アクティブシニアを支援する株式会社ぴんぴんころり。働き方と笑顔が連鎖する仕組み

理念やミッションを大切にしながら新しいビジネスを展開し、成長を続ける注目企業をインタビューする本企画。今回は、「笑顔の連鎖」を理念に掲げ、高齢者が生き生きと活躍できる場を作っている株式会社ぴんぴんころりにお話を伺いました。

株式会社ぴんぴんころりとは

株式会社ぴんぴんころりの理念「笑顔の連鎖」とビジョン「高齢者の生きがいを創出し、生涯現役社会をつくる」
▲株式会社ぴんぴんころりの理念とビジョン(公式サイトから引用)

2017年に設立された株式会社ぴんぴんころりは、高齢者支援やシニアの健康、生きがいの創造に関する事業を展開している企業です。主事業はアクティブシニアがまるで親子のような関係で子育て世帯のサポートを行う「東京かあさん」で、”お母さん”として1,300人ほどのワーカーが登録しています

そんな株式会社ぴんぴんころりの理念は「笑顔の連鎖」、ビジョンは「高齢者の生きがいを創出し、生涯現役社会をつくる」。高齢者が活躍することで、シニア世代はもちろん、それ以外の世代にも笑顔を広げるべく事業を展開しています。

会社名 株式会社ぴんぴんころり
住所 東京都品川区東五反田2-5-2

THE CASK GOTANDA 605
事業内容 1.高齢者支援

2.シニアのデータベースの構築及び運用

3.シニアの健康及び生きがいの創造に関する事業

4.webサイト、アプリの開発
設立 2017年7月12日
公式ページ https://kasan.tokyo/corp/

株式会社ぴんぴんころりの事業は、社会的意義の高いものです。そのため、集まるメンバーは優しさや思いやりを持っており、「心理的安全性」の高い企業風土を作り上げています。

今回は代表取締役の小日向えりさんに、サービスが誕生したきっかけや会社のカルチャー、採用において大切にしていることなどについてお話を伺いました。

本日お話を伺った方
株式会社ぴんぴんころり代表の小日向えりさん

株式会社ぴんぴんころり
代表取締役

小日向えりさん

(Photo by @ikkku_camera.kamakura)

「おせっかい」が魅力の“お母さん”出張サービスを展開

株式会社ぴんぴんころりが提供する「東京かあさん」のサービス内容
▲「東京かあさん」では、料理や掃除以外にもさまざまなサポートを提供している

編集部

まずは、ぴんぴんころりさんの事業内容について教えてください。

小日向さん

ぴんぴんころりでは、“お母さん”出張サービス「東京かあさん」を展開しています。

東京かあさんは、一言で説明すると「もう1人のお母さんを持てるサービス」です。東京かあさんに登録している“お母さん”が利用者の自宅に訪問し、掃除や料理、子育てのヘルプなどを担います。

東京かあさんのサービスは家事代行やベビーシッターと似ていますが、大きな違いは「提案型のサポート」を提供している点です。サービスのコンセプトとして掲げているのは「おせっかい」。利用者がお願いしたこと以外にも、幅広くサービスを提案しています。

例えば、「シャツのボタンを補修する」といった小さなことから、「子育ての悩みを聞く」なんてことも依頼可能です。肉体的・精神的な負担が高くない限り、お母さんができることならばなんでもさせていただいております。

編集部

家事代行やベビーシッターとは異なるサービスということですね?

小日向さん

家事代行だと家事代行、ベビーシッターだとベビーシッターのみと、それぞれ専門分野が特化されている代行サービスが多いですよね。その点、東京かあさんは業務の幅を決めずサービスを提供しています。「実家の両親がいたらお願いしたいな」と思うようなことを柔軟にお願いできるという点が最大の違いですね。

また、家事代行サービスやベビーシッターでは利用ごとに担当者が違うというケースも多いと思いますが、東京かあさんは専任制です。お母さんと利用者の契約を「親子契約」と呼んでいるのですが、スタッフ同行のもと、お試しでお母さんにサポートしてもらったうえで親子契約を結んでいただいております。

働いてやりがいを感じることが、シニアにとってのビタミン剤となる

株式会社ぴんぴんころりのサービス「東京かあさん」のイメージ

編集部

東京かあさんが生まれた背景はどういったものでしょうか?

小日向さん

私の祖母は80歳まで働いていたのですが、仕事を辞めてから元気がなくなってしまいました。結局は怪我で入院してしまうのですが、おばあちゃん子だった私はとてもショックを受けたんです。

そんな経験から、やはり働くことが高齢者にとってのビタミン剤なのではないかと考えるようになりました。そこで、シニアがずっと元気で続けられ、かつ需要が伸びている仕事は何だろうと考えて思い浮かんだのが、ベビーシッターや家事代行だったんです。

編集部

利用者側の課題というよりワーカー側の課題から生まれたサービスだったのですね。

小日向さん

そうですね。他のベビーシッターや家事代行のサービスだと、利用者側の困りごとを解決するために作られたものが多いと思います。東京かあさんは、働き手のお母さんの課題を解決したいという思いで立ち上げたサービスだといえますね。

お母さんとしてサポートしている方からは、「本当の家族のように大切に感じてお世話をするのがやりがい」「自分が頼りにされているというのが嬉しい」という声をいただいています。

編集部

利用者の反応はどうでしょうか?

