ユニークな視点で成長している企業や、若手メンバーが活躍している企業を紹介する本企画。今回は、政治・行政と国民が政策を一緒に作るためのプラットフォームサイトの運営などを行う株式会社PoliPoliにインタビューを実施しました。
株式会社PoliPoliとは
▲PoliPoliでは政策に関するプラットフォームサイトを運営し、一般市民や議員、行政関係者がオープンに議論できる場を提供している(公式サイトより引用)
2018年2月に設立された株式会社PoliPoliは、「新しい政治・行政の仕組みをつくりつづけることで、世界中の人々の幸せな暮らしに貢献する。」というミッションを掲げ、立場を超えた意見交換ができるプラットフォームの運営を行っています。
現在、代表取締役の伊藤和真氏を含め、同社マネージャーは全員20代。政策課題に対してビジネスとして貢献していくという世界でも類を見ない事業を進めていく、ポジティブな思考が特徴的です。
会社名 | 株式会社PoliPoli |
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住所 | 東京都千代田区平河町2丁目5-3 Nagatacho GRiD |
事業内容 | ソフトウェア開発 |
設立 | 2018年2月 |
公式ページ | https://www.polipoli.work/ |
働き方 | リモートワークあり |
今回は、人事などを担当している村井すみれさんに、さまざまなステークホルダーに支持されているPoliPoliの事業内容や、政策立案に関するサービス提供という前例のない仕事に取り組む若い世代の活躍について、お話を伺いました。
政策を共創するためのプラットフォームを作る
▲国民・有識者、政治家、行政、企業・団体、財団・富裕層など、PoliPoliではあらゆるステークホルダーにサービスを提供している
編集部
最初に、PoliPoliさんの企業としてのミッションを教えてください。
村井さん
PoliPoliでは、「新しい政治・行政の仕組みをつくりつづけることで、世界中の人々の幸せな暮らしに貢献する。」というミッションを掲げています。
代表的な事業はプラットフォームとなるサイトの運営です。あらゆる立場の方々が政策を共創するためのプラットフォームを開発し、皆さんの意見を見える化したり、必要な情報提供を行ったりしています。
編集部
民間企業の事業として政策の共創を進めていくという仕組みは、すごくめずらしいと感じました。PoliPoliさんのミッションやプラットフォーム事業が生まれた背景をお伺いできますか?
村井さん
日本は「課題先進国」と言われています。たとえば少子高齢化がどこの国よりも早く進行しているなど、今までに観測されてこなかった多くの社会問題が顕在化してきています。
編集部
確かに、経済的な先進国として発展してきた反面、それに伴う社会問題も増えていますね。
村井さん
しかし、社会課題が増えている一方で、日本政府のリソース自体は減っています。予算を使って行うべき業務に携わる人材がどんどん減少しているんです。他国と比較しても少ない状況になっています。
社会が抱える課題は多いけど、それを解決するためのリソースは限られている。そういう状況の日本の未来を考えたとき、「より質の高い政策をリアルタイム性を持って創っていく必要がある」というところが私達のビジョンの背景になっています。
編集部
より効率的に、みんなで政策を創れるシステムが必要だということですね。
今までなかった「政策を一緒に作る場」を提供
▲PoliPoliでは政治家、行政、企業、国民をターゲットにした4事業を展開している。
編集部
先ほど伺ったビジョンにアプローチするための、PoliPoliさんの具体的な事業について教えてください。
村井さん
今まであまりなかった「政策を共に創る場」を提供しようということで、政治家に声を届けるウェブサイト「PoliPoli」、行政に声を届けるウェブサイト「PoliPoli Gov」を中心にサービスを展開してきました。
また、最近では事業展開の障壁となる社会ルールを変更・構築するサポートを、政策立案・政策推進の文脈から行う「PoliPoli Enterprise」という企業・団体向けのサービスも立ち上げました。
編集部
「政策を共に創るマーケットを広げる」という点が、各サービスに共通する目的でしょうか。
村井さん
そうですね。速いスピードで質の良い政策を作るにはどうしたらいいかを、常に考えています。実証の場を広げたり、日本に限らずグローバル的な知見も入れていくために世界的な展開も必要になってきています。
編集部
例として、政治家に声を届けるウェブサイト「PoliPoli」の詳細について教えてください。
村井さん
「PoliPoli」は、異なるステークホルダーが共通の政策を通じてつながることができるプラットフォームと言えます。政治家の方々が、どういう政策を今進めているのか、あるいは今後進めたいのかを、国民に公開すること機能があります。
それに対して国民もコメントしたり、より議論を深めるための意見交換会に参加できる点が「PoliPoli」のサービスの特長となっています。
