国内で例が少ないビジネスを展開する株式会社MIERUNEのオープン・アクティブな文化

地方に拠点を置き、エンジニアが活躍する環境を作り成長を続けている企業にインタビューする本企画。今回は、GIS(地理情報システム)ソリューションを提供している株式会社MIERUNEにお話を伺いました。

GISソリューションを提供するMIERUNE

MIERUNEのソリューションで活用されるGISソフトウェア「QGIS」
▲GISソフトウェア「QGIS」などを活用したGISソリューションを提供している

「位置と情報で世界を変える」をミッションに掲げる株式会社MIERUNEが提供しているのは、地理空間情報のデータを電子的な地図上で活用するGISのソリューションです。顧客から地理データの提供を受け、データを活用したソリューション開発や、コンサルティングで顧客の課題解決を支援しています。

同社の特徴は、オープンソースのソフトウェアの活用と貢献を重要視している点です。地理データの検索や地図作成などが可能なオープンソースのGISソフトウェア「QGIS」、地図ライブラリ「MapLibre」などを活用してソリューションを展開しています。

会社名 株式会社MIERUNE
住所 北海道札幌市中央区北1条東4丁目1-1 サッポロファクトリー1条館 3F
事業内容 ・ITや地理空間情報を活用した業務改善・開発のコンサルティング
・ITや地理空間情報に関する研修・講演会の企画運営
・Webサイト・Webサービス・ソフトウェアの企画・研究・開発
・データベースの企画構築解析支援やコンサルティング
設立 2016年6月
公式ページ https://mierune.co.jp

株式会社MIERUNEの本社は札幌市にあり、社員のほとんどが同市内に住んでいます。北海道を拠点に、独自性のあるビジネスを手掛けているのです。

同社の働く環境やカルチャー、地方で働く魅力について取締役COOの桐本靖規さん、取締役CMOの古川泰人さん、Senior Software Engineer・Frontend, Leadの久本空海さんにお話を伺いました。

本日お話を伺った方
株式会社MIERUNEの桐本さん

株式会社MIERUNE
取締役COO

桐本 靖規さん

株式会社MIERUNEの古川さんのアイコン

株式会社MIERUNE
取締役CMO

古川 泰人さん

株式会社MIERUNEの久本さん

株式会社MIERUNE
Senior Software Engineer・Frontend, Lead

久本 空海さん

「位置情報のコックさん」としてデータ活用を支援

MIERUNEが産業総合研究所と開発したAIST 3DDB Client
▲地理データを活用するためのソフトウェア開発やコンサルティングなどを展開している

編集部

初めに、MIERUNEさんの事業内容について伺わせてください。

古川さん

MIERUNEは「位置情報や地図の情報をユーザーにどのように活用してもらうか」という観点から、さまざまなソフトウェアの開発やコンサルティングを手掛けている会社です。

位置情報だけでなく3Dの空間情報のデータなども活用しながら、「こういったソリューションを提供したい」という企業様や自治体様の要望に応じ、技術的なサポートを提供しています。

編集部

企業様や自治体様が持っているデータの提供を受け、活用するための技術的なソリューションを提供しているのですね。

古川さん

MIERUNEは、データそのものを作ったり集めたりすることはしません。私たちの仕事を一言で例えると、「位置情報のコックさん」といえます。地理データという食材をコックとしてどのように調理し、お客様に提供できるかということを考え、実践していくのです。

例えば、国土交通省の3Dオープンデータを活用して、札幌や新宿、あと高松の街をマインクラフトに再現し、子どもたちにマインクラフト上で「未来のまちづくり」を自主的に考えてもらうというイベントがあったのですが、弊社はその取組みにおいて技術提供やコンサルティングを行いました。また、わかりやすい例でいえば、自治体様のハザードマップの可視化や、対策検討といったところでも弊社の技術を活用いただいております。

編集部

国内でMIERUNEさんのようなビジネスを展開されている企業はあるのでしょうか?

古川さん

MIERUNEのように、多種多様なGIS職人チームを組織してビジネスを展開している例は、国内ではそれほどないと思います。ここ数年で日本だけでなく世界でもさまざまな位置に関するデータが秒単位で生まれているのですが、その活用法についてはまだまだ課題が山積しています。このようなデータの可視化や解析のために、私たちはお客様のサポートを展開しているのです。

編集部

国内でも珍しいビジネスを展開されているのですね。

オープンソースソフトウェアを活用してソリューションを提供

MIERUNEのソリューションで活用されるオープンソースのGISソフトウェア「QGIS」
▲立ち上げの背景からオープンソースのソフトウェアを活用することにこだわりを持っている

編集部

MIERUNEさんが事業を展開するうえで大切にしていることは何でしょうか?

