地域の課題に愚直に取り組む「おてつたび」の失敗を恐れないポジティブな働き方とは

企業の特色ある取り組みやワークライフバランス、スタートアップの成長や可能性などをお伝えしていくこの企画。今回は、地域の人手不足を地域との出会いに変えるマッチングサイト『おてつたび』を運営する株式会社おてつたびにインタビューさせていただきました。

株式会社おてつたびとは

株式会社おてつたびは、自治体や地域の一次産業、宿泊施設などにおける季節的・短期的な人手不足をきっかけに関係人口(※) を創出するマッチングサイト『おてつたび』を運営する企業です。
(※)特定の地域に継続的に多様な形でかかわる人のこと

マッチングサイト『おてつたび』は農繁期や繁忙期に、人手不足で困っている農家や旅館などの事業者と、地域に興味がある方をマッチングするウェブ上のプラットフォームを担っており、お手伝いと旅、“おてつたび”を通じて地域や事業者のファンを創出する活動をしています。

会社名 株式会社おてつたび
住所 東京都渋谷区代々木3丁目31-12
事業内容 全国各地の事業者と全国各地を巡りたい旅人をマッチングするBtoBtoCプラットフォームサービス『おてつたび』の運営
設立 2018年7月
公式ページ https://otetsutabi.com/
働き方 原則出社(フレックスタイム制、コアタイム:平日12時~17時)

2021年には受け入れ先地域が全国47都道府県に拡大、2013年3月からは『おてつたび』を利用する生産者の農産物を株式会社良品計画が運営する無印良品ECサイト内の産直ページ「諸国良品」にて販売する画期的なサービスがスタートするなど、成長著しい株式会社おてつたび。“誰かにとっての特別な地域を創出”をミッションに掲げ、さらなるサービス向上に取り組んでいます。

今回は、セールス、エンジニア、バックオフィスなどさまざまなポジションで活躍する同社の運営スタッフの仕事に向き合う姿勢や、ワークライフバランス、スタートアアップで働く意義などについて、代表取締役の永岡さんにお話を伺いました。

本日お話を伺った方
株式会社おてつたびの代表取締役・永岡里菜さん

株式会社おてつたび 代表取締役

永岡 里菜さん

事業者と旅人をマッチング。地域がしっかり評価される世界を創る

株式会社おてつたびのビジョン
▲“日本各地にある本当にいい人、いいもの、いい地域がしっかり評価される世界を創る”をビジョンに掲げる株式会社おてつたび(公式サイトから引用)

編集部

最初に、おてつたびさんの事業内容についてお聞かせいただけますでしょうか。

永岡さん

“おてつたび”とは、お手伝いと旅を掛け合わせた造語です。当社は種まきや収穫、出荷などの農繁期を迎える農家さんや、ゴールデンウィークや年末年始などに繁忙期を迎えるホテルや旅館、地域イベントに人を呼び込みたい自治体と、地域に興味がある方々をウェブ上でマッチングするプラットフォーム『おてつたび』を運営しています。

ビジョンに掲げているのは、“日本各地にある本当にいい人、いいもの、いい地域がしっかり評価される世界を創る”ことです。また、それを実践するために「誰かにとっての“特別な地域”をつくる。」などのミッションも設定しています。

株式会社おてつたびのミッション

永岡さん

大都市や観光地以外にも、日本各地には魅力あふれる地域がたくさんあります。しかし、その情報が行き届かないがゆえに“知らないから行かない”という機会損失が生じています。

当社では自治体や地域の事業者様の協力を得ながら、各地域の魅力をさまざまな角度から知るきっかけを創出すると共に、訪れた方にとって特別な地域をつくり、“気が付いたらその地域のファンになっている”そんな世界を創ることを目標にしています。

編集部

地域の魅力を創出しているおてつたびさんですが、事業者、地域、ユーザーそれぞれに笑顔をもたらすおてつたびさんのビジネスモデルそのものが、魅力にあふれているんですね。

ほぼ口コミだけで広がるネットワークが業績アップを後押し

編集部

2018年の設立以来、売り上げ、認知度共に目覚ましい成長を遂げているおてつたびさんですが、そこにはどんな理由があるとお考えですか?

