集客からファン創りへ。アサヒ・ドリーム・クリエイトの「個」に寄り添う文化

新しい働き方を取り入れている企業を紹介していく企画。今回は、販促ツールの企画・制作などを行う「アサヒ・ドリーム・クリエイト株式会社」をご紹介します。

アサヒ・ドリーム・クリエイト株式会社とは?

アサヒ・ドリーム・クリエイト株式会社の事業イメージ写真
▲アサヒ・ドリーム・クリエイトさんでは販売ツールの企画・デザイン・製造を手掛けている

アサヒ・ドリーム・クリエイト株式会社は、1963年、大阪守口市にて創業しました。以来、約60年にわたり、顧客目線で販売ツールの企画・デザイン・製造を手掛けてきました。

また、長年の販促支援の経験と時代のニーズに対応したノウハウを活かし、小売店やメーカーの売場提案や売場コンサルティング、その他新規事業を行っています。

代表取締役の橋本英雄さんは新卒で株式会社リクルートに就職した後、父親の会社に入社し、2004年に代表取締役に就任しました。ミッションに「HAPPY ♾️ HAPPY〜ファン創りを通して 笑顔あふれる世界を実現する!」を掲げ、”絆創りを促す”ことを意味する「絆促(はんそく)」を目指しています。

■アサヒ・ドリーム・クリエイト株式会社の販促ツールアップデート事業事例紹介
https://pop-asahi.com/case-study/

会社名 アサヒ・ドリーム・クリエイト株式会社
住所 大阪本社工場:大阪府枚方市招提大谷2-22-20
東京オフィス:東京都台東区鳥越2-7-4B1F 
事業内容 ・ファン創り支援
・販促ツール企画/デザイン
・印刷加工
設立 昭和38年3月
公式ページ https://pop-asahi.com/
働き方 出社とテレワークを併用

アサヒ・ドリーム・クリエイト株式会社では、時代や社員にあわせて事業や働き方を変化させてきました。また、現在約50名の社員のうち、リーダー職以上では女性が8割を占めているそうです。今回は、代表取締役の橋本英雄さんに、事業の特長や社員の働き方、社内文化について伺いました。

本日お話を伺った方
アサヒ・ドリーム・クリエイト株式会社代表取締役の橋本英雄さん

アサヒ・ドリーム・クリエイト株式会社
代表取締役

橋本 英雄さん

創業約60年。販促支援を通して「ファン創り」に貢献

アサヒ・ドリーム・クリエイト株式会社の販促ツールイメージ
▲アサヒ・ドリーム・クリエイトさんが手がける販促ツールの一例

編集部

はじめに、アサヒ・ドリーム・クリエイトさんの事業内容から教えてください。

橋本さん

弊社は今年で創業およそ60年の会社です。私の父親が創業した会社で、創業時は印刷の表面加工業から始めました。そこから業態を今の販促ツールの企画・制作に移したのは、私がこの会社に入社した後のことで、今から約30年前になります。

私は大学卒業後はリクルートで営業の仕事をしていましたが、バブル崩壊後に父親の会社を助けるために帰ってきました。当時はとにかく売上を上げるためにと考え、販促事業にシフトしていった経緯があります。販促事業の中でも、店頭や店内のディスプレイ、商品の横に掲示するPOP、イベントで展示するポスターやパネル、等身大パネルなどを制作しています。

編集部

印刷加工業からスタートされ、長年、販促ツールの企画・制作を手掛けていらっしゃるのですね。販促ツールは、企業の商品トレンドやユーザーのニーズの変化などを受け、時代とともに変わってきたのではないでしょうか?

橋本さん

はい。昔は大量に受注して大量に作るということをやってきましたが、販促ニーズも個別化の流れがあり、小ロット化(※)が進んできました。そこで、20年ほど前に多品種小ロットの設備を積極的に導入して、大量生産から1枚単位まですべてに一貫して対応できる生産体制を整えました。
※「小ロット」は同種の製品を生産する量が少ないときに用いる。印刷業界では一般的に枚数のことを指す

編集部

時代のニーズにあった形で変化してこられたのですね。逆に、一貫してこだわってきた点はありますか?

橋本さん

顧客目線です。今は「ファン創り」というキーワードを大切にしています。

私たちの仕事は「お客さんの商品・サービスのファンを創ること」と位置付け、どうすればファンになってもらえるのか、ファンになってもらうために商品・サービスへの想いやストーリーをどう伝えていくのかを考えています。

マーケティング事業で飛躍。事業を支えた新入社員が今はリーダー職に

アサヒ・ドリーム・クリエイト株式会社の事業イメージ写真

編集部

売場コンサルティング事業を始められたのは、この「ファン創り」をさらに深く行うためだったのでしょうか?

