成長率330%超の飛躍を遂げる。株式会社TBMが目指すサステナビリティ革命と「本気」の人材

持続可能なビジネスを展開し、成長を続けている企業にインタビューする本企画。

今回は、石灰石を主原料とした環境配慮素材LIMEX(ライメックス)を開発・製造・販売する素材事業、廃プラスチックなどの資源循環を促進する事業と、日本最大級のプラスチックのリサイクル工場運営を行う資源循環事業を展開している株式会社TBMにお話を伺いました。

環境配慮素材LIMEXを展開する株式会社TBM

株式会社TBMが手掛けているのは、プラスチックや紙に代わる新素材「LIMEX」の製造販売です。石灰石を主原料としており、プラスチックや紙の製品を製造する際に使用する石油や水、森林など資源の保全に貢献でき、CO2排出の抑制にも貢献できるとのことです。

また、日本最大級のプラスチックのリサイクルプラントも運営しており、使用済みプラスチックやLIMEX等の再生材料を50%以上含む再生素材「CirculeX(サーキュレックス)」も展開しています。

会社名 株式会社TBM
住所 東京都千代田区有楽町1-2-2 東宝日比谷ビル15F
事業内容 環境配慮型の素材開発及び製品の製造、販売、資源循環を促進する事業等
設立 2011年8月30日
公式ページ https://tb-m.com/

株式会社TBMは社会でSDGsが注目される以前からサステナブルなビジネスを続けてきており、社員数は2020年から2023年にかけて2.5倍以上に増えるなど大きな成長を遂げています。

同社の成長要因やSDGsへの向き合い方について、ピープル&カルチャー本部の横尾知宜さんにお話を伺いました。

本日お話を伺った方
株式会社TBMピープル&カルチャー本部の横尾知宜さん

株式会社TBM
ピープル&カルチャー本部

横尾 知宜さん

環境配慮素材「LIMEX」を開発し、サステナビリティ革命を目指す

株式会社TBMの独自開発素材「LIMEX」を使用した製品や関連イメージ
▲独自の技術で開発した環境配慮素材「LIMEX」は、プラスチック・紙の代替品として10,000社以上の企業や自治体で採用されている。

編集部

初めに、TBMさんの事業内容について伺わせてください。

横尾さん

TBMは、石灰石を主原料とした、プラスチックや紙の代替となる環境配慮素材「LIMEX」の開発・製造・販売を手掛けています。プラスチック代替としてレジ袋や食品容器、建築資材などに加工でき、また、紙代替としては冊子、パンフレット、ラベルなど多くのものに加工できます。

石灰石はセメントや骨材などの原料として使用されており、国内でも安定して供給できるほど豊富にある資源です。石油と比べて仮に採掘・加工工程でも大きな環境負荷がかかりません。また、石油由来のプラスチックに比べて焼却時のCO2排出量を約58%削減できます。

編集部

まさに夢のような素材ですが、この事業を始めるに至った背景は何でしょうか?

横尾さん

元々は、TBMの設立前に代表の山﨑が台湾製のストーンペーパーの輸入代理店を行っていました。当時、日本国内でも「エコ」という言葉が広がり始め、各企業の環境意識が高まり日本でマーケティング活動をしていく中で、事業として大きなポテンシャルを感じていた山﨑は台湾のメーカーに対して品質改良を要求するも、折り合いませんでした。

そこで山﨑が現会長の角と共に、ストーンペーパーとは異なる独自技術による新素材の開発を決意し、2011年のTBM設立を経て、素材開発を本格的に開始しLIMEX事業がスタートしました。

現在は世界的に人口が増加し、経済成長を遂げている国も多くあります。経済が成長すると、それだけ資源の消費量も増えてくるでしょう。

ご存知の通り、資源の消費が進めば温室効果ガスの排出量も増加し、気候変動のリスクが高まるのです。環境負荷を低減することは、全世界で喫緊の課題となっています。

そんな環境下だからこそ、TBMはサステナビリティ革命を自分たちで起こしたいと考えています。これまでの技術や価値観、仕組みを、私たちの事業によってイノベーションを起こすことを目指しているのです。その手段の1つとして、LIMEX事業を展開しています。

編集部

次の時代を自分たちの手で作るという使命感を持っていらっしゃるのですね。ほかにどのような事業を展開しているのでしょうか?

