社員が能力を発揮できる環境を整えて成長や挑戦の後押しをする企業を紹介する本企画。今回は、1906年創業の総合スポーツ品メーカー「ミズノ株式会社」を取材しました。
100年以上に渡り「ええもん」を作り続けるミズノ株式会社
1906年創業のミズノ株式会社は、「より良いスポーツ品とスポーツの振興を通じて社会に貢献する」を経営理念に掲げ、スポーツに関連した商品やサービスの開発を行っています。
創業者である水野利八氏の言葉「ええもんつくんなはれや」の想いを受け継ぎ、グラウンドに飛距離革命を起こしたバット「ビヨンドマックス」を始めとする野球用品や、サッカー、バレーボール、テニス、ランニングといった競技スポーツの各種用品など、機能的で高品質な商品を国内外で販売しています。
会社名 | ミズノ株式会社(正式名称:美津濃株式会社) |
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住所 | 大阪府大阪市住之江区南港北1-12-35 |
事業内容 | ・スポーツ関連商品の製造・販売 ・スポーツ施設の運営、運営受託 ・各種スクール事業 |
設立 | 1906年4月 |
公式ページ | https://jpn.mizuno.com/ |
働き方 | ・フルフレックス ・テレワーク ・育児時短(小学3年生の年度末まで) |
創業から100年以上を数えるミズノ株式会社ですが、次の100年に向けて新規事業の創出にも積極的です。誰でも参加できる新規事業プログラムなど社員の挑戦を後押しする仕組みがあり、20代の女性社員のアイデアから更年期世代の女性向けのフィットネスサービスが生まれたこともあります。
また、ワークライフバランスへの取り組みにも力を入れており、子育て中の社員が安心して働ける時短制度なども充実しています。
今回は、働きやすい職場づくりや若手社員の活躍などについて、グローバル人事総務部で人材開発に携わる坂本匡史さんと植田典子さんにお話を聞かせていただきました。
子育て社員も安心して働けるミズノのワークライフバランスへの取り組み
▲植田さんはキャリア入社したあと、産休と育休を経てミズノの人事総務部で人材開発に携わっている。
編集部
まず、ミズノさんのワークライフバランスについてお伺いしたいと思います。テレワークや、時短勤務などの制度について概要をお話しいただけますでしょうか?
植田さん
弊社は、社員がライフステージに応じて自分のワーク(仕事)とライフ(家庭生活)の両方を充実させられるよう、自分自身で積極的にマネジメントしながら仕事に誇りを持って働くことができる企業を目指しています。
そのため、全社でテレワークを推奨しているほか、コアタイムなしのフレックスタイム制度を導入しています。また、子育て社員が働きやすい環境を作るため、育児時短は子どもが小学校3年生まで利用できます。
編集部
植田さんご自身も、子育てをしながらお仕事していると伺いました。
植田さん
私はキャリア入社したあと、産休や育休を経て職場復帰しました。今は10歳の娘を育てながら働いています。
弊社の基本の就業時間は午前9時半から午後6時ですが、時短の場合は社員それぞれの状況に合わせて柔軟に勤務時間を決めることができます。私は子どもが1歳の時に職場復帰し、午後4時までの時短勤務をしていました。
子どもが急に体調を崩して病院に連れていくこともありますが、フレックス制度がありますし、状況に応じて自分が担当している業務に副担当の人をつけてもらえるため、子育てと仕事をうまく両立させることができています。
編集部
そのような働き方があると、安心して職場復帰できそうですね。
植田さん
そうですね。子育て社員が働きやすい環境づくりを進めてきた結果、弊社では育休復帰率が100%となっています。
生産性や創造性アップを目指しテレワークを導入
▲坂本さんは、テレワークの導入には生産性や創造性を向上させる狙いがあると話す。
編集部
ミズノさんではテレワークを導入しているというお話がありましたが、どのようなルールのもと、実施しているのでしょうか?
坂本さん
弊社では日数の制限なくテレワークができます。部署などによっては出社の必要があったり、出社した方が効率的だという場面もあるので、部署ごとに日数の上限を設定するなどして柔軟に対応しています。
編集部
例えば、営業職の方もテレワークで対応できることが多いのでしょうか?
