UMAMI UNITED JAPAN株式会社が目指す「食品業界のインテル」とは

独自のビジネスを展開し、ミッションを大切にしながら成長を続ける企業をインタビューする本企画。今回は、植物性原料100%の代替卵製品の開発、販売を手掛けているUMAMI UNITED JAPAN株式会社にお話を伺いました。

植物性原料100%の代替卵製品を展開するUMAMI UNITED JAPAN株式会社

UMAMI UNITED JAPAN株式会社のミッション「ONE TABLEで未来を創る」
▲目指しているのは、さまざまな食のバックグラウンドを持つ人々が同じ食卓を囲める世界だという(公式ページより)

UMAMI UNITED JAPAN株式会社は、こんにゃく粉や「きくらげ旨味パウダー」などの独自の技術を使った植物性原料100%(プラントベース)の代替卵製品「UMAMI EGGパウダー」を開発、販売しています。

掲げているミッションは「ONE TABLEで未来を創る」。多様化する様々な食のバックグラウンドがある人々が同じテーブルを囲み、その1食の選択が未来を明るくしていくボーダレスな世界を目指しています。

会社名 UMAMI UNITED JAPAN株式会社
住所 東京都台東区寿2丁目10-11 仙石ビル 3F
事業内容 植物性たまごの研究開発及び販売
設立 2022年3月9日(日本法人) 2021年12月3日(シンガポール法人)
公式ページ https://jp.umamiunited.com/

UMAMI UNITED JAPAN株式会社の特徴は、ビジネスを消費者に向けてではなく、食品メーカーなどの企業に向けて展開している点です。

UMAMI EGGパウダーの特徴や開発に至るまでの思い、ビジネス戦略についてHR Department/PR Department Managerの安藤由佳さんにお話を伺いました。

本日お話を伺った方
UMAMI UNITED JAPAN株式会社の安藤さん

UMAMI UNITED JAPAN株式会社
HR Department /Manager

安藤 由佳さん

「旨味」と日本由来の原料を重視したUMAMI EGGパウダー

UMAMI UNITED JAPAN株式会社が開発・販売しているUMAMI EGGパウダー
▲植物性原料100%のUMAMI EGGパウダー

編集部

UMAMI UNITED JAPANさんが開発・販売を手掛けているUMAMI EGGパウダーの特徴について伺わせてください。

安藤さん

UMAMI EGGパウダーは植物性原料100%の代替卵製品です。業務用としては1つ500グラムで提供しているのですが、卵1食分50グラムとすると、この量で約200食分の提供が可能です。

例えばスクランブルエッグのように、卵そのものの食感や風味を楽しむ料理の再現はもちろん、卵が持つ固まったり膨らんだりという化学的な機能をUMAMI EGGパウダーは代替できます。例えば製菓製パンの分野や肉加工品のつなぎなどに効果を発揮します。

原料としてこんにゃく粉や豆腐のにがりを使用し、特殊技術で加工することにより、卵のほぐれ感や割れ感といった食感を再現できています。またUMAMI UNITED JAPANの社名にもある「旨味」は日本独特の表現だと思いますので、原料も日本由来のものにすることを意識しています。

編集部

スクランブルエッグを作ることができるとは驚きです。UMAMI EGGパウダーの開発に当たり、こだわったのはどういった部分でしょうか?

安藤さん

製品名にも表れていますが、UMAMI EGGパウダーの開発に当たっては「旨味」という部分を意識しました。植物由来の食品であるプラントベース食について、「味がしなさそう」「美味しくなさそう」というイメージがどうしても強いでしょう。

実際に味がしないことはないのですが、やはり従来のプラントベース食は後味やコク味が弱いという課題がありました。

そこで、UMAMI EGGパウダーでは、独自原料としてUMAMI Powderというのを入れています。これは酵素処理した廃棄寸前のキクラゲを使用した原料です。この独自原料を配合することで、従来品よりもコク味が220%改善しています。

編集部

キクラゲは食感として楽しむイメージがあり、旨味成分として使用するイメージはあまりないように思います。なぜキクラゲを選んだのでしょうか?

安藤さん

キクラゲを選んだ理由はフードロスやアップサイクルの観点からです。UMAMI UNITED JAPANはキクラゲについて、再生可能エネルギー事業を展開している事業者様から調達しています。

その事業者様は農地を転用して太陽光パネルを設置しているのですが、農地転用のルールとして何かしらの農作物を作らなければなりません。

そこで、太陽光パネルの下の暗くて湿気のある場所でも育つキクラゲが育てられているのですが、このキクラゲを持て余してしまっているとのことでした。UMAMI UNITED JAPANが余っているキクラゲを使用することで、食品の過剰供給という課題解決にも結び付いているのです。

編集部

原料調達といった部分でも社会課題の解決に結び付けているのですね。

目指すのは食品業界のインテル、意識せずUMAMI EGGを口にしている世界

UMAMI UNITED JAPAN株式会社の製品の一つ「UMAMI EGG FLAVOR」

編集部

現在はさまざまな代替食が普及していますが、UMAMI UNITED JAPANさんはなぜ卵に注目したのでしょうか?

