3Dデータで世界を変える株式会社スペースビジョンの向上心と情熱に溢れた開発環境とは

企業の成長を支えるエンジニアの活躍を紹介するこの企画。今回はわずか0.5秒で人体を高速・高精度に計測できる3Dボディスキャナーや、顔をリアルに3D化することができる3Dフェイススキャナーを開発した株式会社スペースビジョンを取材しました。

高精度・高速3Dボディスキャナーを開発する株式会社スペースビジョン

株式会社スペースビジョンは、名古屋工業大学と慶應義塾大学で開発された3D技術をもとに起業した大学発ベンチャー企業です。

大学の研究で培った技術をもとに計測技術を人体に応用し、人体を3D撮影するボディスキャナーを開発している同社は、複数のカメラを使用することで、わずか0.5秒で人体を高速・高精度に計測できる3Dボディスキャナーをはじめ、フェイススキャナー、ヘッドスキャナーなど、さまざまな製品を展開しています。

会社名 株式会社スペースビジョン
住所 東京都中央区銀座7丁目13−6 サガミビル9F
事業内容
  • 3次元計測カメラ機器及び関連機器並びにそのソフトウェアの開発・製作及び販売
  • 3次元計測カメラ機器を使った撮影の受託
  • コンピューターを利用した画像処理、データベースの作成及び管理
  • 3次元計測カメラ機器及び関連機器の輸出及び輸入業務
設立 2004年6月22日
公式ページ http://www.spacevision.tokyo/
働き方 ハイブリッド勤務(出社+リモートワーク)

3Dボディスキャナーの開発のみならず、計測ソリューションや人体の3D形状をもとにした解析・開発も行う株式会社スペースビジョンは、これから拡大が予想される3D市場を牽引する企業として、さらなる成長が期待されます。

そこで今回は、3Dデータの可能性やそれを支えるエンジニアの活躍について、取締役の福元さんにお話を伺いました。

本日お話を伺った方

株式会社スペースビジョン
取締役

福元さん

アパレルから医療まで、幅広い分野で活用される3Dボディスキャナーを開発

株式会社スペースビジョンのオフィス内3Dボディスキャナー

編集部

スペースビジョンさんが開発する3Dボディスキャナーは、医療・健康、整体、美容、アパレル、エンターテイメントなどさまざまな分野での活用が期待されます。はじめに、御社のビジネスモデルについてお聞かせください。

福元さん

3次元画像計測、コンピュータビジョンの先駆者のひとり、元名古屋工業大学教授・慶應義塾大学教授の佐藤幸男が代表を務める当社は、佐藤が開発した技術を活用した3Dボディスキャナーを基に、ボディデータのクラウドサービスを展開しています。

ビジネスモデルとしては、3Dのボディスキャナーで撮影したボディデータをクラウド上で管理し、さまざまなアプリケーションに連携し利用するといった、プラットフォーム「ヒューマンメトリクスサービス(HMS)」を手がけています。

編集部

「HMS」はどのような分野で最も活用されているのでしょう。

福元さん

現在、最も活用されているのが3Dのアプリケーションが進んでいるアパレル業界のCADとの連携です。3DCADにボディデータを入れ、実寸のボディデータをもとにパターンをカスタマイズし、オーダーメイドでの服作りに生かしたり、Eコマースを利用する一般ユーザーは、正確な計測データを得ることにより、自分のボディにフィットしたアイテムを購入することができます。研究レベルでは、大手スポーツメーカーや複数の大手アパレルメーカー、大手家電メーカーなどに導入事例があります。

医療分野からの引き合いもありますが、アパレルと比べて3Dのデータを扱うシステムが発展途上ですので、アパレルほど進んでいないのが実情です。

例えば、幼少期から身長や体重を測り、成長を記録するのと同じように3Dボディスキャナーで身体を測定することで、データを蓄積、細かな変化を可視化し、他の医療情報データと共に解析することでけがや病気の予防、治療などにも役立てることができるでしょう。

編集部

医療分野における3Dデータの活用は発展途上とのことですが、実際に実用化された製品はありますか?

福元さん

側弯症学校検診および医療機関向け医療機器 の「3Dバックスキャナー」があります。学校の健康診断で背中が曲がってしまう疾患を検査する側弯症の検診に用いるもので、取得した画像情報は撮影場所や個人IDと紐付けることも可能です。3D画像として取り込まれたデータは、モアレ(※)画像の他、3D情報としても確認することができます。
※モアレ:規則正しく並べられた網点同士が干渉しあうことで発生する縞模様

編集部

スペースビジョンさんが開発する3Dスキャナーは、服を買うときに自動で採寸をしたり、アスリートの分析に使ったり、さらにはデータを蓄積・解析することでけがや病気の予防、治療に役立てることができるのですね。

株式会社スペースビジョンのオフィスにある3Dフェイススキャナー

30年にわたる3D計測研究がもたらす、高精度の測定

編集部

比較的新しい3Dデータ技術ですが、スペースビジョンさんの強みはどこにあると思われますか?

