医療×IT、治療用アプリでサスメド株式会社が実現するのは「持続可能な医療」

他にはない独自の技術やビジョンで成長を続け、さらに働く人たちのワークライフバランスも大切にしている企業にインタビューする本企画。今回は、サスメド株式会社にお話を伺いました。

治療用アプリ開発で、持続可能な医療を目指すサスメド株式会社

不眠症治療用アプリを始めとする治療用アプリ開発や、臨床開発を効率化するための複数のプラットフォーム機能の提供などを展開しているサスメド株式会社。リモートワークやフレックスタイム制度なども柔軟に取り入れ、医療分野、IT分野の人材が専門の枠を超えて活躍しています。

会社名 サスメド株式会社
住所 東京都中央区日本橋本町三丁目7番2号MFPR日本橋本町ビル10階
事業内容 ・治療用アプリの開発
・治療用アプリの共同開発プラットフォームの提供
・ブロックチェーンを活用した臨床試験システムの開発・販売
・統計解析・機械学習による医療データ解析及びコンサルティングサービスの提供
設立 平成28年2⽉23⽇(平成27年7⽉31⽇に合同会社として創業)
公式ページ https://www.susmed.co.jp/
働き方 ハイブリッド勤務(出社+リモートワーク)
フレックスタイム制度(コアタイムなし)

今回は、サスメド株式会社の取締役(管理部門管掌役員)の小原隆幸さんに、サスメド株式会社独自の成長要因、多様な人材がワークライフバランスを大切にしながら働ける社内制度についてお話を聞かせていただきました。

本日お話を伺った方
サスメド株式会社の取締役(管理部門管掌役員)の小原隆幸さん

サスメド株式会社
取締役(管理部門管掌役員)

小原 隆幸さん

新しい治療モダリティとしての「治療用アプリ」を開発・実用化へ

サスメド株式会社が開発する治療用アプリの使用イメージ

編集部

はじめに、サスメドさんの事業内容について教えてください。

小原さん

治療用アプリ開発、そして臨床開発の効率化という2つの事業の柱があります。

編集部

では、治療用アプリ開発のお話からお願いします。

小原さん

治療用アプリは、新しい治療手段です。現在、日本国内では既に医療機関で処方されている治療用アプリがあります。我々の治療用アプリも医療機器として製造販売承認を取得しまして、これから保険収載を経て処方が始まる段階です。(取材時は2024年6月)

編集部

サスメドさんが開発している治療用アプリというのは、私たちが自分で健康習慣に気をつけるためにスマホにダウンロードできるヘルスケアアプリとは、全く別物なんですよね。

小原さん

別物です。当社のアプリは治験を通して疾患の治療機能を有することが明確に示されたアプリで、医療機器としての製造販売承認を取得しています。患者さんが使うためにはお医者さんからの処方が必要です。

編集部

実際に治療用アプリを使うことで、患者さんにはどういったメリットがあるのでしょうか。

小原さん

例えば不眠症の場合、日本国内では一般的に睡眠薬が処方されますが、睡眠薬には依存性や副作用の問題があると言われていて、海外ではあまり推奨されていません。また、患者さんの方でも睡眠薬の服用に抵抗感がある方も多くいらっしゃると思っています。

サスメドの治療用アプリを使うと、睡眠薬を使わなくても不眠症状を改善できるという治験データが得られています。そもそも、サスメドの不眠症治療用アプリが提供する認知行動療法という治療法は、海外の不眠症治療ガイドラインで、治療の第一選択として推奨されているものなんです。

そういった意味で、患者さんの睡眠薬服用に対する不安を解消する、睡眠薬にあまり頼らなくても不眠症が改善できる、ということを実現できると考えています。乳がんや腎臓病に関しても、今の治療法では十分ではないとされている領域に対して、当社のアプリを使うことで患者さんにメリットを届ける取り組みをしています。

