空のインフラ整備を担うメトロウェザー。多様な人材が活躍する「るつぼ型」の会社とは

独自のビジネスとカルチャーで成長している企業を紹介する本企画。今回は、大気計測装置の開発・制作・販売などを展開しているメトロウェザー株式会社にお話を伺いました。

メトロウェザー株式会社とは

メトロウェザー株式会社のビジョン
▲メトロウェザー株式会社のビジョン「風を見える化し、空の安全を守る」(公式ページより)

京都大学発のスタートアップ企業であるメトロウェザー株式会社は「風を見える化し、空の安全を守る」をビジョンに掲げ、上空の風速や風向きを計測する「ドップラー・ライダー」の製造販売、レンタル事業を手掛けています。

メトロウェザー株式会社が独自で開発している装置が「Wind Guardian」で、性能を維持したまま他社製品よりも小型・低価格を実現しています。ドローンの活用や空飛ぶクルマ(※)の開発が進むなか、メトロウェザー株式会社が提供する技術は今後ますます求められていくでしょう。
(※)ここでの空飛ぶクルマは「自動で垂直に離着陸する電動の乗り物」を指す場合が多い。ドローンを大きくして乗車可能にしたようなタイプもあれば、ベースが電気自動車で自動制御システムやプロペラが設置されているタイプのものもある。

会社名 メトロウェザー株式会社
住所 京都府宇治市広野町茶屋裏18-1 タニヤマ大久保ビル 1F
事業内容 ・リモートセンシング技術を応用した大気計測装置の開発・製作・販売
・気象情報とIoTを組み合わせたマーケティングおよびソリューションの提供
・気象観測および予測データ、防災オペレーション支援情報の提供
設立 2015年5月13日
公式ページ https://www.metroweather.jp/

メトロウェザー株式会社は現在積極的に採用を行い、規模を拡大しています。新オフィスへの移転も果たし、急成長を続けているメトロウェザー株式会社の事業拡大の要因やカルチャーについて、代表取締役の古本さんと人事部長の小河さんにお話を伺いました。

本日お話を伺った方
メトロウェザー株式会社の古本淳一代表取締役

メトロウェザー株式会社
代表取締役

古本 淳一さん

メトロウェザー株式会社の小河泰隆人事部長

メトロウェザー株式会社
人事部長

小河 泰隆さん

「ドップラー・ライダー」を開発し、空のインフラ整備を担う

メトロウェザー株式会社が提供している「Wind Guardian」
▲メトロウェザー株式会社が独自で開発しているドップラー・ライダー「Wind Guardian」(公式ページより)

編集部

最初に、メトロウェザーさんの事業内容について教えてください。

古本さん

メトロウェザーは、上空の大気の状況をリアルタイムで観測する「ドップラー・ライダー」の製造販売、レンタル事業を展開しています。日本のみならず、世界ではドローンを活用した運送事業の実証実験や空飛ぶクルマの開発が進んでいます。

「エアモビリティー社会」が現実的になっている中で、メトロウェザーは「空のインフラ整備」を担っているのです。

風は見えないので普段から気にしている方は多くないと思いますが、見えないものを見える化すればどんなバリューが生まれるか、というところがメトロウェザーが突き詰めているものになります。

編集部

ドップラー・ライダーはどういった場所で活用されており、今後どんな場面での活用が期待されているのでしょうか?

古本さん

ドップラー・ライダーの活用場所としては、やはりモビリティーの分野が挙げられるでしょう。航空機やドローン、空飛ぶクルマの安全性を担保するために、ドップラー・ライダーは活用されているのです。

ほかにも、都市災害といった分野でもドップラー・ライダーの活躍が期待されています。例えば、高層ビルの屋上にドップラー・ライダーを設置することで、都市の上空の詳細な状況が分かります。積乱雲が発生している風の集まり、上昇気流など、ゲリラ豪雨が発生する兆候をつかむことができるのです。

また、風力発電においても、ドップラー・ライダーが活用されています。風力発電を展開する場合、事業計画地の風況を把握することが重要になってきます。ドップラー・ライダーを活用することで、より質の高い風況観測が実現するのです。

広範囲の風況を観測できるドップラー・ライダー

編集部

ドローンや空飛ぶクルマが当たり前になるためには、インフラ整備が欠かせないということに改めて気づかされました。ドップラー・ライダーについて、もう少し詳しく教えていただけますでしょうか?