永岡さん

当社の事業の特徴として、お手伝いをする方に事業者様から報酬が支払われることが挙げられます。事業者様は人手を確保できると同時に、お手伝をきっかけに地域の魅力を知ってもらえることで関係人口を創出することができます。

お手伝いと旅、まさにこの2つのキーワードが事業者様とユーザー様の潜在的ニーズを捉えたのではないかと思われます。

マッチングサイト「おてつたび」のサービス概要

永岡さん

現在、全国970件以上の地域事業者様とつながり、『おてつたび』の登録ユーザー数は約3.6万人(※)にまで拡大しているのですが、当社では広告宣伝費を一切かけていないので、口コミとメディアを見て登録してくださる方がほとんどです。(※)2023年5月8日時点

それ以外ではセールス担当による地道な新規開拓と、一次産業と繋がりが強い各地域の農協さんと一緒に説明会を開催させていただいていることが、売上好調の理由と自負しています。

マッチングサイト『おてつたび』のコンセプトやサービス内容を知り、参加して良かったという声が徐々に広がっていることに日々感謝しながら、より高い満足度が得られるサービスを提供できるよう、スタッフ一同尽力しています。

労働力不足解消&経済効果をもたらした北海道平取町の事例

編集部

主に口コミだけで『おてつたび』のユーザーが増えているというのは、本当に良いサービスを提供されているからだと思います。具体的な事例をぜひご紹介いただきたいです。

永岡さん

地域の労働力不足解消をフックに経済を回すロールモデルとして挙げられるのが、人口5,000人ほどの農村地域・北海道平取町のブロッコリー農家さんのおてつたびです。

広大な大地を持つ北海道では、大規模な圃場(ほじょう)でブロッコリー栽培をされる農家さんが多いため、収穫時期にもなると地元採用だけでは人が足りず、『おてつたび』で80名を募集しました。

おてつたびの受け入れ先でブロッコリーの収穫作業を手伝っている様子

永岡さん

新千歳空港から車で1時間ほどの場所に位置する平取町は交通の便が良いとは言えず、町外や道外から人を確保するのが難しい地域です。ところが、『おてつたび』には定員を超える応募があり、約3ヶ月の収穫期を無事に乗り越えられたと、農家さんから喜びの声が届きました。

編集部

人口5000人の街に若い方が80名も訪れるとなると、経済効果も大きそうですね。

永岡さん

おっしゃる通りです。高齢化が進む平取町に毎週のように大きな荷物を抱えた若い方がやってくる光景を、最初は不思議に思われた方も多かったようですが、日常に若者がいることで町に活気が生まれ、町内にあるコンビニエンスストアは、売り上げが伸びたと聞いています。

コンビニエンスストアの店長さんが積極的に声をかけてくれたこともあり、参加したユーザーさんは“よそもの”意識を持つことなく、楽しく過ごすことができたそうです。受け入れ先の農家さん、平取町、そして『おてつたび』のユーザーさんそれぞれに効果をもたらしたこのロールモデルを、全国に広げていきたいと考えています。

編集部

高齢化や過疎化が進む地域の活性化に貢献できるおてつたびさんの事業は、社会貢献やまちづくり、観光業・旅行業に興味がある方がやりがいを持って働ける仕事ということがわかりました。

多様性を持ったメンバーが、それぞれの視点でサービス向上に尽力

株式会社おてつたびの明るいオフィス
▲意見の提案や議論の場では役職を取り払い、全メンバーがフラットな状態で意見交換をしている

編集部

メンバーの8割が地方出身ということですが、『おてつたび』を運営する上で地方で過ごした経験が活かされることはありますか?

