100周年を迎えた「静岡県沼津市」のワーク・ライフ・バランス推進とまちづくり

働く人たちのワーク・ライフ・バランスを大切にし、若手が活躍できる職場づくりを進めている企業や自治体にインタビューする本企画。今回は静岡県東部にある沼津市役所にお話を伺いました。

海と山に囲まれた、豊富な観光資源を持つ「静岡県沼津市」

沼津市は静岡県の東部、伊豆半島の付け根に位置する市です。富士山や駿河湾、狩野川など恵まれた自然環境と、大都市圏に近い地理的優位性を有し、静岡県東部の中心都市としての機能を果たしています。

沼津港で漁れる新鮮な魚介類や温暖な気候で育まれるお茶、みかんをはじめとした農作物など、地産の食べ物が豊富です。また、スキューバダイビングや釣りなど、海のアクティビティも充実しており、様々なツーリズムを創出しています。

自治体名 静岡県沼津市
本庁舎住所 静岡県沼津市御幸町16-1
公式ページ https://www.city.numazu.
shizuoka.jp/index.htm

沼津市は静岡市、浜松市についで1923年に誕生し、2023年7月1日には市制100周年を迎え様々な記念事業などの取り組みが行われてきました。次の100年へ踏み出すため、魅力あふれるまちづくりの推進や市民の生活を支える市制運営に取り組んでいます。

また、市民サービスの向上・市役所の活性化に繋げるため、業務の効率化や働き方の多様化、若手活躍の機会創出など、職員のワーク・ライフ・バランスも推進しています。

今回は沼津市職員さんの働き方や、若手の方々の活躍について沼津市役所の佐藤さんにお話を伺いました。

本日お話を伺った方
インタビューに応じてくれた、沼津市の佐藤さん

沼津市役所
総務部人事課主事

佐藤さん

シフト制だから、自分の都合に合わせて働く時間帯を選べる

沼津市庁舎の外観写真
▲沼津市庁舎の外観

編集部

職員の方々の中には、お子様がいらっしゃったり、ご家族の介護をされていたりという方もいると思います。職員の皆さんが働きやすいようにするための制度や取り組みがあれば、ぜひお伺いしたいです。

佐藤さん

沼津市ではシフト勤務という制度がございます。基本的には正規職員をはじめ、通常勤務(8時30分~17時15分)している方が対象の制度です。

通常の勤務時間は8時30分〜17時15分ですが、それを8時〜16時45分としたり、9時〜17時45分としたり、働く時間を選ぶことができます。

編集部

保育園のお迎えのために朝早く来て夕方は早く帰る方もいれば、夜に会議があるので朝はゆっくり出勤する方など、ご家庭や仕事の状況に合わせて柔軟に対応できているということですか?

佐藤さん

そうですね。ただ、より働きやすい職場環境を目指して、現在、フレックス勤務の導入を検討しております。シフト勤務は選択できる勤務時間が5パターンほどとなっており、その5パターンの中から、ご自身の都合の良いシフトを選んでもらう形です。

一方、フレックス勤務は、職員が各勤務日の勤務時間を自分で決めることができるので、生活と業務との調和を図りながらより効率的に働くことができます。

編集部

今後ますます子育てと仕事を両立させることができるようになりそうですね。

佐藤さん

特に子育てに関しては、女性職員の育児休業はもちろんのこと、男性職員の育児休業にも力を入れており、2023年度は9割の男性職員が育児休業を取得しています。性別問わず、職員の誰もが「育休は取るのが当たり前」と思えるような雰囲気づくりに力を入れています。

働きやすい環境に向けて、DX化の土台作りなどを推進

編集部

繁忙期には他部署から応援が来て業務アシストをしてくれる、といったこともあるそうですが、具体的にどのような形で運用されているのでしょうか?