古川さん

MIERUNEは創業以来オープンソースのソフトウェアを活用してソリューションを提供することを大切にしています。弊社ではGISソフトウェア「QGIS」、地図ライブラリ「MapLibre」など多種多様なツール活用をしていますが、いずれもオープンソースソフトウェアで、世界中の人々が利用し、開発に参加しています。

弊社は2017年からQGISプロジェクトのスポンサーとして年間4000ユーロの支援を行っており、2022年には日本企業初のMapLibreスポンサーになり、年間10000ドルの支援を行なっています。なお、MapLibreのメインスポンサーは、私達のほかにAWSやMetaが入っています。

編集部

なぜオープンソースソフトウェアにこだわっていらっしゃるのでしょうか?

古川さん

MIERUNEは、もともとオープンソースソフトウェアのコミュニティから生まれた企業です。そこでイベントや勉強会の運営をしていた3人によって設立されたという背景があります。

それ以外にも、プラットフォームやシステムの持続可能性という点についてもオープンソースにこだわっている理由です。ベンダーロックインのように独自に開発したプラットフォームの寿命は企業の寿命と並行しますが、オープンソースのプラットフォームであれば企業の存続に関わらずソリューションを提供できます。この流れは、EU諸国などではごく普通の流れです。

また、オープンソースにこだわっているからこそ、オープンソースコミュニティの支援にも力を入れています。

オープンソースは世界中のさまざまな企業や組織が活用していますが、開発しているエンジニアはほぼボランティアという状態です。ここで企業が取る姿勢としては「フリーライド」…つまり「タダ乗り」ではなく、オープンソースコミュニティに資金的な支援やイベントのもり立て、開発参加などの貢献をおこなっていくべきではという考えをMIERUNEは持っています。

編集部

立ち上げの背景などから、オープンソースコミュニティに貢献していきたいという思いを強く持たれているのですね。

エンジニアには「出張料理人」として幅広い対応が求められる

オンライン上でコミュニケーションを取るMIERUNEの社員たち
▲リモートワーク中でも積極的にコミュニケーションを取ることが推奨されている

編集部

MIERUNEさんには現在何名のエンジニアが在籍されているのでしょうか?また、社員さんの働き方についてもお教えください。

桐本さん

MIERUNEには現在25名の社員が在籍しており、およそ60%がエンジニアです。

フルリモートで働いている社員が5名いますが、本社のある札幌市内に住んでいて、週3日出社、週2日リモートワークというハイブリッド型で働いている社員がほとんどです。

会社の方針としては、社員同士でコミュニケーションを取ることで生まれるコラボレーションをとても大切にしています。なので、基本的には引っ越し費用は負担したうえで、社員には出社できる距離に住んでもらうようにしていますね。

編集部

社員同士のコミュニケーションを重視されているのですね。フルリモートで勤務されている社員さんはどのようにコミュニケーションを取っているのでしょうか?

桐本さん

フルリモートで勤務している社員やリモートワーク中の社員とは、オンラインコミュニケーションツールのDiscordを活用してコミュニケーションを取るようにしています。

また、2カ月に1度程度札幌に集まってオフラインでのチーム会も開催していますので、そこで顔を合わせることになっていますね。

編集部

オンライン、オフライン両面でコミュニケーションを取るための工夫が施されているのですね。一般的なソフトウェア開発会社のエンジニアと比較して、MIERUNEさんのエンジニアの業務に違いはございますでしょうか?

古川さん

MIERUNEが手掛けている位置情報サービスにはお客様の課題によって多種多様なニーズがあります。先ほどのコックさんの例を踏まえると、決まった定食を作るという業務ではなく、一つ一つのオーダーを聞きながら料理を作る「出張料理人」といったイメージです。

ですので、お客様によっては「ニンジンが足りません」「コンロが一つしかありません」という場合もあります。それぞれのご事情に合わせてアプローチを変えて、最適なソリューションを提供しながら協働的にビジネスを作っているのです。

そのため、メンバーはある程度、出張料理人のようなアンテナが備わっていると、MIERUNEのプロジェクトを楽しみながら遂行できると思います。

MIERUNEのノベルティTシャツの画像
▲ノベルティTシャツのコピーは社員の方々が決めたもので、同社のカルチャーが現れている

編集部

オーダーメードな対応が求められるということですね。

土木や不動産や林業、多様なエキスパートが集まる刺激的な職場

国際カンファレンスで発表するMIERUNEの社員

編集部

シニアソフトエンジニアとして第一線でご活躍されている久本さんですが、もともと位置情報の業界で勤められていたのでしょうか?

