株式会社NABLA Mobilityの航空業界にもたらす変化とチームカルチャ―

業界をリードし、グローバルな成長を続ける企業に迫るこの企画。今回は、航空会社の運航最適化及び脱炭素化をサポートするソリューションを提供する株式会社NABLA Mobilityにインタビューを行いました。

航空業界の業務最適化に貢献する株式会社NABLA Mobility

株式会社NABLA Mobilityは、2021年4月に創業した航空テック企業です。データ分析やAI/ML(※)を活用したソフトウェアの設計・開発・販売を通じて、航空業界の運行最適化や脱炭素化に貢献しています。
(※)AI/ML:人工知能(Artificial Intelligence)および機械学習(Machine Learning)

株式会社NABLA Mobilityは創業時からグローバル市場を目指しており、日本だけでなく多様な国籍のメンバーによるソフトウェア開発を進めています。2023年6月には、世界最大の航空宇宙機器開発製造会社ボーイングを始めとする投資家から、総額約3.2億円の資金調達を達成しています。

会社名 株式会社NABLA Mobility
住所 東京都千代田区飯田橋4-8-6日産ビル511
事業内容 AIや機械学習を活用した、航空会社の運航最適ソフトウェアソリューション”Weave”の研究・開発・提供
設立 2021年4月
公式ページ https://www.nabla-mobility.com/
働き方 ハイブリッド勤務(出社+リモートワーク)

今回はそんな株式会社NABLA Mobilityの成長の背景や会社カルチャーなどについて、事業開発・コーポレートマネージャーのイ・サンヨンさんにお話を聞かせていただきました。

本日お話を伺った方
株式会社NABLA Mobilityの事業開発・コーポレート/マネージャーイ・サンヨンさん

株式会社NABLA Mobility
事業開発 コーポレート マネージャー

イ・サンヨンさん

航空会社の運行を最適化する「空のスマートカーナビ」

編集部

まずは簡単に、NABLA Mobilityさんの事業内容を教えていただけますか?

イさん

NABLA Mobilityは2021年4月に創業した、航空会社向けのソフトウェアソリューションを提供するテクノロジースタートアップです。我々が開発しているのは、飛行機の運航に対する最適化のサポートで、具体的には飛行機が飛んでいる最中に起こる不確実性を予測し、それを最適に避けることができる、いわゆる「空のスマートカーナビ」のようなものを作成し、提供しています。

現在着目しているのは「乱気流」です。乱気流を避けながら、かつ燃費の良い航路を飛べるようなソリューション開発を進めていて、航空会社への導入の話も進めております。

特に、最適化を行うソリューションに必要な予測モデル、および最適化モデルを機械学習や人工知能といったテクノロジーを駆使して、自社開発しております。私たちのソリューションはこれら技術を駆使して、パイロットが飛行中により効率的に意思決定を行えるように、その意思決定をサポートする機能を担っております。

編集部

素人目線での疑問で恐縮なのですが、そもそも天気予報は100%当てることはできないと言いますよね。NABLA Mobilityさんで行っている乱気流の予測は100%当てることは可能なのでしょうか。

イさん

もちろんあくまで予測なので、「100%ここに乱気流がある」という予測は理論上できません。いかに予測の精度を上げるのかという点がカギとなります。

当社は、機械学習や人工知能といった最先端のテクノロジーを活用して、より高精度かつ高解像度の予測と最適化モデルを組み合わせており、そこに強みがあります。

世界的に競合他社の少ない、唯一無二の事業を展開

株式会社NABLA Mobilityの事業イメージ▲国内外含めて競合のいない無二の事業を展開するNABLA Mobilityさん(公式サイトから引用)

編集部

かなり先進的な事業に取り組んでいらっしゃると思いますが、NABLA Mobilityさんと同じような事業を行っている会社は日本国内にありますか?

イさん

同じ事業を行っている会社は、僕たちの知る限りアジア圏でもNABLA Mobility以外にありません。アメリカやヨーロッパに範囲を広げても、全く同じ事業を行っている会社は存在していない状況です。

編集部

それは先ほどお話されていたように、事業の専門性が高いからなのでしょうか?