佐藤さん

よくあるのがイベント関係の業務ですね。イベント実施時は担当部署だけに限らず、多くの職員の協力を得ないと実施できないケースがあります。

そういった場合には、担当部署の職員だけではなく、業務アシストを活用し、全庁的に部署の垣根を越えて、協力者を集うような形で運用しております。

編集部

皆で助け合う、という姿勢が自然と生まれそうなとても良い制度ですね。

さて、沼津市さんはデジタル化も進められていると思いますが、ICT化で業務内容や効率、また市民へのサービスなど変化は感じられていますか?

佐藤さん

今はまだ準備段階ではありますが、ICT化・DX化を促進させるために地盤を固めているというようなイメージですね。

ただ、コロナ禍をきっかけにどの会社さんも出勤率を減らす取り組みをされているように、沼津市役所でも在宅勤務(テレワーク)に特に力を入れるようにしています。

編集部

コロナ禍をきっかけに在宅勤務(テレワーク)に力を入れたり、フレックス勤務導入を検討されたり、職員の皆さんが働きやすいように、これからDX化含めてどんどん変わっていこうと取り組んでいらっしゃるのですね。

市のビッグイベントを若手がメインで担当することも

職務中の沼津市役所職員の写真

編集部

若手の職員の方が中心のプロジェクトであったり、庁内で活躍をしている若手職員さんであったり、具体的なエピソードがあればお聞かせいただきたいです。

佐藤さん

例年、7月の最終土日に行っていて、両日で大体30万人程度が訪れる、沼津市のビッグイベント「沼津夏まつり・狩野川花火大会」があります。本イベントは本市の産業振興部、特に観光戦略課の職員が携わっており、若手職員も活躍しております。

こうしたお祭りには市職員は関係ないと思われがちです。しかし、花火屋さんとの調整や近隣住民への事前のご案内、あとは川を活用して花火を打ち上げるため、国土交通省との事務手続きなど、外からは見えないですが市の職員が大きく関わっています。

2023年度は、入庁して4年目の若手職員が主担当としてイベントに携わっていました。その職員は、入庁して3年は別の課にいて、観光戦略課に異動した年に担当したので、若手活躍のいい例ではないでしょうか。もちろん、一人だけではできないので、チームで支えながら進めていきますよ(笑)。

編集部

市民の皆様が楽しむイベントの裏には、職員の皆様の存在があって開催できているということですよね。

佐藤さん

そうですね。やはり就職フェアなどのガイダンスを通しても、「公務員=デスクワーク」というイメージが強くあると感じています。

もちろん、そのイメージは間違いではなく、実際に席に座ってデスクワークをしたり、市民の方の対応をしたりといった業務も多いと思います。

ただ一方で、外部の方と関わったり、実際に現場に出たりという仕事もしていることはぜひ知っていただきたいですね。

編集部

花火大会で活躍された職員の方を例にすると、電話やメールなどデスクワークのみならず、住民の方々とお話ししたり、現地に赴いて運営したりなど現場仕事も職務に含まれているのですね。

若手の提案も聞き入れ、反映されやすい風土がある

編集部

部署異動はどれくらいのペースで行われているのでしょうか?

佐藤さん

沼津市の場合ですと、基本的に3年程度の頻度で部署を異動します。

私を例にすると、2024年4月1日で入庁9年目、現在は3課目です。1課目が子育て支援課という保育園の入所手続き等を行う部署、2つ目が観光戦略課、そして現在は人事課に所属しています。

編集部

若手の方でもいろいろな部署に所属されることで、経験を積むことができているのですね。若手の職員さんの成長や活躍を後押しするための取り組みはありますか?

佐藤さん

一方的に上司から「これやってね」と指示されるだけではなくて、部下から「こういうのはどうですか?」と提案できる環境です。提案の内容が良ければ実際に採用されることもあります。

例えば、新型コロナウイルスの影響で市内飲食店の売り上げが落ち込むなか、少しでも市内飲食店が盛り上がるようにと、1日あたり数店舗を市役所1Fピロティに毎日招き、テークアウト販売を実施しました。実施にあたっては、若手職員が企画段階から携わりました。

編集部

積極的に意見を出せるような風土があるということですか?