久本さん

私はもともと地理空間情報、位置情報というのが専門だったわけではありません。MIERUNEに入社する前は機械学習の研究や研究開発をしていました。

私もそうですが、MIERUNEに在籍している社員はさまざまなバックグラウンドを持っています。例えば、土木の業界で河川の防災関連の業務に勤めていた方もいれば、ドローンを使って計測業務をしていたり、ダムを調査したりといった経験をお持ちの方もいます。

それ以外にも、不動産調査や林業で木を切る仕事をしていた方もいますね。

このことからもわかるように、弊社は一般的なソフトウェアの会社と比べて多様な人材が集まっています。

編集部

やはりGISに関するソリューションを提供しているというということで、さまざまな専門性を持った人材が活躍できる場があるということでしょうか?

久本さん

GISという分野は、「どこにどんな木が何本あるか」「川の流れの速さがどのくらいか」「ボーリングで掘ったらどんな土が出るか」という情報を把握します。ですので、MIERUNEに在籍している社員はそれぞれの独自の専門性を生かすことができるのです。

また私たちのお客様も、民間の方もいれば行政の方もいるなど多種多様です。そういった様々なお客様に対して、在籍しているエキスパートの知見を組み合わせてソリューションを提供できるというのが弊社の最大の特徴ではないでしょうか。

編集部

さまざまなエキスパートが在籍している環境は、日々違った刺激を得られそうですね。

久本さん

MIERUNEの環境は一般的なソフトウェア開発会社とは違うものですから、とてもおもしろいと感じていますね。さまざまな世界を知ってみたいという方にとってはマッチする職場だと思います。

オープンでアクティブなカルチャー、社外向けの情報発信にも積極的


MIERUNE.incが月に一度開催している勉強会の様子
▲社外向けのイベントも積極的に開催している

編集部

MIERUNEさんのカルチャーを一言でいうと何でしょうか?

久本さん

MIERUNEのカルチャーは一言でいうと「オープンかつアクティブ」です。

先ほど古川が申し上げた通り、弊社はもともとオープンソースコミュニティーから誕生した会社です。そんなバックグラウンドを持っているため、会社の根本にオープン、アクティブな文化が根付いていますね。

立ち上げたメンバーもオープンな気質を持っているため、上がコンセプトをしっかりと示してビジネスを展開するという雰囲気があります。

オープンという観点でいえば、毎日朝会を実施して情報共有に努めています。週に3回朝会で「LT(ライトニングトーク)」というものを実施しているのですが、10分ぐらいでそれぞれが何かしら技術的なネタを共有する取り組みになっています。

また、隔週で社内勉強会も実施していますね。

編集部

社内で共有したり交流したりする取り組みを積極的に実施しているのですね。ほかに特徴的な取り組みはございますでしょうか?

久本さん

MIERUNEでは、毎月「MIERUNE BBQ(ミエルネバーベキュー)」というイベントを開催しています。これはオフラインで社外のエンジニアやデザイナーに集まっていただき、交流するという場です。毎回20~30名の方に来ていただけています。

そのほか、3カ月に1度のペースでオンラインイベント「MIERUNE JCT(ミエルネジャンクション)」というイベントも開催しています。これは位置情報に関するトレンドやテクノロジーについて共有するイベントです。

社内外からゲストをお呼びし、トレンドについて語っていただきます。こちらも毎回100名以上の応募がありますね。

また、ヨーロッパや韓国など海外のイベント、カンファレンスに出展したり登壇したりもしています。エンジニア関連の情報を発信しているサイト「Qiita」に記事を積極的に出稿しているなど、社外向けの情報発信にも努めています。

いろいろな取り組みをしていますが、行動の全ては「オープン」「アクティブ」というMIERUNEのカルチャーに帰結しますね。

編集部

オープンかつアクティブというカルチャーを体現するような取り組みを数多くされているのですね。

6名が北海道に移住、東京よりも暮らしやすさを感じる社員も

MIERUNEのインターン生発表会の様子

編集部

久本さんがMIERUNEさんに入社されたきっかけは何だったのでしょうか?

