商品価値を高め地方創生に貢献、株式会社ヒダカラの取り組みとは。

さまざまな企業の取り組みや魅力をお伝えしていく企画。今回は元楽天社員のご夫婦が飛騨市で起業した地域商社である「株式会社ヒダカラ」を取材させていただきました。

飛騨の商品ブランディング・WEBマーケティングを得意とするヒダカラ

飛騨の商品ブランディング・WEBマーケティングを得意とするヒダカラ

「株式会社ヒダカラ」は、“飛騨から溢れるタカラモノ”というキャッチコピーのもと、飛騨市の生産者と消費者をつなげていく支援をされている地域商社です。

そんなヒダカラさんが得意としているのは、WEBマーケティングやブランディングの分野です。飛騨地域の認知度をアップし、価値を高めていきながら、消費者へ届けていく事業をメインとされています。

設立 2020年
拠点 〒509-4245 岐阜県飛騨市古川町幸栄町12−12
事業内容 ・EC事業(ヒダカラ商店)
・販売支援、商品プロデュース(おうちで飛騨牛プロジェクトなど)
・自治体支援(ふるさと納税支援など)
・深山豆富店の運営
など
従業員数 20名 (2022年10月時点)
公式ページ https://hidakara.com/

▼ヒダカラが支援した商品の例
ヒダカラが支援した商品の例

今回は、地方移住が注目されている中で、実際に移住して起業されたヒダカラさんにインタビューを実施しました。地方創生に携わる事業の魅力とやりがいについて、具体的なエピソードを交えながらたくさんお話しいただいたので、ぜひご覧ください。

本日お話を伺った方

株式会社ヒダカラ 共同代表

舩坂 香菜子さん

大学卒業後、楽天(株)に就職。縁があり飛騨市に出向し、関係人口、ふるさと納税、地域のネット通販支援を行う。2020年に夫とヒダカラを起業。

ヒダカラの”得意”商品の付加価値を高めるブランディング戦略

お話を聞かせていただいた、ヒダカラ舩坂香菜子さん
▲お話を聞かせていただいた、ヒダカラ舩坂香菜子さん

ー編集部
ヒダカラさんのECサイト(ヒダカラ商店)の商品をいくつか拝見して、「商品の魅力を伝えるのがとても上手だな」と感じました。ブランディング面で強みがある企業だと思ったのですが、ご自身では自社の特徴をどのようにとらえていますか?

ー舩坂さん
ヒダカラはWebマーケティングに強い地域商社であり、そこが強みだと考えています。

もともと私と夫(舩坂康祐さん)で立ち上げた会社なのですが、夫婦2人とも楽天出身で、EC事業には長く携わっていました。そのときに、ふるさと納税を切り口として地域のいろいろなものを全国にお届けするプロジェクトに関わり、2年のあいだ楽天の社員として飛騨市役所に出向していたんですよ。その経験が、今の会社の土台となっています。

会社がある飛騨市はいわゆる飛騨というエリアのひとつで、高山市や白川村、下呂温泉などが周辺にあるのですが、実は飛騨市だけ知名度が一段下なんです。ほかの地域は観光地として有名で観光客が多く訪れますし、商品や事業をPRできるポイントもたくさんあると思うのですが、残念ながら飛騨市はそうではない。

だからこそ、インターネットを利用して全国に商品を届けるという方法の「やりがい」や「価値」がすごくあるんです。私たちはその分野が得意なので、うまく噛み合っていると思います。

ブランディングに関しては、「デザインをかっこよくする」「素敵なイメージに変える」ことだと思っている人もよくいらっしゃいますよね。ただ私たちは、実際にモノを作っている個人の方や製造している会社の皆さんと協力して、商品の付加価値を高めてもらうことを主軸にしているんです。

たとえば「今まで150円ぐらいで売っていた鮎が、300円で売れるようになった」というように、自治体のイメージが上がるだけでなく生産者さんも喜ぶような、価値を高めていくお手伝いができるよう頑張って取り組んでいます。

株式会社ヒダカラ作業風景

ヒダカラの役割は、生産者とユーザーを仲介し価値を伝えていくこと

ー編集部
物事の価値を高めるためのブランディングというのは、当たり前ですが簡単にできることではないですよね。それでは、もう少し具体的な事業内容について伺います。ヒダカラさんはECや支援など複数の事業をされていらっしゃいますが、メインの事業は何になるのでしょうか?