橋本さん

販促ツールは下請けの仕事が多く、お客様から求められるのは納期を早く、コストを安く、品質を良くという「早い・安い・うまい」のようなものでした。しかし、これを求められ続けると社員が疲弊してしまいます。

われわれが作る販促ツールの本質的な価値は何かと考えたところ、売上を上げること、お客様企業やその店員さんのオペレーションが楽になること、あるいはお店が華やぐといったことだと思い至りました。そこで、こうしたマーケティング領域を支援したいと、小売店向けの売場コンサルなどマーケティング事業を始めました。これが12年前のことです。

編集部

マーケティング事業はどのように推進されたのですか?

橋本さん

われわれは、「コトマーケティング」と呼ばれるマーケティング手法を勉強していました。「コトマーケティング」とは、お客様の求めているのは商品やサービスそのものではない、という考え方に基づくものです。

お客様にとって、この商品やサービスを使うことで"どんないいことがあるのか"あるいは"どんな不安や不便や不満を解消するのか"ということを伝えるマーケティング手法です。

しかし、社内にはそういった営業ができるメンバーがいなかったこともあり、思い切って新卒で社員を採用することにしました。

編集部

ホームページの沿革で、2012年に新卒採用開始と拝見しました。ちょうどこの時ですね?どのように学生さんに訴えていかれたのですか?

橋本さん

そうです。2012年までは私たちは”下請けの加工会社”だったのですが、「これから企画部門を創り、マーケティング事業をやっていく会社になります」と訴え、新卒採用を始めました。立地は大阪とはいえ、市内からは車で1時間ぐらいかかるところにあり、新卒の学生が来てくれるのかなという不安はありました。

そこで、先ほど話した「コトマーケティング」を採用活動に応用し、「感動会社説明会」なるものを企画しました。当社の会社説明会に参加すると、就職活動生(就活生)にとって"どんないいことがあるのか"を徹底的に考えたのです。その結果、説明会に300人くらい集まりました。

当時の就活生は50~60社受けて1社内定という大変な時代でしたので、説明会では就活生に「働くことって楽しいよ」「仕事を通じてやりがいや生きがいを感じることができるよ」ということを伝えました。「うちの会社がいいよ」という説明は二の次です。

編集部

学生さんの反応はいかがでしたか?

橋本さん

97%ぐらいの人が1次選考に進んでくれたんです。そこから本来は2人採用予定でしたが、結果的に入社を熱望してくれた5人を採用しました。その時の新入社員たちが、今はマーケティング事業やそのリーダーをやってくれています。

編集部

会社の提供する「モノ」だけでなく「コト」に共感した方が入社され、今、マーケティング事業を支えるポジションで活躍されているのですね。

管理職の8割が女性。育児や介護中のメンバーもいる

アサヒ・ドリーム・クリエイト株式会社の女性社員たち
▲アサヒ・ドリーム・クリエイトさんでは女性リーダーも多く、女性社員が活躍している

編集部

続いて、女性活躍のトピックスを伺います。アサヒ・ドリーム・クリエイトさんの男女比率や管理職比率などを教えていただけますか?

橋本さん

男女比はちょうど半々です。製造現場は男性7割、女性3割ぐらいで、男性の方が多いのですが、全体を通していうと半々です。管理職比率は、リーダー以上でいくと、約10人いるうち8割が女性です。

編集部

どういう経緯で、女性がこれだけ多くの比率を占めるようになったのでしょうか?

橋本さん

男女で差をつけたわけではなく、優秀な女性がいたからということです。昔は「幹部候補は男性」と決めている会社もあったかもしれませんが、私にはそういう概念は全くありませんでした。男性も女性も平等に機会を与えられるべき、また女性がとても優秀であるという考えを持っていました。

これは私自身がリクルートに在籍していたときの経験も、影響しています。私は「ケイコとマナブ」というスクール情報誌の部署にいまして、当時ちょうど100人ぐらいのうち、8割が女性でした。新卒で入った途端、周りにはもうそれは大変優秀な営業職の女性がたくさんいて、「すごいな」と思ったんですね。だから、女性は優秀だという意識は自分の中でも焼き付いていました。

編集部

ご自身の経験も踏まえ、性別に関わらず、中立的な目線で採用・育成された結果だったのですね。現在は育児中の社員さんもいらっしゃるのでしょうか?