永岡さん

私の出身地は三重県尾鷲市なのですが、漁業や林業以外の産業や有名な観光地はありません。だからと言って訪れる価値のない場所では決してなく、自然にあふれた魅力あるまちなんです。おてつたびを設立した背景には、同じような課題を持つ地域にスポットライトを当て、魅力を掘り起こしたいという思いがあります。

おてつたびの受け入れ先で養殖ワカメの収穫を手伝っている様子
▲株式会社おてつたびのメンバーは、実体験を『おてつたび』のサービスに活かし、カスタマーファーストを実践している

永岡さん

地方出身のメンバーは私と同じ思いを抱く方が多く、徳島出身で実家が兼業農家を営むエンジニアのメンバーは、幼い頃に当たり前のように関わっていた農作業の楽しさや、新鮮な食べ物の美味しさを実体験として知っています。

人口流出による過疎化や少子高齢化など地域が抱える課題を理解すると同時に、自身の原体験を若い世代に知ってほしいという思いから、当社のプロジェクトに参画してくれました。

地方出身者に限定して採用しているのではなく、メンバーの中には首都圏や大都市出身の方もいます。その地域にとっては当たり前のことでも、都会から見ると価値あるものだったり、魅力にあふれたものがあります。このように、さまざまな視点から地域の財産を掘り起こせることも当社の強みの1つです。

また、業務の効率化のために部署や役職は存在していますが、意見の提案や議論を行う場では立場や役職は関係なく、フラットな意見交換ができるのも当社の特徴です。

編集部

原体験をサービスに活かすことは、自信にも繋がっていきますね。おてつたびさんのメンバーが生き生きとしている理由がわかったような気がします。

失敗を恐れないマインドを支える6つのバリュー

おてつたびの受け入れ先でミニトマトの収穫を手伝っている様子
▲株式会社おてつたびでは、人手不足を地域との出会いに変えることで地域活性化支援に取り組み、持続可能な社会の実現を目指している

編集部

日本各地にある素敵な地域や事業者に出会えるキッカケ作りをされているおてつたびさんですが、メンバーが共有している価値観(バリュー)があればぜひ、こちらも紹介いただきたいです。

永岡さん

当社はバリューとして、「愚直に、誠実であれ」などの6つを掲げています。

株式会社おてつたびの6つのバリュー

永岡さん

6つのうち、特に重要としているのが“行動家であれ”と“社会起点であれ”の2つのメッセージです。新しいビジネスモデルを創出している当社のフェーズは、不確実性が高いことであったり、正解がわからないものをつくっているところにあります。

仮説を立て、考えることに時間を割くことは大切ですが、やってみないとわからないことってありますよね。失敗を恐れずアクションを起こすこと、その上でPDCA(※)を回すといった意図が“行動家であれ”というメッセージには込められています。
(※)PCDA:Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)Action(改善)を実行し、結果を評価して改善につなげること

2つ目の“社会起点であれ”には、利益追求だけでは持続可能な社会を創ることは難しいという意味です。利益追求以上に魅力ある地域社会をつくることに尽力し、事業主様とユーザ様の双方がハッピーになるビジネスモデルを創造していくことを共通の価値観として大切にしています。

編集部

“行動化であれ”を実践しているメンバーの具体的な仕事への向き合い方や仕事術についても紹介いただけますか?

永岡さん

日々、トライ&エラーを繰り返しながら仕事に向き合っている広報担当のメンバーがいます。書籍などから着想を得て、思いついたアイデアをすぐに実行するアグレッシブさを持っており、仮説を立てながらPDCAをうまく回しているんですよね。

当社のように、まだ誰も経験したことのない領域に挑戦することが多いスタートアップは、時に失敗をすることがあります。でも、行動しなければ何が正解かもわかりませんよね。失敗とは、想定外のことが起きた時、対策をせずに放置することと私は考えます。

失敗から学び、次にどう活かしていくかが大切であり、失敗をすることは正解に近づくために必要な行動です。まさにそれを実践しているのが、先ほど紹介した広報担当のメンバーです。失敗を恐れず果敢にチャレンジをする仕事ぶりは、他のメンバーにとっても良い刺激になっています。

編集部

失敗を恐れず、そこから得た学びを次に活かすことを大切にされていることがよくわかるエピソードですね。

ワークライフバランスに対応した働き方を構築中

編集部

おてつたびさんではフレックス制度を導入し、コアタイムを12時〜17時としているとのことですが、原則出社にしている理由について教えていただけますか?