ー舩坂さん
飛騨市と連携したふるさと納税業務など、地方創生に関わる支援事業がメインですね。過去の事例でいうと、「おうちで飛騨牛プロジェクト」や「新型物産展from飛騨」などが挙げられます。そのほかに、自社でEC事業(ヒダカラ商店)をやっているという形になります。

▼ヒダカラが手がけた主なプロジェクト
ヒダカラが手がけた主なプロジェクト

ー編集部
支援事業は、生産者の方と直接コミュニケーションをとりながら進めていくのでしょうか。

ー舩坂さん
はい、そのとおりです。まず生産者の皆さんとお話しして「何の商品をどのように出すか」ということを決めていきます。そのうえで、自治体の方々とも調整しながら出品していきます。

作る側からすると、「原材料や製法にこだわっています」「飛騨の清流を使っています」というように、生産者の目線でアピールしがちです。もちろんそれが悪いわけではないのですが、私たちの役割は「お客様から見たメリット・ベネフィットがどこなのか」を見極めたうえで生産者とユーザーを仲介し、価値を伝えていくことだと思います。

商品の見せ方を新しく工夫するだけで看板商品に

ー編集部
なるほど。実際にECサイトであるヒダカラ商店を見ていても、「こんな商品があったんだ」というようにすごくワクワクするのですが、それは意図的に計算されているものなんですね。

ー舩坂さん
そうですね。たとえば自社のECサイトでは、10月〜12月にかけて「2人で楽しむカジュアルおせち」が人気です。ただ、実はこの商品はもともと「おせち」として作られている商品ではないんです。

ヒダカラ商店の看板商品であるカジュアルおせち

このおせちでは、メーカーさんが単品で作っている筑前煮や煮豆などをセットにしています。どの品もすごくおいしいのですが、こうした飛騨の名産品はちょっと地味だと思われがちなんです。おばあちゃんの手料理のような良さはあるものの、若年層も含めたどの年代にも選ばれるかといえば、そうではないですよね。

でも、お正月に食べるにはすごくいいなと思っていて。味の良さはもちろんですが、添加物もすごく少ないので、「手作りのおせち」という見せ方なら強くアピールできると考えたんです。

製作にあたっては、飛騨の醤油を使っていただいたり、量を少なめにしてもらったりという工夫を加えながら、同じ商品でもちょっとずつ食べられるようメーカーさんと一緒に企画を進めました。結果、ユーザーにかなり好評をいただいていて、自社の看板商品となっています。

ー編集部
このおせちは、まさに私が「いいな」と思っていた商品です!いま夫婦2人暮らしなので、おせちを作るのは面倒だし、2〜3万円を払って2人で食べるのはもったいないし、かといってまったくおせちがないのもどうかと思っていたんですね。

ヒダカラさんのこの商品なら「これ、飛騨のおせちなんだって」と食卓に出すことで会話も生まれますし、お値段が安いのに「ちゃんとやっている感」も出せそうです。そのように消費者側の心理まで計算されているので、お話にあった「商品のメリットやベネフィットを伝える」という部分について、とても納得しました。

ー舩坂さん
まさにそうなんですよ。私も、おせちはあまり好きではないんです。食べたいもの以外の品も入っていたり、冷蔵や冷凍の商品を買うと数日で食べなくちゃいけない義務感もあったりして。同じ気持ちの人が結構いるんじゃないかと思っていました。

ー編集部
おっしゃるとおり、常温で食べられるのもいいですね。正月休み中に「今日は外食にしよう」とおせち以外の選択をしても、普段の食卓でそのまま出せるのがうれしいです。食卓での汎用性が高いのもいいなと思います。

地域商社の”やりがい”高く売るのが難しい商品こそ、価値を高める

株式会社ヒダカラ

ー編集部
ヒダカラさんのウェブサイトから「飛騨の魅力を発掘し、輝かせるお手伝いをします」という理念を拝見しました。地方創生事業に関して「この方との交流はやりがいがあった」というような、地域に密着している企業だからこその実体験に沿ったエピソードがあればお聞きしたいです。

ー舩坂さん
過去の事例でいうと、まず「みつわ農園」さんという米農家の皆さんのエピソードが思い浮かびますね。こちらの農園は全国にファンが多くて、実際に会いに来る方もいるほどなんですが、そのブランディングのお手伝いをしていました。

ー編集部
お米を作っている農家さんに会いにいくほどのファンがいらっしゃるんですか!すごいですね。どのようなきっかけだったんですか?