編集部

ITを活用することで、ガイドラインに沿った適切な治療法を提供できる、ということですね。 

複数のプラットフォーム機能を提供し、臨床開発を効率化する

編集部

もうひとつの事業の柱、臨床開発の効率化について教えてください。

小原さん

大きく2つありますが、まず1つ目として、治療用アプリ開発のためのプラットフォーム機能の提供です。例えば、現在公表しているものだと、杏林製薬さんと共同開発をしている耳鳴の治療用アプリ、あと、あすか製薬さんと共同開発をしている産婦人科領域の治療用アプリなどでは、プラットフォーム機能を使ってコストと時間を圧縮する形でアプリ開発を進めています。

編集部

一からアプリを開発するより、コストや時間を削減できるシステムを構築しているということですね。

小原さん

そうです。治療用アプリは、アプリ開発を行った後に臨床試験があり、それをクリアすると医療機器として承認を取得でき、そこから製品としての販売がスタートします。

臨床効果がはっきりしないアプリ開発の段階で大きなコストと時間を費やす必要があるとすれば、どうしても開発に二の足を踏んでしまいます。なので、臨床試験を始める前段階のところは可能な限り効率化して、コストも時間もかけずに開発できるようにしようという思想のもと、アプリ開発のためのシステムをプラットフォーム機能として開発してきています。

そして、もう1つは「SUSMED SourceDataSync®」という臨床試験管理システムの提供です。こちらは、治療用アプリだけでなく、医薬品の開発においても使用可能なシステムです。

編集部

「SUSMED SourceDataSync®」の特徴は、どういうところにあるんですか。

小原さん

従前のシステムと大きく違うのは、ブロックチェーン技術を実装している点です。ブロックチェーンのシステムは、仮想通貨などの分野でアプリケーションとして実装されることが多い技術です。我々はその技術を、臨床試験データが改ざんされないことを目的として活用しています。

ブロックチェーンを実装することで、今まで人手をかけて行っていたデータの信頼性や正確性の担保を、システムを通して効率的に行えている点が、「SUSMED SourceDataSync®」独自の特徴だと考えています。

編集部

サスメドさんの名前の元ともなっている「ICTの活用で持続可能な医療を目指す」というビジョンを、治療用アプリ開発と臨床開発の効率化という2事業で展開されているんですね。

治療用アプリが世間で認知され、4年前と比較して売上は約5倍に

サスメド株式会社のオフィス
▲サスメド株式会社のオフィス

編集部

小原さんは入社して4年目とのことですが、どのような点で会社の成長を実感しますか。

小原さん

私が入社したときは10~20名程度の社員数でしたが、今は倍近くになりました。売り上げに関しても2023年6月は5億円の収益が計上されており、4年前と比べると約5倍の規模になっています。当社の場合、年度によってマイルストーンと呼ばれる数億円単位の収益の計上があったりなかったりするので、右肩上がりというわけではありませんが。

編集部

すごいですね。成長の要因はどこにあるとお考えですか。

小原さん

我々の取り組みが、世間でも認知されてきたことが大きいかなと考えています。例えば不眠症の治療アプリ開発の例で言いますと、2015年の創業からずっと開発を続けてきていましたが、2023年2月に医療機器としての製造販売承認が取得できたことで、ようやく世の中に認識されたという実感があります。

臨床試験の管理システムについても、2020年12月に厚生労働省と経済産業省から「ブロックチェーン技術を活用したシステムを使うことで、臨床試験の一部業務を省略することが可能である」という回答をいただきました。この回答によって、私たちの取り組みが信頼できるものとして認識されたと思います。

編集部

ちなみに、サスメドさんのクライアントはどういった方々になるのでしょうか。

小原さん

製薬会社や医療機関になります。

編集部

治療用アプリは、睡眠障害以外にも展開していく予定ですか。

小原さん

がん領域、慢性腎臓病など、いろいろなプロジェクトを同時進行しています。上場したときから比べると、パイプラインも2~3本増えました。開発を前に進めることも、パイプラインの件数を増やすことも、継続して取り組んでいく予定です。

サスメド株式会社では、人材も医療ドメインとITドメインを「掛け算」する

編集部

サスメドさんの社内組織はどのような体制で、どういった人材が活躍されているのでしょうか。

小原さん

治療用アプリの開発にあたっては、医療ドメインとITドメインを掛け合わせながら事業を展開しています。

当社では、臨床開発部、システム開発部、事業開発部それぞれに、異なるバックグラウンドを持ったメンバーが集まっているのですが、各部のメンバーが領域を超えつつ、開発を進めています。

