国内外からの注目を集める成長企業の事業内容や、新しい働き方にスポットを当て紹介するこの企画。今回は宇宙における新たな通信インフラの構築をめざす株式会社ワープスペースにお話を伺いました。
株式会社ワープスペースとは
株式会社ワープスペースは、人工衛星向け通信インフラ事業の構築を目指すスタートアップ企業です。「通信インフラ」が地球観測衛星事業を中心とする低軌道ミッションが発展していくための最大のボトルネックであると規定し、光空間通信の技術を活用した人工衛星向けの次世代通信ネットワーク「WarpHub InterSat」の開発を進めています。
株式会社ワープスペースの取り組みは、主に地球観測事業を中心とする宇宙空間利用の拡大に寄与することが期待されており、国内にとどまらずアメリカや欧州にも拠点を設け、グローバルな事業展開を進めています。
会社名 | 株式会社ワープスペース |
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住所 | 茨城県つくば市吾妻1-10-1つくばセンタービル1F |
事業内容 | ・低軌道衛星向け通信インフラ事業 ・小型衛星用モジュール開発事業 ・衛星関連技術移転事業 |
設立 | 2016年8月 |
公式ページ | https://warpspace.jp/ |
働き方 | フレックス制 |
今回は、人事の岩田さんにインタビューを実施。ワープスペースの進める事業の意義や宇宙開発における強み、そして働き方やそれを支える社内カルチャー、採用において求める人材についてお話を伺いました。
新しい通信インフラで、地球観測業界における大きな課題の解消に寄与
▲ワープスペースさんが取り組む低軌道人工衛星向けの光を利用した即応通信ネットワークサービス「WarpHub InterSat」のイメージ
編集部
ワープスペースさんの事業内容についてお聞かせください。
岩田さん
ワープスペースはつくば発のスタートアップで、宇宙における新たな通信インフラの構築に取り組んでいます。具体的には、光即応通信ネットワークサービス「WarpHub InterSat」の構築をめざし、ネットワークを構成する衛星の設計や、光通信技術の研究・開発など、さまざまな取り組みを進めています。
編集部
「WarpHub InterSat」は宇宙産業のどのような部分に寄与するサービスなのでしょうか?
岩田さん
我々の通信サービスは、地球観測衛星などの低軌道を周回する人工衛星が抱える、2つの大きなボトルネックの解決に寄与します。
1つ目は、人工衛星が限られた時間しか地上と通信できない点です。人工衛星が地球を1周するのに要する時間は約90分ですが、そのうちわずか10分間程度しかデータを下ろすことができません。
これは、データを下ろすことができる地上局を配置できる領域が非常に限定されているために起こる問題です。90分のうち10分間しかデータを下ろせないということは、約90%、少なくとも現在の市場規模でも約1,800億ドルの機会損失をしているといわれています。
この地上局の可視(通信可能)時間が限られてしまうという課題を、地上局の数を増やすアプローチで解決しようとする事業者もいます。しかし地上の7割は海であり、さらに地政学的なリスクや、受け取ったデータを転送するためのインターネット網が未整備の地域には設置できない問題もあるため、抜本的な解決には繋がりません。
そこで、ワープスペースはこの課題を解消するために、地球観測衛星が飛んでいる主に400~600kmの低軌道よりも高い、中軌道といわれる高度2,000kmほどの高さに中継衛星を打ち上げます。そして、低軌道上の衛星は中継衛星にデータを光通信で送り、中継衛星から地上局へとデータを転送するサービスを計画しています。
私たちの中継衛星は、顧客となる衛星が周回する低軌道よりも高い軌道をとるため、地上局の可視時間が増えます。つまりデータを下ろすための通信時間が相対的に長くなります。このデータ中継衛星を3基配備することで、90%の時間は圏外だったところが、大幅に通信時間を確保できるようになります。
ここで生じる大きな価値の1つは、衛星が撮像したデータを無駄にすることなく利用できるようになるという点です。従来の衛星が、地上と通信する際に使用している電波では、通信容量が限られてしまいます。したがって大容量のデータを地上に下ろせず、破棄されるデータも多くあります。
しかし、電波と比較して数倍〜数百倍の高速通信を可能とする光通信を利用することで、より多くのデータを地上に下ろし、それらを利用できるようになります。
編集部
なるほど。中軌道と光通信の特徴を組み合わせることで、約90%の機会損失とデータ容量の問題を一気にカバーできるんですね。2つ目のボトルネックはどのようなものですか?
