さまざまな企業の新しい働き方をお伝えしていく企画。今回は「無駄の削減」をビジョンに掲げ、事業を展開している株式会社シノプスさんを取材させていただきました。
株式会社シノプスとは
株式会社シノプスは「世界中の無駄を10%削減する」というビジョンのもと、需要予測型自動発注サービス「sinops」シリーズの開発・販売をしています。
会社名 | 株式会社シノプス |
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住所 | 本社 大阪市北区梅田一丁目12番12号東京建物梅田ビル5階 東京オフィス 東京都千代田区有楽町一丁目1番2号日比谷三井タワー12階 |
事業内容 | ・需要予測型自動発注サービス「sinops」シリーズの開発・販売(自社開発システム) ・コンサルテーション(物流診断・改善、棚割コンサル) |
設立 | 1987年(昭和62年)10月 |
公式ページ | https://www.sinops.jp/ |
株式会社シノプスでは、自社での働き方に関しても無駄を削減し、高いリモートワーク率を維持するだけでなく、出社時もおしゃれなオフィスライフを楽しめる環境を実現しています。
今回は「無駄削減」をテーマとした事業や働き方について、取締役管理部管掌の島井さんにお話をお伺いしました。
需要予測型自動発注サービスによるフードロス削減でSDGsに取り組む
編集部
シノプスさんでは「世界中の無駄を10%削減する」というビジョンのもと、需要予測型自動発注サービス「sinops」シリーズで小売業、中間流通業、製造業の在庫情報を一気通貫でつなげて無駄を削減することに取り組んでいると拝見しました。「sinops」とは、具体的にはどのようなことができるサービスなのでしょうか?
島井さん
sinopsは商品の需要予測に基づき、自動発注を行うサービスです。他社サービスとの大きな違いは、フードロスの出やすい賞味期限の短い商品でも需要予測ができること。弊社では、今まで自動発注の業界では不可能と言われていた、賞味期限が短い商品の自動発注システムの開発を成功させました。
例えば、カップラーメンであればもし需要予測が外れて多く仕入れてしまったとしても、賞味期限が長いので長期間売り場に置いておくことができます。ですので、需要予測の精度はそこまで高いものでなくても問題になりません。
しかし、乳製品・卵などのように賞味期限が短い商品は、たくさんの量を仕入れて長く置いておくことができません。惣菜に関しては当日売り切らなければならないので、より高い需要予測の精度が求められます。そんなニーズに応えられるのがsinopsの強みだと思います。
編集部
企業がsinopsを使うメリットは、フードロス削減以外にもあるのでしょうか?
島井さん
フードロスを減らすことは、環境問題の改善に貢献できることはもちろん、コストを抑えることにも繋がります。例えば惣菜であればフードロスを2割から3割ほど削減できるので、その分利益が増加します。
また、自動発注のシステムは発注業務を半分以上削減できる場合が多いです。今は特に、小売業では人材が不足している状況もあり、引き合いが非常に多いです。さらに、フードロス削減というSDGsの観点も相まって、sinopsのニーズがとても高まってると感じています。
編集部
人材不足の解決やフードロス削減によるSDGsの取り組みなどの社会貢献もできて、お客様からのニーズが高いシステムの開発に関われるのは、働き手としてもとてもやりがいがありそうですね。
「成功するまで逃げない」というポリシーのもと、難易度の高いシステム開発に成功
▲自動発注サービス「sinops-CLOUD」ではこのようにパソコン上で在庫管理ができます
編集部
今まで実現が難しいと思われていた、賞味期限の短い商品の自動発注システムを開発したきっかけについて教えてください。
島井さん
弊社は1987年に創業したのですが、最初の10年は全く違うことをやっていました。しかし、需要予測や自動発注のシステムの開発に、事業としての可能性を見い出してからは、その分野の開発だけに特化しています。賞味期限が短い商品は、やはり需要予測が難しく、一筋縄ではいきませんでしたが、社内の勢力を上げて取り組みました。
編集部
強い信念と熱い思いを感じます。
島井さん
弊社には「成功するまで逃げない」というポリシーがあります。また、sinopsの成功は、他でもないお客様からの理解とご支援があってこそだと思っています。