橋本さん

現在、社員48名のうち、育休中社員が1名、小さい子どものいる社員は4名くらいいます。育休取得率や復職率は100%です。弊社では子育て優先で働けるよう、社内のメンバーにその考えを浸透させています。また、子育て中の働き方に合う役割、時短勤務から徐々に時間を延ばしていけるようなフレキシブルな働き方、在宅勤務できる環境も整えています。

また、育児だけでなく、介護に携わりながら働く社員も数名います。介護のために週に1日休んだら、その分は在宅で仕事するというような柔軟な方法を取っています。

時差出勤や在宅勤務も。効率のよい働き方を目指す

アサヒ・ドリーム・クリエイト株式会社社員のオンライン会議の様子
▲在宅勤務を取り入れながら、1人ひとりに合った効率的な働き方を実現している

編集部

育児中や介護中の方が在宅で仕事するというお話がありましたが、皆さんの働き方についても教えてください。

橋本さん

約20人いる製造部門の社員は、工場に勤務しています。残りの管理部門の社員では、5人に1人くらいが在宅勤務をしています。

編集部

管理部門では、完全在宅勤務の方もいらっしゃるのでしょうか?

橋本さん

完全在宅勤務の社員が2名います。他にも社員としてではないですが、在宅のママワーカーさんに数人働いてもらっています。例えば動画の編集やホームページのデザインなど、それまで私たちができなかったことをやってもらっています。結果的に、業務範囲を広げることにつながりましたし、採用が簡単ではない中、地域に関係なく優秀な方と出会えるという点ではテレワークに大変可能性を感じました。

ただ、弊社では「全員テレワークを推奨」というわけではなく、自分が一番働きやすい効率のいい働き方をしようと考えています。

編集部

例えば、時間をずらすといった働き方もされていますか?

橋本さん

はい。時差出勤は製造の現場でも取り入れていますし、テレワークでやっている者もいます。例えば、うちは朝8時から夕方17時までが営業時間なのですが、夕方に対応が多いメンバーの場合残業が発生しがちでした。そのため、朝10時~19時というシフトにしてやってもらっています。

編集部

時差出勤や在宅勤務などのさまざまな働き方を取り入れながら、効率よく、1人ひとりに合った働き方を推進されていることがわかりました。

「絶対に働き続けてほしい」と思える社員の実例から、制度が生まれた

編集部

アサヒ・ドリーム・クリエイトさんでは、冒頭に伺った2012年の「感動会社説明会」で入社された方が現在マーケティング事業をリードされていたり、育休取得者が100%復職されていたりと、働き続ける社員さんが多いと感じました。会社が社員に選ばれる魅力はどこにあると、お考えですか?

橋本さん

モデルケースとして、新卒入社し、現在は本部長を務めている女性社員がいます。彼女は新卒で入って経理職として存在感を出していた5~6年目のころ、「学生時代に行ったフランスに3ヵ月留学したい」という希望がありました。

当時、ご両親からは「社会に出てからそんなこと、できるはずがない」と言われたそうですが、私は彼女から相談を受けて「じゃあ、そういう制度を作るから、先陣を切って行ったらいい」と即答しました。3ヵ月の経験を経てもっと成長してくれる期待もありましたし、仕事に穴を開けるような人ではないという信頼もありました。

編集部

信頼できる社員の希望を受けて、制度を作られたのですね!

橋本さん

はい。もちろん3ヵ月で帰って来て活躍してくれました。その後、4~5年前のことですが、彼女が結婚のため兵庫県姫路市に引っ越すことになりました。大阪までとても通勤できる距離ではありません。そこで「じゃあ、在宅勤務にしよう」と決断しました。在宅勤務で十分戦力になることがわかっていたからです。

編集部

ライフイベントに合わせて、在宅勤務可としたのですね。世間でテレワークが広がるより前のことでしょうか?

橋本さん

そうですね。当時から在宅で営業をしているメンバーもいましたので、環境整備をさらに進めました。その後、彼女は出産のため1年半ほど休んで、昨年の4月に在宅勤務のまま復職しました。

休職中に会社が大変だった時期がありましたが、その再建に尽力してくれ、今は役員クラス3人のうちの1人として頑張っています。

編集部

とても感慨深いお話です。その社員の方の人生に寄り添う形で、社内の制度が生まれたり、体制を整えていかれたりしたのですね。橋本さんを動かした一番の動機は何だったのでしょうか。

橋本さん

一番強いのは、彼女に絶対に働き続けて欲しかったということです。私の判断は、ある一面から見ると、彼女を特別扱いして留学させる、在宅勤務を認める、というふうに見えるかもしれません。しかし、これからの時代は彼女のような休み方や働き方が増えていくべきだと考えていたからこその判断です。

編集部

橋本さんの信念が伝わり、社内でも応援する声があったのではないでしょうか?

