VRゲーム市場の最前線を走る株式会社Thirdverseの信念とビジョンとは

成長めざましい業界の中で最前線に立ちリードする企業や、クリエイティブ業界における新しい働き方を紹介するこの企画。今回はVRゲーム開発を行う株式会社Thirdverseにお話を伺いました。

株式会社Thirdverseとは

Thirdverseが掲げるビジョン
▲株式会社Thirdverseが掲げるビジョン(採用サイトから引用)

株式会社Thirdverseは『10億人が生活する、新しい仮想世界の創造』をビジョンに掲げ、VRゲームの開発を行うVRゲームスタジオです。

2019年に発表したVRマルチプレイ剣戟アクション『ソード・オブ・ガルガンチュア』をはじめ、『ALTAIR BREAKER(アルタイル ブレイカー)』『X8(エックスエイト)』の3つのVRゲームを発売しています。東京ゲームショウ2023では、世界市場に向けた新作VRゲームプロジェクトも発表予定となっています。

会社名 株式会社Thirdverse
住所 東京都千代田区神田錦町2丁目2番地1神田スクエア11階WeWork内
※アメリカのサンフランシスコにも開発拠点あり
事業内容 Virtual Realityコンテンツ・サービスの企画・開発・販売・運営
設立 2013年4月
公式ページ https://www.thirdverse.io/ja/
働き方 ハイブリッド勤務(出社+リモートワーク)

Thirdverseではゲーム開発経験者だけでなく、20代のクリエイターや外国籍クリエイターなど多様なメンバーが活躍しています。2022年11月には約20億円の資金調達も実施し、新たなVRゲーム開発に向けたグローバルでの採用強化を図っています。

また、これまで「VRゲーム事業」と、ブロックチェーン技術を活用した「Web3ゲーム事業」を両輪で進めてきたThirdverseですが、2023年5月には両事業を分割し、Web3ゲーム事業は株式会社Mint Townに引き継がれました。ThirdverseはVRゲーム事業に注力する体制となり、新たなフェーズに入っています。

今回インタビューを行ったのは、Thirdverseの取締役COOを務める伴哲さん。伴さんはソニー・インタラクティブエンタテインメントのPlayStation事業のゲームプロデューサー、Googleでの事業開発を経て2020年6月にThirdverseにジョインしたという経歴を持っています。

そんな伴さんから見たThirdverseならではの強みや、プロフェッショナルなメンバーのパフォーマンスを引き出す柔軟な働き方などについて詳しくお話を伺いました。

本日お話を伺った方
株式会社Thirdverse取締役COOの伴氏

株式会社Thirdverse
取締役COO

伴 哲さん

メタバースの中に「サードプレイス」を実現する

Thirdverseが手掛けるVRゲーム
▲Thirdverseさんが手掛けるVRゲームタイトル(公式サイトから引用)

編集部

最初にお聞きしたいのですが、Thirdverseさんの社名にはどのような意味が込められているのでしょうか。

伴さん

Thirdverseというのは「サードプレイス」(third place)と「メタバース」(metaverse)を掛け合わせてつくった造語です。サードプレイスというのはアメリカの社会学者オルデンバーグ氏が提唱した概念で、ファーストプレイスである自宅、セカンドプレイスである学校や職場とも違う、自分の心が落ち着く「第3の居場所」を指します。

サードプレイスは人によってカフェだったり図書館だったり公園だったりしますが、それらは基本的にすべて現実世界にある場所ですよね。しかしVR技術が発展した今、サードプレイスをメタバースの中にも作れるのではないかと我々は考えています。「Thirdverse」という社名には、そんな未来の実現を目指すという意味が込められています。

「Meta」の言葉が広まる以前から、信念を持ってメタバースに取り組む

Thirdverseのバーチャル会議風景
▲バーチャルで行われるThirdverseさんの会議風景

編集部

伴さんは2020年にThirdverseさんにジョインされたとのことですが、そこからかなりメタバースやVRゲームは進化していますよね。近年のメタバース、VRゲーム市場を取り巻く変化をどうお考えですか?

