さまざまな企業の魅力や新しい働き方をお伝えしていく企画。今回は、プロジェクト管理ツールの「Backlog」をはじめチームのコラボレーションを促進するサービスを開発・提供している株式会社ヌーラボさんを取材させていただきました。
多様な働き方を可能にするサービスを取り扱う会社だけに、実証実験のごとくヌーラボ自体もフルリモート可、コアタイムなしのフレックス制、リゾートワーク制度など多様性を容認する働き方を取り入れています。事業内容、企業カルチャー、各種制度、履歴書提出は任意だという採用事情など、ヌーラボの魅力についてお話を聞かせていただきました。
株式会社ヌーラボとは
株式会社ヌーラボは「チームで働くすべての人に」をコンセプトに、仕事が楽しくなるようなサービスや、多様な働き方をしながらも良いチームワークを醸成していくためのツールを開発している会社です。
拠点は、本社である福岡をはじめ、東京、京都、アメリカ、オランダ、シンガポールの6つ。Null(無)とLab(研究所)を合わせた造語である社名が表す通り、無の状態から試行錯誤をして有を創り出す研究所のような会社です。
会社名 | 株式会社ヌーラボ |
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住所 | 福岡県福岡市中央区大名一丁目8-6 HCC BLD. |
事業内容 | チームのコラボレーションを促進するサービスの開発・提供 ・プロジェクト管理ツール「Backlog」 ・オンライン作図ツール「Cacoo」 ・ビジネスチャットツール「Typetalk」 ・組織の情報セキュリティ・ガバナンスを強化するツール「Nulab Pass」 |
設立 | 2004年3月29日 |
公式ページ | https://nulab.com/ja/ |
また、ヌーラボは研究所でありながら、自社サービスを活用することでどのような働き方が実現できるのかを体現するショールームでもあります。ヌーラボという会社の実態にせまるべく、人事の吉田さんにお話をうかがいました。
楽しく働くためのサービスを展開。社内向けツールが出発点
編集部
ヌーラボさんは「チーム」というところに焦点を当てて、個人が個性や才能を活かしながらチームとしてコラボレーションしていけるようなサービスを提供されているとか。まずは、提供サービスの詳細についてお教えいただけますか?
吉田さん
当社が提供するサービスのなかで、いちばん歴史が長いのが「Backlog」というプロジェクト管理ツールです。実は、このサービスは社内向けに開発したツールが発展してできたものです。
ヌーラボは2004年に、企業さまからご依頼を受けて業務を請け負う受託サービスの会社としてスタートしています。受託サービスではプロジェクトの管理が非常に大切になりますので、まずは自分たちのためのツールとしてBacklogを開発しました。それを商用化したものが、口コミなどで広まって、今ではヌーラボを代表するサービスとなっています。
続いて、2009年に「Cacoo」というオンラインホワイトボードのようなツールをリリースしました。システム構成図やワイヤーフレームなどの図を簡単に共有することができ、コメントやフィードバックも書き込むことができます。Cacooは海外にもユーザーが多くいらっしゃいます。
2014年にはビジネスチャットツールの「Typetalk」をリリースしました。Backlogとシステム上で連携をしており、Backlogに何か報告が出されたときにはチャットで即時に通知を受け取ることが可能です。また、雑談で気軽にアイデアを共有しながら、「プロジェクト化した方がいい」という案件が出たときには、「Backlogに課題を追加」するボタンですぐに課題が作成できます。
編集部
Backlogは他社さんのチャットツールともシステム連携できるんですよね?
吉田さん
そうですね。SlackやMicrosoft Teams、Chatworkのような、他社さんのチャットツールとも連携をしています。
編集部
今お話しいただいたBacklog、Cacoo、Typetalkの3つがメインのサービスで、これらのヌーラボ製品のセキュリティとアカウント管理を強化するツールが「Nulab Pass」というわけですね。
吉田さん
はい。「Nulab Pass」はヌーラボのサービスを使うために必要なヌーラボアカウントのセキュリティとガバナンスを高めるオプションです。SAML認証方式によるログインや組織監査ログの提供といった機能があります。
自分たちが自社製品のいちばんのユーザーである強み
編集部
ヌーラボさんは、ユーザーの皆さんと交流したり、サービスに関するフィードバックを受けたり、要望を反映させたりという活動がとても盛んなように感じますが、そのあたりはいかがでしょうか?