編集部

具体的には、どういった交流がありますか。

小原さん

例えば、システム開発部のメンバーが、臨床開発部のメンバーとのコミュニケーションから医療ドメインの知識を得てシステム開発に生かしたり、逆に臨床開発部のメンバーがシステム開発部のメンバーからシステム的な制約条件を聞き取って医師と協議したり、ということはよく見かけます。

自社のことなので少し恥ずかしいですが、それぞれ専門性は持ちつつも、自分の専門領域を飛び越えたところまで手を伸ばして、治療用アプリという製品をさらに良いものに仕上げようという姿勢は見ていて素晴らしいなと思います。

編集部

エンジニア、データサイエンティストが自分の専門的知識を開発に活かすだけでなく、社内や医師の皆さんと知識を共有しているということですね。

小原さん

そうですね。日頃のプロジェクトの中で、双方で自発的に議論するシーンが多いように思います。

編集部

各ポジションにプロフェッショナルがいて、さらに人材交流が盛んであると。この点以外にも、サスメドさん独自の強みは何かありますか。

小原さん

国立研究開発法人や大学と共同研究していること、さらには研究を通じた特許の取得数が多いことも強みだと思います。特許に関しては、出願の前々段階ぐらいから従業員が発明者として弁理士と相談できる場もありますし、出口のところでは特許に関する報奨金制度もあります。発明や知財の確保は、会社としても推奨しています。

編集部

プロジェクトを進めていく中で、弁理士に相談をしながら特許を取得できて、さらに自分にも報酬という形で戻ってくるので、モチベーションも上がるんですね。

週2出社でリモートワーク可、柔軟に働けるフレックスタイム制

サスメド株式会社のおやつ会の準備風景
▲サスメド株式会社のおやつ会の準備風景

編集部

サスメドさんのスタッフの皆さんの働き方について伺いたいと思います。リモートワークは可能ですか?

小原さん

可能です。週2日の出社は推奨していますが、残りはリモートワーク可能ですね。

編集部

ちなみに、小原さんはどういったペースで出社していますか。

小原さん

私はほぼ出社しています。管理部門の仕事上というよりも、個人的に家にいると疲れるタイプなので出社をメインにしています。

編集部

出社がメインだったり、リモートとうまくバランスとっていたり、各社員個人によって違うんですか。

小原さん

出社が多いメンバーもいれば、リモートが多いメンバーもいます。家庭の事情で、例えば小さな子どもがいる場合は夏休みとか冬休みだと1人で留守番をさせることが難しいので、長期休みの期間だけ在宅を多めにするケースもあります。

編集部

柔軟に運用されているんですね。勤務時間については、どのような制度ですか。

小原さん

コアタイムなしのフレックス勤務です。中抜けも自由です。中抜けで子供のお迎えに保育園に行って、夕方5時から勤務を再開します、という働き方をしているメンバーもいますよ。「朝5時から夜10時までの間で8時間働いてください」というルールなので、子供の都合によって会社と自宅を行ったり来たりしながら、8時間働く形でもOKです。

編集部

ワークライフバランスを取りやすい働き方ですね。

小原さん

時間の融通が利くので、働きながら大学や習い事に通って、スキルアップをしているメンバーもいます。

既存の手順を聖域化せず、ゼロベースで考えるカルチャーのサスメド株式会社

編集部

サスメドさんの企業カルチャーを伺いたいのですが、小原さんはどのようなメンバーが多いと感じていますか。

小原さん

他の会社と一番違うのは、「ゼロベースで考える人が多い」という点でしょうか。ゼロベースで考えなきゃいけない環境を楽しいと思える人が多いと思います。

編集部

具体的には、どういったときにそのカルチャーを感じますか。

小原さん

例えば治療用アプリを作るとき、お医者さんからは今実際に行っている手順に沿う形での機能開発を要望されることがあります。一般的には「お医者さんの希望に沿って開発しよう」という流れになりがちなのですが、サスメドのスタッフたちは「アプリを使う、デジタル化する際にこの手順は本当に必要なのか」と聖域を設けずに社内で議論をしています。