小日向さん

育児や家事など物理的なサポートはもちろんですが、精神的なサポートにもなれているのかなと思います。「お母さんが来てくれるということですごく心が楽になった」という声をいただくこともありますね。

編集部

小日向さんの個人的な体験がきっかけで生まれた「東京かあさん」が、今ではワーカー・ユーザーともに多くの方に喜んでいただけるサービスになっているんですね。

社会情勢の変化を乗り越え、毎年220%の成長を遂げる

株式会社ぴんぴんころりのサービス「東京かあさん」のイメージ

編集部

ぴんぴんころりさんが創業された際のお話をお聞かせください。

小日向さん

ぴんぴんころりは2017年に創業しましたが、直後は別のサービスを展開していました。その後、方向転換し、東京かあさんが生まれたのは2019年3月末です。

編集部

サービスが誕生したころの手応えはいかがだったでしょうか?

小日向さん

東京かあさんがローンチした直後から、手応えは感じていましたね。私はもともと芸能活動をしておりまして、創業後も事業と並行していたのですが、2019年末に芸能の仕事を辞めて東京かあさんに専念することとしました。

翌2020年5月に芸能活動を正式に引退することになったのですが、ちょうどその時に社会情勢が変わってしまい、対面サービス自体が暗礁に乗り上げてしまったんです。

編集部

当時はどういった状況だったのでしょうか?

小日向さん

成長はもちろんですが、それ以上に「会社を倒産させない」という思いでやってきました。

事業に専念したのにも関わらず、利用者の申し込みやお母さんの登録が減ってしまい、成長速度も想定していた7割減でした。どうしても対面で提供するサービスですので、難しい部分があります。「別の新規事業を展開したほうが良いのではないか」と経営判断を迫られる状況が続きましたね。

それでも、東京かあさんに対する根強いニーズはありました。こういった状況の中でも、「やっぱり利用したい」という方もいらしゃったんです。「とにかく今の状況を乗り切ろう」という目標で今日まで進んできました。

編集部

社会情勢の変化もあり、想定よりも厳しい状況が続いたと思いますが、現状はいかがでしょうか?

小日向さん

これまで、売り上げとしては毎年約120%増のプラス220%で推移しています。本来であれば2.5倍~3倍くらいのスピードで成長する想定だったので物足りない面はありますが、それでもおかげさまで継続して成長できていますね。

利用者とワーカーのニーズが合致したのが成長の理由

編集部

利用者から見て、東京かあさんへの根強いニーズがある理由としてどんなことが考えられるでしょうか?

小日向さん

利用者側から見ると共働きのご家庭が増えていて、育児と家事でキャパオーバーというケースが増えてきています。育児も家事も柔軟にお願いしたいというニーズは確実にありますね。

また、仕事と家庭でいっぱいいっぱいで心の余裕がなかったり、孤独を感じたりしている子育てママさんも多いと思うんですよね。そんな方にすごく刺さったと考えています。

編集部

ワーカーとして働かれているシニアの方々からの意見などはあるのでしょうか?

小日向さん

ワーカー側からすると、人生100年時代になってきています。65歳で定年を迎えてもあと30年動けるという世の中になってきている中で、エネルギーを持て余していて、誰かの役に立ちたいという方も増えているでしょう。

このような事情がある中で、東京かあさんはワーカーと利用者のニーズがはまったサービスなのではないかなと思っています。

編集部

まさに、先ほどおっしゃった「働くことで高齢者が元気になる」という状況を作り出せていますね。

小日向さん

老後と呼ばれる時期では、余暇を利用して遊ぶというのも生きがいの一つではあると思います。しかし、「社会の役に立ちたい」という要求は、65歳を過ぎても芽生えるものだと思います。「何かを後世に残したい」という気持ちは、生きているうちは年々大きくなっていくものなのではないでしょうか。

編集部

今後はどのようなことに力を入れていきたいとお考えでしょうか?

小日向さん

LINEで育児や家事のお悩みを相談できるAIツール「かめ子かあさん」を開発するなど、新たな取り組みにはすでに力を入れています。また、東京かあさんの企業向け福利厚生サービスも展開しておりますので、そちらも広げていきたいですね。

ビジョンやサービスへの共感が活躍のカギ

株式会社ぴんぴんころりのオフィスの様子

編集部

現在、ぴんぴんころりさんの社員は何名いらっしゃるのでしょうか?

小日向さん

私やフルタイムの業務委託も入れて10名ほどです。平均年齢は30代前半ぐらいだと思います。

編集部

どんな社員が活躍しているのでしょうか?