植田さん
お客様との対面の商談など、テレワークでは対応できない場面もありますが、コロナ禍以降はテレワークを導入する企業様が増えているので、オンラインで商談させていただくケースもあります。展示会に関しても、近年はオンラインでの開催が増えています。
弊社では2020年より前からテレワークの試験的な導入を行っていたため、コロナ禍でも比較的スムーズにオンラインの対応が進んだと感じています。
編集部
コロナ禍以前から取り組みを始めていたのですね。テレワークを導入した狙いについてもお聞かせいただけますでしょうか。
坂本さん
「働きやすさ」が生産性の向上につながると考えたためです。また、リラックスした環境で業務することで新しい考え方やアイデアが生まれることもあるため、創造性を高めるためにも意味のある制度だと考えています。
編集部
テレワークによるポジティブな効果を期待して、積極的に導入を決めたのですね。
勤務時間よりアウトプットを重視するから残業時間は月6時間
編集部
ミズノさんの残業時間についてもお話しいただけますでしょうか。
坂本さん
2022年度の実績になりますが、月の残業時間は全社平均で6.61時間となっています。
編集部
残業時間が10時間以下というのは、上場企業のなかでも短い印象です。
坂本さん
誰でも長時間働けばある程度の成果を出せると思います。しかし、ワークライフバランスを重視するこれからの時代では、限られた時間内でアウトプットすることが大切になってきます。
そのため、弊社では労働時間を含めて自分自身で積極的にマネジメントすることが推奨されています。
編集部
ミズノさんはさまざまな取り組みを通じてメリハリをつけながら働く環境を整えているので、社員の皆さんは仕事もプライベートも充実させることができそうだと感じました。
ミズノなら若手社員でも新規事業に挑戦するチャンスがある
編集部
ここからは、若手社員の活躍についてお伺いしたいと思います。ミズノさんには年次や年齢に関係なく手を挙げたり挑戦したりできる環境はありますか?
植田さん
弊社は、長年にわたって培ってきたスポーツ関連ビジネスの知見を活かし、新規事業の創出にも力を入れています。そのため、社内には誰でも新規事業に挑戦できるプログラムがあります。
このプログラムは、新事業や新商品のアイデアを社内で公募し、役員などへのプレゼンを経て事業化に向けて取り組むものです。
編集部
新規事業に関わりたいと考える人は多いと思いますが、アイデア出しやコンセプトづくりなど、ハードルが高いと感じる人もいると思います。そんな社員の背中を押すような仕組みもあるのでしょうか。
坂本さん
新規事業の創出を支えるシステムとして、アイデアの創出から市場投入までを複数のステージに区切り、一定の要件をクリアできたら次のステージに進むミズノ版ステージゲートを構築しました。
情報収集やメンバー集めから始まり、アイデア出しやコンセプトを明確化するステージを通過したら、事業計画の策定など次のステージへと進みます。このようにステージごとに「今すべきこと」を明確化していくことで、挑戦へのハードルを下げるとともに、事業化への精度を上げています。
20代社員のアイデアからフィットネスサービスが誕生
編集部
新規事業創出プログラムから誕生した商品やサービスはありますか?
坂本さん
新規事業創出プログラムができる前のプロジェクトではありますが、視覚障がいのある方が歩行時に使用する白杖を有志メンバーが提案し、商品化した例があります。これはミズノのゴルフクラブやラケットの開発で培ったカーボン設計・加工技術を活用したもので、わずか143グラムという軽さと操作性が特徴です。
また、更年期世代の方向けのオンラインフィットネスレッスン「yoriFit(ヨリフィット)」は、弊社の女性社員が20代後半の時に立ち上げた事業です。彼女は「女性特有の健康課題を解決したい」という想いのもと、社内のビジネスコンテストに応募し、事業化に至りました。
「yoriFit」ではストレッチや有酸素運動などのオンラインレッスンを受けるだけでなく、レッスン中に参加者同士がコミュニケーションできる時間があるほか、更年期の専門家によるオンラインセミナーも開催しています。
編集部
ひとりで悩みがちな更年期の問題を、仲間や専門家と一緒に解決することができるサービスなのですね。その他の事例はあるでしょうか。
植田さん
ノンアルコールビール「PUHAAH(プハー)」も、社員のアイデアから生まれた商品です。
「スポーツしたあとのビールって美味しいよね」という社員同士の会話がきっかけで、「頑張った自分へのご褒美」や「一緒にプレーした仲間とのコミュニケーションを促進するもの」というコンセプトを有志メンバーが考え、ビールメーカー様と試作を繰り返しながら商品化にこぎつけました。
編集部
すごくユニークな提案でも、それを受け止める風土があるんですね。新規事業のお話を伺って、ミズノさんには新しいことにチャレンジする人を歓迎し、後押しするカルチャーが浸透していると感じました!