社内で議論をした上で、実際に臨床現場で意見を聞いて、お医者さんの方で「やはりこの機能は必要だ」というご意見であれば実装しますが、紙で、アナログで作業をしないといけないからこの手順になっている、ということも多く、アプリの機能としては不要なものであったり、別の機能の方が効率的であったりすることもあるので、その場合は、一度外してみることも検討します。

編集部

既存の手順やマニュアルを丸飲みせずに、具体的な意味があるのかを自分たちで考えて、かつ専門家に確認するプロセスを踏むことを、丁寧にやっているんですね。

小原さん

そうですね。あと発表されている医学論文を読んで、治療効果について確認したり、科学的エビデンスとして証明されているのかを調べたりすることもやっているようです。

編集部

社内で勉強会などを開催することもあるんですか。

小原さん

入社して間もない方を対象にした勉強会があります。アプリ開発を含むビジネスの進捗状況、進行しているかの勉強会、当社が保有するシステムの機能、顧客に対する提案内容などを学ぶ勉強会です。当社で扱うシステムやサービスは日々アップデートされているので、現在の最新の状況を理解してもらうためにその部署の担当者や責任者から話をすることにしています。

編集部

社内で、最新情報をしっかり共有しているんですね。

小原さん

フランクなコミュニケーションとしては、2ヶ月に1回程度の頻度で、「おやつ会」を開催しています。オフィスの中にお菓子を用意して、ランチミーティングや飲み会よりも気軽な感じで、従業員同士が立ち話ができる機会を作っています。

編集部

サスメドさんのある日本橋本町周辺には、いいお菓子屋さんがいっぱいありそうですね。

小原さん

いっぱいあるんですよ。毎回、誰かしらが担当者に立候補してくれて、好きなお菓子を選んで買っています。

専門分野外でも挑戦可能、仕事を通して社会貢献ができる会社

おやつ会で和やかに談笑するサスメド株式会社のスタッフたち
▲おやつ会で和やかに談笑するサスメド株式会社のスタッフたち

編集部

最後に、この記事を読んでサスメドさんに興味を持った方に、採用に関するメッセージをお願いします。

小原さん

サスメドは企業ビジョンや社会貢献度の高さに魅力を感じて入社する社員が多いのですが、「仕事を通して社会貢献していきたい」と考えている方は、読者の皆さんの中にもいらっしゃるのではと思います。

医療ドメインと聞くと、「難しいので自分には関与できない」と思う方も多いかもしれませんが、当社の事業はITと医療を掛け合わせて展開しているので、ITドメインの経験だけでも十分に開発に貢献できます。さらに言えば、例えば私がいる管理部では、医療的なバックグラウンドを持つメンバーはほとんどいませんが、医療や皆さんの健康、QOLに貢献できるサスメドの事業領域に魅力を感じて働いています。

「社会貢献をしたいけれど、自分に何ができるだろう?」と思っている方は、一度ぜひサスメドで働くことを検討してもらいたいと思います。

編集部

小原さんご自身も、サスメドの社会貢献性に惹かれて転職されたんですか。

小原さん

私は、当社代表の上野の話を聞いたことがきっかけで転職しました。前職では化粧品関連の仕事をしていまして、薬事関係に対しては「いかに規制に抵触しないようにするか」というスタンスだったんです。ところが上野は、「医療制度や法規制に課題があるのであれば、そちらを変える努力をするべき」というある意味真逆のスタンスで仕事をしていて、とても面白い考え方だな、と思いました。

編集部

医療に対する熱意を持っているんですね。

小原さん

「自分たちも医療現場で一緒になって考えて、将来のためになる医療制度にしていくべき」という発想です。実際に変革をしていくのは大変なことなのですが、上野の「大変だけど、やるべきことはやろう」というマインドにひかれて転職をしました。

編集部

サスメドさんのチャレンジングなカルチャーは、代表の上野さんの影響でもあるんですね。小原さんのお話を聞いて、サスメドさんには今後の日本の医療を前に進めるパワーがある、と感じました。本日は、ありがとうございました。

■取材協力
サスメド株式会社:https://susmed.co.jp
採用ページ:https://susmed.co.jp/recruit/