古本さん

ドップラー・ライダーは、赤外線レーザーを使って大気中の微粒子や塵からの反射光を感知し、風速や風向きといった風況を観測する装置です。

風の状況を測るものとして風速計が挙げられますが、風速計で観測できるのは1地点だけです。その点、ドップラー・ライダーは広範囲の風況を観測できます。

編集部

ドップラー・ライダーが活躍している事例について教えてください。

古本さん

ドップラー・ライダーの導入先の一つである空港では、飛行機の離着時に活用されています。飛行機は、基本的に前から風を受けていると安定します。向かい風を受けることで浮力が働き、機体が浮くのです。一方、後ろから風を受けると、機体は不安定になります。

飛行機が上空をものすごいスピードで飛んでいる間は、常に向かい風となるので問題ありません。しかし、離着陸の際はどうしても減速しなければなりませんよね。そんなときに後ろから風を受けると、機体は不安定になってしまいます。こういった場面でドップラー・ライダーが活躍するのです。

また、ドローンや空飛ぶクルマは小型のバッテリーで動いています。ジェットエンジンで飛ぶ飛行機と違い、風の影響をより受けやすいのです。そのため、ドップラー・ライダーは必須となってきます。

編集部

私たちが知らないところで、大きく活躍していたのですね。ドップラー・ライダーを提供している企業はどれくらいあるのでしょうか?

古本さん

ドップラー・ライダーを提供している企業は、世界でも数社です。日本でドップラー・ライダーを提供しているのは、メトロウェザーを含め2社しかありません。

ドップラー・ライダーの「低価格」「小型化」で成長を実現

メトロウェザー株式会社のエントランス

編集部

メトロウェザーさんが開発・提供しているWind Guardianの特徴は何でしょうか?

古本さん

Wind Guardianの大きな特徴としては「低価格」「小型化」が挙げられます。機能は他社製のものと同等なうえで、価格は10分の1、サイズはテーブルに乗るほどのものなんです。一般的に、ドップラー・ライダーは電車で運ぶようなコンテナぐらいの大きさが普通なので、大きな違いがあります。

編集部

低価格、小型化を目指した背景はどういったものなのでしょうか?

古本さん

メトロウェザーは京都大学発のベンチャー企業で、もともと大学でドップラー・ライダーを研究していました。しかし、ドップラー・ライダーは一大学が簡単に買えないほど高価なものなんです。それこそ何億円という単位で、とても自分たちの研究のために買うことはできませんでした。

また、たとえ買えたとしても、大きすぎると持ち運びにも置き場所にも困りますよね。なので、「もっと小さくて、廉価なものを開発すればたくさん置けるのではないか」というところを出発点として開発が進みました。

編集部

自分たちの悩みを解決することが出発点だったのですね。Wind Guardianの利用シーンとしては、航空機というよりドローンや空飛ぶクルマが挙げられると思いますが、そこを想定しているのはなぜでしょうか?

古本さん

空港は、観測ネットワークが整っています。しかし、ドローンや空飛ぶクルマを飛ばす現場となると、観測のための環境が整っているところばかりではありません。かといって、空港で導入しているような大きいドップラー・ライダーを導入するのは非現実的です。

そこでメトロウェザーでは、ドローンや空飛ぶクルマを飛ばすシーンに合わせて、より小さく、より安くを追求してきたのです。

編集部

現在さまざまな場面で活用されているドローンなどのニーズに対応されているからこそ、成長を続けられているのではないかと感じました。

古本さん

おっしゃるとおり、売り上げも順調に伸びており、ニーズの高さを感じています。

コストパフォーマンスという言葉がありますが、安かろう悪かろうではだめだし、逆に性能が良くても高価すぎると買えませんよね。機能を維持しつつ、お手頃価格で買えるというのはやはり大切な側面だと思います。

編集部

大学での研究時にドップラー・ライダーを買えなかったという実体験が、事業にも生きているのですね。

厳しい指摘をするユーザーこそスタートアップ企業には必要

メトロウェザー株式会社の本社オフィスフリースペース

編集部

メトロウェザーさんが、サービスを展開する際に大事にされていることは何でしょうか?