伴さん

今ではメタバースと言っても通じますが、私がThirdverseに入社した2020年当時は誰もメタバースという言葉を知らない状況でした。急激に広まるきっかけとなったのが、2021年にFacebook社が「Meta」に社名変更したことです。そこからあらゆる企業がメタバースと言い始め、この名称がバズった状況になりました。

そこに端を発し、メタバースの隆盛は現在も続いています。今年に入ってからもソニーから「PlayStation VR2」が出たり、Metaから「Meta Quest 3」が発表されたりと、さまざまなプロダクトが生み出されています。新しいところで言うと、Appleも「Apple Vision Pro」を発表しましたよね。改めてエンターテインメント業界全体で「これからのテクノロジーの流れはVRやメタバースの方に来る」ということが認知されてきています。

ただ、Thirdverseは何も「マーク・ザッカーバーグが『メタバース』と言ったからそちらに向かおう」といってメタバースに取り組んだわけではないんですよ。我々はFacebookがMetaと社名を変える前から「Thirdverse」という社名で活動してきました。

メタバースやVRの市場は成長していますが、流行った当初に飛びついて、何も分からず作っていた方たちは徐々に抜けていきました。今では、本当にVRやメタバースの未来を信じて創り続けている企業だけが残っています。

編集部

昨今のメタバースの流行以前から信念を持って取り組んできたことが、Thirdverseさんの今につながっているんですね。

ビッグタイトルを手掛けてきたゲームクリエイター達が生み出す「面白いコンテンツ」が強み

株式会社Thirdverse取締役COOの伴氏
▲自身もゲームプロデューサーとして多くの実績を持つ伴さん

編集部

メタバースを手掛ける企業が誕生しては離れてしまう中で、VRゲームの開発を続けられているThirdverseさんの強みはどのようなところにあるとお考えですか?

伴さん

メタバースというと「3D空間を作れば人が集まるのではないか」と考えられる方が多いのですが、そうではなく、やはり「コンテンツが重要」だというのがThirdverseとしての考えです。

例えば「バーチャル都市」を作ったとします。でも実はバーチャル空間に都市を作ることが重要なのではなく、「バーチャル都市に行って何をするのか?」の方が大事なんです。「そこに面白いものがあるからその場所に行く、それがたまたまメタバースだった」という考え方が重要なんですよね。

そこでThirdverseの一番の強みとして活きてくるのが、ヒット実績を多数持つゲームクリエイターが多いということです。私自身、ソニー・インタラクティブエンタテインメントで15年程ゲームプロデューサーをしていました。Thirdverseには他にも『バイオハザード』や『Bloodborne』など、世界的に何百万本も売れているゲームを作ってきたチームのクリエイターが集まっています。

コンテンツとしてしっかりとしたものを作れるクリエイターが揃っているのが、他にはないThirdverseならではの特徴だと考えています。

理想とするメタバース世界の実現に向け、ブレずにチャレンジを続ける

編集部

メタバースの市場自体が拡大していく中で、Thirdverseさんとしては今後どのような方向を目指されて進んでいくのでしょうか。

伴さん

新しいバーチャル世界でやってみたいこと、人が集まることを考えたときに、やはり一番分かりやすいコンテンツは「ゲーム」だと思います。それもテレビゲームのような四角い枠の中でやるゲームではなく、VR空間という360度に没入できる表現の場で、VRでしか体験できないエンターテインメントを提供することだと思っています。

最初にお話ししたような、理想の世界観のVRMMORPGを実現するのがThirdverseの目標です。例えば「今はパズルゲームが流行っているから、とりあえずパズルゲームを作る」というような、当社のビジョン実現の道筋からズレるような作り方はしません。

2023年5月にアーリーアクセスを開始した『X8』は5対5のVRマルチプレイヒーローシューターゲームですが、ユーザーコミュニティも一緒に作っていけるようなものとなっています。今後発表を予定しているゲームも、我々が目指す世界に必要な要件を備えたゲームです。

Thirdverseが掲げる目標に向けて、必要な技術の習得やチャレンジを続けながらプロダクトを開発していくということを、変わらず続けていきます。

リモート・出社を併用したハイブリッド。状況に応じた使い分けが可能

Thirdverseの打ち合わせ風景
▲リモートワークを取り入れながら、リアルのコミュニケーションも重要視

編集部

続いてThirdverseさんの働き方についてお伺いします。現在は40名体制と伺っていますが、変わりはありませんか?