ありがたいことに弊社のお客様(sinopsのユーザー)は非常に協力的なユーザー様が多く、「せっかくならうちの店舗で試してみてよ」と現場で実証実験をさせていただけることが多いです。だからこそ、失敗を繰り返しながらもノウハウを蓄積することができ、それが成功へと繋がったのだと思います。
さきほど弊社は「需要予測型自動発注サービスを提供している」とお伝えしましたが、ロジックだけでなく現場で回せる運用までセットにして提供しています。ロジックだけあっても、実際に現場で回せなければお客様のためにならないからです。
ロジックを作るのも大変なのですが、そこからお客様の運用に落とし込むことはさらに苦労します。実際に利用されるお客様の現場で、製品が意図通りの動きをするのか、ニーズに応えられるものなのか、運用レベルまで落とし込めるのかを試すことは、非常にハードルが高いです。なぜなら、そこにはお客様の協力を得る必要があるからです。
それでも、弊社がお客様の協力を得て開発に取り組んでいけるのは、これまでずっと自動発注に取り組んできた実績があるからかなと思っています。
編集部
お客様から理解と協力を得られたのは、それだけ御社に対する信頼があったからこそだろうと思います。
お客様からの要望に応えられるものを作りたいというエンジニアは少なくないと思いますが、実際にお客様の現場で試しながら、一緒により良いものに進化させていくという経験がある人は少ないのではないでしょうか。
お客様に寄り添って開発できる職場環境は、エンジニアにとって憧れでもありますよね。
やりたいことに挑戦!成果を出し、入社4年で課長に昇進
▲入社4年目で課長代理に抜擢された谷ありあさん(引用:公式note)
編集部
御社のnoteを拝見したのですが、新卒入社4年目で課長代理に抜擢された方(谷ありあさん)がいらっしゃるそうですね。御社では、社歴や年齢に関わらず昇進することも可能なのでしょうか?
島井さん
彼女の昇進は、シノプスでもかなり早い方です。弊社のサービス自体が専門的なため、サービス内容を理解するためにある程度の社歴を必要とするのが一般的だからです。ただ、人事制度としては、実力さえあれば社歴に関わらず重要な責務に就くことができるようになっています。
基本的には年功序列という考え方はなく、必要に応じてどんどん昇進していけるようになっていますね。
編集部
谷さんの異例の昇進には、なにか理由があったのでしょうか?
島井さん
彼女は新卒で入社したのですが、最初から順風満帆だったわけではありません。逆に、入社当初はとても苦労していました。同期が6人いたのですが、他のメンバーが活躍するなか彼女は社内でひたすらデータ分析をしており、なかなかお客様(sinopsのユーザー)と直接話しができず成果を実感することが難しい状況でした。
しかし半年ほど経った頃、持ち前のガッツを生かしてたちまち頭角を現し始めました。PDCAをうまく回して新しいチャレンジをガンガンやっていったことで、成果が出るようになったのだと思います。
そんなときに、惣菜向けの自動発注システムの開発を彼女に任せることになりました。先ほどもお伝えした通り、惣菜は基本その日売り切りのため、自動発注がとても難しいジャンルの一つです。「ロジックから考えて」という無茶振りに、いろいろ試行錯誤して成果を出してくれました。その結果、飛躍的に成長してくれたと感じています。
編集部
さきほど伺った「賞味期限が短い商品の自動発注サービス」には、谷さんが大きく関わられていたのですね。
島井さん
そうなんです。「惣菜向けの自動発注」は、それまで弊社のなかでも誰も携わったことがなく、社内にもノウハウがありませんでした。きっと分からないことも多かっただろうと思います。それに対して彼女は、毎日毎日、業務に詳しいお客様に意見をもらいながら進めていました。その粘り強さがサービスの開発に繋がり、ひいては彼女自身の昇進にも繋がったのだと思います。
編集部
新しいことにチャレンジし続けた結果、新しいシステムを生み出して成功されたんですね。新卒で入社されて間もない谷さんが大業を成し遂げられたこともスゴイですし、そんな大役を谷さんに任せられる御社の体制にも驚かされました。
やる気さえあればどんなことにもチャレンジでき、キャリアアップできる機会が与えられるということですね。
シノプスでは「前提を疑ってゼロから考え、すぐに行動できる」を重視
編集部
先ほどの話からも自走できるメンバーが多いように感じましたが、社員さんに共通している資質はありますか?
