職員のウェルビーイングの実現を目指す北海道「苫小牧市役所」

働く人たちのワークライフバランスを大切にした職場づくりを進めている自治体や企業にインタビューする本企画。今回は、北海道苫小牧市にお話を伺いました。

海と空のダブルポートを擁する産業拠点都市「北海道苫小牧市」

苫小牧市の苫小牧港の夜景
▲苫小牧港の美しい夜景

苫小牧市は国際拠点港湾である「苫小牧港」と北海道の空の玄関口「新千歳空港」のダブルポートを擁する交通の要衝として、多様な産業が集積しており、北海道をけん引する産業拠点都市として発展する活気みなぎるまちです。

札幌まで車で約60分、空港まで約30分というアクセスの良さに加え、自然が豊かで、夏は冷涼、冬は雪が少ない暮らしやすいまちです。

また、全国で初めてスポーツ都市宣言を掲げるなど、アイスホッケーをはじめとするスポーツが盛んなまちで、市内には多くのスポーツ施設があります。

苫小牧市公式キャラクター「とまチョップ」と港
▲苫小牧市公式キャラクター「とまチョップ」と港

自治体名 北海道苫小牧市
本庁舎住所 北海道苫小牧市旭町4丁目5番6号
公式ページ https://www.city.tomakomai.
hokkaido.jp/

苫小牧市役所は、2021年から4年連続「健康経営優良法人」の認定を受け、2022年からは、全国自治体で唯一の「ホワイト500」の認定を受けているほか、北海道で初の「イクボス宣言(※)」を行うなど、職員がいきいきと働くことができる職場環境づくりに取り組んでいます。
(※)イクボスとは、部下のワークライフバランスに配慮しながらも、業務効率を上げることで業務を滞りなく進め、自らの仕事と私生活も充実させている管理職のこと。

今回は、総務部行政監理室・服務主幹の鳥羽亜矢子さんにお話を聞かせていただきました。

本日お話を伺った方
苫小牧市総務部行政監理室・服務主幹の鳥羽亜矢子さん

苫小牧市
総務部行政監理室 服務主幹

鳥羽 亜矢子さん

「働き方改革」と「健康経営」を一体的に推進する苫小牧市

苫小牧市役所の「健康経営優良法人2024」認定の様子
▲「健康経営優良法人2024」認定の様子

編集部

本日は苫小牧市役所さんが取り組むウェルビーイング経営についてお伺いできればと思います。

鳥羽さん

苫小牧市役所は「健康経営優良法人」の中でも上位500社に位置する「ホワイト500」の認定を受けているほか、「ハラスメント・ゼロ宣言」や「イクボス宣言」を行うなど、職員のウェルビーイングの実現を目指しています。

編集部

それらの事柄に取り組むようになった経緯についてご説明いただけますか?

鳥羽さん

社会情勢が目まぐるしく変化する中で、行政課題も多様化・複雑化しています。これらに適切に対応していくために苫小牧市役所では、職員一人一人が心身ともに健康で、個性や能力を最大限に発揮できる職場環境を整備するため、「働き方改革」と「健康経営」を一体的に推進しています。仕事に誇りややりがいを感じ、いきいきと働くことができるようワークエンゲージメントの向上を目指しています。

職員が心身ともに健康であることは組織の活性化や生産性の向上につながり、質の高い行政サービスの提供に資するとの考えのもと、「ウェルビーイング経営」に取り組んでいます。

編集部

職員のウェルビーイングが、新たな行政課題や市民ニーズへの対応力向上につながるということですね。

ヘルスリテラシーの向上でパフォーマンスアップ

 苫小牧市役所の執務室(バランスボール使用)

編集部

苫小牧市役所さんで取り組んでいる「健康経営」について、具体的に教えてください。

鳥羽さん

「苫小牧市健康経営宣言」に基づき、職員のヘルスリテラシー(※)の向上や生活習慣病予防に取り組んでいます。
(※)ヘルスリテラシーとは、健康や医療に関する正しい情報を入手して活用する能力のこと。

仕事を始める前と仕事の合間には、庁内放送に合わせて職場での簡単ストレッチを導入しています。また、パーソナルトレーナーによる運動指導やピラティス、マインドフルネスやヨガの研修も開催しており、生活習慣の改善につなげています。

昼食後には約20分程度の仮眠をとるパワーナップも導入しており、目と脳を休息させることで、午後からのパフォーマンス向上につなげています。

編集部

ストレッチやヨガ、パワーナップなどバラエティに富んだ健康施策ですね。職員の皆さんからの反応はいかがですか?

鳥羽さん

ストレス緩和や感情コントロール、睡眠の質の向上などにより生産性がアップしたと好評です。

さらに、苫小牧市役所ではセルフケア休暇を導入しており、健診・検診の再検査や禁煙治療、不妊治療のための休暇を取得することができます。これによりプレゼンティーズムやアブセンティーズム(※)の低減を目指しています。
(※)プレゼンティーズムとは、出勤しているが健康問題が理由で生産性が低下している状態、アブセンティーズムは病欠のこと。

苫小牧市役所のヨガ研修
▲ヨガ研修の様子。職員の健康意識の向上にもつながっている

テレワークや時差出勤の導入で、より働きやすい環境に

編集部

「働き方改革」についてはいかがでしょうか?