久本さん

以前オンラインでデータを可視化するコミュニティがあって、そこでたまたま古川と出会ったのです。古川からMIERUNEのことを聞いて、「北海道という地方都市で尖っていることをしているおもしろい会社」という印象を受けました。

北海道は土地が広いので、大規模農業をやっていたり、生態学の研究が進んでいたりといった環境にあるため、位置情報の研究や応用が盛んだという土台があります。そんな土台がある北海道でMIERUNEが活動しているという点に興味を持ち、入社に至りました。

編集部

実際に札幌で生活してみてどのような感想をお持ちでしょうか?

久本さん

私は札幌に移住して1年ほどになるのですが、とても良い場所だと感じています。

都市として札幌を見ても、200万都市で国内でも5番目の規模ということもあり、住む上で不便なこともありません。寒いイメージを持っていましたが、一般的な集合住宅だと防寒がしっかりされているので、むしろ東京にいるときよりも暖かく感じます。

少し足を伸ばせば自然もありますし、個人的には東京よりも暮らしやすいと感じていますね。

MIERUNEの社内の雰囲気

編集部

住環境は申し分ないということですね。MIERUNEの働く環境についてはいかがでしょうか?

久本さん

MIERUNEは地方にありますが、東京で仕事をするのに比べて仕事の質が落ちるということはないです。

これまで東京や西日本、イギリス、シンガポール、ニューヨークなどさまざまな場所で働いてきましたが、MIERUNEがあったからこそ札幌に移住して良かったと思っています。

弊社はアクティブにオープンソースで世界に進出していますので、世界でもトップレベルの仕事ができます。会社の形として、大きな顧客を獲得して一気に成長していくというものでもないですし、地方にいるからといってデメリットを感じたことはありません。

最先端で変わったことをしている会社ですが、私のようにフィットする者についてはとても楽しい環境にあると思います。

編集部

久本さんのように移住した社員さんは何名ほどいらっしゃるのでしょうか?

桐本さん

MIERUNEの入社がきっかけで北海道に移住した社員は、2022年は6名いました。久本だけでなくほかのメンバーからも「移住して良かった」という声をいただけていますので、これからもできるだけ長く在籍してくれたら嬉しいなと考えています。

位置情報の業界未経験でも活躍できる環境がある

宇宙データ関係イベントで登壇する古川さん

編集部

最後に、MIERUNEさんに興味を持っている方に向けてメッセージをお願いいたします。

久本さん

もともと位置情報に関する仕事をしてきた、かつソフトウェアエンジニアだったという方は少ないと思います。

私はもともと自然言語処理を専門にしてきましたが、データを扱うという抽象的な分野でどう表現するか、可視化するか、という部分におもしろさを感じてMIERUNEにジョインしました。

私自身の経験から、「位置情報はよくわからないから」という理由で弊社を避けてほしくないと思います。私たちの仕事は、ソフトウェアの力を活用して位置情報をどうしていくかというものです。ですので、ソフトウェアエンジニアの方にぜひ入社いただきたいです。

また、いろいろな新しいものを作りたい、世に出して貢献したい、新しいことを学びたい、という意欲のある方にはとても良い環境だと思います。ぜひ自分の分野を狭めることなく、気軽にご連絡ください。

古川さん

好奇心旺盛な方はMIERUNEに合っています。私には「批判的であるより好奇心を持て」という好きな言葉があるのですが、まさにそのようなカルチャーがある職場です。「こういうことをやればお客様や世界にとってプラスになるのではないか」ということを楽しんで考えられる方を歓迎したいです。

私たちの仕事では、システムやデータを使ってエンドユーザーに接触する機会もあります。そんなときに「すごい、この地図やシステムでよくわかる!」という声をかけてもらえます。エンドユーザーからこのような声をかけてもらえることは、本当に技術者冥利に尽きる言葉だと思いますし、「エンジニアに翼が生える瞬間」とも言われています。

そういった体験に喜びを感じる方に入社いただきたいですし、一緒に成長していきたいと考えています。

桐本さん

もしMIERUNEに興味を持っていただけたのであれば、採用目的ということでなくても一度お会いしたいです。MIERUNEのビジネスモデルやカルチャーというのは、言語化が難しい部分も多々あります。ですので、一度会ってお話しするのが一番良いかなと考えています。

もし採用につながらなかったとしても、一緒にコミュニティを運営するというケースもあるでしょう。業界の成長に一緒に貢献できればと思いますので、ぜひ一度お話しさせていただければと思います。

編集部

「業界に貢献していきたい」という思いと、オープンかつアクティブなカルチャーを感じました。本日はありがとうございました。

■取材協力
株式会社MIERUNE:https://mierune.co.jp/
採用ページ:https://mierune.co.jp/careers