安藤さん

UMAMI UNITED JAPANが卵に注目している理由の一つとしては、代替食の分野でも代替卵は開発が難しく競合が少ないということが挙げられます。日本でも代替乳や代替肉を手掛けている企業は比較的多いのですが、卵については競合する企業やプロダクトはごくわずかです。

また、日本は海外と比べてヴィーガンやベジタリアンは少ないのですが、何かしらのアレルギーを持っている方は多いです。なかでも、アレルギーを持っている方の約3人に1人が卵アレルギー(※)だそうで、食品アレルギーの中でも卵は大きな割合を占めています。
(※)出典:消費者庁「令和3年度食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業報告書」(https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/allergy/assets/food_labeling_cms204_220601_01.pdf)

日本では多くの方が卵アレルギーに苦しんでいる一方、日本人一人の卵の年間消費量は約350個といいます。これは世界で2番目に多い量です。なぜここまで卵を消費しているかというと、「見えない卵」を消費しているためだと私たちは考えています。

オムレツや卵焼きだと、卵を食べている実感がありますよね。しかし、クッキーやお菓子を食べる時に卵が入っていることを意識する方は少ないのではないでしょうか。実はこの「見えない卵」を食べている機会が、卵を意識して食べる機会よりも圧倒的に多いのです。

編集部

「見えない卵」がUMAMI EGGパウダーに代替されると、一気に代替卵が普及しそうですね。

安藤さん

UMAMI UNITED JAPANは、「食品業界の『インテル』になる」をビジョンとして掲げています。

普段意識することはないですが、ほとんどのパソコンにインテルの製品が搭載されています。なので、気付かないうちにUMAMI UNITED JAPANの製品を口にしている、意識せずとも一般消費者とアレルギーを持っている方、ヴィーガンの方が同じ食品を口にできるという世界を作りたいのです。

編集部

知らないうちにUMAMI UNITED JAPANさんの製品を口にしているという時代が近づいていると感じました。

「食の多様性が遅れている」という課題感から生まれた事業

UMAMI UNITED JAPAN株式会社CEO/Co-founderの山﨑寛斗さん
▲CEOの山﨑さんの原体験からUMAMI EGGが生まれた(公式ページより)

編集部

UMAMI UNITED JAPANさんは、なぜプラントベース食の業界に参入することになったのでしょうか?

安藤さん

UMAMI UNITED JAPANが立ち上げられた背景として、創業者でCEOの山﨑(寛斗さん)の原体験が挙げられます。

山﨑は大学在学中、訪日外国人向けのガイドのボランティアを務めていました。外国人の方は、日本食を楽しみに来日されています。一方で、宗教やアレルギーの問題、ベジタリアンやヴィーガンといった理由で、日本で食べられるものが少ないという現実がありました。

山﨑は当時の状況を見て、「食の多様性について日本は遅れている」と課題感を持ったようです。

編集部

山﨑さんの課題感が今のUMAMI UNITED JAPANさんの事業につながっているのですね。UMAMI UNITED JAPANさんはいつ設立されたのでしょうか?

安藤さん

シンガポール法人は2021年の12月、日本法人は2022年3月です。設立前、山﨑はフードダイバーシティ株式会社さんに勤めていました。

フードダイバーシティさんは食の多様性をテーマにしたメディアを展開されていますが、そこでは台湾で訪日外国人向けのベジタリアンガイドブックを出版するなどしていたようです。

食の多様性について情報を発信し続けてきた山﨑ですが、メディアは食の多様性を実現するためのお手伝いをするのが役目です。「もっと根本的な部分にインパクトを与えたい」という思いから、UMAMI UNITED JAPANを立ち上げることとなります。

編集部

山﨑さんの原体験が、UMAMI UNITED JAPANさんのミッションを形作っているのですね。

安藤さん

UMAMI UNITED JAPANのミッションは「ONE TABLEで未来を創る」です。さまざまな食のバックグラウンドを持つ方が同じ食卓を囲めるような、食の多様性を認め合う社会を作りたいと考えています。

大切なのは未来を創ること、1食の選択で世界をどんどん変えていきたい

編集部

安藤さんがUMAMI UNITED JAPANさんに入社されたきっかけは何でしょうか?