永岡さん

原則出社の1番の理由はコミュニケーションです。設立から5年目を迎える当社ですが、まだサービスを構築しているフェーズにあります。

当社はカスタマーファーストの一環として事業者様、ユーザー様からアンケートを常に取っており、毎週、社員全員で回答内容を見ながらサービスの改善点について話し合いをしたり、実際にヒアリングをさせていただくことでお客様の要望を正確にキャッチし、サービスに反映することを心掛けています。

今後、組織が大きくなるにつれ、メンバー全員でアンケートを振り返ることは難しくなってくることが予想されるので、現段階では全員が出社し、意見を交わしながらサービス向上につなげていくことを大切にしています。

編集部

産休・育休を経て復職された方や、現在子育て中という方はいっらしゃいますか?その場合、どのようなワークライフバランスになっているのかご紹介ください。

永岡さん

1年ほど前に出産をし、産休を経て復職したメンバーが1名おり、現在はフルリモートで業務にあたっています。

今後は業務のフェーズが次の段階に進むにつれ、働き方にも多様性を持たせ、さまざまなワークライフバランスに対応できる組織づくりや、結婚や出産、育児などライフステージの変化に合わせた時短や育児休暇といった制度を整備していく方針です。

編集部

ライフステージの変化に応じた制度をしっかり整備することで、若い世代も安心して業務に邁進することができますね。

求めることはただ1つ。「おてつたび」のビジョンに共感できること

株式会社おてつたび、代表取締役CEOの永岡里菜さん

編集部

さまざまなバックボーンを持ったメンバーが活躍しているおてつたびさんでは、事業拡大に伴い積極的に採用をされるとのことですが、求めるスキルや人物像についてお聞かせください。

永岡さん

エンジニアとしてのスキルや、広報、セールスの経験以上に当社が重視するのが、これまでお話したビジョン、バリューに共感できることです。一次生産者の人手不足解消、地域の活性化支援、持続可能な地域社会の実現を誰よりもまっすぐ誠実に、人や地域の持つ可能性を信じ、愚直に社会課題に向かい合う方を歓迎します。

業務拡大に伴い、当社ではセールス、エンジニア、人事などさまざまなポジションの募集をしていますが、“自分のスキルが活かせるポジションが分からない”、“会社に貢献ができればどのポジションでも頑張れる”、“仕事内容を理解した上でポジションを選びたい”という方もいらっしゃるでしょう。

そのような方は入社後、“オープンポジション”に所属いただき、仕事をしながら自分に適した仕事を見つけていただきます。

編集部

おてつたびさんのビジョンやバリューに共感し、入社を志望しても、自分がどんなポジションで活躍できるかわからない方にとって、オープンポジションは自分と向き合える場所なんですね。

意思決定の数が自己成長につながる。興味がある方はぜひ応募を

編集部

最後に、スタートアップで働く意義について、永岡さんの思いをお聞かせください。

永岡さん

当社のように、新しいビジネスモデルを開発・運用するスタートアップで働く意義として、意思決定ができる機会が多いことが挙げられます。

自己成長とは自分がどれだけの数の意思決定をし、その成果を理解して次につなげていくことだと思います。そういう意味では当社はまだ10名ほどの小さな組織なので、さまざまな経験を積むことで成長できる環境と言えるでしょう。マニュアルがないと不安になり、それがストレスに感じてしまう方は当社での仕事は難しいかもしれませんね。

当社の業務はマッチングプラットフォームを提供するサービスとして、プロダクトの進化・改善が満足度に大きく関わります。プロダクト改善案などを常に議論し、地域の活性化や旅に興味がある方が仲間になっていただけたら嬉しいです。

編集部

失敗を恐れず、アグレッシブに行動するおてつたびさんのメンバーと共に働くことで、自己成長ができ、さらには日本の人口減少地域が存続できる未来を創造できることがわかりました。また、おてつたびさんの活動を知ることで、真の社会貢献のあり方を教えていただいたように思います。

本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。

■取材協力
株式会社おてつたび:https://otetsutabi.com/corp
採用ページ:https://otetsutabi.notion.site/7312d1ad95d043a7a824752a389dc111