イさん

それもあると思います。それと同時に、最先端技術を活用してパイロットの意思決定をサポートするというソフトウェア自体がまだまだ世界的に見ても黎明期な市場で、各社がそれぞれ注力する領域が異なるという面もあります。

我々は飛んでいる最中のパイロットの意思決定サポートにフォーカスしてますが、会社によっては、ディスパッチャー(運行管理者)にフォーカスしているところもあります。そういう意味で、似たようなアプローチを取っている会社は海外にあるものの、同じ製品で全く同じ提供価値で勝負する競合他社はいない状況となっています。

編集部

なるほど。業界で唯一無二の価値を提供されているんですね。

航空業界の抱える課題への気づきが、創業のきっかけに

編集部

国内にも海外にも競合の少ない独自性のある事業を始められたのには、どのような経緯があるのでしょうか。

イさん

NABLA Mobilityの創業者の田中がMITの大学院生のときに聞いた授業の内容が、NABLA Mobility設立のきっかけになっています。それは航空業界の実情に関するものでした。というのも、機体だったり製造で用いられる素材には最先端のテクノロジーが用いられているにもかかわらず、実際に飛行機を飛ばす段階になると、実はマニュアルに基づく現場のノウハウに大きく依存しているんです。

その話が田中の記憶に残っており、いざ起業をするとなったとき、そこに効率化できる余地があるのではないかと考えました。特に、航空業界の脱炭素のニーズが強い今、効率化を行うことで脱炭素にも寄与できることの社会的意義の強さも一因となっております。

加えて、先ほども申し上げた通り、同じ事業を行っている会社が世界的に見ても少なかったということもあります。スタートアップでやっていくにあたり、業界における競争優位性を築ける領域であることも理由の一つになり、今の事業での起業に至りました。

業界のニーズに高い技術力で対応し成長したNABLA Mobility

株式会社NABLA Mobilityの事業イメージ
▲業界の求める課題に対応するソリューションを、高い技術力で提供(公式サイトから引用)

編集部

NABLA Mobilityさんでは2023年6月には総額約3.2億円の資金調達も達成するなど、短期間で大きな成長をされていますよね。この成長の一番の要因は何だとお考えですか?

イさん

大きく2つあると思います。まず1つ目は、NABLA Mobilityが提供するソリューションが、この業界で求められているものに対応できているという点です。

例えば乱気流の予測で言うと、グローバルで見ても乱気流の予測に取り組んで一定の成果を出している企業はありません。結果、業界ではどのように乱気流を見ているかというと、これまでパイロットが飛んでいる最中に見つけた乱気流のレポートを集めて履歴の一覧表を作ったり、さまざまな気象予報情報を基に、パイロットが経験・ノウハウに基づいて判断したりしているんですね。

特に乱気流予測でいえば、実際に乱気流が発生するのにはさまざまな要因があるのですが、限られた要因しか考慮していないために、精度の低い予測に頼らざるを得ない現状があるんです。当社の予測モデルは、発生原因を包括的に考慮することで予測精度を高めております。

乱気流予測同様に、当社が開発している他の技術も全て、業界が求める課題をきちんととらえるために開発されていおります。このように業界の課題からスタートしたソリューションを提供しているというのが、NABLA Mobilityの成長の要因になっていると思います。

そして当然、そこに対して高い技術力も伴っています。技術力が認められているからこそ、ボーイングをはじめ、多くの出資をいただくことができたと考えています。

航空業界が抱える難題突破に意欲を持つ、優秀なチームメンバーが成長を加速

株式会社NABLA Mobilityが提供する価値
▲NABLA Mobilityさんの事業が提供する価値に興味を持ちジョインするメンバーが多いそう(公式サイトから引用)

編集部

NABLA Mobilityさんの成長のもう1つの要因はどのようなことですか?

イさん

高い技術力を支える優秀なチームメンバーが集まっていることです。NABLA Mobilityは日本の会社ですが、今現在日本人は4人のみで、カナダやフランス、ニュージーランドといった多国籍のメンバーが揃っています。

そしてみんなそれぞれの領域で高い専門性を持っているのが特徴です。そんなメンバーがそれぞれの領域を支えながら、密に協業して事業を進めていることが、成長の大きな要因だと考えています。

編集部

メンバーの皆さんは、どのようなところに興味を持ってNABLA Mobilityさんにジョインされる方が多いのでしょうか。

イさん

社員のほとんどはエンジニアですが、業界にもたらすことができる変化に価値を感じてくれている人が大半です。

例えば先ほどもお話した通り、機体そのものには最先端のテクノロジーが駆使されていますが、運航はパイロットを含む現場のみなさまが、ものすごく頑張って支えている状況があるんですよね。それをテクノロジーの力でサポートすることでその人たちがよりポテンシャルを発揮できるようにする、業界にそんな変化をもたらせることに価値を感じる人がジョインしてくれています。