ー舩坂さん
私が楽天時代に飛騨市役所に出向していたとき、自治体だけではなく地域の方とも深い付き合いをしていて、そこにみつわ農園さんもいらっしゃったんです。

みつわ農園さんのお米を全国に広めるために、当時の楽天のメンバーも巻き込みながら商品開発をして、有名なデザイナーさんにも入ってもらいながら、クラウドファンディングを実施しました。今現在も、そのクラウドファンディングで応援してくださった方がずっと買い続けてくれたり、会いにきていただいたりしています。

お米といえば、一般的には味よりも値段で買う方が多いと思うんですよね。聞いたことがあるブランドであれば、「安いからいいか」「新米だからこれにしよう」というように、味の違いを理解せず購入してしまう。

株式会社ヒダカラポートフォリオよりみつわ農園米袋
ヒダカラがデザインを手がけたみつわ農園米袋

ー編集部
たしかに私も、コシヒカリやひとめぼれなどある程度信頼できるブランドなら、その時々で安いものを買うことが多いです。

ー舩坂さん
そうですよね。だから「この米はこんなにおいしいんです」「食感が違うんです」と強調しても、高く売ることが難しい商品だと感じています。

一緒に取り組みをやってきた農家さんとは、卸から直接の販売に切り替えるためにネット販売のお手伝いをしたり、より価値が分かりやすい商品開発を行ったり、インスタグラムを始めてファンを増やす活動に力を注いでもらったりというような支援をやってきました。(参考:みつわ農園さんインスタグラム

結果的に、農家さんの利益率に影響するほどに、価値を高めることができています。こういった「価値を高める支援」はやりがいにつながるところですね。

ー編集部
たしかに、農家など第一次産業の方のファンを増やすのは難しいですよね。最近はスーパーマーケットでも生産者さんの顔が見えるシールを貼るなど、作り手と消費者をつなげる活動は少しずつ浸透しているように感じます。かといって、実際に会いに行くレベルのファンを作れるかというと大変だという印象です。

ー舩坂さん
そうですね。みつわ農園さんの場合は、ご本人がとても魅力的ということもあり、インスタグラムをおすすめしたところ現在はフォロワーが2,000人以上、投稿にも400いいねがついていたりします。

知名度だけではなく、みつわ農園さんのお米は味もすごくおいしいんです。お米界のオリンピックといわれる「米・食味分析鑑定コンクール国際大会」や、「お米日本一コンテスト in 静岡」のような全国大会で1位になっています。こんなにいいお米なんだから、ちゃんと売らないともったいないし、儲けてもらわないといけないと思っていて。

ー編集部
農家をされていてフォロワー2,000人以上というのはすごいですね!どんな方なのか気になります。

ー舩坂さん
農家というと男性かつ高齢な方が多いイメージじゃないですか。でも、みつわ農園の社長さんは女性で若くて、3人のお子さんがいるママさんなんです。すごく魅力的な方なので、そこも付加価値になると思っていました。

ー編集部
こだわってお米を購入するのはやはり主婦層が多いと思いますし、ママさん農家だとすごく親近感がわくでしょうね。ファンが増えているのも納得です。

そのようなきっかけを除くと、私たち一般の消費者は、おいしい食材の情報を手に入れるのはなかなか難しいと思うんです。食べてみないとわからないこともありますし、料理する人によっても味が変わるので、本当においしいものを探すのは簡単ではないなと。

事業を通して生産者と消費者をつなげてもらえるというのは、消費者目線でもすごくうれしいことだと思います。

”地方での暮らしとビジネス”都会とは違う良さも体感

飛騨市の企業、株式会社ヒダカラー編集部
舩坂さんのプロフィールを拝見すると、「最初はしぶしぶ行ったけれども、やがて飛騨の魅力の虜になった」ということが書いてありました。具体的には、どのように気持ちが変化していったのでしょうか。

ー舩坂さん
まずプライベートなところを言うと、いま子どもが2人いるのですが、子育て環境の良さが挙げられますね。たとえば保育園も、園庭がものすごく広いんです。

東京にいたときは子育て環境として激戦区に住んでいたので、保育園はアパートの一室くらいの狭い場所で、先生もあまり余裕がなく、ここにずっと子どもを預けるのはどうなのかなと思っていました。

飛騨にきてからは子どもをのびのび遊ばせてくれていますし、お迎えの時間が15分くらい過ぎても、叱られるどころか温かく接してくださいます。そういった環境面ですごく恵まれている土地だなと、最初に思いました。

飛騨とほかの地方都市で違うと思っているのが、楽しい公園がたくさんある点です。多くの公園の遊具が充実していて、子どもが遊ぶ場所に困らないんです。近隣の地方に住んでいる友達が「うらやましい」と言ってくるくらいです。

あと、地域のみんながアットホームで安心できることもありますね。東京に住んでいると、人が多くてちょっと肩がぶつかって舌打ちされたり、お店に行っても接客がちょっと無愛想だったり、そういうことがありますよね。

ー編集部
あります、あります。東京に住んでいたら誰しもが経験すると思います。

ー舩坂さん
そういうことが普通だと思っていたんですが、飛騨に来てからはコンビニでも「髪型変わりましたね」なんて会話が生まれたり、近所のおばちゃんが「ちょっとトイレ貸して」って家に来たりして(笑)。

こんな付き合い方は人によって好き嫌いがあるとは思います。でも私としては、「みんなひとりの人として接してくれるんだな」と思いましたし、気持ちよく生活できそうだなと思いました。

伸び代のあるビジネス!掘り起こし甲斐があり、すぐに結果が出る

地方で起業をしたヒダカラー編集部
飛騨に移ってからの仕事面はどうでしょうか?

