新しいビジネスに挑戦し、成長を続けるのと同時に、社員の幸せも追求している企業にインタビューする本企画。今回は航空会社ANAのグループ会社で、ANAマイレージクラブの企画・運営、新規事業開発を展開しているANA X株式会社（以下「ANA X」）にお話を伺いました。
「ANA経済圏」の拡大を目指すANA X
ANA Xは、ANAのグループ会社として2016年に設立されました。設立の目的は、航空事業以外の事業領域を広げていくこと。そんな背景で誕生した同社の事業の軸となっているのは、航空会社が発行するポイント「マイル」です。
マイルを活用した「ANA経済圏」を拡大させるべく、さまざまなサービスを展開しています。
| 会社名 | ANA X株式会社 |
|---|---|
| 住所 | 東京都中央区日本橋2-14-1 |
| 事業内容 | ANAマイレージクラブの企画・運営、新規事業開発 |
| 設立 | 2016年10月21日 |
| 公式ページ | https://www.ana-x.co.jp/ |
コロナ禍により移動制限が敷かれ、航空事業が危機を迎える一方で、2021年4月の事業再編を経たANA Xにおいては、航空非連動の事業を開発しながら成長してきました。同時に社員の働きやすい環境も整え、社員数は立ち上げ時の約7倍になっています。
同社の成長要因やカルチャーについて、総務人事部人事チームマネジャーの小川貴成さん、総務人事部人事チームの高森真理子さんにお話を伺いました。
ANA経済圏を拡大していくための「デジタルプラットフォーム事業」を担う
▲ANAグループ会社として、多くのサービスを展開している（画像は「ANA Pay」）
編集部
初めに、ANA Xさんの事業内容について伺わせてください。
小川さん
ANA XはANAのグループ会社の一員として、ANA経済圏を拡大するべく事業を展開しています。ANA経済圏とは、ANAが発行するマイルで、日常から非日常（旅行）まであらゆるサービスを受けられる状態を指しています。
経済圏の中心になるのは、「ANAマイレージクラブ」です。各種サービスの入口となるクラブ会員向けのゲートアプリを2022年10月にリニューアルし、2023年1月にはマイルでお買い物ができるECモール「ANA Mall」をローンチ、同年5月にはスマホ決済サービス「ANA Pay」が利用できるようになりました。
これら3つのサービスはANA経済圏を発展させていくなかでの「プラットフォーム戦略の土台」と位置付けています。
編集部
ANAグループは今や航空だけにとらわれずさまざまな事業を展開されており、その中心的な役割をANA Xさんが担われているのですね。ANAマイレージクラブに関するサービスだとほかにどのようなものがあるのでしょうか？
小川さん
ANA Xはマイルに関するあらゆるサービスを手掛けております。例えば、飛行機に加え徒歩や電車、車などの移動によりポイントやマイルが貯まる「ANA Pocket」、電気を使うことでマイルが貯まる「ANAでんき」や、マイルを貯められるグルメサイト「ANAグルメマイル」など、お客様とANAマイレージクラブのタッチポイントとなる事業についても担っているのです。
編集部
マイルと聞くとこれまでは航空サービスを受けるときにしかイメージされませんでしたが、今や生活のあらゆる部分で活用できるのですね。
3人に1人がANAマイレージクラブの会員、変化によって実現した成長
編集部
2021年4月に今のANA Xに生まれ変わったことを皮切りに、攻めの姿勢を続けられているANA Xさんですが、現在の成長規模がわかるようなデータはございますでしょうか？
小川さん
ANAマイレージクラブの会員数は今のところ約4,000万人となっています。日本の人口に照らし合わせると、およそ3人に1人が会員様でいらっしゃるということになります。
また、ANA Xの社員数について2016年の立ち上げ時から、現在は約7倍まで伸びています。新卒、中途両面で採用を強化してきたことはもちろん、2021年の事業再編を経てここまで社員数も増えました。