古本さん

お客様がどういった要望を持っているかということを、実際にお客様に聞くことは大切にしています。特にスタートアップ企業の場合は、モノを作りながら事業開発を進めているところがあるため、MVP(ミニマム・バイアブル・プロダクト)が大事になってきますね。
(※)MVP(ミニマム・バイアブル・プロダクト)とは、顧客に価値を提供できるだけの最小限の機能にしぼったシンプルなプロダクトのこと。完成品を提供するのではなく、ユーザーからのフィードバックをもとにプロダクトを改良することを目指す。

仮説を立てつつ、お客様の声を聞いてお客様の課題を解決するための製品を高スピードで作っていかなければなりません。

編集部

特に大事にしているお客様の声は何でしょうか?

古本さん

一番大切にしているのは、「これじゃだめだ」と言ってくれるお客様です。基本的に、お客様は「これはいいね」と言ってくださるケースが多いです。でも、本当の熱狂的なファンは「こんな製品じゃ自分たちは使えない」と言ってくださるお客様だと思うんです。

メトロウェザーが好きだからこそ、厳しいことをあえて言ってくださる。お客様とそんな関係性を作ることが、スタートアップには求められるのではないでしょうか。

編集部

厳しい言葉を受けて、サービスをブラッシュアップしていくという過程を大事にされているのでしょうか?

古本さん

お客様の声をサービスに反映させるというフェーズは、重要なものだと認識しています。サービスが本当にモノになるのか分からない段階でお付き合いいただいたお客様もいらっしゃいます。そんなお客様がいるからこそ、メトロウェザーは生き残ってこれたのです。

市場規模を拡大し、アメリカを中心とした海外展開を目指す

編集部

メトロウェザーさんの今後の事業展開について教えてください。

古本さん

私たちは、新しい市場を開拓していくことに努めていきます。ドップラー・ライダーの市場規模は数百億円と、現状では市場規模が決して大きくはありません。なので、ドローンや空飛ぶクルマなど、市場規模自体を大きくしていくことが求められるでしょう。

また、日本だけとなると、やはり厳しいものがあります。決して楽な道ではありませんが、海外にも目を向けていく必要はあると考えています。

編集部

海外展開という部分で言えば、どこの国を対象にしていくのでしょうか?

古本さん

アメリカの市場が主戦場になってくると思います。アメリカは、知的財産権や商売のルールが日本と近いです。そういう意味でも、戦いやすい市場なのかなと思います。

編集部

世界の空のインフラ整備をメトロウェザーさんが担うというのは、すごく夢のある話だと感じました!

社員が増えると同時に進む組織のルール作り

メトロウェザー株式会社の本社執務フロア

編集部

メトロウェザーさんはもともと京大発のスタートアップ企業ということで、会社の雰囲気としても大学の研究室のような雰囲気なのでしょうか?

古本さん

社員が少ない頃は大学の研究室のような雰囲気もありましたが、社員が増えてきた今は大学色は消えつつあります。1年前の社員数は5、6人ほどでしたが、今では20数名います。なので、どうやってチームを作っていくのかという部分に取り組んでいるところです。

編集部

チームを作るうえで必要になってくるものは何でしょうか?

古本さん

少人数だったら仕組みがなくても仕事は回るところがありますが、人数が増えていくとそうはいきません。これから40、50人と社員数を増やしていく上では、ある程度のルールや仕組みが必要になってくるでしょう。

ルールや仕組みを作ることで、意思決定やPDCAサイクルのスピードが速くなります。メトロウェザーはスタートアップ企業です。大企業と戦っていくために、どうしてもスピードが重要になってきます。意思決定のスピードを速めないと、資本力のある大企業には負けてしまいますよね。

スピードというのは大企業と戦うためというだけでなく、社会の流れよりも早く動くためにも必要です。スタートアップ企業なので、社会の変化の速さに比べて周回遅れになってしまってはいけません。

お客様のために「スピード感」と「柔軟性」を重視するカルチャー

編集部

スピードが求められる組織ということで、社員個人にもスピード感が求められそうですね。

古本さん

メトロウェザーで働くうえでは、「失敗してもいいから早くやる」という姿勢が求められます。とにかく場数を踏むこと、打席に立つことが重要です。

うまくいったとしても、もしかしたらラッキーヒットかもしれません。打席に立ってたとしても、凡退してしまうこともあるでしょう。でも、打席に入らないと何も始まりませんよね。

編集部

とにかく場数を踏んで、高速で改善していくという姿勢が求められるのですね。ほかに、社員に求められることは何でしょうか?