吉田さん
ユーザー様の声を即時に吸い上げられるような工夫はしていますね。1つはTwitterです。「ヌーラボ」「Backlog」のような言葉を自動で拾い上げて、そうしたつぶやきがTypetalkの方に即時反映されるようになっています。そのため、「Backlogのここが使いづらい」「ここにバグが出てない?」のようなご意見があったときにすぐに気付くことが可能です。また、ユーザー様からのご要望も、Twitterでのつぶやきで勉強させていただいています。
あとは、お客様と日々接しているカスタマーサポートやカスタマーサクセスからのフィードバックです。それぞれのツールのプロダクトマネージャーと連携して「こういったお客様の声がある」というのを報告してもらっています。
編集部
そうしたユーザーの声の吸い上げが、製品の改善や成長に活かされているわけですね。
吉田さん
お客様からの声はもちろんですし、ヌーラボメンバーからのフィードバックも多いと思います。私たちはBacklog、Cacoo、Typetalk、Nulab Passをすべて使いながら仕事をしているので、言ってみれば自社製品のいちばんのユーザーです。
サービスを開発・提供している自分たちが先陣を切って、バグを発見したり、使いづらさを指摘したり、改善の要望を出したりできるというのは、ヌーラボの特徴であり強みではないかと思います。
編集部
自分たちで自社サービスの使い心地を日々チェックしながら、ユーザーの声を拾い上げて改善していくことも怠っていないと。開発したサービスを使っていくことで愛着を持てるほか、スピード感を持ってブラッシュアップしていける環境なんですね。
メンバーの多様性を重視する企業カルチャー
編集部
ヌーラボさんでは多様性を大事にするカルチャーがあると伺いましたが、その点はいかがでしょうか?
吉田さん
はい、多様性は大前提ですね。例えば採用においても「こういう人を採りたい」「こういう会社の前歴がある人を書類選考で通そう」といったようなことはありません。皆が違っていていいじゃないかという考え方をしています。
編集部
社内にはNuice Ways(ヌイス ウェイズ)という行動規範があるそうですが、これは多様性を重視するなかでの基本ルールということでしょうか。
吉田さん
少し違いますね。Nuice Waysは「TRY FIRST」「LOVE DIFFERENCES」「GOAL ORIENTED」という3つからなっています。
▲ヌーラボさんの行動規範である「Nuice Ways」(公式ブログより引用)
吉田さん
すべてヌーラボのメンバーと、この価値観を共感できていると思いますが、「こうあるべきだ」「ここが足りないから頑張るように」という目的で作られた行動規範ではないんです。2017年に採用を拡大し、会社の規模が会社が大きくなる前に、今ある会社の良いところを記録しておこう、残しておこうという意図でNuice Waysはつくられています。「私たちにはこういう気質があるよね」という共通認識という感じです。
編集部
なるほど。共通認識という点でいくと、ヌーラボさんでは役職にこだわる風土があまりないそうですが、それも多様性を重視する企業カルチャーから来るのでしょうか。
吉田さん
そうですね。「今はこういった仕事に興味がある」という個人の多様性や気持ちに基づいて、自分で役割を選択できる状態を大切にしています。
ヌーラボにはエンジニアが多いので、職人気質の専門職に「あなたはコードを書かずに部下を管理しなさい」と押し付けても、モチベーションが下がってしまいます。役職と給料の等級であるグレードを紐付けていないので、昇進し、役職を得ることを目指すのではなく役割で仕事を捉えている人が多いのではないでしょうか。
編集部
多様性を大事にするヌーラボさんでは、「方針を作ってそのとおりに行動しなさい」というやり方ではなく、「こんな雰囲気や文化がある」という特徴をまとめたものを行動規範としているわけですね。会社のやり方を押し付けずに個人を重視するヌーラボさんのカルチャーには、共感する方も多いと思います。
制度は自由度を上げるためにつくられるもの
編集部
ヌーラボさんではフルリモート勤務が選べたり、コアタイムなしのフレックスタイム制であったり、男性でも長期の育休実績が多数あったりと、働き方においても多様性を取り入れていらっしゃいますよね。
吉田さん
私たちは「ヌーラボのサービスを使うとこういう働き方ができます」というワークスタイルを自ら実証実験しているような会社です。ヌーラボのサービスを活用することで、私たちのワークスタイルのように、場所と時間を共有しない「非同期」の状態でもちゃんと仕事ができるということを、お客様にお示しする目的があります。
プロジェクト管理ツールのBacklogを活用し、日々のタスクを管理しているので、プロセスや成果が見える化されます。見える化が実現すると、「今何をしているのか」「サボっているのではないか」といった不安はなくなります。こうした業務環境があってのフルリモート勤務であり、フレックスタイム制であるわけです。
ヌーラボの場合は「制度をつくって従業員に順守させよう」とトップダウンで制度を押し付けたいという考えはありません。「こうしなさい」と行動を縛るためではなく、現状の働き方に合わせて自由度を上げるために「こんな働き方であれば、従業員の希望が叶いそうだ。じゃあ制度化しよう」と制度を後追いでつくっているのが実態ではないでしょうか。Nuice Waysと同じですね。
フルリモート・出社の選択や中抜け休憩なども自分の裁量で決められる
編集部
フルリモート勤務やフレックスタイム制に関して、もう少し詳しく教えていただけますか?