佐藤さん

そうですね。一方的にやることを押し付けられるのではなく、若手の意見も聞き入れてもらえて、実際に反映されやすいので、自然とどんどん意見を出そうという姿勢になるのかなと思います。

以前所属していた観光戦略課も、現在の人事課も、上司に相談しやすい環境かつ、自由にやらせてもらえる環境です。これは非常にありがたいことだと感じています。

編集部

自分の提案をちゃんと聞いてもらえて、実現することもあるとなると、モチベーション向上や働きがいにも繋がりますね。

まちづくりのポテンシャルを秘めた”沼津市”の魅力とは

沼津港と大型展望水門「びゅうお」の航空写真
▲沼津港と大型展望水門「びゅうお」

編集部

沼津市の職員として働くにあたって、沼津市の暮らしやすさや魅力が気になっている方も多いと思います。佐藤さんの感じる魅力を教えてください。

佐藤さん

沼津港があるので漁業が盛んだったり、富士山をはじめとした豊かな自然があったりと、たくさんの魅力があります。

また、首都圏からおよそ100キロ圏内で、新幹線を使えば片道1時間ほどという、大きな強みもあります。そういった観光分野での魅力や強みを多く持ち合わせているまちです。

沼津市は「まちづくり」という観点で大きなポテンシャルを秘めていると思います。職員としてまちづくりに関われるのも、魅力の一つのように感じます。

市制100周年を迎え、様々な記念事業を実施

編集部

2023年に市制100周年を迎えられ、記念事業をされていました。最近の特徴的な取り組みがあれば教えていただけますか?

佐藤さん

市制100周年ということで、市をあげて様々な取り組みを行っています。

例えば、市役所の横に体育館を建設し、2023年3月1日にオープンしました。オープンを記念したイベントでは、県内スポーツチームの試合や、メダリストの方などを講師にお呼びしたスポーツ教室を実施しました。

現在もバレーボールやバスケットボールのプロチームの試合会場として選ばれることもあり、広く活用されています。

そのほか、沼津に縁のある著名人の方に、市のPR大使への就任をお願いしています。「市制100周年記念燦々ぬまづ大使」には、間寛平さん、磯村勇斗さん、藤木由貴さんを任命させていただき、認証式も開催しました。

編集部

そういった大きなイベントのときにも、若手の職員さん含めて全職員が一丸になって、普段のお仕事と離れたところで力を発揮されているのですね。

採用も全職員一体となって取り組む雰囲気がある

沼津駅前の写真
▲沼津駅前の様子。奥に富士山が見える

編集部

続いて、採用に関して伺っていければと思います。まず、どういう職員さんが多いか、もしくは職場の雰囲気はどんなものか、率直に感じていることがあったら最初に伺いたいです。

佐藤さん

職員採用に関しましては、職員採用プロジェクトチームが作られました。職員採用のPR活動等、部署の垣根を越えて取り組んでいます。

採用に限らず「この仕事は担当の人だけでやる」ということはなく、上司も部下も含めて、また部署の垣根を越えてみんなで一緒に仕事に取り組んでいるイメージがあります。個人的にとても風通しの良い職場です。

編集部

職員の皆さんで課題解決に向けて検討したり、部署を越えて話し合ったり、オープンな職場ということですね。

佐藤さん

そうですね。どういったPRをしていくか、効果的な手法はなにかなど、全庁で協力してやっています。

編集部

民間企業から転職して入庁された方もいらっしゃるんですか?

佐藤さん

事務職、技術職、免許資格職それぞれに民間経験者はおります。

民間企業で働いて培った経験やスキルを生かして、市民の方に貢献できることに働きがいを感じている職員もいるようです。

昨今、どの自治体さんも民間さんも、特に土木系をはじめとする技術職の採用に苦慮しているケースがあります。ですので、沼津市役所でも大学卒に限定はせずに、経験者枠で転職組の方も受け入れています。

学校訪問など、採用強化に向けた取り組みを実施中

編集部

採用サイトに「職員採用強化中」とありますが、採用についてどんなところに力を入れていらっしゃるのでしょうか?