ー舩坂さん
仕事でもいいことばかりですね。私が飛騨市のふるさと納税事業に携わって、2年間で3億から11億の規模まで成長したんです。

飛騨市には、魅力を伝える方法を知らないだけで、すごく掘り起こし甲斐がある商品が多かった。だからこそ「この商品をこうやって見せたら売れるんじゃないか」と実行して、すぐに結果を出すことができたんです。ビジネス的なホワイトスペース、伸びしろがあったことで、都会では味わえないようなやりがいを感じられました。

もちろん地域の方も売れたら喜んでくれますし、どんどん一緒に進んでいく面白さもあります。まだ誰もやっていない分野が結構あるので、そういう意味ではすごくチャレンジができるまちだと思います。新規開拓のおもしろさに近い感じですね。

”ヒダカラの社風”やりたいことに伴走、チャレンジできる環境

株式会社ヒダカラの車内イメージー編集部
この記事を見て、ヒダカラさんに興味を持たれた方もいるかと思います。どのようなメンバーがいるか、どんな働き方をしているかなどを教えてください。

ー舩坂さん
メンバーの平均年齢は31歳です。およそ半分が地元出身で、半分は移住されてきた方です。移住といっても、「最初から飛騨が好きで来た」という方だけでなく、配偶者の転勤にあわせて引っ越して仕事を探した結果、ウチに入社したという方もいます。

ー編集部
ヒダカラに入社した方の応募理由としては、どんなものがあったんですが?

ー舩坂さん
いろいろなケースがありますが、たとえば前職でもの作りの会社にいた方は、いろいろな事業者さんと一緒に地域を盛り上げていくことに魅力を感じて、ヒダカラにジョインしてくれました。

ー編集部
人間的にはどのようなポテンシャルの方が多いですか?

ー舩坂さん
やっぱり良くも悪くもベンチャー気質といいますか、考える方よりは「これだ!」と思いついたらすぐやる、やりたいという人が多いですし、実際にそのほうが合うんじゃないかなと思います。

ふるさと納税関連やヒダカラ商店など、事業ごとに担当が分かれてはいるのですが、地域のイベントのようなプロジェクトも自ら発案してやってる方もいますね。本人がやりたいことをできるだけやってもらえるよう、私たちは伴走しているという感じです。

リモートも柔軟に取り入れ、子育てと仕事の両立ができる環境

リモートも柔軟に取り入れ、子育てと仕事の両立ができる環境のヒダカラ

ー編集部
近年はさまざまな働き方があると思いますが、ヒダカラさんはどうでしょうか?

ー舩坂さん
リモートワークに関しては、柔軟に応しています。フルリモートのメンバーは2人ですが、今日の社内を見てみると、リモートが6人くらいいますね。

体調に合わせて判断したり、たまたま子どもを預けられなくて在宅にしたりと、状況に応じてという感じです。毎日オフィスに来なくても働けるような環境を整えているので、オフィスの外で働いてもらっても大丈夫です。

一例を挙げると、飛騨は雪が多いんですよね。雪の日は車を出すだけで15分ぐらいかかってしまいますし、通勤中に滑って転倒するリスクもあるので、雪の日はリモートにするという対応もやっています。

ー編集部
お子さんがいる女性が活躍できる環境もあるのですね。

ー舩坂さん
まさにそうです!ちょっと子育てが落ち着いたタイミングであるとか、子どもを見ながらもバリバリ働きたいとか、そういう人が多いですね。

求人へ応募を検討する方へ、採用情報

ー編集部
最後に、採用状況について教えていただけますでしょうか。

ー舩坂さん
採用は不定期でおこなっています。会社が本格的に稼働してから2年半くらい経つのですが、スタートしたときは5人で、今は19人いるんです。平均すると、1年で7人ぐらい採用していることになりますね。同じように、これからも年間5人ぐらいは採用していくと思います。

ー編集部
そうなんですね、本日はお話しありがとうございました。

最新の採用状況についてはヒダカラさんの公式ウェブサイトの「最新情報」に掲載されているので、気になる方はぜひチェックしてみてください。

ヒダカラ公式ウェブサイト:https://hidakara.com/