吉田さん
ヌーラボでは、日々の勤務において「出勤」か、自宅からの「テレワーク」かを個人の都合で選択して良いことになっています。その結果、採用は全国に拡大し、北海道から長崎まで、距離的にオフィスに通うことが難しいエリアの人材も入社してくれています。現在も、オフィスは福岡本社、東京事務所、京都事務所がありますので、通える距離の人は個人の都合でリモートか出社かを選ぶことができます。
編集部
部署によっては、週に1日は集まろうなどというルールがあることもあるのでしょうか?
吉田さん
例えば、オフィスでオフラインのセミナーを行ったり、セールスチームが「イベントに向けて、一度集まって会議をしよう」などと集まったりすることはあります。ですが、出社を必須事項とはしていませんので、基本的には選択制ですね。
編集部
勤務体系もコアタイムなしのフレックスタイム制ですから、かなり自由度が高いように感じます。
吉田さん
チームでのミーティングや朝会などは時間を合わせる必要がありますが、自分だけで完結するような事務作業やタスクについては、午前5時から午後10時の間で自由に時間を選択して働くことができます。また、お子さんのお迎えなどで中抜け休憩する際も、個人の裁量で調整できます。
男性の育休は取得できて当たり前
▲育児休暇を取得したヌーラボさんのメンバー。男性も当たり前に育休が取得できる雰囲気がある
編集部
育休についても制度を活用されている方が多いと伺いましたが、いかがでしょうか?
吉田さん
男性の育休の取得率は特に高いと思います。そもそも、男性の育休については法制化されているものですから、本来であれば取得できて当たり前のものなんですよね。
「育休を取っていいですか」と会社におうかがいを立てないといけないという状況がそもそもおかしいのですが、実際に取得しづらい会社さんが少なからず存在します。そういう意味では、ヌーラボは会社と社員の間で健全なコミュニケーションがとれているのだと思います。
編集部
半年〜1年以上という取得実績も多数あると聞いています。男性育休で半年以上の取得というのはかなり長いほうではないでしょうか。
吉田さん
実際に男性従業員が育休を取得している実績としては、他社さんに比べて育休期間が長いのは確かです。しかし、ヌーラボでは半年は割と普通です。今、2回目の1年間の育休に入っている男性もいますよ。
編集部
やはり、ヌーラボさんの従業員へのサポート体制は充実していると思います。英語学習だったり、書籍購入の手当などもあるんですよね?
吉田さん
そうですね。いくつか自己研鑽をするための支援があります。例えば、書籍購入手当は自分の業務に関わる書籍がメインとはなりますが1冊2万円まで、月1回購入が可能です。特にエンジニアが必要とする技術本は1冊数万円するものもありますので、有効活用されていると思います。
教育研修×福利厚生のリゾートワーク制度
▲リゾートワークの制度の一環として高校で授業をしているメンバー
編集部
自社制度として「リゾートワーク」を実施されていると伺ったのですが、この制度についてご説明いただけますか?
