20代の若手社員が活躍するとともに、時代を捉えた事業で成長する企業を紹介する本企画。今回は、「シニアDX」を推進する株式会社オースタンスをインタビューしました。
「シニアDX」を手掛ける株式会社オースタンス
株式会社オースタンスは、「歳を重ねて、楽しみがある人生に」というビジョンのもと、セカンドライフを迎える中高年に「好奇心をくすぐる体験」や「出会い」を届ける事業を展開しています。
自社事業として手がける「趣味人倶楽部(しゅみーとくらぶ)」は、同じ趣味を持つ人たちと交流できる日本最大級のシニア向けコミュニティサービスで、会員数は36.5万人にのぼります。
■趣味人倶楽部(しゅみーとくらぶ)の公式サイトはこちら!
https://smcb.jp/
また、シニア・中高年世代を動かす「専門集団」として、企業の事業開発やシニア世代の社会参加を促す自治体サービスの支援も行っています。
会社名 | 株式会社オースタンス |
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住所 | 東京都渋谷区渋谷2-14-10長沼ビルディング6階 |
事業内容 | シニアDX事業 |
設立 | 2015年1月 |
公式ページ | https://ostance.com/ |
社員の平均年齢が27歳の株式会社オースタンスには、若手社員の挑戦と成長を後押しするカルチャーがあり、20代のうちから事業責任者として活躍するメンバーもいます。
今回は、代表の菊川諒人さんと経営企画の田島翔也さんに、企業成長や若手活躍の秘訣についてお話を伺いました。
中高年に「日々の楽しみ」を届けるシニアDX事業を展開
編集部
はじめに、オースタンスさんの事業内容についてお聞かせいただけますでしょうか。
菊川さん
オースタンスは「シニアDX」という言葉を作った会社でもあり、産官学民の共創型で高齢化社会の課題解決をするコンサルティング会社です。子育てを終えた方や定年退職前後の方など、いわゆるセカンドライフを迎える中高年に「日々の楽しみ」を届ける事業を、様々な事業者や自治体と連携して行っています。
編集部
代表的なサービスとしては、どのようなものがありますか?
菊川さん
私たちが直接お客様にサービスを届けるtoC事業としては、「趣味人倶楽部(しゅみーとくらぶ)」や、オンラインスクールの「セカスク」があります。
「趣味人倶楽部」は日本最大級のシニア向けコミュニティサービスです。温泉やツーリング、カラオケなど、趣味をテーマにしたコミュニティが3万件以上あり、会員数は約36.5万人、サイトの月間PVは3,000万人にのぼります。
日記や写真を通じて交流できるSNS機能があり、年間10万人の会員がコミュニティの仲間たちと旅行やお茶などに出かけています。
菊川さん
「セカスク」は、2023年にスタートした新サービスで、ヨガや脳トレ、俳句、ボイストレーニングなどさまざまなジャンルのオンラインレッスンを初月無料、2ヶ月目以降はサブスクリプション型で無制限で受講することができます。
中高年シニアの方々の興味に基づいた企画がたくさんあり、大河ドラマに連動した歴史の勉強や、顔のしわ・たるみが気になる人向けのフェイスエクササイズなどが人気です。
編集部
「アクティブシニア」という言葉もあるように、今の中高年は昔より活動的な印象があります。自社サービスを通じて中高年シニアの行動や興味を知ることは、令和のシニアの実態を理解するうえでも重要だと感じます。具体的に、企業や自治体とはどういった取り組みをしているのでしょうか?