古本さん

メトロウェザーの社員はスピード感以外にも、柔軟性も求められます。100人規模のチームならばポジションが決まってくると思いますが、メトロウェザーの規模であれば、ある程度広いポジションに就くことが求められます。

また野球に例えさせていただきますが、「自分はサードだけ」というわけではなく「やっぱりファーストがやりやすい」というのも全く問題ありません。

小回りが利く規模なので、「自分はこういった専門家だ」という姿勢よりも、「会社が自分に何を求めていて、自分には何ができるか」という広い観点で働くことが求められます。

編集部

スピード、柔軟性という部分はお客様と向き合う際にも必要になってきます。

古本さん

やはりお客様が第一です。大学の研究であれば「自分たちが作りたいものを作る」という姿勢で良いですが、企業としてはお客さんが求めているものを作らなければなりません。「こんな良いものを作りたい」と言っても、お客様が「いらない」と言ってしまえば商売になりません。

なので、お客様のために柔軟に機能を変えていく必要があります。モノづくりというと1個の製品を作るのに半年ほどかかるものですが、一つ一つの作業のPDCAサイクルはものすごいスピードで回っています。1週間経てばもう過去の話、というような感覚です。

製品に必要な部品一つでも在庫がない、でも工程を進める必要がある。なので設計を変える。そういったことが起こりがちなので、メトロウェザーの社員はみんな柔軟な対応を日々していると思います。

編集部

製品を作るということがゴールではなく、あくまでお客様の課題を解決することがゴールということですね。いち早く柔軟な対応を取ることが求められる職場であることが分かります。

さまざまなプロが集まる「るつぼ」のような組織で成長できる

編集部

京大発のスタートアップ企業ということで、やはり京大出身の方が多いのでしょうか?

小河さん

決してそういう訳ではありません。エンジニアを中心にさまざまな経験・スキルを持った方がメトロウェザーの事業、技術に関心を持って入社してくださっています。

現在も我が社ではエンジニアをはじめ、採用を活発化させており、毎月のようにさまざまな専門性を持った人材に入社いただいています。

編集部

メトロウェザーに在籍しているエンジニアは、どういった業界から入社されているのでしょうか?

古本さん

メトロウェザーにいるエンジニアは、さまざまな分野から入社しています。社員の半数はエンジニアなのですが、例えばクラウドのエンジニアであったり、ハードウェアのエンジニアだったり、光学機械を扱っていたりと多様です。

いろいろな専門性を組み込んで、メトロウェザーの製品ができています。だからこそ先ほどお伝えした通り、自分の専門性だけでなく、さまざまな視点が求められます。

メトロウェザー株式会社の古本淳一代表取締役
▲「メトロウェザーは『るつぼ』のような会社」と話す古本さん

編集部

それぞれが培った専門性を混ぜ合わせているからこそ、独自の製品を生み出せているのですね。

古本さん

メトロウェザーは「るつぼ」のような会社です。金属と金属を溶かしてるつぼで混ぜ合わせて合金を作るように、それぞれの専門性を混ぜ合わせることで専門性を飛び越えた違う何かができます。

専門性と言ったら技術職だけでなく、会計や経理、知的財産といった専門性も含まれます。メトロウェザーでは管理系の人材もいますしね。技術職以外でも、自分の専門性を思っていたのと違う形で生かせる環境があると言えるでしょう。

編集部

メトロウェザーさんに入社することで、今まで考えてこなかったような成長が期待できそうです。

古本さん

スタートアップ企業ということで、まだ進め方が確立できていない部分があります。だからこそ、さまざまな経験をたくさん積めるのではないかと思います。

自分の持っているスキルを、全く違うものに成長させることができる環境があるので、自分の視野を広げたいという方にはぜひ入社してほしいですね。

編集部

スタートアップ企業ということで、今後の成長が期待できますが、個人としても幅広く、大きく成長できる会社だと感じました。本日はありがとうございました。

■取材協力
メトロウェザー株式会社:https://www.metroweather.jp/
採用ページ:https://www.metroweather.jp/recruit