また、弊社の事業による脱炭素化への貢献を通じて社会的意義の高さに興味を持つメンバーも多くなっています。航空業界は、炭素排出量自体は車と比較して低いものの、効率化する難易度が高いんです。

例えば車なら電気自動車に置き換えるというソリューションが見えていますが、飛行機の場合、電気飛行機や水素飛行機はまだまだ発展途上で、実現までかなりの時間と資金がかかるとされています。従って業界全体が今あり得る全ての施策に全力で取り組んでいる状況があり、運航改善もそのうちの大きな柱のひとつとなっています。

いろいろと課題がある中で、どう脱炭素を進めていくか。その難易度の高さ、そして規模の大きさと与えるインパクトの大きさについては、社内でもよく話していますし、積極的に議論しております。

編集部

事業の社会貢献度の高さや意義に興味を持っていらっしゃるメンバーが多いんですね。高い専門性を持ち、かつ真摯な姿勢で事業に取り組んでいることが、御社の成長につながっているんだなと感じました。

理想形は「無意識に利用できるソリューション」

編集部

NABLA Mobilityさんの今後の目標を教えてください。

イさん

乱気流回避&高度最適化ソリューションについては現在ベータ版をリリースしております。これから航空会社の方々にテストいただきながら磨き上げていく予定で、遅くても来年の夏頃には正式版としてリリースしたいなと考えています。

磨き込みにあたっては、本当に役に立つものにするということは当然ながら、航空会社の今の運航オペレーションの中で私たちのソリューションをとにかく使いやすいものするということも必要です。理想としては「航空会社のオペレーションの中に自然に組み込まれていて、ユーザーが気づかずに使えるもの」にしていきたいと思っています。パイロットの方に使ってもらいつつ、それが全然気にならない、空気のようなものですね。

例えば交通系ICカードって、タッチするとき何も意識せずにしていますよね。我々のソリューションもとにかく今の航空会社のオペレーションに溶け込むようなものになっていくのが理想です。

そう考えると、個別のアプリで提供するのではなく、今あるソリューションに組み込んでいくということなども考えていかなければなりません。ソリューション自体ももちろん、どのように使ってもらうかもあわせて検討していきたいですね。

自分の弱みを積極的に開示!チームへの高い信頼

株式会社NABLA Mobilityの社内風景
▲それぞれに高い専門性を持つからこそ、チームに対する信頼感が生まれる(公式サイトから引用)

編集部

先ほど少し御社のメンバーについてお話しいただきましたが、改めてNABLA Mobilityさんの社内にはどのような雰囲気があるのでしょうか。

イさん

NABLA Mobilityでは、みんながチームに対する信頼感をしっかりと持っているのが特徴です。

例えば自分の仕事の進捗が遅れていたり、何かミスがあったりしたら、ミーティングのときに隠したり小さく報告したりしてしまうことってありますよね。しかしNABLA Mobilityではむしろできないこと、失敗などはどんどん開示して、みんなで答えを探していけるような雰囲気があります。また、分からないことを全体に投げかけると、誰かからともなく助けが飛んできたり、知っている人から声があがったりして、話が進むこともあります。

「この人なら一緒に答えを探せるだろう」という信頼、「自分ができないことや失敗を開示して、助け合いながら何かを作っていける」という信頼がチームにあるからこそだと思いますね。だからみんな、自分の弱みを臆することなく開示していっています。

編集部

自分自身もプロフェッショナルであり、一緒に働くチームのみんなもプロフェッショナルであると認め合いながら働かれているんですね。だからこそ信頼し合い、助け合う関係が築けているということが良く分かりました。

出社・在宅のルールなし。仕事に熱中し、プライベートも大切に

編集部

NABLA Mobilityさんでは社員の方同士、どのようにコミュニケーションを取られているのでしょうか?

イさん

出社や在宅勤務などの働き方は自由にしているため、コミュニケーションは主にSlackやGoogle Meetを活用しています。ただ週に3日程度は出社している人が多いため、対面でのコミュニケーションを取る機会もありますよ。

編集部

「何日以上は出社が必要」などのルールがあるのでしょうか?

