1日7時間労働。株式会社トライエッティングが実践するワークライフバランス向上の取り組みとは

企業の特徴ある働き方や、ワークライフバランスに関する取り組みなどについてお伝えしていくこの企画。

今回は需要予測や勤務シフト管理など、企業の知能作業の自動化に取り組む名古屋大学発のAIベンチャー企業、株式会社トライエッティングを取材しました。

株式会社トライエッティングとは

株式会社トライエッティングは、認識・未来予測・最適化を主とした「知能作業」の自動化を支援する、名古屋大学発のAIベンチャーです。

会社名 株式会社トライエッティング
住所 愛知県名古屋市中区葵1-20-22 セントラル名古屋葵ビル4階
事業内容 サプライチェーン領域における業務特化型拡張知能(AI)の製品販売事業
設立 2016年6月
公式ページ https://www.tryeting.jp/
働き方 出社とリモートワークが選択できるハイブリッド勤務

株式会社トライエッティングでは、2016年の創業当時から労働時間を一般的な企業の就業時間よりも1時間短い7時間に定めています。

また、2020年4月以降は全メンバーが出社からテレワークへと移行し、現在は出社とテレワークのいずれかを選択できるようになっています。

今回は取締役副社長COOの菅沼さんに、トライエッティングの事業内容や社内カルチャー、ワークライフバランス関連の取り組みなどについてお話を伺いました。

本日お話を伺った方
株式会社トライエッティング・取締役副社長COOの菅沼さん

株式会社トライエッティング
取締役副社長 COO

菅沼 美久さん

企業の知能作業をAIで自動化。ビジネスの加速化を支援

株式会社トライエッティングの社名ロゴ
▲トライエッティング(TRYETING)という社名はKeep TRYING to make something new which doesn't exist YET!(未だ存在しないものをつくるものづくりにトライし続けよう)”という言葉から生まれた

編集部

最初に、トライエッティングさんの事業内容についてお聞かせいただけますでしょうか。

菅沼さん

当社は認識、未来予測、最適化を主とした「知能作業」をAIによって自動化し、需要予測や勤務シフトの自動作成等の企業における知能作業自動化に取り組む企業です。

編集部

「知能作業」とは具体的にどのような作業を指すのですか?自動化によって企業が得られるメリットについてもあわせてご説明いただけますか。

菅沼さん

知能作業とは、勤務シフトの作成、需要予測など、膨大かつ多様すぎるデータに関わる仕事を指します。通常、Excelなどを用いてデータを作成しますが、これらの作業をAIによって自動化することで、業務の効率化を実現することができます。

編集部

なるほど。語弊があるかも知れませんが、面倒かつ単純な作業を自動化することで、労働生産性の高い業務が可能となるというわけですね。

菅沼さん

おっしゃる通りです。企業がAIを導入しようとすると、開発期間の長期化や人材育成など膨大な導入コストがかかります。これらの課題を解決するのが当社開発のノーコード予測AI「UMWELT(ウムベルト)」です。

専門的な知識がなくてもさまざまな数量を予測し、Excelデータと連携することによりCSVをAI化することができるシステムとなっております。

トライエッティングが開発したノーコード予測AI「UMWELT」のイメージ画像
▲専門的な知識がなくても、さまざまな数量を予測できるノーコード予測AI「UMWELT」

菅沼さん

また、複雑なシフト作成を瞬時に解決するシフト自動作成ツール「HRBEST(ハーベスト)」では、幅広い業界のルールを反映し、自動でシフトを作成することが可能です。

パートやアルバイトなどの雇用形態への対応や、欠勤や早退、遅刻といったイレギュラーな決定にも配慮したシステムになっています。

トライエッティングが開発したシフト自動作成ツール「HRBEST」のイメージ画像
▲ノーコードAI「HRBEST」は、最適なシフト作成をワンクリックで自動作成することができる(公式サイトから引用)

編集部

トライエッティングさんはAI導入の課題である導入コストの解決と、知能作業の自動化の両方を可能とすることで、モノとヒトの最適化を実現されているのですね。

目指すは人間の知性を拡張できるAI

編集部

さまざまな知能作業をAIが自動化することによって、業務に携わっていた人間とAIが置き換えられてしまうのでしょうか?