編集部
プラットフォームの仕組みがあることで、オープンに議論をしたり、行動できる場が増える、ということですね。
生理に関する政策を実現し、政府予算を獲得
編集部
実際に、PoliPoliさんが日本の政治・行政を動かした例を教えてください。
村井さん
新型コロナウイルスが感染拡大していた頃、「生理の貧困」という言葉が話題になったと思います。あれは、PoliPoliのユーザーである政治家と一般市民が行った、生理にまつわる政策についての意見交換会がきっかけになっているんです。
編集部
「PoliPoliさんで行った意見交換会の声が政府に届いた」ということでしょうか。
村井さん
はい。「ピルを保険適用対象にしてほしい」「生理用品が買えなくて困っている」などのプラットフォームへのコメントを参考にして、参議院文教科学委員会で大臣質問が実施されました。その結果、政府の予備費を活用して、「生理の貧困」状態にある方への支援が決定したんです。
編集部
とても身近な例ですね。「生理の貧困」は着眼点が新しいなと思っていたのですが、PoliPoliさんを通じて拾い上げた生の声が伝わって、予算獲得にまでたどり着いたんですね。
民間企業・団体が社会ルール作りに参画する「ルールメイキング」とは
▲PoliPoliでは企業などに向けてルールメイキングのサービスを行っている(公式サイトより引用)
編集部
PoliPoliさんの事業のひとつ、「PoliPoli Enterprise」では民間企業や団体に対して、社会ルールを変更・構築する「ルールメイキング」をサポートしていますよね。このルールメイキングについて説明を伺えますか。
村井さん
ルールメイキングのサービスは、事業展開に障壁となる社会ルールを変更・構築するサポートを、PoliPoliが政策立案・政策推進の文脈から行うものです。プラットフォームサイト上だけでは政策の実現・改善が完結しない部分もあるので、民間企業や団体に、直接、ルールメイキングをサポートしています。
編集部
ルールメイキングは民間企業が政策に関わっていく活動だと言われていますが、いわゆるロビー活動とは異なるのでしょうか。
村井さん
個々の企業の利益を最優先するのではなく、社会全体の中長期的な利益を考える点が、ロビー活動と異なると思います。公益性の高い事業を展開したいと考えている企業に対して、政策はどうやって作られるのか、どう政策を変えていくかをPoliPoliがサポートします。
企業活動に伴走しながら、政治家、行政機関、民間企業、市政の方々など、各ステークホルダーを巻き込んで、政策実現に向けた議論を進めていくイメージです。
編集部
企業・団体に対してルールメイキングの支援をしながら、プラットフォームの運営をメインとなって行うことで、政策実現の精度とスピードを上げているわけですね。
急成長の理由は、ステークホルダーの横展開
▲PoliPoliが入っているオフィスの外観。
編集部
PoliPoliさんが設立されたのは2018年2月ですよね。設立からわずか5年あまりですが、数々の実績を上げて急成長をしている印象があります。会社として数値的な伸びはいかがですか。
村井さん
創業当初は3名からスタートして、シード時代を歩んできました。シリーズA以降を調達した2022-2023年は会社としても大きな成長を果たすことができました。2022年から2023年の1年間で、社員は12名増え、売上は1年で22倍の成長率になっています。
編集部
売上が1年で22倍というのはすごいですね。サービスの利用者が増えているということでしょうか。
村井さん
1年半ほど前までは政治家に特化したサービス提供でしたが、今は行政機関が関われるサービス、民間企業が関われるBtoB向けのサービス、さらに有識者、財団など、さまざまなステークホルダーが参画できるサービスに広がりを見せているので、売り上げが増えていると分析しています。
編集部
確かに、政治・行政に関わるのは議員さんだけに限らないので、ありとあらゆる方がステークホルダーとなるのは必然ともいえますね。
村井さん
会社として目指す共創の形に近づいていると感じています。応援してくださるステークホルダーが増えることで、事業そのものの成長も安定していきます。
編集部
それだけ、多方面の皆さんがPoliPoliさんの事業に期待を抱いているということですね。
公益のために政策を進めたい人をサポートし、対価を得るビジネスモデル
編集部
PoliPoliさんのマネタイズ方法を教えてください。公的な活動をしている団体の場合、スポンサー料や協賛金などが主な収入源となるイメージがあるのですが、PoliPoliさんの場合はいかがでしょうか。
村井さん
寄付ではなく、プラットフォームの月額利用料やサービス提供料を対価としていただき、収益を得ています。非営利団体ではなく、ビジネスとして事業を行っています。
編集部
「利用料を払うユーザーが増えれば、収益も増える」という、シンプルなビジネス構造なんですね。ここまでユーザーが増えた背景については、どのように分析していますか?
