KUROFUNEが挑むのは労働市場の開国。国籍・性別にとらわれない働き方

さまざまな企業の魅力や取り組みを紹介していくこの企画。今回は、在日外国人の方向けに生活支援事業を展開するスタートアップ企業「KUROFUNE株式会社」を取材させていただきました。

KUROFUNE株式会社とは

KUROFUNE株式会社は、外国人の方向けに生活支援事業を展開するスタートアップ企業です。「外国人が働きやすい・住みやすい日本社会の実現」をビジョンに掲げ、外国人の人材紹介や生a活支援アプリの開発、在日外国人向け情報メディアの運営などを行っています。

また、メンバーの70~80%が在日外国人というグローバルな労働環境で、外国人の方をはじめ女性メンバーなども活躍しやすい、多様性を重視した働き方が魅力です。

会社名 KUROFUNE株式会社
住所 愛知県名古屋市西区那古野2-14-1 なごのキャンパス2-6
事業内容 外国人の方の生活支援事業
・人材紹介
・在日外国人向けメディア「WABISABI-MEDIA」の開発・運営
・在日外国人支援アプリ「KUROFUNE LIFE SUPPORT」の開発・運営
設立 2018年2月15日
公式ページ http://kurofune-inc.com/
働き方 ・リモートワーク
・海外・国内の拠点勤務
・ライフイベントに合わせた時短勤務などの相談可

今回は、SDGsに関連した働き方を中心に、事業の詳細や採用活動におけるポイントについて、代表取締役・倉片りょうさんにお話を伺いました。

本日お話を伺った方
KUROFUNE株式会社 代表取締役 倉片りょうさん

KUROFUNE株式会社
代表取締役

倉片りょうさん

「外国人が活躍できる社会」を目指し生活支援事業を展開

KUROFUNE株式会社が掲げるビジョン
▲KUROFUNE株式会社では、外国人が活躍できる社会をビジョンに掲げている(引用元:コーポレートサイト

編集部

まず、KUROFUNEさんの事業内容についてお話しいただけますでしょうか。

倉片さん

弊社は2018年創業したスタートアップで、過去2回ほど資金調達をしながら事業を急拡大してる企業です。愛知県名古屋市に本社を構えており、営業拠点である静岡県浜松市とフィリピンのセブ島にはITの開発拠点があります。計3拠点で業務を行っていますね。

創業当初から外国人の方の就労環境を整えたいという思いがあり、人材紹介ビジネス事業を開始しました。仕事を通して外国人の方々と接する機会が増える中で、日本での生活に関する不安を抱える方が多いと知り、続いて生活支援事業も立ち上げました。

生活支援事業の一つに、2022年の11月に稼働した生活支援アプリ「KUROFUNE LIFE SUPPORT」があります。外国人の方が生活の不便を解消できるような、多彩なサービスを導入しました。

編集部

このようなサービスはNPOやNGO団体が取り組むケースが多い中、営利企業という形で提供しているのは珍しいですね。

倉片さん

そうかもしれませんね。NPO法人や政府を批判するわけではないですが、担当者が変わると一気に方針も変わるので、継続して安定したサービスを提供する点においては政府では難しいこともあると思います。

また、NPO法人の場合、自治体の仕事を引き受けたり寄付金で成り立っていたりするので、事業を継続するというよりニッチな分野にアナログなサービスを提供することが多いという印象です。

一方で我々のような企業で行った場合、ゴーイング・コンサーン(※)という形で資金調達をしてサービスを拡充し、利益をしっかりとあげて、その利益をさらにサービス拡充のために再投資することによって事業拡大ができます。このような営利企業のスタイルのほうが、事業を継続できて安定的に多くの外国人の方をサポートできると思い、株式会社という形態でやっております。
(※)ゴーイング・コンサーン:企業が将来にわたって存続していくという前提のこと。

7つの便利機能搭載「KUROFUNE LIFE SUPPORT」

KUROFUNE株式会社が提供する日本在住外国人向け支援アプリ
▲日本在住の外国人向け支援アプリ「KUROFUNE LIFE SUPPORT」(引用元:公式アプリ専用サイト

編集部

生活支援アプリ「KUROFUNE LIFE SUPPORT」では、具体的にどのようなサービスが利用できるのでしょうか。

倉片さん

「KUROFUNE LIFE SUPPORT」では7つのサービスを提供していて、そのうち4つが無料で利用いただけます(2023年3月時点)。

まず、無料で利用できる4つのサービスとは、チャットボットを利用した「24時間生活相談サービス」、母国語で医薬品が購入できる「オンライン薬局サービス」、ポイントをアプリ内で利用できる「ポイントシステム」、日本のお土産を購入・発送できる「お土産サービス」です。

有料プランでは、年最大110万円まで支給される「所得補償保険の提供」、低額手数料で送金できる「海外送金サービス」、レベルに合わせて日本語が学べる「オンラインの日本語教育」の3つが加わった、7つのサービス全てが利用できます。