安藤さん

私自身も、自分の原体験がUMAMI UNITED JAPANに入社するきっかけとなりました。

UMAMI UNITED JAPANに入社する前、私は外食産業の会社に勤めていました。会社が運営する外食店で働いていたときに、「ヴィーガン向けのメニューはあるか」「ベジタリアンでも食べられるものはあるか」という問い合わせが数多くあったのです。

しかし、私が勤めていたお店はお肉が売りのメニューで、プラントベース食に対応していませんでした。「なんでわざわざ私たちのお店に来るのだろう」とずっと疑問に思っていましたね。

そんなとき、友人と食事をしていると「実は自分はベジタリアンだ」と言われました。かなり衝撃的な告白でしたね。「ベジタリアンと言うと嫌われるかもしれない」「なんでベジタリアンになったのか質問攻めされるのも面倒くさい」という理由で黙っていたそうなんです。

編集部

友人の告白を受けて安藤さんはどのように思ったのでしょうか?

安藤さん

私としては、負の感情はありませんでした。むしろ近しい相手がベジタリアンだったにもかかわらず「配慮できず申し訳なかった」という思いが強かったですね。

この経験から、私は「この人と肉や魚を食べたい」というわけではなく「この人と楽しく食事がしたい」という気持ちを持っていたことに気付きました。

食事は「今日こんなことがあった」というような何気ないことを共有する場だと思います。栄養を摂取するだけの行為ではなく情緒的な満足の場として食事は存在するのです。

自分の大切な人とゆっくり食事をするという時間は、コロナ禍でなかなかそんな時間を取れなかったことも相まって、とても大切なことだと感じています。

編集部

「何を食べるか」よりも「誰と食べるか」が重要なことは、このコロナ禍で実感した方も多かったと思います。安藤さんは今後どのような思いでUMAMI EGGを広げていきたいでしょうか?

安藤さん

この先の未来を創っていくことが、なによりも重要です。今は気温が急激に上昇していたり、今まで見たことのないような自然現象が起こったりと、未来に対して地球がアラートを出していると感じています。

日本人は幸せなことに、毎日3食、あるいは最低でも2食食事を取れている方が多いでしょう。しかし、環境の変化によってはそれもわかりません。

なので、いつもの3食のうちに1食でもプラントベース食を取り入れるなど、1食の選択で世界がどんどん変わっていくという状況を実現したいです。

編集部

メンバー一人ひとりがミッション「ONE TABLEで未来を創る」を体現されていると感じました。

主要顧客はあくまで企業や団体、素早く顧客にアプローチ

UMAMI UNITED JAPAN株式会社のUMAMI EGGパウダーを使った料理

編集部

UMAMI UNITED JAPANさんの事業は一般消費者というよりも企業に向けて展開しているのでしょうか?

安藤さん

UMAMI EGGパウダーは一般向けにも販売はしていますが、UMAMI UNITED JAPANとしては食品メーカーやフードサービスなど、BtoBのイメージで事業を展開しています。

先ほど申し上げた食品業界のインテルになるためには、企業様や団体様に向けて製品を展開していかなければならないと考えています。

編集部

実際の導入事例についてお教えください。

安藤さん

UMAMI EGGパウダーについては、最初は保育園からお声がけいただきましたね。アレルギーなどお子さまの口に入るものについてしっかり配慮していく必要があるので、保育の現場が最初の契約先となりました。

次に、アレルギー対策を専門的に行っているレストランやカフェなどの外食業界からお声がけいただいています。

お客様の一例として、タワーマンションの1階にお店を構えているカフェがあるのですが、そこはお子さま連れのお客様がよく来店されるお店です。こちらについても、アレルギー対策としてUMAMI EGGパウダーを導入いただいております。また、ヴィーガン専門のお店にもご利用いただいております。

かなり速いペースでお客様が増えておりますが、お客様へのアプローチは2022年から続けておりました。2022年9月に日本で法人を立ち上げてから、事業開発を進めていき、ちょうど今お客様の元に製品が届いているという状況です。

編集部

早くから動いていたからこそ急速に製品が普及しているのですね。今後の展開としてはどのようにお考えでしょうか?

安藤さん

UMAMI UNITED JAPANは、もともと海外にも事業を展開していきたいと考えていました。すでにアメリカのお客様にもアプローチを進めており、2023年秋には実際にカリフォルニアのお客様のもとに製品を納品させていただく予定です。

卵不足という社会情勢が生んだUMAMI EGGへの大きな需要

UMAMI UNITED JAPAN株式会社の製品を使って作られたキッシュ
▲UMAMI UNITED JAPANの製品を使って作られたキッシュ。卵不足という状況の中、代替卵の注目度が上がっている(公式Facebookより)

編集部

国内外で大きな需要を生んでいるUMAMI UNITED JAPANさんの製品ですが、代替卵が注目される背景には何があるのでしょうか?