横尾さん

TBMは国内最大級のプラスチックのリサイクルプラントを横須賀市で運営しています。使用済みのプラスチックやLIMEXを回収しており、再生材料を50%以上含む「CirculeX」という再生素材を作っています。

ほかにも、メーカー様の工場や倉庫で発生した廃プラスチックや、廃棄物事業者様が回収・処理された廃プラスチックを買い取り、それらを必要とする企業様に販売するという再生材のマッチングビジネスも手掛けています。

編集部

循環型のビジネスにも取り組まれているのですね。

社員数は約1.7倍に増加、同時に330%超の成長も達成

株式会社TBMの社員による打ち合わせ風景

編集部

TBMさんの成長度合いを示す数字について伺わせてください。

横尾さん

TBMは2023年9月時点で社員数が約320人です。2020年度末の社員数は190人でしたので、およそ3年で約1.7倍に増えています。

事業を拡大させていくなかで、設立13年目を迎えるスタートアップですが、宮城県や神奈川県においてLIMEXの生産工場やリサイクルプラントを自社稼働させています。海外でも現地法人を設立し、現地パートナーと連携したLIMEX素材・LIMEX製品の製造・販売を行っており、グローバルなサプライチェーンを拡大させています。

先ほども申し上げた通り、LIMEX以外にも事業領域を拡大させていっており、そのような成長過程にある中で社員数も増えていきましたね。

成長は数字にも表れており、2022年の売上高は2020年と比較して330%超増加しました。

編集部

ここ3年で大きな成長を遂げていらっしゃるのですね。社員数が大きく伸びていますが、どんな方が入社されるのでしょうか?

横尾さん

TBMに入社される方は、これまでサステナビリティに関連する仕事を経験してきたという方もいますが、全くの別業界から入社するケースも多く、私自身、不動産デベロッパー出身であり、全く違う分野からジョインしています。

ご入社いただく方に共通しているのは、TBMのビジョンに強く共感していることと、これまでの経歴に関係なく、自分のスキルを活かして世界規模の挑戦をしたいという思いを持っているという点です。

編集部

共通のビジョンを持った社員さんが多く在籍しているからこそ、ここまでの成長を実現できているのですね。

1万社以上がLIMEXを導入、上流からサステナブルなビジネスを展開できるのが強み

編集部

LIMEXは現在、何社ぐらいの企業が導入しているのでしょうか?

横尾さん

LIMEXは現在、1万社以上のお客様に導入いただいております。これは加工前の素材(シートやペレット)として納品させていただくケースと、メニュー表や冊子、袋などの製品を納品させていただくケースを合わせた社数となっています。

編集部

サステナビリティに関するビジネスを展開している企業は増えつつありますが、その中でもTBMさんの強みとして挙げられるのはどういった点でしょうか?

横尾さん

TBMの強みとしては、素材という上流から製品やリサイクルなどの下流まで、サステナブルなビジネスを展開できている点にあると思います。

環境に配慮したビジネスを手掛けているスタートアップはIT関連のソリューションを活用するケースが多いと思いますが、弊社は素材メーカーの機能を持ちながら自社素材を使用した製品まで開発・販売し、使用後は循環させるという一連の取り組みが可能です。

また、多様な事業領域を持っていることも、私たちの強みとして挙げられます。サステナビリティを軸に持ちつつ、さまざまな事業を展開して互いに相乗効果を生んでいるという点は、同業他社と比べても誇れる点ではないかなと考えています。

成長の原動力は「ビジョン」と「ビジョンに共感した優秀な人材」

株式会社TBMの社員が笑顔で話している風景

編集部

かなり早いスピードで成長されていることが伺えますが、その要因は何でしょうか?