特性に合ったキャリア形成に向け「営業一括配属」を廃止
編集部
若手社員の成長や活躍を支えるための教育制度や人事制度があれば教えてください。
坂本さん
まず、入社したばかりの社員をサポートする制度として、配属部署の先輩社員から1年間のOJT教育を受ける「エルダー制度」があります。この制度は新入社員だけでなくキャリア入社社員にも適用されます。
また、社員がこれまで以上に能力を発揮し活躍できる環境を作るため、2023年度入社の社員から新入社員の配属方針を変更しました。
これまでは、新卒入社した事務系総合職の社員は全員営業に配属されていました。しかし、営業以外の分野に強みを持つ人もおり、結果的に優秀な社員の早期離職につながったケースもありました。そこで、営業への一括配属をやめ、社員がキャリア形成しやすいようにそれぞれの強みを考慮したうえで配属先を決めることにしました。2023年入社の文系社員は、約3割が営業以外に配属されています。
編集部
新しい配属方針を導入してみて、変化や感じたことはありますか?
坂本さん
若手社員と面談などで話すとき、以前は「営業が自分に合っていない」という悩みを聞くこともあったのですが、配属の方針を変えてからはミスマッチを訴える社員が減り、キャリア形成や若手社員の定着に良い影響が出ていると感じています。
編集部
社員の活躍に積極的なミズノさんですが、若手メンバーを責任ある役職に登用するケースもあるのでしょうか?
坂本さん
はい。弊社には、サクセッションプランの観点から30代の比較的若い社員を課長や課長補佐といったリーダーに積極的に抜擢する考えがあります。最近ではインナーウエアをはじめとするライフスタイル品を扱う営業部門に30代の女性課長が誕生しました。
編集部
そのような先輩社員がいると、若手社員がキャリアについて考えるときに「目指す姿」をイメージしやすくなりそうですね。
全国からエントリーが殺到するミズノのインターンシップとは
編集部
ミズノさんでは、どのようなインターンシップを実施していますか?
坂本さん
弊社では、1日の就業体験に加えて、5日間のインターンシップを実施しています。数年前までは1日の就業体験のみでしたが、お互いのことをより理解し合うために5日間のプログラムを新たに導入しました。
事務系総合職が5コース、研究開発職が10コース、デザイン職が2コースの計17コースを展開しており、このうち16コースで5日間のプログラムを実施しています。
編集部
世界的にも有名なミズノさんなので、多くの学生から応募がありそうですね。
坂本さん
ありがたいことに全国から多くの学生さんにエントリーいただいており、倍率は約30倍となっています。
編集部
特に人気があるのはどのコースですか?
坂本さん
用具商品企画が人気です。このコースでは、野球グラブ、ゴルフクラブ、ワーク用品といった商品のトレンドや市場動向など様々な情報から、新たな商品のアイディアを生み出し、形にする過程を体験できるプログラムです。コンセプトづくりや、形・素材選びなど、企画から生産までの流れをひと通り学ぶことができます。
学生だけでなく社員にとっても学びの場となっている
編集部
インターンシップに参加した学生からは、どのような声が寄せられていますか?
坂本さん
よく言っていただくのは、「ミズノで働く人たちがどのような思いや考えを持って働いているのか知ることができた」ということです。
5日間を通してしっかり学生さんとコミュニケーションを取るからこそ、弊社のことを深く理解してもらうことができるのだと思います。
編集部
時間をかけてしっかり理解してもらうことで、インターンシップを経て入社する場合のミスマッチ防止にもつながりそうですね。
坂本さん
そうですね。また、このインターンシップでは、ミズノの社員も学生から積極的に学ぼうという姿勢があり、社員にとっても意味のあるプログラムになっていると感じています。
学生さんが出してくれたアイデアに対して、社員は「それは現実的ではないよ」と言うのではなく、「なんでそう思ったの?」と興味を持ち、お互いを高め合うような関係づくりができていると感じています。
編集部
モノづくりに真剣に取り組むミズノさんだからこそ、インターンシップの学生からも学ぼうとする姿勢をお持ちなのですね。
ミズノにはモノづくりに情熱を持って取り組む人が集まる
編集部
ミズノさんの社内のカルチャーについてもお伺いしたいと思います。まず、ミズノさんに入社を決めた新入社員の皆さんは、どのようなところに魅力を感じているのでしょうか。
坂本さん
ミズノの経営理念への共感や事業内容への興味は勿論ですが、弊社では毎年3月にオンラインで自社説明会を開催しており、その際に男女の若手社員と人事担当者によるパネルディスカッションを行っています。その様子を見て社員同士の距離の近さやフランクな社風を感じ、弊社に興味を持っていただいているのではないでしょうか。
編集部
おふたりが感じるミズノさんの魅力についてもお話しいただけますか?