橋本さん

はい。彼女が辞めるよりは制度を作って続けてもらった方がいいと、誰もが思っていたと思います。なので、「できるように整えてみようよ」という空気にもなりました。そして、その結果、彼女は周りから文句が出ないぐらい働き、誰もが認める成果を出してくれました。

社員の親族の罹患がきっかけで、難病の認知活動を支援

編集部

続いて、CSR活動についても伺いたいと思います。アサヒ・ドリーム・クリエイトさんは「レット症候群」という難病の認知活動を支援されているそうですね。支援を始めた背景を教えてください。

橋本さん

レット症候群は、1万人の女児に0.9人くらいの有病率と報告されている、神経を主体とした発達障害です。支援のきっかけは、社員の姪っ子さんがこの病気にかかられたことです。姪っ子さんは病名が特定できるまでかなりの時間を要したそうで、その背景には「日本ではレット症候群の認知が低いこと」がありました。

編集部

具体的にはどのような支援活動をされているのでしょうか?

橋本さん

まず、姪っ子さんのお父様である社員の弟さんに全社員が参加する会社の会議に来てもらい、レット症候群の現状について学ぶ機会を設けました。その話を聞いて、何か自分たちでできることはないかと考え、2011年から、社員同士が感謝を贈り合う「おおきにカード」1枚につき5円を寄付する活動や、社内の自販機の収益から寄付する活動を始めました。また、会社の最寄り駅の近くで、年1~2回の募金活動も行っています。

基本的に社員の自主的な活動であり、ボランティアですので、全員参加というわけではありませんが、少しでもレット症候群を知ってもらうお手伝いができればと考えています。

編集部

社員さんが自分たちでできることを考えたのですね。2011年からということで、継続的に支援されていることもわかりました。

社員・顧客・会社のハッピートライアングルを目指す

編集部

社員の親族の方がきっかけで支援活動を開始されたというお話からは、先ほど伺った女性社員の方のお話同様、社員に寄り添って会社が動くというスタンスを感じました。

橋本さん

支援活動については、困っている人がいて、自分たちにできることはないか考える機会があったから、それをやっただけで、私たちにとってはそれほど特別なことではないんです。

他にも、東日本大震災のときは私たちが扱っている断熱材のような材料を避難所に提供したり、カンボジアの教育活動を支援するため公益財団法人CIESFという団体に寄付をさせてもらったりしています。

企業は社会の公器であり、社会にとって役立つ存在になるその機会はどこにでもいくらでもあると思っています。

編集部

そうした橋本さんのお考えが伝わり、社会にとって役立つことを地道に続ける、という姿勢が社員の皆さんに浸透しているのですね。

橋本さん

はい。肩肘張ってやっているわけではありませんが、こうした活動をしていることは社員にとって誇りになると思います。

うちの会社には『社員がチャンス&トライアルで成長し、お客様が感動し、会社が利益を出すハッピートライアングルを形成し、社会貢献を目指します』という経営理念があります。みんな、それを分かったうえで入社しているので、そういう風土なのかなと思います。

20代、30代は新しい価値を創り出す人になってほしい

アサヒ・ドリーム・クリエイト株式会社代表取締役の橋本英雄さん
▲「自分の人生の目的を確認して」と若い世代へメッセージを送る橋本さん

編集部

最後に、橋本さんから転職を考えている若い世代へのメッセージをいただけますか?

橋本さん

一番大事なのは、自分が成し遂げたい人生の目的をちゃんと持つことです。そのうえで、それが実現できる場で仕事をするということが大事だと思っています。

人生の目的が他人と同じということはあり得ないと思いますので、自分自身の価値観や生きざまを振り返り、これからどうなりたいか、何のために生きたいのかということを考え続け、行動し続けてほしいなと思います。

編集部

アサヒ・ドリーム・クリエイトさんは2023年2月に、メタバースを活用した合同説明会「就活メタバースサービス」を開始されたとホームページで拝見しました。今後も時代に合わせた事業展開をされると思いますが、会社や社会が求める人材についても伺えますか?

橋本さん

社会では、今ある仕事はデジタルに任せ、その代わりにより価値を高めるような仕事ができる人が求められる時代になると思います。「DXプロデューサー」という言葉がぴったりかなと思っています。

私の世代は後からデジタルを学んだ「なんちゃってデジタル世代」なので、「デジタルネイティブ」である今の20代、30代の人たちは、ぜひ、新しい価値を創り出す人になってほしいと思います。

編集部

橋本さん、本日はありがとうございました!

橋本さんのお話からは、社会性を重視し、顧客や社員1人ひとりの「個」に寄り添うアサヒ・ドリーム・クリエイトさんの信念が感じられました。

■取材協力
株式会社:https://pop-asahi.com/