伴さん

はい。日本に30人、アメリカに10人で合わせて約40人のメンバーがいます。全員がゲームクリエイターというわけではなく、バックオフィスや役員も含めてその人数です。

新しくゲームを作る際にはVR開発に特化したコアチームを結成します。開発スケジュールに沿っていろいろな方々と協力しながら制作を進めるため、チームサイズは制作段階に応じて変わります。

編集部

Thirdverseさんでは皆さんどのような働き方をされているのでしょうか。

伴さん

Thirdverseでは、リモートワークと出社のハイブリッド勤務を採用しており、メンバーそれぞれで状況に応じて使い分けながら働いています。

例えばゲームの立ち上げ時期は密にコミュニケーションを取らなければならないときも多いため、ゲームデザイナー(企画)は出社をする人も少なくありません。ゲームアセットの量産体制に入ると、必ずしも出社をしなければならない作業ではなくなるため、アーティストは集中できる自宅環境でのリモート勤務が多くなる傾向にあります。

編集部

ハイブリッド勤務を採用されているのには、どのような意図があるのでしょうか。

伴さん

まず我々はスタートアップ企業なので、どれだけ優秀なメンバーを迎えられるかということが非常に重要です。そのときに、会社に通える圏内に住む人しか採用できないというのはとても勿体ないですよね。

リモートワークを取り入れているのは、出社できない距離にいる優秀な方とも一緒に仕事ができるようにするためです。実際に大阪に在住しているゲームプログラマーのメンバーもいて、その方は完全リモートワークをしています。

一方で、出社してフェイストゥフェイスのコミュニケーションを取ることの重要性ももちろん認識しています。そのため毎月、日本と海外をつないだ全社会を行ったり、重要なタイミングでは遠方から出張してきたりします。コミュニケーションの密度を濃くしながらリモートワークにも対応しているというのがThirdverseの特徴ですね。

育児のための中抜けも自由。メリハリのある働き方がハイパフォーマンスを生む

編集部

フレキシブルな働き方を取り入れることで「良い影響が出ているな」と感じる場面はありますか?

伴さん

やはりパフォーマンス面での好影響は感じますね。自宅でのリモートワークには勤務時間が短縮できるメリットもありますが、逆に自宅だと効率が下がってしまうデメリットを感じる人もいます。そういう人にとっては出社してコミュニケーションを取ることが良い方向に働くんですよね。その人のスタイルに合った働き方ができるというのは、パフォーマンス向上において大きなメリットとなっています。

あとはゲーム制作というクリエイティブな仕事だからこそのメリットもあります。ゲーム制作というのは、9時から17時まで机にかじりついていたら良いものができるという世界ではありません。集中できる環境はもちろん重要ですが、ある程度自由度があることで良いアウトプットにつながる面はあると感じています。

また実際にゲームを作る際には、どうしても馬力を発揮しなくてはならない大変な時期があります。一方で、その状況がずっと続くというわけでもありません。Thirdverseにはそういったゲーム制作現場ならではの状況に合わせてメリハリをつけて働ける環境があるので、それが働きやすさにつながっているのではないでしょうか。

編集部

Thirdverseさんには幅広い年代の方がいらっしゃいますが、子育てをしながら働かれている方も多いのでしょうか。

伴さん

そうですね。私も子どもがいるため、仕事を抜けて子どもを迎えに行ったりすることもあります。

前提として、Thirdverseでは全員がプロフェッショナルとして仕事をしています。だから子どもの迎えなどで一旦仕事を抜けることも、その後に戻ってきてまた全力で仕事をすることも、メンバー自身が判断しながら働いています。

編集部

自由度があるからこそ、メリハリをつけた働き方ができるんですね。Thirdverseさんは働きやすく、なおかつ良いパフォーマンスを発揮できる環境があることが良く分かりました。

採用において重視するのは“3つの価値観”への共感

Thirdverseの掲げる価値観
▲Thirdverseさんが掲げる価値観(公式サイトから引用)

編集部

最後に、採用についてお伺いします。Thirdverseさんが採用において重要視しているのはどのようなことですか?