小日向さん

ぴんぴんころりのビジョンは「高齢者の生きがいを創出し、生涯現役社会をつくる」です。このビジョンやサービスに共感してくれるかというのは、活躍できるかどうかという点でも非常に重要ですね。

利用者やお母さんと接するスタッフをカスタマーサクセス(CS)と呼んでいるのですが、CSに求められるのはホスピタリティやサービス精神です。ビジョンに対する共感がないと、能力はあっても真心を持って利用者とお母さんに接することはできないのではないかと考えています。

編集部

具体的にCSが担う業務としては何が挙げられますか?

小日向さん

利用者からご依頼が来た場合に、電話でご要望の詳細をヒアリングするのが主な業務です。そのヒアリングの結果をもとに行うのが、利用者にぴったりのお母さん探しです。お母さんが見つかったら、利用者にお声掛けして顔合わせの日程調整を進めます。

「縁の下の力持ち」として活躍する社外のママスタッフ

株式会社ぴんぴんころりの2022年夏社員合宿の様子

編集部

「東京かあさん」の利用者が増えていく中で、CSの負担も大きくなっていくのではないでしょうか?

小日向さん

おっしゃるとおりリソースが不足しているという課題を感じ、2022年の春ごろからCS業務の委託を進めています。社員から切り出せる業務は外部に切り出していこうという方針です。

サービスの売り上げが止まってきたとき、マッチングのスピード感に課題を感じていました。社員のリソースに限界を感じていたことも、業務委託を進めることになった理由の一つです。体制を変更してからは、営業力の面でも改善されましたね。

編集部

委託先のスタッフはどんな方が多いのでしょうか?

小日向さん

依頼したのは主に子育て中の主婦の方で、在宅でコールセンターやライティングの仕事をされているという方が多いですね。

元々弊社でメディアを運営するとなったときに、ライターの方にご協力いただくことはあったんです。そこで、CSの一部の業務で募集をかけると大きな反響がありました。「東京かあさん」のサービスの内容に共感いただいた方がすごく多かったんです。

スタッフの中には子育て中のママも多く、子育てでキャリアを諦めざるを得なかった方もいらっしゃるので、サービスを利用する方の気持ちがわかるというのが大きいんですよ。現在も全国の主婦の方が活躍してくださっており、縁の下の力持ちのような存在です。

編集部

業務委託のスタッフの皆さんは、サービスの目的に共感しているのでモチベーションも高いほか、「東京かあさん」の利用者の気持ちもわかるので活躍されているんですね。シニア、そして女性の皆さんが笑顔で働ける仕組みをつくっているぴんぴんころりさんの事業は、社会全体にも貢献されていると感じました。

「心理的安全性」が高く優しいメンバーが多い会社

株式会社ぴんぴんころりのクリスマス会の様子
▲ワーカー(お母さん)の皆さんと一緒に実施したクリスマス会のようす

編集部

会社の雰囲気を一言で言うとどういったイメージになるでしょうか?

小日向さん

他の会社に関わることもある業務委託のメンバーからは、ぴんぴんころりは「心理的安全性がとても高い優しい会社」というように言ってもらえます。

ぴんぴんころりのサービスは高齢者や子育て世帯の支援というように、社会的意義が高いといえると思います。そんな弊社のサービスに関わりたいという方は、やはり優しさや思いやりをもった人が集まってきてくれるのかなと感じています。

編集部

公式サイトなどを拝見すると、ぴんぴんころりさんはメンバー間の交流が活発で、和気あいあいとした雰囲気を感じました。

小日向さん

そうですね。メンバー同士でランチに行ったり飲みに行ったりしながらコミュニケーションを取っています。私自身が興味を持っていることもあり、心理的安全性の勉強会も開催していますね。それぞれがおもしろいと感じたことや興味を持ったことについてスライドにまとめてくれて、それを勉強会でシェアするといったこともあります。

「ぴんぴんころり」の理念に共感し、成長したいという人を歓迎

株式会社ぴんぴんころり代表取締役の小日向えりさん
▲株式会社ぴんぴんころり代表取締役の小日向えりさん

編集部

最後に、「ミライのお仕事」の読者の方にメッセージをお願いいたします。

小日向さん

先ほどもお伝えしましたが、理念やサービスに共感してくださる方に来ていただきたいです。

私たちが提供しているサービスには、「人」が関わっています。単純にモノを売っているのではありません。利用者のニーズとお母さんの仕事への思いを聞いて、それを調整するのは本当に難しいことです。

これという正しい答えがあるわけではないのですが、だからこそやりがいがあります。社会的意義が高いサービスだと思うので、こういったことに興味があるかつ人が好きという方には、ぴったりのお仕事です。

また、ぴんぴんころりの仕事は人として成長できるお仕事だと思います。「成長したい」という方は大歓迎です。ほかにも、人が好きであったり、単純に「東京かあさん」のサービスが良いと感じていただいた方は、ぜひ一度ご連絡いただければと思います。

編集部

お話を伺って、社会的意義のある仕事に携わる難しさ、やりがいについて考えさせられました。御社なら、理念である「笑顔の連鎖」が生まれる社会を作っていけるのではないかと思いました。本日はありがとうございました。

■取材協力
株式会社ぴんぴんころり:https://kasan.tokyo/corp/
採用ページ:https://www.wantedly.com/companies/company_1716110/projects