ANAグループ中期経営戦略の柱の一つであるANA経済圏の拡大を担う会社として、今後も成長していきたいと考えています。
編集部
日本人の3人に1人が会員ということで、ANA経済圏の規模の大きさが伝わってきます。ここまで成長できた要因としては何が挙げられるでしょうか？
小川さん
ANA Xが成長している要因として、主に2つ挙げられます。まずは、コロナ禍により航空会社が変化を迫られたという点です。渡航制限が出されたことで、航空業界は大きな事業転換が必要となりました。
ANAグループも事業構造の根本的な見直しに舵を切り、ANA Xはこれまで別のグループ会社が担っていた旅行事業を承継するという形で2021年4月にリスタートしたのです。そういった一連の事業再編を進める中で、事業領域の拡大と共にそれを担うメンバーが増えたというのは大きな転換点となったと思います。
次に、コロナ禍が明けたことで本体の航空事業が回復したことも大きいですね。
ANA経済圏は当然「航空」も含めたものになるので、我々が得意としてきた領域の強みは活かしつつ、新たな事業領域へチャレンジしていくという環境が整いつつあります。
編集部
コロナ禍はグループとして大きな危機だったと思いますが、そのなかでも事業の方針を転換することによって危機を乗り越えたのですね。
新サービスを続々リリース、ANA経済圏への参加に対するハードルをなくす
編集部
2021年4月の事業再編がANA Xさんの大きな転換点だと伺いましたが、やはりそれ以降に事業のスピードも加速していったのでしょうか？
小川さん
ANA Xは2021年4月のリスタート以降、さまざまな新しいサービスをリリースしました。次々に新しいサービスを生み出しているという状況も、会社として成長している姿の一つとして挙げられると思います。
編集部
新サービスのなかでも反響が大きかったものは何でしょうか？
小川さん
ANA Xがリリースした新サービスのなかで反響が大きかったものを挙げるとすれば、先ほども申し上げた「ANA Pay」と「ANA Pocket」でしょう。
ANA Payについては、普段マイルに馴染みがない方でも気軽にマイルを使えるようになったという意味で意義が大きいサービスだと思います。
1マイル1円相当からチャージできるため、「数百マイルしか持ってないから使い道がない」というユーザーにもマイルを活用いただけるようになりました。
ANA Pocketは、毎日の移動でポイントが貯まるアプリです。徒歩や自転車、電車など、移動手段に応じてポイントが貯まり、そのポイントを使ってマイルに交換することができます。
こちらはANAマイレージクラブの会員様でなくても使用できるアプリですので、健康志向の高まりもあり、これまで接点を持てなかったお客様とのタッチポイントになり得ます。
編集部
マイルを貯めたり使ったりするハードルをなくすようなサービスも展開されているのですね。
ハイブリッド勤務、フレックス勤務制などの柔軟な働き方
編集部
ANA Xさんはどのような働き方を採用していらっしゃるでしょうか？
小川さん
ANA Xは出社・リモートワークを掛け合わせたハイブリッド勤務制とフレックス勤務制を採用しています。
出社する日、リモートワークをする日というのは厳密には決めておらず、業務の内容によって社員に選択してもらっています。
リモートワークの方が生産性が高い仕事、あるいはディスカッションが必要だから出社の方がスムーズに進む仕事それぞれあると思いますので、仕事の内容や繁閑など状況に合わせて柔軟に働いています。出社とリモート半々で勤務している社員が多いという印象です。
編集部
フレックス勤務制について、社員さんはどういった働き方をされているのでしょうか？
小川さん
業務を始める時間については、社員それぞればらばらですね。午前9～10時に出社する社員が多いですが、午前8時にリモートワークで勤務を始める社員もいます。
また、ANA Xでは中抜けも可能です。そのため、お子さんがいらっしゃる社員は午後4～6時に保育園へのお迎えのため中抜けして、落ち着いてから業務を再開するというケースもあります。
編集部
