新しい事業領域に取り組み、業界をリードする企業を紹介するこの企画。今回は、においに特化したソリューションを提供する株式会社レボーンにお話を伺いました。
においのDXを進める株式会社レボーン
株式会社レボーンは、「においセンサー」の開発や「においコンサルティング」などのサービスを通じて、顧客の匂いに関する課題解決をサポートする企業です。クラウドベースのAIに、先進的なにおいセンシング技術と匂いの再生装置を統合し、人の嗅覚に頼り「何となく」で処理されることの多いにおいのDXを進めているのが特徴です。
会社名 | 株式会社レボーン |
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住所 | 東京都中央区新川1-25-2新川STビル2階(東京本社) |
事業内容 | 香り×AI×DXにおける研究・開発 |
設立 | 2018年12月 |
公式ページ | https://www.revorn.co.jp/ |
今回は、株式会社レボーンの事業の特徴や今後の展開、「においのDX」という世の中にまだない分野で開発を進めるエンジニアの仕事内容等について、代表取締役の松岡さんにお話を聞かせていただきました。
独自開発の「においデバイス」で、においの可視化・再現を可能に
▲レボーンさんの開発する匂いセンシングデバイス『Obre』
編集部
まずは御社の事業内容を教えてください。
松岡さん
レボーンはお客様が抱えるにおいの課題解決をサポートする、唯一無二の“トータルにおいソリューション企業”です。においに関するデバイスの自社開発、また官能評価(※)や調香、におい測定環境の構築といったにおいコンサルティング事業を通じて、お客様のにおいの課題を一気通貫でサポートしています。
※官能評価…人の五感(視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚)によって物の特性や感覚を測定する方法のこと。レボーンにおいては「においや香りに対する評価」という意味で使用されている。
編集部
ビジネスシーンにおける「におい」の課題のサポートとは、具体的にどのような内容なのでしょうか。
松岡さん
まず業務の中で「におい」が関わるわかりやすい例は、食品関連企業の品質管理や商品開発があります。味の80%はにおいで決まるとされており、食品の品質管理や開発においてにおいのチェックは不可欠です。その他にも、化粧品や自動車などさまざまな企業の品質管理・商品開発で、におい検査は必須となっています。
その際の課題が、におい検査という業務プロセスに必ず人間の鼻が必要になるという点です。例えば目ならカメラ、耳ならマイクなど代替となるデバイスが存在しますが、人間の五感の中でも嗅覚はメカニズムの全容が解明されていないことから、鼻のAIや代替機器は存在しません。そのためどうしても人間を介在させる必要があり、効率の点などから業務プロセス上のボトルネックになっているのが現状です。
そこで我々が進めているのが、AI等のテクノロジーを活用してにおいの可視化・再現を可能とする「においのDX」です。独自に開発する「においデバイス」により、本来人間しか担えなかった領域をDX化し、企業の生産性の向上に寄与できたらと思っています。また、においというこれまで「何となく」で感覚的に処理されていたものが数値化されることは、例えばクレーム対応など客観的な視点が必要な場面でも活かされてくると思います。
編集部
具体的に御社で提供しているにおいデバイスの例を教えてください。
松岡さん
例えばにおいセンシングデバイス『Obre(オブレ)』は、人間と同等のレベルでにおいを検出することが可能です。そして『Obre』で測定したセンシングデータを、においデータ管理システム『iinioi cloud(いいにおいクラウド)』で可視化しています。
また、におい再現デバイス『Hearom』は数万通りの香りの組み合わせから希望するにおいを再現できるデバイスで、映画館の4DXなどのシーンで使用されています。香料は3,000種類程あるため、希望のにおいを複製することは相当難しいとされていますが、AIを活用することで複数のパターンの中から近いにおいを再現することが可能となっています。人間が行う調香は1回あたり100万円程度かかるとされていますが、機械化により大幅にコストダウンできる点も大きなメリットです。
においの専門家の知見×先端技術で、「においの民主化」を目指す
編集部
御社では「においの民主化」をビジョンに掲げられていますが、こちらの意図をご説明いただけますか?
松岡さん
においは人間の嗅覚に頼らざるを得ず、その道のエキスパートはかなり人数が限られています。例えばタバコの調香や例えば高級な香水の調香など、におい一つで数百億円が動く業界なのですが、それができるのはほんの一握りの人間のみ。その分、権威的・属人的になってしまう傾向があるのが特徴です。
レボーンの「においの民主化」のビジョンには、そんな「におい」を誰にでも活用しやすいものにしていこうという思いが込められています。今や誰でもスマートフォンのカメラで写真を撮れる時代になっていますが、同じようににおいももっと開かれたものにしていくことで、人々の生活をより豊かなものにしていきたいと考えています。
編集部
「においの民主化」のビジョン実現に向けたレボーンさんならではの強みというのは、どういった点にあるとお考えですか?
松岡さん
においセンサー自体を開発している他にも企業はありますが、AIやクラウドといったテクノロジーを駆使しているのは、他にはないレボーンならではの強みです。さらに、世界にも数十人しかいない「においの専門家」と呼ばれる方たちを社内に抱えている点も他にない特徴といえるでしょう。においの解析や再現を行う専門家のノウハウと知見を、先端技術を用いて機械に落とし込んでいく。アナログとデジタルの両面で「におい」に向き合っている点が、レボーンの大きな強みです。
編集部
世界でも数少ないにおいの専門家の方が御社にジョインしているのはなぜなのでしょうか。
松岡さん
その背景には、専門家の後継者不足の問題があります。彼ら自身、予算や人員不足の問題から、後継者育成に課題を抱えており、自身のスキルの標準化が必要だと考えていました。それが弊社の「においの民主化」と重なったからこそ、同じ方向を目指してサービス開発を進められています。
においの産業を確立し、新たな可能性を切り拓いていくのが目標
編集部
レボーンさんでは今後の展望をどのようにお考えですか?