村井さん
社会的な課題が顕在化している中、日本でも「課題解決のために投資したい」という考え方が広まっています。たとえばSDGsを切り口に、公益性を重視する国民の方々、民間企業が増えているので、社会の潮流自体もPoliPoliのサービス導入に対する追い風になっているように感じます。
編集部
「ボランティアではなく、社会課題に投資をしていこう」という考え方が新しいですね。
村井さん
ボランティアやNPO法人の活動も大事なのですが、「それは果たして持続可能なのか」と考えた結果として、ビジネスという形で収益を上げています。公益性とビジネス性のバランスがいい点も、企業から評価をいただいていると感じています。
編集部
持続可能なビジネスとして、公益を作り出していくスタイルに共感が集まっているんですね。まさに時代に求められている事業だと言えますね。
マネージャーは全員20代、失敗をしながら成長する
▲PoliPoliの社内ミーティングの様子。リラックスした雰囲気。
編集部
次に、PoliPoliさんで働く社員の方についてお話を伺いたいと思います。代表の伊藤さんが24歳ということですが、20代~30代前半の方が多いのでしょうか?
村井さん
PoliPoliのマネージャーは、私も含め全員20代です。エンジニアやクリエイターは30代が多く、平均年齢は30歳になります。また、公共政策コンサルタントとして、50代のメンバーもいます。
編集部
少数精鋭でもあるので、皆さんプレイングマネージャーとして何でもやるイメージでしょうか。
村井さん
プレイングマネージャーとしてやらなくてはならないことが多いですね。サービスの横展開がとても早く、複数あるそれぞれの事業チームにトップの配置が必要という状況です。未経験者がトップを務めるケースもあります。
失敗は責めずに、緻密に分析して次に生かす
編集部
未経験者がプレイングマネージャーを任されるとなると、時には失敗もあると思います。PoliPoliの皆さんはどうやってフォローをしているんでしょうか?
村井さん
経営陣が10代で事業をスタートし、失敗を繰り返して成長してきた経験があることや、正解が観測されていない政治・行政の領域に挑戦していることからも、失敗に対して強く責めるようなことはありません。
私たちは、「なぜ失敗したのか」の分析を緻密にすることを大事にしている会社です。ファクトをきちんと認識しアクションで失敗したケースであれば「それは成功するための失敗だよね」と、むしろ応援してくれます。
編集部
なぜ失敗が起きてしまったのかというファクトの認識・検証から遡って、「人にではなくシステムに原因を求める」という形でやっていらっしゃるということですね。
村井さん
つい最近も、新任のマネージャーが担当していたプロジェクトで、営業をかけるタイミングが後ろ倒しになっていたことがありました。このときは経営陣も含めて営業の協力をしたり、フォローできる人材に声をかけたりして、みんなで乗り切りました。
「会社のためだったらみんな当たり前に動くよ、協力するよ」というスタンスなので、責められることはまずないです。
編集部
すごく心強いですね。1人で課題を抱え込ませないようにするチーム感が伝わってきます。
「政治・行政の仕組みは変えられる」というポジティブなビジョンを原動力に
▲PoliPoliの社内ミーティングの様子。社会課題について関心が高いメンバーが多い。
編集部
引き続き、PoliPoliで働く皆さんについて伺います。どのようなバックグラウンドを持っている方が多いのでしょうか。
村井さん
広告代理店、スタートアップ企業、大企業、官公庁や、自身で起業した経験がある人など多種多様です。傾向としては、論文を書くことに抵抗がないアカデミックなタイプが多い印象があります。大学院の進学者も何人かいます。
編集部
やはり社会課題を解決するミッションを持つ企業なので、勉強熱心な方が多いんですね。
村井さん
そうですね。あとPoliPoliのカルチャーとして特徴的なのは、ポジティブな夢や希望を持っている人が多いことです。
編集部
ポジティブな夢や希望を持つというのは、具体的にはどのような考え方なのでしょうか。
村井さん
日本人が政治や行政をかたる場合、怒りや不満が原動力になっていることが多いと思います。でも、PoliPoli代表の伊藤は自分のネガティブな体験を語るよりも、「絶対に変えられるから、やってみよう!」と考えるタイプで、そこに共感しているメンバーが多いんです。
「私達なら変えられるよね。夢を持っていたいよね」という考え方は、PoliPoliのメンバーの特徴だと思います。
編集部
「夢を抱いて政治を考える」というポジティブさが、PoliPoliで働く皆さん、そしてユーザーが集まる理由のひとつなんですね。
学業と子育ての両立を模索した経験が、仕事のモチベーションに
▲PoliPoliも利用できるオフィスの共同スペース(©Masayuki Nakaya)
編集部
PoliPoliさんで働くメンバーのひとりとして、村井さんが入社したきっかけをお伺いしてもよろしいでしょうか?