横尾さん

TBMがこれほどのスピードで成長できている力の源泉は、代表の山﨑の人格やリーダーシップ、打ち出したビジョンにあると思います。

今でこそSDGsの注目度が高まっていますが、山﨑はサステナビリティが世界的に話題になる以前から、30歳の時に初めて訪れた欧州の街並みに感銘を受けて、「何百年と挑戦し続ける事業や会社を作りたい」と考えていました。

設立から今日まで多くの事業会社や投資家の方々から出資をいただいていることからも、山﨑の人格の魅力やビジョンに惹かれた方が社外に多かったことがわかります。

成長の原動力となっている人材についても、マッキンゼーや三井化学、伊藤忠商事など大手企業からキャリアを転換させた転職者が多いです。やはりTBMのビジョンに惹かれ、多様なバックグラウンドを持つ人材が集まっているのだと感じます。

編集部

TBMさんの成長の原動力となっているビジョンやミッション、バリューについてもう少し詳しくお教えください。

横尾さん

弊社はミッション、ビジョン、バリューを含めた企業理念体系を「TBM Compass」として掲げています。

バリューについて「非常識に挑戦しよう」「両立主義で行こう」「自分ゴトを拡げよう」「約束への逆算思考」「感謝と謙虚で繋がろう」という5つを打ち出しており、社員みんながバリューを体現するべく働いています。

弊社には、サステナビリティ革命を必ず自分たちが起こし、世界の仕組みを変えるんだという思いを持って、本気で議論する社員がたくさんいます。自分たちの事業が大きくなればなるほど社会に貢献できると考えていますので、モチベーション高く動いている社員ばかりですね。

「自分の子どもにこの環境を残していきたい」と考えて入社する社員もいますし、事業を成功させるんだという思いが強い人たちが集まった組織がTBMだと思います。

編集部

優秀な人材がモチベーション高く働くことで、事業成長を実現されており、それがサステナビリティ革命に結び付いているのですね。

今後は素材事業と資源循環事業の両輪を海外でも展開していく

編集部

今後の事業の展望について伺わせてください。

横尾さん

先ほども申し上げた通り、TBMはグローバル展開に力を入れています。LIMEX事業については、世界中の既存設備を活用できるLIMEXの特性を活かして、各国の事業者とパートナーを連携したファブレスモデルによる、現在のグローバルサプライチェーンを更に拡大させていく予定です。

エリアのニーズによっては、OEM生産の製造委託だけでなく、LIMEXの技術ライセンスを付与する、ライセンスビジネスのあり方もあるでしょう。いずれにしてもコストを抑えつつ、圧倒的な規模とスピードでLIMEXを世界中に広げていきたいと考えています。

編集部

もう一つの軸である資源循環の事業についてはいかがでしょうか?

横尾さん

資源循環についても再生素材の高付加価値化、プラント拠点の拡大など海外にも展開を拡げていきたいと考えています。単にLIMEXなどの素材を広げていくのではなく、資源循環のインフラについても海外で作っていければと思っています。

素材事業と資源循環事業の両輪で回っていけるよう、これから本腰を入れて海外に目を向けていく方針です。

SDGs達成のためこれからの企業の形をTBMが示す

株式会社TBMの横須賀工場
▲2022年11月に竣工した横須賀工場は、LIMEXと汎用プラスチックを自動で選別できる世界初のリサイクルプラント。

編集部

TBMさんの事業は直接SDGs達成に貢献するものですが、やはりお取引しているお客様もサステナビリティの意識が強い企業様ばかりなのでしょうか?

横尾さん

「SDGs」自体の認知度が上がっているため、各企業の環境やサステナビリティへの意識については、確実に高まっていると感じており、弊社には追い風と捉えています。しかし企業様ごとの事情や背景によって、取り組みに差があるのは仕方ないですが。

環境に対する取り組みの方法を提案するのと同時に、「今、地球の環境に何が起きているのか」という現状を認知してもらうことは大切だと考えています。やはり知っているか、知っていないかで、意識も大きく変わってくると思います。

TBMは広報活動にも力をいれています。メディアにも積極的に露出しながら、今ある価値観を変えるというアクションを続けています。

編集部

経済だけ追い求めるという価値観を変えなければならないということでしょうか?