松岡さん
我々の目標は、まだ全容が明らかでない「においの構成要素」を解明し、においの産業を確立することです。カメラやマイクのように、人の生活にとってなくてはならない嗅覚技術のインフラを確立していけたらと考えています。
においの産業の確立は、新たなサービスの創出にもつながります。例えば火事などの災害をにおいで事前に察知したり、がん患者が発するにおいを数値化することで早期発見をしたりと、においを切り口にいろいろな可能性が考えられますよね。食品や環境、医療などさまざまなシーンで活用できるよう、今後もサービスを拡充していけたらと思います。
「におい」の解明に挑戦できる、レボーンのエンジニアの魅力
▲さまざまな職種のエンジニアが連携してサービスを生み出していく
編集部
レボーンさんでは多くのエンジニアの方がご活躍されているとのことですが、どのような職種、専門分野の方がいらっしゃるのでしょうか。
松岡さん
「におい」というのは未解明な部分が多く、化学や物理学、脳科学、AI、ソフトウェア・ハードウェアが複合的に絡み合っています。レボーンでも、ソフトウェアエンジニア、ハードウェアエンジニアをはじめ、AIエンジニアや化学のエンジニア、においのエンジニアまで幅広い職種のエンジニアが連携しあって開発を進めています。
そのため、現地・現物を原則とし、リモートワークは取り入れていません。飛行機を開発したライト兄弟だって、きっとリモートワークでやっていたら難しかったと思うんです。未知の分野を開拓する弊社だからこそ、それぞれの専門分野を持つ全員の連携・協力を重要視しています。
編集部
レボーンさんのエンジニアだからこその仕事の魅力はどういった点にあると思われますか?
松岡さん
においのメカニズムを解き明かすという大きな壁に挑めるのは、レボーンのエンジニアならではですね。まだこの世の中にない分野を進んでいるため、デファクトスタンダード(※)をつくり上げていけるのも魅力です。
※デファクトスタンダード…「事実上の標準」を意味する、業界の標準として認められている規格のこと。
例えば社内には、レボーンでつくった用語や定義がたくさん存在します。世の中に定義・用語が存在していない分野なため、我々自身でつくるしかないんです。その1つが、香りの芳醇さを表す「香度」という言葉で、これは商標登録も行っています。
「におい」という非常に複雑でつかみどころのない領域で開発を行っていく上で、定義づけと用語の作成は不可欠です。それがあるからこそ社内でも共通認識の上で高度な会話ができるようになります。例えば自分の感じる「甘酸っぱいにおい」は、そのままでは正確に伝えることはできませんが、共通の定義と用語があることで客観的な表現が可能となります。定義づけして共有し、それをシステムに落とし込んでいく、というのがレボーンのエンジニア仕事です。既存の枠組みの中にない、新しいものをつくっている点で非常にやりがいを感じられるのではないかと思います。
エンジニアに求められるのは、未解明な「におい」に素直で柔軟に向き合う姿勢
▲レボーンさんで行われる「朝会」の様子
編集部
御社で活躍するエンジニアさんに求められる能力や姿勢は何ですか?
松岡さん
においという解明されていない分野に挑戦する上で、自身の専門分野の経験や知見にとらわれすぎない姿勢を持つことが重要だと思います。逆に自分の持っている知識で「こうだ」と正解を決めつける人にはあまり合わない仕事といえるかもしれません。
実際にレボーンで活躍するエンジニアには素直で落ち着いた、大人な性格の人が多いですね。目の前で起きている現象をそのまま受け止め、さまざまな角度から見ることのできる人というのがレボーンで活躍できるのではないでしょうか。
編集部
落ち着いた方が多いとのことですが、社内全体の雰囲気はいかがでしょうか。
松岡さん
基本的には皆静かに、集中して仕事に取り組んでいます。一方で、さまざまな専門分野が連携してつくり上げていくものなだけに、もちろん意見交換やコミュニケーションも大切です。そのための機会として設けているのが、週2、3回の「朝会」です。
朝会では「におい」に関する課題に対して、解決策の予測や見解を共有する場となっています。というのも、普通分からないことがあればインターネットを調べると思いますが、レボーンが取り組む開発では模範となる解決策が存在しないんですね。そのため社員間での意見交換を通じてさまざまな角度から検討し、予測を立て、実際に試してみることでサービスのブラッシュアップを行っています。
求めるのは「信念を持って、世の中にまだないサービスを創り出したい方」
▲活躍できる人材は「他責にならず、信念を貫き通せる人」とお話いただいた代表取締役の松岡さん
編集部
最後に、レボーンさんに興味を持った読者の方にメッセージをお願いします。
松岡さん
レボーンでは、においのDXという世の中にまだない領域に挑戦できます。クライアントにも業界ナンバーワンと呼ばれるような一流企業が多く、大きな仕事に挑戦できる環境です。既存サービスを言われたままにつくるような環境に違和感を覚える方には、非常にやりがいを感じていただけると思います。
においのDXに挑戦する上で求められるのは、他責にせず「自分はこうありたい」という信念を貫き通せる強い姿勢です。信念を持って革新的なサービスをつくっていきたいと思われる方は、ぜひご応募いただけると嬉しいです。
編集部
松岡さん、本日は貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました!
■取材協力
株式会社レボーン:https://www.revorn.co.jp/
採用ページ:https://www.recruit.revorn.co.jp/