岩田さん
2つ目は、現状の電波通信を利用して地上と通信を行うためには「周波数調整」という業務が必要で、これに非常に時間とお金がかかることです。
電波は限られた資源で、同じ周波数だと混線してしまうため、国際機関によって厳格に管理されています。しかし、多数の衛星が打ち上がる現在、周波数にもよりますが、衛星一基あたりの調整に約2年の時間がかかることがあります。今後衛星がさらに増加することを考えると、比例して周波数調整にかかる時間も長期化すると見込まれます。
こちらもワープスペースのサービスを使うことで、周波数調整業務をする必要がなくなります。また、光通信はセキュリティ面でも非常に優れており、データがジャミングされるリスクを下げられるというのも大きなメリットになります。
宇宙業界における革新的な事業が注目を集める
編集部
ワープスペースさんは宇宙業界でかなり注目を集めていますが、どのような点が注目されているのでしょうか。
岩田さん
やはり、もはや世界のすべての衛星事業者にとって電波通信しか選択肢がない中で、通信の課題を抜本的に解消するサービスをこれから提供していくという点ではないでしょうか。各社様からもかなり引き合いがありますし、海外市場に主軸をおいていますので、そこはワープスペースの魅力の一つではないかと考えます。
宇宙における新しいサービスに切り込んでいくという点で、やりがいを感じているスタッフも多いと思います。
編集部
確かに、地球規模で大きな変化をもたらす事業に参画できることは、非常に大きなやりがいや面白さにつながりますね。
既にアメリカに拠点あり。今後の展望は「グローバル市場でシェアを取ること」
編集部
急速に成長を続けられているワープスペースさんですが、先ほどおっしゃったようにご活躍の舞台は国内にとどまらないというわけですね。
岩田さん
そうですね。ワープスペースはグローバルに展開している企業です。既にアメリカの拠点は稼働していますが、今後ヨーロッパにも拠点を設ける準備を進めています。
私も採用活動を通じて実感したのですが、日本国内だけに目を向けて採用活動を行った場合、なかなか採用に至らないこともありました。一方で、視野をグローバルに広げることによって、たくさんの有望な候補者にお会いすることができました。
残念ながら採用枠に限りがあったため、皆さんにオファーをお出しすることは叶いませんでしたが、採用活動を通じて将来的なワープスペースの発展にご協力いただけそうな人脈を築くことができました。
編集部
採用を通して、多くの方とつながることができたのですね。今後の展望についてお教えいただけますでしょうか?
岩田さん
グローバル市場でシェアを確実に取っていくことが、ワープスペースの今後の展望です。まだ商用レベルでの成功事例がないため、いかに早くマーケットに対して価値を提供し、サービスを利用してくれる顧客を増やせるかが重要なマイルストーンの一つです。そのためにも体制を強化し、米国や欧州での活動をより活発化させていくことが求められています。
性別・年齢・国籍はさまざま!認め合い高め合える職場環境
▲多様な人材が活躍するワープスペースさん
編集部
ワープスペースさんの現在の組織体制について教えてください。現在の社員数は何名くらいいらっしゃるのでしょうか?
岩田さん
正社員10名、アルバイトスタッフ5名で、男女比は2対1となっています。理系の世界のあるあるですが、女性エンジニアというのは日本だととても少ないんですよね。そのためワープスペースにも現状、女性エンジニアはまだおりません。
ただし、弊社代表取締役CEOも「女性エンジニアは必要である」という発想を持っています。誤解をしていただきたくないのは、「女性だから採用する」という訳ではありません。チームの多様性を強化させる取り組みの一つとして、今後人員を拡充していく際には、そのような展開も考えていけたらなと思っています。
また、コーポレートでは女性メンバーも活躍しています。年齢も国籍もさまざまなスタッフで構成されているのも特徴で、年齢や性別、国籍、バックグラウンドなど様々な軸における多様性を尊重する文化があると思います。
編集部
多様なメンバーが活躍するワープスペースさんなら、価値観を認め合いながら切磋琢磨して働くことができそうですね。
ライフスタイルに柔軟に対応できる「自由度の高さ」と、それを支える「自律した働き方」
▲自身も3人の子どもを育てながらワープスペースで活躍する岩田さん
編集部
女性スタッフも多く活躍されているワープスペースさんですが、女性が働きやすい職場づくりとして何か工夫されていることはあるのでしょうか。
岩田さん
良い意味でも悪い意味でも区別しない、というのがワープスペースのスタンスです。そのため、特に女性に対して特別な計らいをしているということはありません。
ただし、フレックスタイム制を導入しているため、各人の状況に合わせた柔軟な働き方ができる環境はあるのではないかと思います。私自身、子どもが3人いるのですが、急な病院や学校行事などはやりくりしながら業務にあたることができています。
男性スタッフで「習い事の送迎があるからこの日は在宅にします」という方もいますね。それに対して不満が出るようなことは全くありません。働き方ではなく、結果に対してシビアな文化が根付いているのだと思います。
編集部
岩田さんはお子様が3人いらっしゃるということですが、仕事と子育てを両立しながら働く上で、ワープスペースならではの良いところはどこだと思われますか?
