スポーツだけじゃない株式会社モルテン。モノづくりへの挑戦を支える新たな開発拠点とは

高い技術力で革新的なモノづくりを行う企業を紹介する本企画。今回は、スポーツ用品や自動車部品などを開発・製造・販売する株式会社モルテンをインタビューしました。

株式会社モルテンとは

株式会社モルテンは、世の中の課題を見つけ、それを製品によって解決するモノづくりを行うメーカーです。

バスケットボールやバレーボールなどの競技用ボールを作る会社として広く知られていますが、スポーツ用品のほかに、自動車部品や医療・福祉機器、浮き桟橋をはじめとするマリン・産業用品も手がけています。

会社名 株式会社モルテン
住所 広島県広島市西区観音新町4-10-97-21
事業内容 ・スポーツ用品の開発と製造と販売
・自動車部品の開発と製造と販売
・医療・福祉機器の開発と製造と販売
・マリン・産業用品の開発と製造と販売
設立 1958年11月
公式ページ https://www.molten.co.jp/

空気圧を制御する「中空体技術」と、ゴムや樹脂などの高分子材料を扱う技術を応用して世の中をより良くするための製品を生み出す株式会社モルテンは、2022年、広島市内に新たな開発拠点molten [the Box](モルテン・ザ・ボックス)を開設しました。[the Box]には各事業のエンジニアなど約200名の社員が集まり、事業の垣根を超えた自由な発想のもと、新しいモノづくりに挑んでいます。

今回は、人材育成への考えや、エンジニアの挑戦を支えるザ・ボックスの取り組みについて、人事部参事の馬場嘉余子さんにお話していただきました。

本日お話を伺った方
株式会社モルテン 管理本部 人事部 参事の馬場嘉余子さん

株式会社モルテン
管理本部 人事部 参事

馬場 嘉余子さん

4つの事業で世の中の課題を解決するモノづくりを行う

株式会社モルテンの社員がオフィスで働くようす

編集部

まずはじめに、モルテンさんの事業内容についてお聞かせいただけますでしょうか。

馬場さん

弊社は、「モノづくりを通じて、世の中をより良い場所にするために、活動する会社」を経営理念に、世の中の課題を解決するような製品を開発・製造・販売するメーカーです。

スポーツの経験がある方は、バスケットボールやバレーボールなどの競技用ボールを通じてモルテンの名前を知っていただいているかもしれません。しかし弊社はスポーツ用品だけでなく、自動車部品、医療・福祉機器、マリン・産業用品の合わせて4事業を展開しており、全ての事業で空気圧を制御する「中空体技術」と、ゴムや樹脂などの材料加工技術を応用したモノづくりを行っています。

編集部

「molten」と書かれたボールを見たことがある人は多いと思いますが、事業はそれだけにとどまらないのですね。各事業で手がける製品にはどのようなものがあるのでしょうか?

馬場さん

スポーツ用品事業として手がけているのもは、FIBAバスケットボールワールドカップの試合球をはじめとする競技用ボールだけでなく、ホイッスルや、グラウンドに白線を引くためのラインカー、バスケットボール用のシューティングマシンなどもあります。

「本物のゲーム」とは、プレーヤーの技術や意志が100%発揮される時に実現します。私たちは、革新的な技術で「完璧な製品づくり」を行うことを通じて、本物のゲームの実現に貢献したいと考えています。

自動車部品事業では、同じ広島県に本社を持つマツダさんを主要取引先としており、ゴムや樹脂を使って、音、振動、流れを制御する技術に特化した製品を作っています。例えば、エンジン内への空気の流れと音の制御を担う「吸気部品」や、車のコーナリング性能をコントールするための「ゴムブッシュ」などがあり、このような製品を供給することで「Fun and Functional」、つまり自動車の楽しさと機能性を実現したいと考えています。

医療・福祉事業では、高齢者や体の不自由な方の生活の質の向上をサポートするための製品を提供しており、床ずれ防止用のマットレスでは弊社が国内トップシェアを持っています。ほかにも介護用のベッドや、生活動作を支援する手すり、走行の安定性とデザイン性にこだわったクルマイス「Wheeliy」などを作っています。

マリン・産業用品事業では、自然と共存できる社会基盤を作るための製品として、浮き桟橋や、地震の揺れから建物を守る免震支承ゴムや気温変化による橋の収縮などから橋梁を守るゴム支承などを手がけています。

編集部

冒頭でご説明いただいた理念の通り、どの事業でも世の中の課題を解決するようなモノづくりを行っているのですね。

モルテンには若手社員のキャリア形成をサポートする研修がある

マイキャリデザイン研修参加者
▲入社5年目と10年目になると行われるマイキャリデザイン研修参加者の様子

編集部

モルテンさんの従業員数はグループ全体で3,200名を超えるということですが、20代から30代前半の若手メンバーにも活躍のチャンスがあるのでしょうか?

馬場さん

弊社では主体性があることを重視した採用を行っており、入社直後から活躍している人もたくさんいます。例えば、医療・福祉機器事業では、新卒で入社した1年目の営業担当社員が大きな成果をあげています。

編集部

若手社員のキャリア形成をサポートするような仕組みはありますか?