吉田さん
リゾートワークは、北海道東川町・新潟県佐渡市・沖縄県宮古島市という3つの都市から行きたい場所を選んで、研修プログラムの一環として、現地で学校の先生になる体験をしてもらう制度です。滞在期間の設定は自由で、期間中にリモートワークをするか、有給休暇を取得するかも選ぶことができます。
この制度では「地域・会社・社員・社員の家族」の「四方よし」を謳っていて、帯同する家族の人数に応じた手当を支給しています。「お父さんだけずるい」「家事をせずに行ってしまうの」といったことでご家族の中で検討が進まず参加を断念したり、滞在期間が希望よりも短くなってしまうぐらいでしたら皆さんで行ってきてくださいという願いを込めています。
社内選考の後、授業の設計やプレゼンテーションの練習といった準備を経て、現地に滞在し、リフレクション(振り返り)としてヌーラボブログの執筆をするというのが一連の流れです。
この制度は、帯同する家族への手当ては福利厚生ですが、基本的には研修としてとらえています。ホームとアウェイを行き来することで生まれる違和感や葛藤から学びを得る「越境学習」という位置づけですね。
編集部
どのような理由で、リゾートワーク制度を設定したのでしょうか。
吉田さん
先ほどの「ヌーラボのサービスを使ったらこんな働き方ができる」という実験の1つだと考えています。オフィスや自宅にいなくても、リモートワークと変わらない環境でワーケーションしながら働くことができるという実証実験です。
もう1つには、ヌーラボは中途社員が大多数を占める会社なので、従業員はそれぞれに高いスキルを持っており、共通の座学研修をやることによる効果が薄いという事情もあります。新しい体験を提供することを研修とするべく、制度を立ち上げました。今までに30名ほどがこの制度を利用しています。
履歴書の提出は任意。採用でも多様性を重視
編集部
これだけ多様性を重視しているヌーラボさんが、どのような人材を求めていらっしゃるのかとても気になります。採用に関して特徴などがあればお聞かせいただけますか?
吉田さん
まず、ヌーラボの応募にあたっては履歴書の提出は任意だとお伝えしています。もちろん、その上で出してくださる方もいらっしゃいますが、履歴書を採用におけるジャッジの軸にはしていません。
これは、年齢や国籍や学歴などでジャッジせず、多様性を受け入れるという理念を反映しています。応募者の方にこの理念をお伝えすると共感してくださる方が多いのですが、他社の人事の方には驚かれることもありますね。
編集部
ヌーラボさんのメンバー、いわゆる「ヌーラバー」として迎え入れるのならばこういう人がいい、こういうところを見ますというポイントはありますか。
吉田さん
よく質問されるのですが、こういう人がいいというペルソナはないんです。いろいろな考えの人がいていいですし、むしろそういった多様な考え方によってより良いプロダクトができるというふうに思っています。ただ、逆に「多様性」や「こうした多様性を重視する環境」を許容できない、人の考えを受け入れないという人は、コラボレーションを重視するヌーラボで働くのは難しいかもしれません。
編集部
他人を尊重する姿勢を持っていてほしいということですね。他に、こういう資質を持っている人がいいというポイントはありますか?
吉田さん
アンガーマネジメントができる方というのはあります。基本はフルリモートで、オフラインではなくオンラインでやり取りをすることが多いので、お互い意思が伝わりづらく、何らかの摩擦が起こる可能性もあるでしょう。そのときに、相手の発言の背景を考えてみる、相手に対して寄り添ってみる、多様性を受け入れて他人を敬うことができる人のほうがフィットしやすいと思います。
編集部
エンジニアやコーポレートといった役割に関しては、今、どのポジションの人材を求めていらっしゃいますか?
吉田さん
そうですね。エンジニアの採用を引き続きやりながら、2023年4月以降はセールス部門、マーケティング部門もより強化していきたいなと思っていますので、そういった人材の採用も進めていきたいです。
ヌーラボに興味を持った方へのメッセージ
編集部
最後に、ヌーラボさんに入社をしたいという方に向けて、メッセージをお願いします。
吉田さん
多様な働き方が生まれ、否応なしに「働き方」について考えなければならない時代が来ています。このような時代のなか、働き方に関わるツールをつくるということの社会的な意義は大きいはずです。ヌーラボという会社はもちろん、ヌーラボの行っている事業や事業を通してどういうことをやりたいのかというところにご興味を持っていただければと思います。
編集部
本日はありがとうございました!
■取材協力
株式会社ヌーラボ:https://nulab.com/ja/
採用ページ:https://nulab.com/ja/about/careers/