現在アプリに導入しているサービスは7つですが、今後もさらに日本に住む外国人の方々の生活をサポートできるように、便利な新サービスを開発・追加していきたいと考えています。

7カ国のメンバーがジョインするグローバルな企業

KUROFUNE株式会社で働く外国人メンバーと倉片さん
▲フィリピン、ベトナムなどアジア圏の出身者が多く在籍する

編集部

KUROFUNEさんではさまざまな国籍の方が働いていますが、何カ国くらいの方がジョインされているのでしょうか。

倉片さん

メンバーとしては7カ国です。2023年3月時点でメンバーは14人いるのですが、そのうち11人が外国人の方ですね。実は私を含めて日本人は3人しかいないんですよ。

国籍で言うと、フィリピンやベトナム、中国、インドネシア、ネパール、台湾出身の方が働いています。今は8カ国目の方を採用しようと考えているところです。

編集部

多国籍な人材が多い中、コミュニケーションは何語で行っているのでしょうか。

倉片さん

日本語で行っています。外国人のメンバー全員が日本語・英語・母国語を喋れるので、日々のコミュニケーションは日本語ですね。場合によっては英語でフォローアップすることもあります。

他国の文化・意見を尊重し合うフラットな環境

KUROFUNE株式会社のインドネシアのメンバーとの打ち合わせのようす
▲インドネシアのメンバーとの打ち合わせのようす。母国の文化に合った働き方が可能

編集部

多様な国籍の方が集まる会社として、意識していることはありますか?

倉片さん

やはり会社全体として、ダイバーシティを非常に意識しています。

日本社会は他国に比べると、やはり島国ということもありコミュニティが狭く、アイデアが凝り固まりやすいかなと感じます。一方でKUROFUNEは多国籍なので、それぞれの文化や意見を尊重して多様性を広げていますね。

また、ここ数年でダイバーシティ経営が浸透してきましたが、KUROFUNEとしても業務上さらに経営にダイバーシティを取り入れたいと考えているところです。

多国籍ならではの多様な視点から見た意見が飛び交う

KUROFUNE株式会社のIT開発拠点セブ島で働くメンバー
▲外国人メンバーの意見を積極的に取り入れ、サービス向上を図っている

編集部

多国籍な企業であることは、事業を進めていく上でも影響しているのでしょうか。

倉片さん

そうですね。例えばサービスの企画段階で考えることなのですが、価格にシビアな国がある一方で、人とのつながりなどのコミュニケーションを優先する考えの国もあります。あるいは機能性を重視するなど、国によって視点や価値観が違いますよね。そのため、私たちのサービスを各国にプロモーションするためにはどうしたらいいのかといったディスカッションをよく行っています。

KUROFUNEのエンドユーザーは外国人の方なので、外国人の方の視点から捉える意見は貴重です。日本人が思いつかないアイデアが飛び交う環境は、KUROFUNEならではの魅力とも言えるので大事にしています。

編集部

「KUROFUNE LIFE SUPPORT」に導入された薬局サービスなども、外国人の方が抱える悩みをヒントに開発したのでしょうか。

倉片さん

はい。サービスを提供する前にメンバーにヒアリングをしたり、イベントで一般の方に悩みを聞いたりする場合もあります。

ヒアリング後はWeb上で300~400人くらいを対象にアンケート形式の市場調査を行い、詳細を決めていきます。例えばオンライン薬局サービスであれば、薬の購入頻度や外国製の薬がない場合の代替手段などを調査して把握する感じです。

編集部

調査結果と外国人の方ならではのアイデアを参考に、サービスの詳細を決定していくのですね。

スピード感と柔軟性のある働き方

編集部

KUROFUNEさんの働き方に関する特徴を教えていただけますか?

倉片さん

仕事のスピード感は非常にあると感じていますね。2023年は今ある7つのサービスを12個まで増やそうという計画を立てていて、この短期間でサービスを作るための時間を確保しています。

アイデアをサービス化するまでのスピードが早く、短期間で事業拡大や新事業の立ち上げができると自負しています。大型サービスだと少し時間がかかりますが、早いもので2、3カ月で完成したプロジェクトもありますよ。

編集部

スピード感を持って仕事ができる環境作りをしているのでしょうか。

倉片さん

弊社では「いつまでに、誰が、何をするべきか」を全員でディスカッションしているのですが、スケジュール設定を会社全体でマネジメントしているのが特徴ですね。

また、日本はバーティカルな縦型の組織が多いですが、KUROFUNEはフラットな組織で意見が出しやすい点も仕事がスムーズに進む要因だと考えます。ボトムアップでアイデアを出し合い、スケジュールも全員で確定するのがスピード感を持つコツかなと思いますね。