島井さん
シノプスのvalueの1つに「Think ZERO 〜ゼロベース思考、ゼロ秒思考で動こう〜」というものがあります。このvalueに沿って動いてくれるメンバーは非常に多いと思います。
それというのも、弊社のお客様である小売業は消費者と直接関わる商売であるため、市場の変化がかなり激しい業界なんです。2020年も対応が一番最初に変わったのは、スーパーだったと思います。ネット通販を可能にしたり、アルコール消毒や順番待ちの足跡を導入したり、レジに透明のビニールカーテンを設置したりと、社会情勢に合わせたあらゆる対応が行われました。
そんな風に、弊社のお客様であるスーパーが世の中の変化に対してとても敏感なので、弊社もその変化に対応していく必要があります。ですから、常に前提を疑いゼロベースで物事を考えること(=ゼロベース思考)や思考だけに留まらずに行動を起こすこと(=ゼロ秒思考)を非常に大切にしています。
また何かあった場合、食品の自動発注の業界に関しては、導入実績が多い弊社に最初に問い合わせが来ます。誰も答えを持っていないようなことを聞かれることも多いんです。そういった正解のない問い合わせにも、柔軟に対応できる人が多い気がしますね。
シノプスには「変わっている=自分なりに考えて判断・行動できる人」が多い
編集部
その他に、性格などの面で共通点はありますか?
島井さん
「変わってるね」とよく言われる人が多いかもしれませんね。というのも、「変わってるね」と周りから言われても「変わってる」ことをやり続ける人って、結構こだわりが強い人が多いんです。こだわりが強いということは、自分の中で価値基準がしっかりしていることの表れだと思うので、自分なりに考えて判断・行動できる人が多いと感じています。また、そういう人こそ、独特なアイデアの持ち主でもあるんですよ。
編集部
自分なりの判断で仕事を進められるということは、それだけ自分の裁量で働ける環境だということなのでしょうね。だからこそ、シノプスには自律して働ける人が多いのかなと思いました。そんな人たちに囲まれて切磋琢磨しながら働くことで、自分自身もとても成長できそうな気がします。
また、ゼロベースで物事を考え問題解決していくことは、口で言うよりも難しいと思います。でも、それが出来たときの喜びはひとしおでしょうね。
90%以上がリモート勤務!コミュニケーションは仮想オフィスで
編集部
御社での働き方について教えてください。
島井さん
弊社は毎月90%以上の人がリモートワークで働いています。出社かリモートかは、自分で選択できるため、なかには健康診断の時しか出社しないメンバーもいますよ。
また、弊社のオフィスがあるのは大阪と東京ですが、それ以外のエリアに住んでいるメンバーも大阪・東京に移住することなく働いています。
編集部
90%以上の人がリモートワークだと、コミュニケーションに困りませんか?
島井さん
仰るとおり、以前はコミュニケーションが難しい場面が多くありました。在宅ワークだと、少し声をかけるためにSlackでの連絡やカレンダーでの予定確認が必要となり、コミュニケーションをとるまでに多くの手間が発生してしまうためです。その結果、雑談する機会が減ってしまったり、少しだけ話したい時に話しかけづらいといった状況に陥ってしまいました。
そこで、コミュニケーション不足を解消するために仮想オフィスを導入しました。
編集部
実際に仮想オフィスを導入してみて、何か効果はありましたか?