福元さん

3Dデータの活用はまだ、発展途上のフェーズにあります。世界的に見ても正確なボディデータを取れる技術を持っているのは当社を含め、3社ほどしか存在していません。約30年にわたって3D計測の研究をしている大学発ベンチャーの当社は、ボディスキャナーの性能と精度の高さにおいては、他社の追従を許さないポジションにいると自負しております。

編集部

スペースビジョンさんの3Dデータの精度の高さを実現している要因はどこにあるのでしょう。

福元さん

当社の3Dスキャナーは、いわゆる写真から人体などのカタチを推定するものとは違い、正真正銘の3次元計測装置です。当社独自のアルゴリズムによって、人体が静止していることができる瞬間(0.5秒)にスキャンして膨大な計測点を獲得し、高い精度の3次元計測を可能としています。精度の低いデータを収集しても学習データとしては意味がありません。しかも弊社の3Dスキャナーはポータブルなので、誰でも簡単かつ、スピーディーに設置ができ、正しく計測することが可能です。

ボディの採寸にはメジャーを使うのが一般的ですが、実はその数値が正しい保証はありません。測定する人が同じであってさえもばらつきが大きいことが知られています。人の手による採寸なので、2、3cmの誤差があるとされています。最近は、スマートフォンでボディを撮影し、手軽に3D計測ができることを謳っているサービスもありますが、こちらもあくまで推定です。

編集部

ポータブルで3Dボディスキャナーを使用できるというのは大きなポイントと言えますね。

福元さん

通常、3Dボディスキャナーを使用するには、数名の専任のエンジニアが設置から設定などを行いますが、当社の場合はエンジニアは必要なく、誰でも容易に設置が可能です。これは、大学発ベンチャーのスペースビジョンならではの技術です。

3Dスキャナーを日常に。あらゆる人にとって3Dが当たり前にある世界を目指す

株式会社スペースビジョンのオフィス内の社名が入った衝立

編集部

スペースビジョンさんの3Dスキャナーを大手企業が研究に活用していることからも、3Dスキャナーは将来的に高い需要が見込まれます。御社の今後の展望についてお聞かせください。

福元さん

現時点は研究として使用いただいている3Dスキャナーですが、将来的にわれわれが目指すのは、一般の方が撮影し、データを自分のために使うことです。2024年には3Dボディスキャナースタジオ開設を予定しており、誰もが自由に撮影し、ヘルスケアに活用したり、ECで洋服のサイズをあわせたり作ったりできるサービスを展開する予定です。

編集部

とても楽しそうです!スペースビジョンさんの3Dデータは、未来を大きく変えるあらゆる可能性に満ちた技術なのですね。

若手エンジニアも活躍できる、チャレンジングな開発環境

株式会社スペースビジョンのオフィスで働くメンバーの様子

編集部

続いて、スペースビジョンさんの開発環境について伺います。まずはスタッフ数を教えてください。

福元さん

3名のエンジニアとバックオフィスを担う1名の、4名の組織となっています(2023年12月時点)。加えて現在は、2名のインターン生がエンジニアとして開発に携わっています。

編集部

スペースビジョンさんのエンジニアはどのような業務を担っているのでしょう。

福元さん

PythonなどによるAIプログラム開発をはじめ、AWSでのCloud Formationによるインフラ構築、NET(C#) によるWeb API開発 、フロントエンドのWebアプリ開発 、C++/C#によるWindowsソフトウェア開発の他、自社サービスの管理・運用・保守などを担っています。

ハード、ソフト共に自社開発の当社では、画像処理の領域だけではなく、全ての領域をカバーできるエンジニアが在籍しています。

編集部

スペースビジョンさんにジョインすることで、エンジニアはどのようなキャリアを積み、成長できると思われますか?

福元さん

当社は小さな組織ですが、技術に対するこだわりは強く、向上心と情熱に溢れた組織です。社長をはじめ、役員も技術会議などに出席することが多いため、若手のエンジニアやインターン生でも経営的な観点からの技術開発や、自分が関わったものを事業として展開することが多々あります。

下の者が雑務をするということはなく、当社の開発スタイルはそれぞれが持つアイデアを出し合い、協力しながら進めて行きます。最先端の技術に触れながら未来の3D計測・データ管理ソリューションの開発に携わることができるのが、当社のエンジニアの特徴であり、強みです。

しかしながら、3D画像計測を専門に学んできた方は、大手企業やシンクタンクに入社することが多く、当社のようなスタートアップにジョインする方は少ないのが実情です。大学発ベンチャーとして約20年の実績があるスペースビジョンは、起業家精神を持ちながら夢を追いかけています。3Dデータの可能性を信じ、追求する当社なら、歯車の一部としてではなく、持っているスキルを存分にプロダクトに活かすことができます。

完全週休2日制&ハイブリッド勤務で、働きやすさと働きがいを両立

株式会社スペースビジョンのオフィスで働くメンバー

編集部

続いて、スペースビジョンさんの働き方についてお聞きします。休日や勤務形態はどのようになっていますか?