菅沼さん

当社が目指しているのは、AIが人間に取って代わることではありません。これまで膨大な時間が割かれていた知能作業をAIが行うことで、人間は人間にしかできないクリエイティブな仕事にエネルギーを注ぐことができます。

AIを中心としたデータテクノロジーを、サプライチェーンやメーカー、小売業や商社など幅広い業種の基幹システムやアプリケーションに組み込むことで、人間の知性を拡張することができます。それが私たちが目指す拡張知能「Augmented Intelligence:AI(※)」です。
(※)一般的にAIは「人工知能=Artificial Intelligence」と捉えられているが、「拡張知能=Augmented Intelligence」とする考え方もある。

編集部

知能作業をAIに任せることで、企業の社員は自分にしかできない仕事に注力することができますね。トライエッティングさんが目指す拡張知能は、産業構造そのものに大きな変革をもたらすと感じました。

年代・国籍問わず、多様性に富んだメンバーが活躍

オフィスで談笑するトライエッティングのメンバーの様子

編集部

トライエッティングさんのメンバーの年齢層はどの年代が多いのでしょうか?

菅沼さん

20〜50代と、幅広い年齢層のメンバーがジョインしています。外国籍のメンバーも活躍しており、多様なメンバー構成であることが当社の特徴のひとつです。

編集部

AIという専門的な分野を事業とするトライエッティングさんですが、前職からのキャリアチェンジで入社された方はいらっしゃいますか?

菅沼さん

前職でハードウェアの開発をおこなっていた者が、ソフトウェア開発を手掛ける当社にジョインしたケース、また受託開発をメイン事業とする企業から、自社製品を開発したいという理由で入社したケースもあります。

営業チームのメンバーの中には、目に見える商品そのものを売るのではなく、AIという技術を使ったサービスを提供したいという思いから入社した者もいるなど、多彩なバックボーンを持ったメンバーが活躍しています。

編集部

単なるキャリアチェンジではなく、トライエッティングさんでの自身の役割を理解した上で入社を志望されたのですね。御社にとっても心強いジョインだと思いました。

多彩なオンラインツール活用でテレワークをサポート

トライエッティングの社内にあるカフェテリアの様子
▲トライエッティングさんのオフィス内にあるランチやミーティングなどに利用できるおしゃれなカフェテリア

編集部

次に、トライエッティングさんの働き方についてお聞きします。勤務形態はどのようになっていますか?

菅沼さん

社会情勢の影響を受け、2020年の4月に全てのメンバーが出社からテレワークに移行しました。現在は出社かテレワークかを選択できるようになっており、全体の約7割がテレワークでの勤務となっております。

当時、全メンバーを出社からテレワークに移行することは大きな挑戦ではありましたが、当社のビジネスモデルがAIによる知能作業の自動化であり、テレワークという働き方に親和性があったことで、円滑に移行できたと分析しています。

編集部

テレワークの課題のひとつとして、メンバー間のコミュニケーションがあります。トライエッティングさんではどのような工夫をされていますか?

菅沼さん

テレワークという働き方に親和性があったとはいえ、準備期間を設けず、急遽全メンバーがテレワークとなった当初は、私も含め戸惑いを感じたメンバーも多かったように思われます。

不安を感じながら仕事をするのではなく、テレワークをスムーズにするためには何をすべきかをメンバー全員で考え、実行したことにトライエッティングらしさがあります。

具体的な工夫としては、Slackを使ったコミュニケーションです。もともとテレワーク移行前から社内で利用していましたが、その使い方を改めて統一するなど整備を行いました。

テキスト上でのコミュニケーションだけでは難しい場合は、Slackのワークスペース内で音声会話ができるハドル機能を使うことで対応しています。

また、部署によって頻度は異なりますが、エンジニアチームの場合、定例ミーティングを業務内容に合わせて週に1回、毎日行っています。予定や業務の進捗などを把握し、タスクをこなすことで、出社時と同じように仕事ができるように努めています。

会社全体としては月に1回、全社定例会を開催しており、1ヶ月の動きや今後の進む方向性、各部署のプロジェクトの進捗具合などを報告、共有することで全社員の目線を合わせるようにしています。

毎週記事を更新!社内カルチャーが見えるオープン社内報

トライエッティングのオープン社内報のイメージ
▲トライエッティングさんのオープン社内報では、部署ごとのさまざまな取り組みを紹介している(noteトライエッティングオープン社内報から引用)

編集部

Slackのテキスト機能だけではなく、直接会話をすることでより円滑なコミュニケーションを図っているのですね。Slack以外で使用しているオンラインツールはありますか?