伴さん

VRゲームに特化した業務を進める中で、プロフェッショナルであることは前提です。その上でThirdverseが掲げる価値観に共感していただける方と一緒に仕事をしたいと思っています。

まず「Open Communication」ですが、これはすべての人が自由に意見を言い合えるカルチャーを意味しています。お互いを尊重し合いながらも自由闊達に言いたい意見を伝えることができる環境があるというのは、Thirdverseの成長にとって重要な点です。

「One Step Beyond」はまだ誰も見たことのない世界を実現するということ。メタバースやVRの世界は右肩上がりに伸び、技術は発展を続けています。その中で我々は新しいことにどんどんチャレンジし、これまでにない驚きを創造していかなくてはなりません。そのために最新テクノロジーやトレンドを積極的に採用することが大切になります。

そして最も重要なのが「First to Try, First to Fail, First to Recover」。誰よりも先に挑戦して、誰よりも先に失敗して、誰よりも先に復活しよう、ということです。

スタートアップ企業にはチャレンジが不可欠です。ただし新しいことへのチャレンジをする上で、「確実に成功する」なんていうことは絶対にありません。だからこそどんどん果敢にチャレンジして、当然失敗もありつつ、失敗から学んで誰よりも早く復活することが大切です。そうすれば後から入ってきた他の人が失敗している間に、我々は先に進むことができますよね。

まずチャレンジしよう、失敗したらそれを糧にすぐに復活してもう一度チャレンジしよう。Thirdverseではこの価値観を非常に大切にしています。一緒に働く上で、そこに共感してもらえることはとても重要ですね。

「チームを優先」「変化を楽しむ」「やり切る粘り強さ」のある人を歓迎

株式会社Thirdverse取締役COOの伴氏

編集部

採用にあたって会社の価値観に共感できることが重要とのことですが、具体的にThirdverseさんが求める人物像などもあるのでしょうか。

伴さん

Thirdverseでは「MISSION STATEMENT」という行動指針を掲げています。スタートアップで新しい領域にチャレンジを続ける企業として、この行動指針をもとに動いていける人を歓迎したいと思っています。

まずは「Team Success」。これは個人ではなくチームとしての成功を優先できる人であるということです。ゲームは個人で作るものではなく、チームで作るもの。もちろん個人ですごい力を発揮するゲームクリエイターもたくさんいらっしゃいますが、成功というのは一人の力では届かない領域にあると思っています。だからこそ自分だけの功績ではなく、チームでの成功を導けることが重要です。

2つ目は「Enjoy Changes」。新しい領域にチャレンジをする中で、市場の状況や環境はどんどん変わっていきます。絶対安全な方程式に沿ってビジネスをするのではなく、プロフェッショナルとしてその変化を楽しんで、常に市場をリードできる人であることが求められます。

最後が「GRIT」で、これはGuts(闘志)、Resilience(粘り強さ)、Initiative(自発性)、Tenacity(執念)の頭文字から取っています。

つまり「やり切る」ということですね。ものづくりというのは、アウトプットをしなければ全く意味がありません。「駄目だったから止めました」「あともうちょっとで届いたんです」ではなく、とにかくやり切る粘り強さを持つ人が求められます。

Thirdverseは成長を続けるマーケットであるVR・メタバースの最前線で、さまざまなプロフェッショナルが協力し合い、グローバルに向けたものづくりに取り組んでいます。この価値観や行動指針を大切にしながら一緒に新たなチャレンジをしていける方には、ぜひジョインしてほしいと思います。

編集部

今回お話をお聞きする中で、Thirdverseさんはメタバースで実現したい理想の未来を見据えながら、ブレることなく真っすぐにチャレンジを続けられていると強く感じました。Thirdverseさんならプロフェッショナル同士で高め合いながら、メタバース領域で新たな未来を切り拓いていけると思います。本日はありがとうございました。

■取材協力
株式会社Thirdverse:https://www.thirdverse.io/ja/
採用ページ:https://www.thirdverse.io/ja/careers
採用サイト(Wantedly):https://www.wantedly.com/companies/thirdverse