鳥羽さん

苫小牧市役所では、テレワークや時差出勤を導入し、ワークライフバランスの推進や、育児・介護・治療と仕事の両立を図り、働きやすい職場環境の整備に取り組んでいます。テレワーク用貸出PCも整備し、約6割の職場が実施する等、多様な働き方が定着しています。

「ナチュラル・ビズ・スタイル」や「ウォークビズ」で自分らしく

編集部

その他に、苫小牧市役所さんの取り組みがありましたらお教えいただきたいです。

鳥羽さん

自分らしく働きやすい服装で仕事をすることができる「ナチュラル・ビズ・スタイル」を導入し、男性職員は通年ノーネクタイでの勤務をしています。

また、仕事をしながら運動機会を増やして、仕事のパフォーマンスの向上を図るためスニーカー等の歩きやすい靴を着用する「ウォークビズ」も導入しています。

オフィスBGMの導入で集中力アップ

編集部

職場の環境面ではいかがでしょうか?

鳥羽さん

執務室では、リラックス効果や集中力を高める効果のあるオフィスBGMを導入し、勤務時間中はジャズ、昼休みにはカフェにいるようなBGMが流れる等、毎日の仕事が楽しくなるような職場づくりを目指しています。

部下を思いやる上司が多い苫小牧市役所

苫小牧市役所職員のミーティングの一コマ

編集部

これまでの「健康経営」と「働き方改革」の推進で、苫小牧市役所の職員の皆さんに変化は見られましたか?

鳥羽さん

市で実施した調査結果によると、職員のヘルスリテラシーは年々増加傾向にあります。健康意識の高い職員ほどポジティブな思考を持ち、健康課題のない職員ほど職場への貢献意欲が高く、エンゲージメントが高いことも明らかとなりました。

編集部

「健康経営」のさまざまな取り組みが実を結んだ形ですね。

鳥羽さん

はい。当市のエンゲージメント調査の結果から、多くの職員が仕事に主体的に取り組み、お互いに理解し認め合い、ともに働こうとする姿勢が見られたほか、部下を思いやる上司が多く、約8割の職員が「自由に発言できる心理的な安心感がある」と回答しています。

また、職場の同僚、部下、上司に対し感謝の言葉をかけていると回答した職員は9割で、仕事のストレスをためないよう挨拶や声がけ等コミュニケーションの工夫をしています。

仕事にやりがいを感じ、ウェルビーイングの実現を図るため、職場の中で日常的にポジティブフィードバックを心がける取組を新たに始めています。

編集部

心理的安全性の高い環境は、組織のパフォーマンス向上に重要ですね。職員の皆さんの多くが職場環境に肯定的というのは素晴らしいです。休暇の取得しやすさについてはいかがでしょうか?

休暇の充実も苫小牧市役所の魅力の一つ

苫小牧市公式キャラクター「とまチョップ」が公園にいるようす▲芝生の上で元気いっぱいの苫小牧市公式キャラクター「とまチョップ」

鳥羽さん

年次有給休暇や夏季休暇の取得日数は増加傾向にあり、男性の育休取得率も向上しています。苫小牧市役所では、管理職が組織として成果を出しながら自らも仕事と私生活を楽しむ「イクボス宣言」をおこなっており、部下の育児・介護・治療と仕事の両立を応援し、休暇の取得を促しています。

苫小牧市役所では、約30種類以上の休暇・休業制度があり、職員のワークライフバランスを推進しています。

編集部

苫小牧市役所さんの「健康経営」と「働き方改革」は良い成果を上げていますが、今後の目標はなんでしょうか?

鳥羽さん

職員一人一人が主体的にいきいきと働くことができるようエンゲージメントの向上を目指しています。 「働きがい」や「自己成長」を感じられる職場づくりが目標です。職員一人ひとりのウェルビーイングの実現を図ることで、質の高い行政サービスの提供につながると考えています。

苫小牧市は「組織力向上のために率先して行動できる方」を歓迎

苫小牧市公式キャラクター「とまチョップ」と湖
▲苫小牧市公式キャラクター「とまチョップ」と湖

編集部

最後に、採用について伺いたいと思います。苫小牧市の職員さんとして望まれる人物像をお聞かせください。

鳥羽さん

苫小牧市では、時代の転換期において、社会の潮流をいち早く捉え、「人が集まる魅力の創造」「ゼロカーボンシティへの挑戦」「産業都市としてのさらなる飛躍」という視点で様々な施策を展開し、未来につながるまちづくりに取り組んでいます。

市民に寄り添いながら、使命感やチャレンジ精神を持った方と一緒に働きたいと考えています。

また、限られた職員数で行政業務を遂行するためには、職場の仲間をチームと捉え、互いに助け合うことが必要です。チームに貢献するために、率先して行動できる方を求めています。

魅力あるまちづくりや、市民の方のより良い暮らしに貢献できることは、とてもやりがいのある仕事です。魅力あるまち「とまこまい」をともに描いてくれる皆さんと一緒に働けることを楽しみにしています。

編集部

苫小牧市役所さんでは、職員の皆さんのウェルビーイングの実現を大切にしているからこそ、職場のチーム力が向上し、さまざまな課題に対応する熱意が生まれてくるのだと感じました。本日はありがとうございました。

■取材協力
苫小牧市:https://www.city.tomakomai.hokkaido.jp/
採用ページ:https://www.city.tomakomai.hokkaido.jp/shisei/shisei/shokuinninyo/shokuinsaiyo/