馬場さん

私たちは、個人の成長が会社の成長につながると考えています。そのため、「成長」イコール「キャリア」と捉え、社員が自分のキャリアを考える機会を設けております。

社員には、「やりたいこと」「できること」「期待されていること」の3つの視点でキャリアを描いてもらっており、入社5年目と10年目の節目には、同期が集まって自分のキャリアに向き合う「マイキャリデザイン研修」を行っています。

研修では自分の成長の振り返りや、スキルの棚卸しをして同期の前で発表したり、社内で活躍する先輩社員の話を聞いてこの先のキャリアを考えたりしています。

編集部

ほかにも研修の制度があれば教えてください。

馬場さん

「ビジネスの共通言語は会計」との考えから、新入社員や入社2年目、係長、経営職を対象に会計教育を行い、利益に対する意識を高めています。また、入社2年目に行う「フォローアップ研修」では、同期が集まって悩みや疑問を共有したり、お互いの成長を確認し合ったりしながら、今後の目標を設定しています。

ほかにも、マーケティングや競争戦略などの経営理論を習得し、自ら経営課題を見つけ、具体的な戦略を立案する「戦略研修」があり、この研修から誕生した新規事業もあります。例えば、バスケットボールの普及をコンセプトにした「B+」というプロジェクトでは、3人制バスケの移動式のコートや、一人でバスケの練習ができるシューティングマシンを開発・製造し、より日常的にバスケを楽しめる機会を提供しています。

また、子どもの教育や環境への配慮と、モルテンの技術を融合させた組み立て式のサッカーボール「MY FOOTBALL KIT」も、戦略研修から生まれました。

編集部

若手メンバーが新規事業のプロジェクトに関わるチャンスもあるのでしょうか?

馬場さん

はい。モルテンが持つリソースと自分の経験を活かして新しいものを生み出すプロジェクトなので、発案者の多くはある程度経験を積んだ中堅社員ですが、若手社員もプロジェクトメンバーとしてアイデアを出し、新規事業の成長に貢献しています。

編集部

社員の成長が会社の成長につながると考えるからこそ、研修にも力を入れ、人にしっかりと投資をしているのですね。

エンジニアの独創的なモノづくりを支えるモルテンの取り組みとは

編集部

ここからはモノづくりを支える技術者のお仕事についてお伺いします。まず、モルテンさんの従業員数に占めるエンジニアの比率について教えてください。

馬場さん

モルテン単体ですと、全従業員数673人のうち、20~25%に相当する約260人がエンジニアです。

編集部

モルテンさんで働くエンジニアにはどのような方が多いですか?

馬場さん

私たちは技術者に専門性だけでなく、コミュニケーション能力や野心を持ってほしいと思っています。そのため、技術力はもちろんですが、主体性や積極性があり、自分の好きなことを追求する姿勢を持ったエンジニアが多いと感じます。

各事業のエンジニアが集まる[the Box]が誕生

molten [the Box]の外観
▲株式会社モルテンは2022年、各事業のエンジニアが集まる開発拠点molten [the Box]を開設した。

編集部

新規事業にも積極的なモルテンさんですが、エンジニアのモノづくりの力を高めるための取り組みはありますか?

馬場さん

はい。2022年11月に、これまで広島市内に点在していた開発拠点を1ヶ所に集めたテクニカルセンター、molten [the Box](モルテン・ザ・ボックス)が完成しました。

施設名には「Think outside [the Box]」、つまり既成概念を超えて考えるという思いが込められており、常に独創的な製品をこの世に生み出し続けていく「宝箱」のような場所を目指しています。

株式会社モルテンの[the Box]の敷地内
▲敷地内に植物や動物の居場所や、焚火台を配することで、無機物を取り扱う業務の中でも有機物に触れ、新しいアイデアのきっかけを生むことを意図した。

編集部

施設は、どのような機能を備えているのでしょうか?

馬場さん

[the Box]は、1万8,446平方メートルの広大な敷地に建つ4階建ての施設で、ここに勤務する200名ほどのエンジニアやデザイナーの「独創的なモノづくり」を支えるための機能が詰まっています。

1階には、自動車部品事業部のエンジニアたちが自動車の整備や部品の交換を行ったり、事業の垣根を越えて自動車好きの社員が集まって語り合ったりできる「the Garage」や、モーションキャプチャーを備え、医療・福祉機器のシミュレーションを⾏う研究施設「the Medical Lab」があります。

3階には、スポーツ用品事業のエンジニアが開発したプロトタイプの評価を行うスペース「the Court」や、あらゆる事業のエンジニアが集まって材料や技術についてアイデアを出しながら、それを形にするための空間「the Studio」があります。

株式会社モルテンのエンジニアが「the Studio」に集まるようす
▲「the Studio」では、各事業のエンジニアが集まって定期的に意見交換を行っている。

編集部

ガラス張りの開放的な空間が多く、コミュニケーションが自然に生まれそうな雰囲気がありますね。

馬場さん

はい。事業間で連携して新しいモノが生まれることを期待し、交流が生まれやすいつくりになっています。

ほかにも、約260種類の植物やひつじがいる「Hakoniwa」があり、無機質なものを扱っているエンジニアが有機物に触れることで刺激を受け、創造性を高めるための場所として活用されています。

編集部

新たな発想につながりそうな仕掛けが詰まったザ・ボックスから、どのようなプロダクトが誕生するのか、今後が楽しみです。

グローバル企業としてモルテンはモノづくりへの挑戦を続ける

株式会社モルテンの社員がバーベキューをするようす

編集部

モルテンさんのカルチャーや社内の雰囲気についても伺えますか?