菊川さん
そうですね。弊社は「趣味人倶楽部」の40万人弱の会員基盤と行動データ、年間300人以上のデプス調査やマーケティング/UIUXのABテストの実績やナレッジを活用して、企業や自治体と共創型で高齢化社会の課題解決ができる事業開発やマーケティング活動を行っています。
様々な企業様が、新規事業や既存事業のDX化を検討する際に、シニア世代がターゲットになるケースが多く、高齢化社会の様々な課題(例えば健康寿命延伸、認知症予防、孤独…)を解決するためのプロジェクトがあります。直近では「AgeTech(エイジテック)」が世界的にもトレンドになっており、高齢者の健康管理やサポート、社会参画につながるテクノロジーやスタートアップが生まれており、弊社も中国や韓国の企業と連携しながら、世界の高齢化問題に取り組むプロジェクトに着手し始めています。
サービスを通じて健康長寿や孤独解消を目指す
編集部
オースタンスさんは、どのような想いのもと中高年をターゲットとした事業を手がけているのでしょうか。
菊川さん
私たちは、「歳を重ねて、楽しみがある人生に」をビジョンに掲げています。定年退職したり子育てを終えたりした人のなかには、急に手帳の予定がなくなって戸惑う方もいます。そんな方々のために、「今週は何をしようかな」とか、「来月はどこへ行こうかな」といった“楽しみ” を提供したいと考えています。
そして、そのような日々の楽しみを持つことは「健康長寿」にもつながると考えています。コミュニティで知り合った仲間と外出することで足腰が強くなったり、お喋りやオンラインスクールへの参加が認知症の予防になったりします。人と繋がることで孤独の解消にもなりますし、外出してお金を使うことは経済の循環にもつながります。
編集部
日々の楽しみを届けるオースタンスさんの事業には、高齢化社会のさまざまな社会課題を解決する可能性があるのですね。
「シニアの専門集団」として企業や自治体からの依頼が急増
編集部
オースタンスさんのここ数年の企業成長について教えてください。
菊川さん
着実に成長を続けており、今では数億円単位の営業利益を出せる企業になりました。社員数は20名弱で、ここ数年は年間5〜10名ずつ増えています。
編集部
成長のエンジンとなっているのはどのような事業でしょうか?
菊川さん
近年は企業や自治体向けの事業が大きく成長しています。
ここ3年ほどは、毎年1,000社以上の企業様からお問い合わせをいただいており、シニア事業で接点を持った企業様は3,000社以上にのぼります。ありがたいことに多くの企業様や自治体様に関心を持っていただいているので、営業メンバーの増員の必要性を感じています。
編集部
どのような企業や自治体と事業を行っているのでしょうか?
菊川さん
例えば、サントリーウエルネス様に対しては、サプリ愛飲者を対象にしたコミュニティサイトの立ち上げから運営まで一気通貫で担当させていただきました。
また、三菱UFJ信託銀行様と協力し、40代後半から50代のキャリア形成を目指す「ミドルシニアキャリア拡張コンソーシアム」を2023年4月に立ち上げました。賛同いただいた企業様とともに、中高年向けのインターンシップやセカンドキャリア研修などを実施しています。
自治体では、東京の大田区様と地域住民向けのオンラインスクールを立ち上げたほか、大阪府様と一緒に地域住民の健康増進に繋がるようなLINEサービスやオンラインスクールの運営を行っています。
目指すのは「シニアDX」のリーディングカンパニー
編集部
菊川さんは、リクルートを経てオースタンスを創業されたと伺いました。シニアを対象としたサービスに着目したきっかけは何だったのでしょうか?
菊川さん
私はずっと、身近にいる人が幸せになるような仕事がしたいと考えていました。子どもの頃に祖父をがんで亡くした時には、がんで亡くなる人を減らすために医者になりたいという夢を持ちましたし、世界大会2位のダンサーの友人が収入に困っている様子を見てダンサーやシンガーの活動を支援する事業を立ち上げたこともあります。
シニア向け事業をスタートしたきっかけは、ちょうど私の両親がセカンドライフの大きな変化点におり 、充実した健康的な日々をこの先も過ごしてほしいと強く想ったことが大きく影響しています。私は学生時代からITサービスで起業するなど、ITに関する知識もあったので、シニアとデジタル(≒シニアDX)を掛け合わせた事業を立ち上げることにしました。
編集部
両親という身近な存在を幸せにしたいという想いから生まれた事業だったのですね。
菊川さん
はい。これからも「私の好きが、世界を、動かす。」という創業理念を大切にし、身近な人から幸せの輪が広がるような事業を創り続けたいと考えています。
また、シニアDXのマーケットは日本における数少ない成長産業なので、社会にインパクトと価値を提供し続け、日本だけでなく、今後はアジアや世界に対して、リーディングカンパニーとしての地位を確立したいです。
平均年齢27歳。オースタンスが若手の活躍を後押しする理由
編集部
オースタンスさんの社員平均年齢は27歳ということで、若手社員の活躍についてもお伺いしたいと思います。まず、若手の採用を積極的に行う背景について教えていただけますでしょうか。
菊川さん
ターゲットとなる中高年を親にもつ世代ということで、20代後半~30代半ばのメンバーを積極的に採用しています。セカンドライフを迎える親を持つ子供世代だからこそ、当事者意識を持ち、ユーザーのことを第一に考えたサービスを考えることができると考えています。
編集部
サービス利用者であるシニア世代より、その子供たちの世代を重視する理由はなんですか?