岩田さん
ワープスペースでは幅広く裁量を任されて仕事ができます。うまく活用すれば、自分のライフスタイルとバランスを取って働ける環境だと思います。私自身、かなりの裁量をもって仕事をさせてもらっていますし、他のメンバーも皆自由度高く仕事をしています。
それができるのは、各人が与えられた仕事にそれぞれ全力で取り組んでいるからこそです。月並みな言い方ですが、自由度が高いというのはそれだけ責任も伴います。しかしメンバーは皆努力していますし、何かしらつまずいても自分で立ち上がる力を持っています。
ワープスペースにはそういう人が集まっているからこそ、自由度の高い働き方ができているのだと思います。逆に自律して働ける方でないと、ワープスペースの社風には合わないかなと感じます。
編集部
なるほど。責任を持って自由な働き方ができるワープスペースさんでは、女性ならではのライフスタイルの変化にも柔軟に対応できそうですね。
岩田さん
そうですね。ただワープスペースはグローバルの対応も多いため当然ではありますが、時差も踏まえた働き方になるんですよね。そのバランスは自分としても難しく感じる部分はありました。
でも逆に、自分のライフスタイルに合わせて時間をうまく使うことも可能です。与えられた仕事にしっかりと対応できるのであれば、ライフスタイルに合わせた自由な働き方が認められるというのは、ワープスペースならではの良さだと思います。
編集部
ワープスペースさんには自律した働き方ができるスタッフが集まり、お互いに信頼し合っているからこそ、柔軟な働き方ができるということが良く分かりました。
「尊敬」と「学ぶ姿勢」が魅力の社内カルチャー
編集部
御社の社内カルチャーについてお聞かせください。ワープスペースさんにはどのような雰囲気の社員の方が多いと感じますか?
岩田さん
会社の雰囲気には代表の性格が大きく反映されていると思います。ベンチャーの会社だと「イケイケどんどん」という雰囲気の代表をイメージされる方もいらっしゃるかもしれませんが、弊社の代表はとても穏やかです。イライラしている様子も全く見せず、社員の悩みにも耳を傾けてくれます。心理的安全性が大変高い会社なのではないかと思います。
「本音でしゃべることができる土壌があること」が革新的なものを生み出すためには必要な環境だと思います。これを計算なく実践できる弊社の代表は、皆に尊敬されています。
代表だけでなく、ワープスペースのCXOに就任されている方々もとても尊敬できる方です。尊敬できる方が多くいて、そこから仕事に対する姿勢などを学ぼうとする社員も多いということが、ワープスペースの魅力だと思います。
会社の価値観の軸をなす「Compass of Behavior」の9箇条
編集部
ワープスペースさんが会社の考え方を伝えるためにしている取り組みなどはありますか?
岩田さん
ワープスペースではCompass of Behaviorという、いわゆる会社としての行動指針を非常に大切にしており、入社の際には必ず社員の方に伝えています。
Compass of Behaviorは9箇条あります。人それぞれ共感できるものは違うと思いますが、私がワープスペースを最も表していると感じるのは「05. Resilient spirit」です。ベンチャー企業だからこそ、打たれ強くなる、何があってもへこたれないという覚悟は必要だと思いますね。
【Compass of Behavior】
- 01. Leap
- 02. Goal Oriented
- 03. Decide with fact
- 04. Chase one chance
- 05. Resilient spirit
- 06. Respect your crew
- 07. Love family
- 08. Adventure
- 09. Be attractive
編集部
この「Compass of Behavior」がワープスペースさんの価値観や文化の軸となっているんですね。メンバーがそれを共有できているからこそ、自由度の高い環境でも同じ方向を向いて取り組むことができているのだなと感じました。
※ワープスペースさんのCompass of Behaviorの内容を詳しく示したnoteの記事もぜひご覧ください。
自由な環境を、目標の実現のために活用できる人にマッチ
▲自身も「キャリアを取り戻す」というリベンジの気持ちで入社したという岩田さん
編集部
自律して働ける方がマッチする、というお話もありましたが、あらためてワープスペースさんが求める人材について教えていただけますか。
岩田さん
ワープスペースでは宇宙産業の中で新しいサービスをつくるというやりがいのある仕事に携わることができ、また多様なメンバーの中で刺激を受けながら働くことができます。
ただし、手取り足取り教えてもらえる、という環境ではないため、「口を開けて待っている」という人には合いません。「自由度が高い」という環境は魅力のひとつではありますが、単に「縛られないこと」を求めているのであれば、入社後痛い目に遭うかもしれません。
逆に目的意識を高く持ち、努力できる方はワープスペースにフィットすると思います。極端な言い方をすると、「打算的な人」「計算高い人」ですね。
私自身の話をさせてもらうと、ワープスペースに入社したのは「自分の中でのリベンジを果たしたい」という思いがあったからなんです。以前の会社では時短で働いており、働きやすさがある反面、キャリアを諦めなくてはならないことが多分にありました。でも自分の中で「キャリアを諦めたくない」という思いが強くあり、転職活動をしてワープスペースに入社しました。
つまり私の場合は「この会社でキャリアを取り戻す!」という強い目的意識を持ってワープスペースに入ったんですね。実際に入社後に吸収したものや得たものは、ものすごく大きいものでした。ワープスペースに入社した決断は間違っていなかったな、と感じています。
キャリアを実現したい方、学びの意欲がある方には、ワープスペースの大きな裁量をもって働くことができる環境がとても合っているのではないかと思います。
編集部
受け身ではなく、「自由」を目標実現のための環境ととらえて前向きに努力できる人は、ワープスペースさんでとても楽しく活躍できそうですね。
本日はありがとうございました!
■取材協力
株式会社ワープスペース:https://warpspace.jp/