菅沼さん

メディアプラットフォーム「note」を活用し、オープン社内報という形で記事を毎週更新しています。業務に関することのほか、さまざまなテーマを扱っているのが特徴です。例えば、1月16日のヒーローの日にちなみ、メンバーに自分にとってのヒーローをインタビューしたり、10月31日のハロウィンでは出身地のお祭りなどを紹介したりしています。

テレワークで直接顔を合わせることができなくてもさまざまなツールを使うことで、距離を感じないコミュニケーションを図るようにしています。

編集部

トライエッティングさんのオープン社内報を一部拝読したのですが、オンラインお茶会の実施や、顔と名前が一致しない問題解決のためのメンバー表の作成など、積極的にコミュニケーションを図られている様子を伺うことができました。

ラジオ感覚で聴くことができるトライエッティングの「音声社内報」が面白い

編集部

noteによるオープン社内報のほか、トライエッティングさんのメンバーだけが視聴できる音声社内報があると伺いました。

菅沼さん

音声社内報は、直接顔を合わせなくても、どの部署にどんなメンバーがいるかなどを音声で知ることで、相互理解につながることを目的とした当社独自のコミュニケーションツールです。

広報チームがテーマを決めてメンバーにインタビューをし、定期的にアップしている15分程度の内容は、オープン社内報よりもくだけており、メンバーの業務以外の顔を垣間見ることができると社内でも話題となっています。インタビューはリレー形式になっており、インタビューを受けたメンバーが次の人を指名する流れになっています。

音声社内報は当社のメンバーであればいつでもアクセスができ、好きな時間に視聴ができます。メンバーの中にはラジオ感覚で聴いている者もいるようです。

編集部

テキストで読むとなると、一旦仕事の手を止める必要がありますが、音声なら聴きながらでも別の作業ができますね。どのようなテーマで話されているか、差し支えのない範囲で紹介いただけると嬉しいです。

菅沼さん

趣味や最近ハマっていることなどをテーマにすることが多いです。最近では自分で洋服を作ることを趣味にしている男性メンバーのインタビューが面白かったです。

音声社内報では趣味や最近ハマっていることなどがテーマに上がることが多く、意外な一面を知ることで部署間の垣根を越えたコミュニケーションを図ることができているようです。

テレワークの場合、部署が変わったり、新入メンバーが入っても顔を合わせる機会がありませんが、音声社内報を通して人となりを知ることができます。共通の趣味があればSlackを通じて連絡を取り合うこともできるので、当社としてもコミュニケーションの一環として、今後も力を入れていく方針です。

ワークライフバランスを考慮した「1日7時間」の所定労働時間

トライエッティングのオフィスの風景
▲デスクの他、ソファスペースがあるトライエッティングさんのオフィスはフリーアドレス制を導入

編集部

トライエッティングさんでは就業時間が7時間と伺っております。法定労働時間より1時間短い労働時間に定めている理由についてお聞かせいただけますか?

菅沼さん

就業時間を7時間としているのは、「プライベートと仕事のバランスをしっかり取れる会社にしていきたい」という創業時のメンバーの思いが込められています。

起業をするにあたり、代表の長江と私、CTOの3人でどのような会社にしていきたいかを話し合った時、仕事も大切だけど、プライベートも充実できる会社にしたいという共通の思いがありました。

就業時間を7時間にすることで、限られた就業時間内で効率的に仕事を終え、オンとオフの切り替えをスムーズに行おうという意識も生まれます。また、残業時間の月平均が10時間程度という数字が示すように、創業時に掲げた思いはメンバーの協力もあり実現できていると感じています。

編集部

ベンチャーかつ、技術開発をメイン事業とする業界において、トライエッティングさんの月平均10時間という残業時間はかなり少ない印象です。

菅沼さん

当社には「残業が多いことはカッコ悪い働き方だよね」というカルチャーがあります。限られた時間内でいかにタスクを効率的にこなしていくかを常に意識することで、集中力を高めることができます。

また、知能作業の自動化を支援している会社が、人海戦略や長時間労働によって開発をしているとなると説得力がなく、お客様にも示しがつきません。出社でもテレワークでも、終業時間になったら、メンバー同士で声をかけ、業務を終えるようにしています。

編集部

トライエッティングさんが目指す知能作業の自動化は、業務の効率化やクリエイティブな仕事に人間のエネルギーを再分配することによって、より良いワークライフバランスを築くためのテクノロジーでもあるのですね。

9割以上の有給取得率と充実の休暇制度

編集部

就業時間7時間、少ない残業時間という働き方は子育て世代にとっても働きやすい環境だと思います。加えて、トライエッティングさんでは取得できる休暇も多いと伺っております。御社の休暇制度についてご紹介いただけますか?