島井さん
まだ一部しか利用してない状況ではあるのですが、仮想オフィスを利用しているメンバーに関しては気軽に声をかけやすくなったといったメリットを感じています。これからも、工夫しながら働きやすい環境を作っていきたいですね。
編集部
気軽に声をかけられる環境って大切ですよね。特に新しく入社されたメンバーは声をかけることに対する心理的な障壁がより高いでしょうから、リモートでも声を掛けやすい環境があると「働きやすさ」が変わるのではないかと思います。
フルリモートに近いかたちで勤務ができ、かつコミュケーションも問題なく取れるのは、働き手にとってとても嬉しい環境ですね。
「無駄削減」のビジョンに沿い、働き方の無駄も削減
編集部
リモートワーク中心のなか、2022年7月に東京オフィスを移転された理由を教えてください。
島井さん
今回の移転は、賃貸オフィスからシェアオフィスへの移転です。リモートワークで働く人の割合が9割を超えているため、オフィスにほとんど誰もいない状況だったことが理由です。弊社が掲げるビジョンも「無駄の削減」がテーマになっていますし、「固定のオフィスを持つのってなんか無駄だよね」という話になり、今のシェアオフィスに移転することになりました。
編集部
オフィスを移転して、なにか働き方に変化はあったでしょうか?
島井さん
シェアオフィスなので、会議がしやすい席や作業に集中しやすい席など、その時々で自由に選ぶことができます。出社したメンバーからは「気分や業務に合わせて席を選べるのは嬉しい」という声をよく聞きますよ。
オフィスにはドリンクが充実したカフェコーナーがあったりと、設備がとても整っています。どれも自由に利用できるため、出社時も楽しんでもらえているようです。
また、東京ミッドタウン日比谷と隣接していて立地がいいので、中には「夜ご飯食べて帰ろう」と予定を合わせて出社するメンバーもいて、以前よりも「出社するのが楽しい」と思ってもらえているようです。
編集部
「出社する人がいないから、オフィスもシェアオフィスに変更」という考え方は、まさに御社のビジョン「無駄の削減」にピッタリですね。また、気分や業務に合わせて労働環境を選べることは、とても魅力的だなと感じました。
おしゃれで設備が整ったシェアオフィスに移転したことで出社するメンバーが増えれば、コミュニケーションも一段と取りやすくなり業務も進めやすくなりそうですね。
シノプスで求めるのは、ビジョンやバリューに共感してくれる人!
▲インタビューに応じてくださった島井さん、優しい笑顔が印象的です
編集部
最後に、御社が求める人材とはどのような人か教えてください。
島井さん
採用で重視しているポイントは、弊社の3つのバリューに沿った働き方や価値観を持てるかどうかという点です。
1つ目は「一点集中でインパクトを出す」、2つ目は先ほどもお伝えした「ゼロベース思考、ゼロ秒思考で動こう」、3つ目は「誠実、正直、オープン」です。
1つ目の「一点集中でインパクトを出す」についてもっと分かりやすく説明すると、お客様にとって何が一番投資対効果が出るかを考えてプラス行動するという意味です。2つ目は先ほどもお伝えしたように、ゼロベースで前提を疑い、すぐに行動に移せるか。3つ目はそのままですが、誠実で正直に業務に取り組めるかというところですね。
あとは、弊社はリモート率の高い会社ではありますが、そんな中でもしっかりとコミュニケーションを自発的に取っていくことが出来るかという部分も、必要な要素になってくると思います。
編集部
確かに、同じ価値観を持ち、その会社に合った働き方ができるかどうかは、とても重要だと思います。
島井さん
そういう意味では、シノプスが掲げる「世界中の無駄を10%にする」というビジョンに共感し、それに向かって進めていける人かどうかは、採用においてもっとも重要といえるかも知れません。
編集部
シノプスさん、本日はありがとうございました!
■取材協力
株式会社シノプス:https://www.sinops.jp/
採用情報:https://recruit.sinops.jp/