イさん

出社と在宅勤務の制限は特に設けていません。前提としてすごく優秀な方に集まってもらっているからこそ、彼らが創意工夫できる環境を用意できていれば、おのずとみんな熱中して良い仕事ができるのではないかと考えています。

それと、やはりみんなオンとオフの切り替えがものすごく早いですね。仕事に集中するときはどっぷりのめり込みますが、終わると本当に気軽に抜けた感じで楽しく過ごしています。きちんと緊張の糸を緩めたり引いたりしながらパフォーマンス高く仕事に取り組んでいます。

編集部

仕事に集中するときは集中して、プライベートの時間も大切にできる環境があるということでしょうか?

イさん

はい。社員のプライベートも大切にできるような環境づくりは心がけています。CEOの田中を筆頭に子育てをしながら働いている人も多いため、保育園のお迎えなどのプライベートな事情も含めて、社内でもお互いに理解し合い、助け合える環境となっています。

真摯に事業に向き合うからこそ生まれる「活発な議論」が特徴

株式会社NABLA Mobilityの社内風景▲NABLA Mobilityさんの社内では活発な議論が良く生まれているそう(公式サイトから引用)

編集部

その他に、NABLA Mobilityの特徴的なカルチャーがあれば教えてください。

イさん

みんなそれぞれの領域で専門性を持ちながらも事業全体の本質は何かを議論できる視座の高さを併せ持っているため、社員同士の議論はとても活発です。自分の専門領域の話だけでなく、会社が今後どうなっていくか、業界全体に我々が与えられるインパクトはどういうものがあるのかという話も、みんな好んでしていますよ。

例えば我々のソリューションを提供する先で、脱炭素というのは本当に達成できるのか。そもそもお客様に対して、どのような価値提供ができるのか。そういう話を、それこそご飯を食べながらしていたり、何か仕事の議論がきっかけで発展したりという場面がものすごく多くあります。

編集部

業務に関することはもちろん、会社全体の方向性や意義といった広い視野での議論ができるというのは、本当に特別な環境ですね。メンバー同士のコミュニケーションの中からも学びが得られそうだと感じました。

優秀なメンバーと共に、航空業界の大きな課題にチャレンジしたい方を歓迎

★会社名事業開発・コーポレート/マネージャーイ・サンヨンさん
▲根の深い業界問題にチャレンジできる、優秀なメンバーと働ける環境が魅力と話してくれたイさん(Wantedlyのインタビュー記事から引用)

編集部

最後に、NABLA Mobilityさんの事業や技術に興味を持った読者の方に向けてメッセージをお願いします。

イさん

NABLA Mobilityが、働くメンバーに提供できるのは次の2つだと思っています。1つは、グローバルで、かつ根の深い問題にチャレンジする経験を提供できるということです。

通常の会社の場合「まずは日本で展開し、その後海外に進出する」というステップがありますが、NABLA Mobilityが直面する航空業界はそもそもグローバルで競争するマーケットで、そもそも国内にマーケットがないため、最初からグローバルな視座で事業を進めています。その上で、アメリカやヨーロッパ、アジアなどいろいろなプロフェッショナルと協業し、根の深い問題を解いていくという、他ではできない経験を提供できると思っています。

そして2つ目は、多様性のある優秀なメンバーと一緒に仕事ができるということです。どこの会社でも事業以外の人間関係などの部分で煩わされる局面はあるものですが、NABLA Mobilityではチームのみんな、純粋に真摯に事業に臨んでいます。

だからこそ面倒なことに煩わされず、目の前の課題に集中して取り組むことができます。ただそれは自分の仕事をこなせば良いというドライなものではなく、グローバルでもまだ前例がない問題を皆でとにかく楽しみながら解いていくという、協奏に近いものです。

優秀で真摯な方々に対する一番の報酬は、同じく優秀で真摯な人と一緒に働ける環境だと思っています。NABLA Mobilityは、それを確実に提供できるということをお伝えしたいです。

編集部

業界に大きなインパクトを与える事業に取り組み、グローバルに成長を続けるNABLA Mobilityさん。同じ志を持つ優秀なメンバーの方に刺激を受けながら業界の変革に挑戦できるという、得難い環境で働ける魅力のある会社だと感じました。興味を持った方はぜひお問い合わせいただけたらと思います。

本日はお忙しい中、貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました!

■取材協力
株式会社NABLA Mobility:https://www.nabla-mobility.com/
採用ページ:https://open.talentio.com/r/1/c/nabla-mobility/homes/2673