村井さん
直接的なきっかけは、代表の伊藤のSNSで見た仲間募集の告知です。学生インターンとしてPoliPoliに入って、そのまま入社しました。
実は私は学生時代に結婚と出産を経験していて、ライフステージが変わるのが比較的早かったんです。やはり育児を経験すると、政治・行政との接点が自然と多くなるんですよね。
例えば保育園に入ることが難しいとか、学業と子育てを両立していく上で行政に対する葛藤を私自身が感じていたことが、PoliPoliに参画するモチベーションになった面はあります。
編集部
大変な状況だったからこそ、今の政治、行政体制を変えたいという動機になったんですね。今は、どういった業務を担当しているのでしょうか?
村井さん
メインの業務は、人事組織開発と採用・人材育成です。会計や財務的な分析も担当しています。
最初は、人事といっても労務手続きのフローを整える程度だったのですが、どんどん期待値が上がって「どんな人材を採用していくのか」「この組織の方向性をどうしていくのか」を考えるレベルになっていきました。
編集部
すでに経営層に近い目線を持って仕事をしていて、かなり濃度の濃い20代ですね。今も子育ての真っ最中だと思いますが、どのようなスタイルで働いていらっしゃるのでしょうか?
村井さん
私はリモートワークが多いですが、人事という立場上、対面でのコミュニケーションも大事なので週2回ほど出社しています。パートナーと半々ぐらいの割合で家事・育児を分担をしながら、保育園のお迎えなどができるようにスケジュールを工夫しています。
仕事と子育ての両立は、セルフマネジメントがカギ
編集部
村井さんは入社当時から仕事と子育てを両立されているとのことですが、他のメンバーでご家庭を持っている方はいらっしゃいますか?
村井さん
家庭を持っているメンバーは多いです。社内ではジェンダーリテラシーへの理解がありますし、多種多様な人がいて当たり前という前提なので、子どもがいることで不利益を被ることは全くありません。
編集部
仕事と子育ての両立がしやすい環境ということでしょうか。
村井さん
私個人のケースで言うと、やはりプレイングマネージャーとして働いている以上、土・日曜日や夜遅くに仕事をやらなくてはいけない局面もあるので、両立は簡単ではありません。けれども、それも全部含めてセルフマネジメントをしっかりしていくという方針ですね。
編集部
仕事と子育てを両立するセルフマネジメントについて、具体例を教えてください。
村井さん
例えばプライベートな事情で退勤時間に制限があるなら、チームのメンバーとスケジュールを調整しておく、ということです。プライベートな事情そのものが責められることはないですが、求められている仕事がある以上、システム的にマネジメントすることが必要です。
編集部
仕事に穴を開けない工夫が大事ということですね。子育てを特別視しないフラットな考え方なので、働いている皆さんが納得できるのではないかと思いました。
PoliPoliのミッションに共感し、社会を変えていきたい人を歓迎
▲PoliPoliのメンバーの皆さん。
編集部
最後に、この記事を読んでPoliPoliさんに興味を抱いた読者の方に向けて、メッセージをいただければと思います。
村井さん
PoliPoliがコミットしている政治・行政というものは、私達の生活や産業の根幹です。多くの人に影響するビジネスモデルだからこそ、多種多様な人に入ってもらえる組織にしていきたいと考えています。とはいえ、中立性が求められる部分も同時にあるので、バランスが難しいこともあります。
俯瞰的な視点を持ちながら、ミッションに共感をして、社会を変えていきたいと考える人が集まってくれるといいなと思っています。
編集部
会社としては、スタートアップの時期を越えて、横展開をどんどん広げていくフェーズにあると思いますが、どのような仕事のスタイルの方がPoliPoliさんにマッチするとお考えでしょうか。
村井さん
今のPoliPoliのフェーズでは、戦略策定から現場プレイヤーのレベルまで、泥臭く手を動かせる人が必要になっています。少数精鋭で仕事をしているので、自分で決めたら自分でやり通すスピード感も必要です。
編集部
PoliPoliさんの事業そのものが斬新なので、前例がない状況で進められる人が合いそうですね。
村井さん
もう、本当にわからない事だらけなんです(笑)。世界でも他に例がないと言っていいぐらい誰もやっていないビジネスモデルなので、不確実な部分はどこよりも多いのではと思います。逆に言えば、そこが魅力でもあります。
成功するか失敗するかわからないけれど、やり続ける。忍耐強く、不確実性を許容しながら進める力の強さは必要だと思います。
編集部
政治・行政に対するアクションを、ビジネスとして成立させていくPoliPoliさんのような企業は今までになかったと思います。PoliPoliさんの活躍によって、私達の社会の仕組みを根本から変えられる希望も感じました。本日は、ありがとうございました。
■取材協力
株式会社PoliPoli:https://www.polipoli.work/
採用ページ:https://polipoli.notion.site/PoliPoli-97249831893141dc968440811591fbe3