福元さん

完全週休2日制を採用しています。勤務形態としては、銀座にあるオフィスへの出社勤務の他、リモートワークも可能です。

リモートワークと出社の割合は、担当する業務によって異なります。ハードを担当する時は実験室があるため出社が必ずありますが、プログラム開発時は仕事の進捗や自身の状況に合わせて、リモートと出社を臨機応変に選んでいます。

編集部

出社勤務とリモートワークが混在するスペースビジョンさんでは、スタッフのコミュニケーションはどのようにされているのでしょう。

福元さん

技術チームは毎朝30分ほど、オンラインミーティングによる情報共有を行っています。当社は集中して仕事をする者が多いため、業務効率が非常に良い会社です。その中で、技術会議を含めたミーティングの時間をあえて設けることで、コミュニケーションを積極的に取るようにしています。ツールとしてはZoomの他、Slack、技術チームは独自のプロジェクトマネジメントを使用しています。

編集部

さまざまなツールを活用することでコミュニケーションを円滑にし、業務に集中できる環境を整えていらっしゃるのですね。

社員と同等の業務を担うことができる、スペースビジョンのインターンシップ

株式会社スペースビジョンのオフィス内にある過去の製品や3Dの造形物

編集部

開発にはインターン生も携わっているとのことですが、スペースビジョンさんがインターンシップ制度を導入した背景についてお聞かせください。

福元さん

現在のメンバーは、代表である佐藤が研究室出身であることからもわかるように、インターンシップというカルチャーが血筋としてあることがインターン生を受け入れる最も大きな理由です。

インターンの期間としては1年以上と長期にわたることが多いです。また、当社のインターンは非常に人気が高く、毎回多くの応募があります。AIの活用や3D分野を学べることが人気の理由と思われます。

編集部

インターン生はどのような業務を経験できるのでしょう。

福元さん

社員と同等の業務を任せています。与えられた課題に対し、研究や実験をすることもあります。当社の場合、CTOがインターン生と直接話をしながら業務を行うので、会社に務めるエンジニアと同じくらいの仕事をガッツリ経験することができます。インターン生の中には週3の頻度で出社する者もいます。

編集部

スペースビジョンさんの先進的な取り組みに加わり、自らの手で新しい製品を世に送り出せることは、インターン生にとっても大きなやりがいになりますね。

持続的に学ぶ意欲を持てる方と、好奇心旺盛な方を歓迎

株式会社スペースビジョンのオフィスで働くメンバー

編集部

世界で数少ない3Dスキャン技術を開発するスペースビジョンさんの将来性や、3Dスキャン技術の可能性に興味を持った読者は多いと思われます。最後に、採用における御社が求める人物像について、転職を検討している読者に向け、メッセージをお願いします。

福元さん

一言でいうなら、勤勉な方を歓迎します。本気で何かを成し遂げるには、学ぶ意欲を持ち続けなければ、すぐに崩れてしまいます。当社の3Dデータ技術は、医療やアパレル、スポーツと、多様な分野で活用されるため、エンジニアとしてのスキル同様に、その分野の知識を広げることも求められます。

医療分野の担当者は大学病院の医師と研究を進めたり、アパレル分野では洋服のパターンをどのように作るかというものを、大学の被服科の先生やアパレル会社のパタンナーの方とやりとりをしたりすることもあります。好奇心旺盛な方にとっては、非常に面白い経験ができると思います。

気鋭のエンジニアがフランクで活発に意見交換できる当社は、チャレンジングな仲間を待っています。見識を深めながら3Dスキャン技術の開発に携わりたい方はぜひ、ジョインいただければ幸いです。

編集部

すでに実用化しているアパレルや医療などの主要分野以外にも、3Dデータはさまざまな領域に応用できることを、今回の取材を通して知ることができました。スペースビジョンさんが目指す、3Dスキャナーが日常にある世界の実現を楽しみにしています。

本日はありがとうございました。

取材協力
株式会社株式会社スペースビジョン:http://www.spacevision.tokyo/
採用ページ:http://www.spacevision.tokyo/aboutus/recruit/