とても自由度が高い職場といえそうですね。自由度が高いと社員それぞれの勤務状況について把握するということが必要になってくると思いますが、その点いかがでしょうか？
小川さん
やはり自由度の高い職場を目指す以上は、労務管理や勤怠管理ができる状況をしっかり作っておくというのが大前提です。ですので、社内チャットを活用して中抜けについて報告したり、始業と就業についてみんなに共有したりというところは社員にしっかりしてもらっています。
根底にある「人生を豊かにして幸せになるために仕事がある」という思い
編集部
社員さんが働きやすい環境を作るためにさまざまな取り組みをされていますが、ほかにどのようなことを実施されているでしょうか？
高森さん
ANA Xは社員のライフステージの変化にしっかり対応していくという姿勢を取っています。ですので、育休取得率は男性社員も含めほぼ100％です。
また、仕事とプライベートのバランスも大切だと考えておりますので、社員には余暇を楽しんでほしいと思っています。ANAはグループとして航空機を優待価格で利用できる優待登場制度もあります。
ですので、私の場合はフレックス勤務で金曜日に早めに仕事を切り上げて、週末に地元の関西に帰省したり観光に旅行に出かけたりという過ごし方をしています。
編集部
かなり社員思いの会社さんだということが伝わってきますが、社員さんのワークライフバランスを大切にしている背景としては何が挙げられるでしょうか？
高森さん
ANA Xの代表取締役社長である轟木（一博）は、人生を豊かにして幸せになるために仕事があるというメッセージを常々発信しています。人生は決して仕事ありきというものではなく、幸せになるために仕事があるという順番なのです。
編集部
ANA Xさんのカルチャーが伝わってくる言葉だと感じました。
変化とスピードを大切にした5つのバリュー
▲業務終了後には、部署を横断したメンバーでフットサルなどを実施して交流することも！
編集部
ANA Xさんが大切にしている価値観というのはどういったものになるでしょうか？
小川さん
ANA Xは「お客様を想像し、創造する」「ワクワク、おもしろく」「常にスピードを意識する」「変化を恐れず、変化を楽しむ」「どうすれば出来るかを考える」という5つのバリュー、いわば行動指針を掲げています。これらは社員で議論して決めたものです。
弊社は、これまでANAグループが踏み込んだことのない領域でビジネスを展開しています。「変化」「スピード」という言葉が並んでいると思いますが、まさにさまざまな価値観をぶつけながらスピード感を持ってビジネスを展開していかなければならないと考えているのです。
まだまだ新しい会社ですし、これらの行動指針を極めていき、ANAグループとして大切にしてきたものも土台としながらカルチャーが作られていくのだと思います。
編集部
次々と新しいサービスを生み出している背景には、5つのバリューがあるのですね。
小川さん
今リリースしているサービスもスピード感を持って世に生み出したものになります。また、アップデートや改善などはお客様の声をいただいて繰り返しているところですので、より洗練されたものができあがると確信しています。
ナショナルカンパニーとスタートアップのハイブリッド型企業
編集部
最後に、ANA Xさんに興味を持っている方に向けてメッセージをお願いいたします。
小川さん
ANA XはANAグループがこれまで積み上げてきた信頼や顧客基盤をベースにしながら、とがった新しいことをしている会社です。そういう意味では、ナショナルカンパニーとスタートアップのハイブリッド型企業だといえるでしょう。
弊社はこれまでの実績を生かしながら、お客様や社会に新しい価値を提供することをミッションとしています。私たちのビジネスについて興味を持っていただけたのであれば、どんなバックグラウンドを持つ方であれ歓迎したいです。
編集部
伝統と革新という相反する価値観がうまく融合した結果、大きな経済圏を作りつつあるのだと感じました。本日はありがとうございました。
■取材協力
ANA X株式会社：https://www.ana-x.co.jp/
採用ページ：https://www.ana-x.co.jp/employment/