菊川さん
弊社は「親孝行」という視点を大事にしています。身近な人を幸せにするために何ができるかを考えることが、良いサービスを生み出す原動力になると考えています。
また、弊社がまだまだ成長段階であることや、大企業役員の方々に提案し億単位の案件をご依頼いただくようなビジネスを行っていることも、成長意欲やチャレンジ精神のある若手社員を必要としている理由です。
20代で経営企画マネージャーや新規事業の責任者に
▲田島さんは、日本が「シニア先進国」として世界をリードする存在になれるような事業を行いたいと話す。
編集部
ここからは、2021年に入社し現在28歳(2023年11月時点)の田島さんにお話を伺いたいと思います。まず、田島さんが関わっているお仕事について教えてください。
田島さん
経営企画ユニットのマネージャーとして企業全体の戦略を考える仕事をしているほか、新規事業「セカスク」では事業責任者を、toB事業ではクライアント企業様のマーケティング支援を担当しています。
編集部
3つの業務をかけ持ちで担当しているのですね。オースタンスに入社した経緯についてもお話しいただけますか?
田島さん
日本はデジタル技術などさまざまな分野で世界に遅れをとっていると言われますが、そんな日本が唯一、他の国より先に行っているのが「少子高齢化」です。今後、ほかの国でも高齢化が進むと予想されるなか、「シニア先進国」として世界をリードするような価値を作り出したいと思いました。
ユーザー様へのインタビューでは、「自分には朝、起きる理由がない」という声を聞くことがあります。子育てや仕事を卒業して心とカレンダーにぽっかりと穴が空いてしまう方がとても多いんです。今まで頑張ってきた方がそのような想いをするのは悲しいことですし、私は弊社の事業を通じて社会的孤独という課題を解決し、心も体も健康に過ごせるシニアを増やしたいと考えています。
ビジョンの実現と自己成長が「やりがい」をもたらす
編集部
田島さんは、オースタンスのお仕事のどのような点にやりがいを感じますか?
田島さん
まず、自分が関わる全てのことが「オースタンスのビジョンの実現につながっている」と実感できる点です。
私たちは毎年200件ものユーザーインタビューを行いシニアに対する解像度を高めています。また、社内では常に「これはビジョンにつながっているか?」と確認し合いながら事業を進める習慣があります。「シニアの方たちにどのような価値を届けるべきか」ということに本気で向き合うカルチャーがあるからこそ、ビジョンの実現というやりがいを感じることができるのだと思います。
編集部
ユーザーファーストを徹底する文化が、やりがいにつながっているのですね。
田島さん
それに加えて、成長産業であるシニアDX市場に携わることによって自分自身も成長できているという実感もあります。
先ほど菊川から紹介があったように、弊社はサントリーウエルネス様や三菱UFJ信託銀行様など大手企業様と一緒に事業を行っており、若手のうちから大きなプロジェクトの戦略づくりに関わることができます。
大企業だと40歳、50歳にならないとできないような責任ある仕事を20代で経験できることは、大きな成長に繋がっていると感じます。
失敗を恐れずチャレンジできるカルチャーがある
編集部
若手の活躍を後押しするための制度としては、どのようなものがありますか?