植田さん
自分の会社が好きで真面目に取り組む人が多いところですね。弊社の事業の柱である「スポーツ」を愛し、クオリティを高めるために誠実に向き合おうというカルチャーがあると感じます。
「消費者が求めるものを提供できているのか」を突き詰めて考え、決して妥協しない人たちが集まっています。
編集部
自分たちのモノづくりに誇りを持っているのですね。
植田さん
そうですね。また、自分たちの会社の商品をスポーツ選手たちが身につけているのをテレビなどで目にする機会が多いので、やりがいや社会的な意義を感じることができる仕事でもあります。
坂本さん
植田さんの内容に近い話ですが、私が感じているのは情熱を持った人が集まっているところです。ミズノにはモノづくりへのこだわりを持っている人がとても多いんです。そして、その情熱は個人のモチベーションになるだけでなく、その人自身がモチベーターとなって周りに良い影響を与えています。
先ほど紹介したインターンシップの取り組みについても、本来なら私たち人事の担当者が主導して形にしていくものだと思うのですが、弊社ではインターンシップを受け入れる現場の人たちが「意味のあるインターンシップにするためには、もっとこうした方がいいのではないか」と積極的にアイデアを出してくれました。
編集部
何事にも「自分ごと」という姿勢で情熱を持って向き合う人たちばかりなのですね。
坂本さん
その通りです。時には彼らに「企画が甘い」と叱咤激励されることもありましたが、会社を良くしたい、良いモノづくりをしたいという熱い想いを感じましたね。
スポーツ好きの社員が多く、部活動も充実
編集部
スポーツを柱とした事業を展開するミズノさんには、スポーツ好きな人が集まっているのでしょうか。
植田さん
そうですね。競技をする人、観戦を楽しむ人、さまざまですが、みんなスポーツに対して思い入れがあると感じます。
私も部活でテニスや水泳をしていたことがあり、スポーツは昔から好きでした。健康分野にも興味を持っていたので、自分のやりたいことができそうだと思いミズノに入社しました。
編集部
社内には部活動もあるのでしょうか?
坂本さん
ミズノはクラブ活動を推奨しており、グループ全体で運動系と文化系の部活動が20以上あります。会社から活動費の補助もありますし、社員が新しい部活を立ち上げることもできます。
私は中学生からテニスをしており、入社後は社内のテニス部に入って社会人リーグにも参加しています。たまに、シューズ部門から「被験者としてテストに協力してほしい」と依頼されたり、ラケットの耐久性の確認のために業務時間内にテニスの試打に協力することもありますよ。
編集部
スポーツメーカーのミズノさんならではですね。部活動以外にも、スポーツに関係する福利厚生があれば教えてください。
坂本さん
健康促進のため、一定の距離をウォーキングした人はミズノの商品などをプレゼントとしてもらえる取り組みがあります。
植田さん
さまざまな事情からたくさん歩けない人もいるので、チーム制にしてメンバーの合計の歩数を競う取り組みもあります。
人々の夢を叶えるために一緒にチャレンジしてくれる仲間を歓迎
編集部
最後に、ミズノさんに興味を持つ読者の方に向けて、メッセージをお願いします。
坂本さん
ミズノに興味を持っていただいた方には、興味を持つきっかけとなった源泉が必ずあると思います。その源泉を大切にして、弊社に素直な気持ちをぶつけていただきたいですし、そういう方とたくさんお会いできたらと思っています。
ミズノは夢を支える会社です。人々の夢を叶えるために一緒にチャレンジしてくれる仲間を求めています。
植田さん
ミズノは2023年で創業117年を迎えた会社ですが、次の100年も進化を続けて行きます。最近はキャリア入社の方も増えていますので、これまでのお仕事を通じて培った知見や価値観を活かしてミズノに革新を起こしていただきたいと思っています。
編集部
社員の活躍や働きやすい職場づくりに積極的なミズノさん。新規事業にも力を入れているので、若手社員のアイデアやキャリア入社の方の経験が活かされる場面も多いのではないかと感じました。
本日は、ありがとうございました。
■取材協力
ミズノ株式会社:https://jpn.mizuno.com/
採用ページ:https://corp.mizuno.com/jp/recruit