横尾さん

TBMは今後の企業活動について、エコノミーもエコロジーも両立させなければならないと考えています。いくらエコロジーに舵を切ったとしても、ビジネスとして拡大しなければ誰も参入しませんよね。なので、弊社が先んじてこの2つを両立を強く意識しながらビジネスを展開しています。

編集部

これからの企業の形をTBMさんが示されているということですね。

TBMの人材が育つことでSDGs達成が近づいてくる

編集部

展開している事業とは別に、TBMさん内でSDGs達成のため取り組まれていることはございますか?

横尾さん

TBMは社内でもサステナブルな取り組みを進めています。身近な所でマイボトルの使用を推奨したり、空調の適切な温度設定で省エネを進めたり、D&Iの推進も経営において不可欠な取り組みであると捉え、一人ひとりが最大の能力を発揮できる組織づくりに向けたアクションに取り組んでいます。

社会的な課題について、まずは自分たちでできることをしっかりやっていかなければなりません。ただ、そういった基本的な取り組みをしつつ、弊社ではSDGs達成のためには人材育成が非常に重要だと考えています。

編集部

SDGs達成のための人材育成とはどういうことでしょうか?

横尾さん

LIMEXやCirculeXを今後広めていくためには、自ら新しいマーケットを作っていく必要があります。一からマーケットを生み出していくスタンスで事業を展開していかなければならないのです。

例えば、LIMEX事業では、私たちのお客様は大企業から中小企業までさまざまですが、経営者や決裁者に対して営業をするという場が多々あります。顧客のニーズをつかんで、LIMEXを活用することで、顧客の課題解決ができるか、新たな価値提供をできるかというところまで考えて提案する必要があるのです。

一方、CirculeXのような再生材の業界では再生樹脂の相場価格はあるものの、定価はありません。CirculeXの事業ではセールスパーソンのスキルによって仕入れ価格や販売価格も異なってくるため、社員の人間力が弊社のビジネスに与える側面も大きいと思います。

いずれの事業もレベルが高い提案力が求められるため、人材育成が欠かせません。

編集部

どのようにすれば、人材が育つとお考えでしょうか?

横尾さん

組織の規模を拡大し、急成長しているという環境が人材を育てると思います。成長することで、より大きなビジネスに関われるようになり、そんな現場に若い方が携わることで次の世代が育つのではないでしょうか。

多くの若い人材が育つことが、サステナブルな事業運営にも結び付くと考えています。

編集部

TBMさんは若い方が活躍できる環境にあるということですね。

横尾さん

TBMは新しい会社ですので、まだ組織構造はシンプルですし、部門間の垣根も大きくありません。だからこそ、新規マーケットを作りたい、同時に自分自身も成長したいという気概を持った方が大きな裁量を持って動ける環境にあります。

自分の意思を発信していきたいという方にはぴったりの職場でしょう。

編集部

SDGsの達成と社員の成長を同時に実現できる組織だということですね。

求めるのは、地球規模の挑戦を本気でしたいという思いを持った人材

株式会社TBM 代表取締役CEO 山﨑敦義
▲株式会社TBMの代表取締役CEOである山﨑敦義さん

編集部

最後に、TBMさんに興味を持っている方に向けてメッセージをお願いいたします。

横尾さん

会社の規模も事業も年々拡大していますが、弊社はこれからも新たなビジネスを生み出していくスタートアップです。

これからビジネスを広げていく過程で、今では気付いていないような様々な困難に直面する場面も出てくると思いますが、困難に向き合い、乗り越えていくことを楽しめるようなマインドセットが必要になります。

気候変動をはじめ地球が今抱えている課題というのを対岸の火事と捉えるのではなく、自分ゴトとして捉えて動いていただきたいです。地球規模での挑戦を本気でしたいという思いを持った方をお待ちしています。

編集部

これまでの価値観を変えていこうというミッションを持ったTBMさんだからこそ、スケールの大きいビジネスを展開でき、刺激的な経験が得られると感じました。本日はありがとうございました。

■取材協力
株式会社TBM:https://tb-m.com/
採用ページ:https://careers.tb-m.com/