安藤さん

2022年秋ごろから鳥インフルエンザが猛威を振るうようになり、鶏の殺処分によって卵不足になった結果、卵の価格が急騰しました。このことも、代替卵が注目されるようになったきっかけだと思います。

鶏が生まれて卵を産めるようになるまで成長するには、約半年かかります。なので、これから1年半ほど卵不足になるのではないかと言われているのです。

編集部

卵の価格が上昇したことは、一般消費者はもちろん菓子メーカーなどの企業にも大きな影響を与えそうです。

安藤さん

卵不足の影響は、一般消費者よりも食品メーカーの方が大きいです。なぜかというと、政府は「まずは一般消費者を守ろう」という方針で政策を進めているためです。なので、価格は上がりましたが、スーパーで卵が手に入らないという状況は防げています。

その分、食品メーカーに供給される卵は少なくなってしまうため、メーカーの負担は大きくなっています。

そこで、私たちはUMAMI EGGパウダーをメーカーさんにご提案しています。UMAMI EGGの強みは、食味や機能面の代替はもちろんのこと、長期保存ができるという点もあります。卵は一般的に1週間ほどで使い切らなければなりませんが、UMAMI EGGパウダーは未開封で1年間常温保存できます。保管コストやオペレーションコストの削減につながるのもポイントです。

安定供給といった面でも、UMAMI EGGパウダーはメーカーさんに寄り添ったものとなっているのです。

編集部

保存がきくというのは、メーカーにとってのリスクヘッジに結び付きますね。卵の供給が通常に戻っても、UMAMI EGGパウダーを使用する大きな理由となりそうです。

採用で重視しているミッション、ビジョン、バリューへの共感

並んで歩くUMAMI UNITED JAPAN株式会社の社員たち
▲入社する社員はUMAMI UNITED JAPANのミッション、ビジョン、バリューに共感している(公式Wantedlyより)

編集部

採用したい人物像について伺わせてください。

安藤さん

先ほど申し上げたミッションとビジョンに共感してくれる方を採用したいです。また、UMAMI UNITED JAPANはミッションとビジョンの達成のために4つの価値基準と8つの行動基準からなるバリューを掲げており、そちらについても共感していただきたいと考えています。

4つの価値基準は、「ダイバーシティ」「ポジティブマインド」「フルフラット」「クリーン」です。いずれもUMAMI UNITED JAPANのカルチャーを表しています。UMAMI UNITED JAPANの社員は年齢層も幅広く、シンガポール人の社員やアメリカで業務委託を受けている社員など、多様な社員が在籍しています。

もし入社された場合は、一つの価値観にとらわれず、フットワーク軽く行動していただきたいですね。

8つの行動基準は、UMAMI UNITED JAPANで働く上でのルールです。「全方位型リスペクト」「チャレンジ精神」「まずやるすぐやる」「コミュニケーションマスター」「自分ごと化」「ロジカルシンキング」「超絶仕組み化」「ウェルネススタート」の8つから構成されています。

編集部

ミッション、ビジョン、バリューを体現しているような社員さんの事例についてお聞かせください。

安藤さん

例えば、2023年に新卒で採用した社員は、留学した時にプラントベースヴィーガンのカルチャーに触れて、そういう仕事に携わりたいと入社してきました。

また、最年長社員は50代で、海外の医療機器メーカーなどでゼネラルマネージャーを務めていましたが、ベンチャーの仕事をしたいとUMAMI UNITED JAPANに入社しました。

転職について迷われていたこともあったそうですが、UMAMI UNITED JAPANの事業について話したところ「それおもしろいですね。明日会いに行っていいですか」と会社を訪れたのです。

編集部

まさに8つの行動基準をそのまま実践されているような事例ですね。最後に、UMAMI UNITED JAPANさんに興味を持っている方に向けてメッセージをお願いいたします。

安藤さん

UMAMI UNITED JAPANは立ち上げて間もないスタートアップですので、現時点では原則経験者を採用しています。

もし興味を持っていただいてUMAMI UNITED JAPANで働きたいという方に求めるのは、素直であることです。その上で、フットワーク軽く行動できる方、自立自走ができる方、明るくポジティブで好奇心旺盛な方、ダイバーシティな価値観を持って仕事に取り組める方を歓迎いたします。

編集部

過去にとらわれず、新しい道を開拓していきたいというマインドの方が活躍できる環境にあると感じました。本日はありがとうございました。

■取材協力
UMAMI UNITED JAPAN株式会社:https://jp.umamiunited.com/
採用ページ:https://www.wantedly.com/companies/company_7129388/projects