リモート・他拠点勤務でも対面の機会を設ける

KUROFUNE株式会社に勤めるメンバーのオフの様子
▲メンバー全員で顔を合わせるために、定期的に食事会や交流会を実施している

編集部

他拠点のメンバーとのコミュニケーションは、Slackやオンラインミーティングでとられているのでしょうか。

倉片さん

はい、オンラインを通してコミュニケーションを図っています。ただ、円滑に仕事を進めるには顔を合わせることが大事だと思っているので、食事会や交流会を通してメンバー全員と顔を合わせる機会を設けていますね。

海外拠点のメンバーまで集めることは難しいですが、月に1回または2カ月に1回のペースで東京のメンバーを含めて集まる工夫をしています。

編集部

定期的にメンバーと対面することで、良好な信頼関係が築けそうですね。

ライフイベントに柔軟に対応。女性活躍を促進

編集部

KUROFUNEさんで働くメンバーは女性が多いようですが、女性活躍を推進するようなサポート制度を導入しているのでしょうか。

倉片さん

会社としては性別は特に意識していなくて、女性を優遇するような制度も特に設けていません。気がついたら14人いるうちの10人が女性という状態で、女性社員が70から80%と圧倒的に多くなっていました。面接においても男女分け隔てなく採用していますが、結果的に女性の方が定着しやすかったり活躍したりする傾向があります。

女性を優遇するような制度はないですが、これから出産を迎え産休に入る方には無理にオフィス勤務をすることがないよう考慮していますし、女性特有の月ごとの体調不良にも対応しています。誰に何をしてほしいかSlackで情報共有しているのでその点は問題ありません。

ダイバーシティを尊重する社風だからかもしれませんが、オフィス勤務にこだわりがなく、ライフイベントに合わせて働き方を変えられます。だからKUROFUNEでは女性の活躍が目立ち、定着率も良いのかもしれません。

編集部

男女分け隔てないという点が、ダイバーシティの理念そのものだと感じました。なお、出社とリモートワークの割合はどのくらいでしょうか。

倉片さん

基本は名古屋の本社勤務なので、リモートワークをしているのは少数です。本社があるオフィスビル内にコワーキング向けのレンタルオフィスが併設されているのですが、系列のレンタルオフィスを利用すれば東京でも仕事ができます。

採用基準は多様な視点と幅広く学ぶ姿勢

KUROFUNE株式会社代表取締役の倉片さん
▲「国籍の違いを超えて全員が同じビジョンに向かって働いている」と話す倉片さん

編集部

採用活動において、どのような方がKUROFUNEさんにマッチすると考えますか?

倉片さん

KUROFUNEは「外国人の方と働きたい」「海外とつながる仕事がしたい」という方にとっては非常に興味がある会社だと思います。言い換えると、海外に触れた経験がない方は敬遠してしまうかもしれません。

ネパール人や中国人、ベトナム人など多国籍の社員と働ける環境はあまりないのではないかと思います。ちなみに、私のデスクの向かいではフィリピン人がいて、隣にはベトナム人が働いています。

編集部

メンバーも増えていて勢いがあるように感じますが、さまざまなプロジェクトにも挑戦できるのでしょうか。

倉片さん

もちろんです。2022年の1年間でメンバーが増えて業務範囲も広がっているので、率先していろんなプロジェクトに挑戦してほしいですね。

さらに1年後にはメンバーが倍近く増えている可能性もあるため、今後はさまざまな事業に携わる機会も増えるのではないでしょうか。

「一緒に働きたいかどうか」というフィーリングを重視

編集部

KUROFUNEさんが、面接時に重視しているポイントがあれば教えてください。

倉片さん

やっぱりフィーリングでしょうか。人材紹介事業をしているので、どの企業面接にも通用するような内容や聞こえの良い言葉はすぐに見抜けます。

そのため、言葉より第一印象を大事にしていますね。一緒に働きたいかどうかという点が課題なので、企業側だけでなく双方のフィーリングが大事かなと感じています。

編集部

多くの方々をマッチングさせるプロとしては、言葉だけでなくフィーリングも大事なんですね。

倉片さん

おっしゃるとおりです。そのフィーリングをつかむため、KUROFUNEに興味を持っていただいた方は、まずはコンタクトを取って気軽にメンバーと話していただければと思います。その上でお互いに「一緒に働きたい」と感じたのであれば、間違いなくフィットすると思います。

外国人の方と一緒に働きながら、スタートアップの一員として仕事の幅を広げていきたいという方は、ぜひお声がけください。

編集部

外国人のメンバーの採用や自由度の高い働き方の導入など、SDGsに取り組むKUROFUNEさんでは、一つの価値観にこだわらず多様な視点を持って働ける方がフィットすると言えますね。

また、拡大中のフェーズなので、開発や意思決定などのさまざまなシーンにおいて、スピード感も必要だと感じました。

ご協力いただきありがとうございました。

■取材協力
株式会社KUROFUNE:http://kurofune-inc.com/
採用ページ:http://kurofune-inc.com/recruit.php