佐藤さん

就職フェアには以前より参加させていただいておりますが、2022年度からはリクルート活動の一環として学校訪問も行っています。

特に技術職の方の母校を中心に、職員が実際に出向いております。今までで全国32校に訪問させていただきました。

実際に職員が学校訪問したり、学校の就職課からメールを一斉送信したりして、大体30万人の方と交流できる機会を持てました。

編集部

職員さんの母校となると、学生の皆さんもOBが働いている職場や仕事に興味を持つきっかけになりますよね。実際に、応募されてきた方もいらっしゃいますか?

佐藤さん

はい。学校訪問に行った先の学生が応募してくれたり、「ホームページを見て応募しました」と面接の際に話してくれる方もいたりしました。

採用申込状況でいいますと、ありがたいことに2022年度より応募者数も増えていることから、非常に効果的なPRだったと実感しています。

部署ごとでインターンを募集。インターンから応募・採用の実績も

編集部

沼津市さんでは一般企業のようにインターンを実施されていますが、そこから採用に繋がったケースもあるのでしょうか?

佐藤さん

あります。2023年度の試験を受けていただいて内定した方の中には、インターンシップを経て応募している方がいらっしゃいました。

沼津市では、基本的に夏季に1日〜5日間程度のインターンシップを行っています。民間企業とは違う点として、インターン=採用ではなく、別途試験を受けていただく必要がありますので、仕事研究の一環としてインターンを希望する学生が多い印象にあります。

編集部

インターンではどういった体験ができるのでしょうか?

佐藤さん

部署ごとに募集をかけておりまして、時期や期間、体験できる業務内容がそれぞれ異なります。

2023年度のインターンを例にすると、観光戦略課は8月下旬の3日間で観光施設の管理運営補助を体験していただいたり、緑地公園課では7月下旬〜9月下旬の1週間程度で公園管理視察や樹木管理軽作業を体験していただいたりしました。

人数に限りはありますが、受入部署であればどの部署でもインターンに参加できるのは、沼津市の魅力の一つだと思っています。

編集部

インターンで、自分の生まれ育った土地もしくは縁のあるところで、市民の皆さんに貢献していく仕事を感じるっていうのはすごく大きいですよね。

佐藤さん

そうですね。2023年度は、事務職と技術職合わせて、約60名程度のインターン生を受け入れました。そこから採用に至ったケースもありますので、やはりインターンシップを実施することは学生にとっても有意義なものなんだなと感じております。

市内外問わず沼津に関心がある人に応募してほしい

編集部

それでは最後に、この記事を見て沼津市職員として働くことに興味を持った方に向けて、メッセージをお願いします。

佐藤さん

沼津市としましては、「沼津市で働きたい」という熱い気持ちを持っている方には当然ご応募いただきたいですが、市内外問わず多くの方にご応募いただきたいと思っています。

沼津市を知らない方でも業務を通して市のことを知ることができるので、「県外だから、市外だから申し込まない方がいいかな?」と思っている方も、遠慮なく応募していただければ嬉しいです。

働いていく中で困ったことがあっても、上司をはじめ周囲がサポートにあたる環境があります。もちろん試験はありますが、少しでも沼津市にご興味があるのであれば、お気軽にご応募していただきたいです。

編集部

市街地の整備事業やスマートシティ実現への取り組みなど、次の100年に向けてまちづくりの施策を進められていらっしゃいます。そのまちづくりのポテンシャルの高さに「まちづくりに関わってみたい!」と思う方も多いのではないかと思います。

公式サイト等に募集状況が掲載されているので「沼津市で働きたい」という思いがある方は、ぜひチェックしてみてはいかがでしょうか。

本日はありがとうございました。

■取材協力
静岡県沼津市:https://www.city.numazu.shizuoka.jp/index.htm
採用ページ:https://www.city.numazu.shizuoka.jp/saiyou/