菅沼さん

当社の年間休日は130日程度となっており、ゴールデンウィークやお盆、年末年始は長期休業になります。加えて、通常の有給休暇とは別に、年に3日分の特別休暇があります。

長期休業は休日の前後も休業となるため、カレンダーによっては1〜2週間程度休業という年もあり、贅沢な悩みではありますが有給を取るタイミングに悩むメンバーもいるようです。有給使用率としては9割程度(※)と高い水準になっています。
(※)2023年5月現在

編集部

非常に高い有給使用率ですね!トライエッティングさんのメンバーは、休暇をどのように過ごされているのでしょう。

菅沼さん

子育て世代のメンバーはお子さんとの時間に充てることが多いようです。当社の有給休暇と特別休暇は1時間単位でも取得できるため、お子さんの授業参観やお迎えなどで中抜けをすることができます。年間休日で休暇が十分に足りているメンバーの中には、時間単位で有給を使用し、プライベートの時間に充てている者もいるようです。

休暇を利用し、ボランティアで外国籍の子供を対象に日本語を教えている者や、子育てを終えた世代では夫婦や友人と旅行に出かける者など、それぞれのライフスタイルに合わせて休暇を楽しんでいます。

編集部

有給休暇の取得率の高さや休暇の過ごし方を拝見して、トライエッティングさんの働き方がワークライフバランスの観点からも優れていることがわかりました。

メンバーの意見を尊重し、男女共に働きやすい組織づくりを目指す

編集部

お話を伺い、トライエッティングさんはメンバーの働きやすさを第一に考えた組織づくりをされていると感じます。今後、検討されている制度の導入などがあればお聞かせいただけますでしょうか。

菅沼さん

制度としては女性活躍に力を入れていく方針です。すでに導入した事例としては、生理日の体調不良だけではなく、女性の健康に関わるさまざまな事由に対応した「Female休暇」があります。

具体例としては婦人科系疾患による体調不良、検査、治療のほか、不妊のための検査、治療、妊娠時のつわりや妊婦健診にも申請することができ、毎月1日分の有給として付与されます。

また、不妊のための検査・治療については、男性も休暇を取得できるよう、現在社内で検討を進めているところです。

女性が働きやすい環境を整えることで、男性にとっても働きやすい環境をつくることができるというのが当社の考えです。メンバーの意見を取り入れながらより良い制度の制定に取り組んでいます。

編集部

生理休暇を導入している企業はたくさんありますが、妊娠時のつわりや体調不良、不妊治療に至るまでカバーしているのは、働きやすさを重視するトライエッティングさんならではの制度と言えますね。他に、メンバーの声を反映して導入した、または導入を検討している制度等はありますか?

菅沼さん

ユニークなところでは、制度ではないのですが、Nintendo Switchのコントローラーを経費で購入してほしいという稟議書が上がったことがあります。一見、業務とは関係がないように思われますが、稟議書を書いたメンバーはいたって真面目で、一緒にゲームをすることは、メンバー間のコミュニケーションにつながるといった内容でした。

事実、休憩時にゲームを楽しむメンバーは多く、コミュニケーションの一環になっているため、結果として会社で購入するに至りました。

業務に関係ないからといってすぐにNOと突き返すのではなく、まずは声を聞き、実現に向けて検討するといった社風もまた、手前味噌ながら当社の魅力だと感じます。

自分らしい生き方、働きやすさを追求できる方を歓迎

読者にメッセージを送るトライエッティング取締役副社長COOの菅沼さん

編集部

トライエッティングさんでは現在、本社所在地の愛知県周辺を中心に、全国からメンバーがジョインしているとのことですが、最後に、御社に興味を持った全国の読者に向け、メッセージをいただけますか?

菅沼さん

ご説明させていただいた通り、当社は企業の知能作業をAIで自動化することを事業としております。社内システムも自動化が進み、非効率的な作業はどんどん排除しているところです。そのため、メンバーを爆発的に増やすのではなく、少数精鋭のメンバーによる経営をモットーとしています。

カルチャーとしては、今回ご紹介したテレワークや特別休暇制度のように、メンバーひとりひとりが自分に合ったワークライフバランスを実現できるような体制づくりに努めています。メンバーの声がきっかけで導入された制度もあるので、自分らしい生き方や働きやすさを共に追求する、熱意を持った方を歓迎します。

働き方や制度の導入など、全てにおいて公正であるのがトライエッティングの強みです。メンバーの声を尊重し、全てのメンバーが公正に会社の制度が使えるよう、「生きた制度」の導入に向け尽力しています。

当社が目指す人間の知性を拡張することを目的としたAIによるビジネスモデルや、自分らしく働くことができるワークライフバランスを求めている方はぜひ、お問い合わせください。

編集部

今回お話を聞くことで、知能作業の自動化がもたらす労働生産性の向上や、メンバーのワークライフバランスを常に高めていこうとする、トライエッティングさんの姿勢を知ることができました。

今日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。

■取材協力
株式会社トライエッティング:https://www.tryeting.jp/
採用ページ:https://www.wantedly.com/companies/tryeting