田島さん
社内で上司とは別にメンターをつける企業は多いと思いますが、弊社には社外の人をメンターにつける仕組みがあります。Webマーケティングや経営戦略など、個人が伸ばしたいスキルやキャリアに応じて、外部のエキスパートによる定期的な1on1を実施しています。スタートアップ役員にも関わってもらうことで、実際に事業を創った経験がある方からの実体験やナレッジを、コンサルティングや事業開発に活かしています。
編集部
外部のメンターには、どのような方がいるのでしょうか?
田島さん
マッキンゼー・アンド・カンパニー、メルカリのマーケティング責任者、リクルート経営企画といったプロフェッショナルな人が多数います。弊社は平均年齢27歳の若い組織なので、自分たちより経験豊富な外部のエキスパートに相談できることは、成長につながる貴重な機会です。
編集部
若手の挑戦や活躍には、失敗もつきものだと思います。オースタンスさんには、失敗を恐れずチャレンジできるような環境もあるのでしょうか?
田島さん
そうですね。弊社には「失敗する自由があるからこそ、成功が生まれる」と考えるカルチャーがあります。私は「セカスク」の責任者として予算の管理や損益計算まで任せてもらっています。上司からすると、口を出したくなる場面もあるかもしれませんが、基本的には、本人に任せるスタンスで見守ってもらっています。
ここまで裁量があると「任せてもらうからには、それに応えたい。」という気持ちになりますし、モチベーションや学習意欲も高まりますね。
編集部
代表である菊川さんは、どのような想いで若手を信頼し、任せているのでしょうか?
菊川さん
自分の頭で考えた方が成長しますし、失敗した方が自分の糧になると考えています。
もちろん、「大きな仕事をしたい」と思うからには責任や覚悟もしっかり持ってもらいます。そのうえでチャレンジする人は全力で応援したいですし、失敗した時は会社が責任を取るので恐れずに進んでほしいと考えています。
編集部
挑戦と失敗ができる環境があるからこそ、オースタンスさんでは若手社員が活躍できるのですね。
オースタンスのインターンは社員と同じ裁量で働ける
編集部
オースタンスさんでは、インターン生の受け入れを行っていると伺いました。
田島さん
長期インターンを常時10名ほど受け入れています。私が担当する「セカスク」部門には2名のインターンがおり、そのうち1名にはプロジェクトマネージャーと同等の仕事をお任せしています。
ほかにも、開発のディレクションや、マーケティング戦略の設計から実行まで、ほぼ1人で担当するインターン生がいます。営業のチームには、インサイドセールスの立ち上げから責任者として関わっている人もいます。
編集部
オースタンスさんのインターンは、他の企業だと社員が担当するような業務まで経験することができるのですね。
田島さん
私たちは社員もインターンも「同じチームの一員」として、分け隔てなく考えています。社員同様に裁量のあるお仕事をしてもらいますし、フィードバックもしっかりと行っています。
編集部
インターンとして一緒に働きたいのは、どのような学生ですか?
田島さん
私たちはシニア世代への価値提供を真剣に考え、世界で戦える企業になりたいと本気で思っています。インターンとして働く仲間にも、この考えに共感いただき、ビジネスの世界で一緒に成長していきたいと考えています。
オースタンスはシニアの方々に価値を提供したい仲間を歓迎
編集部
今後さらなる企業成長を目指すにあたって、オースタンスさんが求めるのはどのような人材ですか?
菊川さん
働く動機には、自分が成長したい、社会にインパクトを与える仕事がしたい、誰かに承認されたい…など、様々あると思います。理由はどういったものでも良いのですが、「動機の大きさ」を大切にしています。
他には「すべての価値に、向き合う。」というValue(価値観)があり、カスタマーを起点に、すべてのステークホルダーへの価値に向き合えるか、ということも重要です。そういった価値観や考え方を持つ方であれば、弊社で自分らしく、活躍していただけると考えています。
編集部
若手メンバーが中心となり、産官学民共創型で高齢化社会の課題解決をするリーディングカンパニーを目指すオースタンスさん。社内には「すべての価値(カスタマー、クライアント、パートナー、組織、個人、株主)」を大切に考えるメンバーが集まっているので、同じ目標に向かって切磋琢磨しながら働くことができそうだと感じました。
本日はありがとうございました。
■取材協力
株式会社オースタンス:https://ostance.com/
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