがBioworks流

編集部

Bioworksさんのスタッフは、どのようなマインドで日々の業務にあたっているのでしょう。

小栗さん

「PlaX™️」の魅力や可能性に対して集まったメンバーが多いので、意思統一がしやすい部分もあるのですが、SDGsの項目がいろいろあるように、サスティナブルの捉え方も人それぞれです。環境を守る活動に尽力する者もいますが、決して強制ではありませんし、自分の考えを無理強いする者も皆無です。

事実、商品を販売する際に環境に良いことを全面に押し出しても、なかなかユーザーには響かないのが正直なところです。「自分が良いと思えるものが結果的に環境にも良い」という構造が、消費活動と「PlaX™️」の普及につながります。

いわば、1人ひとりがサステナビリティを自分ごととして捉え、実現、改善していくためのツールが「PlaX™️」なんです。われわれとしてはさらに良い素材を開発したり、良い製品を企画することで、それぞれの得意とする領域を武器に、多様な価値観を保ちながらサスティナブルに取り組んでいきたいと考えています。

編集部

2023年11月にCSuO(最高サステナビリティ責任者)職を新設されたと伺っておりますが、その背景についてお聞かせください。

小栗さん

サステナビリティへの先進的な取り組みが進む欧米諸国では、商品そのものに加え、エビデンスの提出や考え方、スタンスを明確にすることが求められます。

サステナビリティ対応への重要性が世界的に高まるなか、当社としても「PlaX™️」を提供するだけではなく、体制や意思表示を明確に打ち出す必要があると考え、企業価値を最大化するために最高サステナビリティ責任者職のCSuOを新設しました。

これにより、経営体制も含め、会社をサスティナブルの文脈に沿ってアップデートしていくことを目指す方針です。

編集部

サステナビリティを重視して新しいポジションを作り、環境に関するビジネスを展開するものの、絶対的に「環境保護」をファーストチョイスにしているわけではないということですね。個々の価値観やビジネス面も含めてうまくバランスを取りながら、会社として成長されているのですね。

次世代のマテリアル「PlaX™️」と共に成長し、ものづくりを楽しめる方を歓迎

Bioworks株式会社の小栗さんと坂田さん

編集部

「PlaX™️」の魅力や可能性に共感するスタッフがジョインするBioworksさんは、どのような雰囲気の会社なのでしょう。社員の皆さんのお人柄なども含め、お聞かせください。

坂田さん

風通しはめちゃめちゃ良い会社だと思います。メンバーもポジティブに物事を捉える者が多いです。

小栗さん

中途入社が多いせいか、成熟した考えを持った者が多いように感じます。私自身、これまで何社か経験してますが、当社は大人な考えの者が非常に多く、建設的なディスカッションができます。

サスティナビリティという旗印のもとに集まったこともあってか、他人に対する配慮も含め、お互いを尊重する思いやりが行き届いているように思われます。

編集部

最後に、御社が求める人物像やフィットするスキルなど、採用に向けたメッセージをお願いします。

坂田さん

当社では、掲げるミッションやバリューに共感いただける方を歓迎します。私自身、ポップアップストアの店頭に立つことで感じるのは、「PlaX™️」を通じてお客様に喜んでいただける商品を提供しているということなんです。

企業や人が抱える素材に対する悩みなどに寄り添い、「PlaX™️」が解決へと導くことが、やがてサスティナブルにつながります。世の中に良いものを広げたい、ものづくりを楽しみたいという方と一緒に働くことができたら嬉しいです。

小栗さん

さまざまな可能性を秘めた新素材の「PlaX™️」は、アパレル業界に限らず、さまざまな業種へのアプローチが期待されるマテリアルです。自由かつ、能動的に動ける環境の当社では、一見、全くリンクしない業界へのアプローチであっても、大きな裁量を持って行動に移すことができます。

持続可能という考えは、自分の範疇でいろいろなことができる、自立の精神が非常に重要だと思います。他人任せや指示待ちといったスタンスではなく、新たなビジネスを発掘したり、新しいお客さんに種を蒔いたりすること。そして、現場のスタッフが見えていないかもしれない芽を見つけ、責任を持ってビジネスに育てて行けるような方と、ぜひ「PlaX™️」と共に成長していきたいと考えます。

編集部

環境問題の解決と持続可能な循環型社会の実現を目指し、「PlaX™️」の新たな用途への展開にも積極的に取り組むBioworksさんは、日本のSDGsを牽引する企業であることを、今回の取材を通して感じました。そのような企業で働くことの価値や意義を、読者の方々も強く感じたのではないでしょうか。

本日はありがとうございました。

■取材協力
Bioworks株式会社:https://bioworks.co.jp/
採用ページ:https://en-gage.net/bioworks_career/