馬場さん

弊社はスポーツ用品事業を展開していることもあり、スポーツ好きな社員が多いですね。実業団のような本格的なものではなく、週末に集まってフットサルやソフトボールを楽しむ若手社員がたくさんいます。

また、事業部ごとにさまざまなイベントを企画しており、家族連れでバーベキューなどを楽しむ「Factory Day」という工場勤務社員向けのイベントを開催したこともあります。自動車部品事業のメンバーはサーキット場を借り切ってファミリーカーからラグジュアリーカーまで乗り比べたり、開発中の部品を試したりと、自動車部品事業のブランドステートメント”Fun and Functional”を体現する取組みをしています。

編集部

イベントを楽しむ時も、自動車部品事業の技術の追求を忘れないのですね。

馬場さん

そうですね。自動車部品事業に限らず、常に良い製品づくりのヒントを探している人が集まっているのが、モルテンの特徴だと言えます。

モルテンで働く魅力は「自分が会社を動かしている」と感じられること

株式会社モルテン 管理本部 人事部 参事の馬場嘉余子さん
▲馬場さんは、モルテンでは一人ひとりが担当する業務の幅が広く、「自分が会社を動かしている」と感じることができると話す。

編集部

モルテンさんで働くことの魅力について、馬場さんはどのように感じていますか?

馬場さん

弊社では、一人ひとりが大きな裁量を持って広い範囲の仕事を担当しています。例えば、私は新卒採用も中途採用も、社員教育も担当していますし、インタビューに同席している瀧澤(広報担当)は社内報の制作からSNSでの発信まで行っています。エンジニアも、ただ設計図を描くだけではなく、自分が設計したものを試験評価するところまで責任を持って行います。

このような環境で働くことは醍醐味がありますし、歯車の一つではなく「自分が会社を動かし、世の中を変えたい」と考える人が満足できる職場だと思います。

また、モルテンはトップとの距離が近い会社です。社長の民秋はよく社内を歩き回って、社員とコミュニケーションを取っていますし、社内の意思決定もスピード感があるので、自分の意見やアイデアがすぐに仕事に反映されます。

編集部

研修制度やキャリア支援が充実している点も魅力と言えますね。

馬場さん

そうですね。弊社で働く人には、自分の強みや興味のあることを、モルテンの持つ技術や資源と組み合わせることによってクリエイティブなものを生み出し、心躍るような楽しい仕事をしてほしいと思っています。

マイキャリデザイン研修などを通じて、社員の強みを伸ばし、やりたいことを引き寄せるようなサポートを今後も続けていきたいと考えています。

新しいことに挑戦し、世の中を良くする製品を生み出したい人を歓迎

卓球大会に参加した株式会社モルテンの社員が集合するようす
▲社内交流がさかんな株式会社モルテン。卓球大会を開催することも。

編集部

最後に、記事を読んでモルテンさんのお仕事に興味を持った方に、メッセージをお願いします。

馬場さん

社名のモルテン(molten)には、ゴム製品の製造に関係する「melt(溶ける)」の過去分詞のほかに、「古いものから新しいものに脱皮する」という意味もあります。1958年の創業時は47人の会社でしたが、新しいことに挑戦し続けた結果、ボールがオリンピックで使用され、自動車部品で海外に進出し、アメリカやヨーロッパなど9つの海外拠点を持つグローバル企業へと成長しました。

これからも、コーポレートブランドステートメントである「Moving with Possibilities(可能性とともに動き続ける)」を大切に、新しいことに挑戦しながら、人々が一歩前へと動くための製品を提供し、世の中をより良い場所にしたいと考えています。そして、新しく仲間になっていただく方にも、ぜひご自身の可能性を信じて動き続けてほしいと思います。

編集部

[the Box]のような先進的で新しい取り組みは、まさに「Moving with Possibilities」を体現していますね。

馬場さん

新しい取り組みとしてもうひとつ、フェスのスポンサーにも挑戦しています。2023年11月にYOASOBIなどが出演する音楽フェスが広島であり、弊社がメインスポンサーを務めます。このような活動を通じて、モルテンに興味を持ってくれる方を増やしたいと考えています。

編集部

創業65年を超えた今も、世の中の課題解決を目指して新しいことにチャレンジし続けるモルテンさん。モノづくりへの情熱を持つメンバーが集まっており、エンジニアとして働く人は自由な発想を持ちながら活躍できそうだと感じました。

本日は、ありがとうございました。

■取材協力
株式会社モルテン:https://www.molten.co.jp/
採用ページ:https://www.molten.co.jp/corporate/jp/recruit/