フリマアプリ「キャロット」を運営する株式会社キャロット。地域貢献でさらなる発展を目指す

成長著しい企業の成長要因を、SDGsの視点で探るこの企画。今回は同じ地域に住む人同士でモノを循環することをきっかけに、まちづくりやまちの活性化を目指すご近所フリマアプリ「キャロット(karrot)」を運営する、株式会社キャロットを取材しました。

韓国発フリマアプリ「キャロット」を運営する株式会社キャロット

2015年に韓国で設立された株式会社キャロットは、フリマアプリ「キャロット」を運営するスタートアップ企業です。住居や勤務地がある活動エリアを登録し、“ご近所さん”同士で取り引きをすることを特徴としています。

韓国で実績No.1を誇るフリマアプリ「キャロット」は、2021年に日本に上陸。横浜市港北区を皮切りに、現在は東京都内や横浜市と川崎市の一部にエリアを拡大し、サービスを展開しています。

会社名 株式会社キャロット
住所 東京都渋谷区千駄ヶ谷5-27-5リンクスクエア新宿16F
事業内容 フリマアプリ「キャロット(karrot)」の企画・開発・運用
設立 2022年1月
公式ページ https://jp.karrotmarket.com/

フリマアプリ「キャロット」は、ユーザー間の取り引きを“ご近所”に限定することで、配送料や梱包などの負担がクリアされると同時に、直接会って取り引きをすることで新たなコミュニティをアプリ内で構築することができます。

ユーザー数、出品数、取り引き数共に右肩上がりで推移する株式会社キャロットの成長の背景には、どのような要因があるのでしょう。

CEOの鄭 榮哲(ジョン ヨンチョル)さんに、資源の再利用や地域活性化に貢献する同社の取り組みなども含め、お話を伺いました。

本日お話を伺った方

株式会社キャロット
CEO

鄭 榮哲(ジョン ヨンチョル)さん

ご近所さん同士で直接取り引きができるフリマアプリ「キャロット」

株式会社キャロットのフリマアプリ「キャロット」のイメージ画像
▲売りたい時、買いたい時、3ステップで取り引きができるフリマアプリ「キャロット」

編集部

韓国発のフリマアプリ「キャロット」は、日本では2021年2月に横浜市の港北区でサービスを開始して以来、横浜市と川崎市の一部、東京都全域にサービス地域を拡大されています。改めて、サービスの特徴についてお聞かせください。

鄭さん

「キャロット」の最大の特徴は、“使わないけど、捨てるにはもったいない”中古品を、必要とするご近所の方に直接届け、お住まいの街で資源を循環させることを目的としていることです。利用者はユーザー登録の際に活動地域を設定する「地域認証」を行い、活動地域の半径1~10kmまで取り引き範囲を設定できる仕組みになっています。

編集部

フリマアプリの場合、取り引きする相手が信頼できるかも重要な基準になると思われます。「キャロット」では信頼度をどのように表示しているのでしょう。

鄭さん

ユーザーの信頼度が一目でわかる「あたたかさ」という機能があります。弊社は信頼度に“あたたかさ”という概念を持っており、人間の基本的な体温36.5度を基準に、心あたたまる取り引きをたくさんするほど温度が上がり、表情アイコンも明るい表情に変化します。

このように、「キャロット」ではユーザーのみなさんが安心してフリマを楽しめるように機能を追加、改善しています。

編集部

なるほど。無機質なGood or Badの数字ではなく、体温と関連付けることで、“ご近所さん同士のコミュニティ”が強調されますね。

家電や家具など大型アイテムも「キャロット」なら手軽に取り引きできる

フリマアプリ「キャロット」の出品アイテムのイメージ画像

編集部

フリマアプリ「キャロット」ではどのようなアイテムが取り引きされているのでしょう。

鄭さん

発送が難しい家電や家具、自転車などがよく取り引きされています。韓国は地域によって特性があり、富裕層が多く住むエリアでは高級時計やゴルフクラブ、海辺に近い街では船の出品もありました。

編集部

発送が難しい大型のものでも、活動地域内であれば簡単に移動ができ、直接会って取り引きができるのも、「キャロット」の魅力ですね。

直接取り引きだから配送料、手数料無料。梱包の手間もない!

株式会社キャロットの出品アイテムを紙袋に入れる画像

編集部

地域を限定しない一般的なフリマアプリは配送料や手数料などが発生します。ご近所の方と直接取り引きができる「キャロット」ではどのようになっているのでしょう。

鄭さん

「キャロット」は活動地域が同じ方同士で直接取り引きをするため、最短1時間で取り引きが成立します。そのため、配送料や手数料は発生しません。

また、発送用に梱包をする手間もなく、紙袋などに直接アイテムを入れて手渡しできるのも大きなメリットです。そのため、1万円で売ったものは1万円がそのままユーザー様の利益になります。その場でアイテムを確認できるので、トラブル回避にもつながります。

徹底したカスタマーサポートで、ユーザーの安心&安全を守る

株式会社キャロットのスタッフの仕事風景

編集部

直接取り引きは、配送料や梱包費用がかからないメリットがある反面、取り引き相手と直接会うことに不安を抱く方もいるかもしれません。キャロットさんでは安全面の工夫をどのようにされているのでしょう。

鄭さん

前提として、取り引きの際は駅や商業施設など、人通りが多い明るい場所を選んでいただくことを注意喚起しています。

「キャロット」のようなフリマアプリは、ユーザーの質が低下し、雰囲気が悪くなるとそれを取り戻すのはかなり難しいとされています。そのため、当社ではカスタマーサポートを徹底することで、万が一おかしな行動をしたユーザーにはペナルティを課すといった処罰をし、健全な運営を実践しています。

“「キャロット」なら安心して取り引きができる”と、信頼いただけるようなサービスを心がけています。

編集部

規模がどんどん大きくなっても、カスタマーサポートによるきめ細かな対応をすることで、サービス全体の健全性や明るい雰囲気を維持していることがわかりました。

韓国の月間利用者数は2,000万人!アメリカ、カナダにも進出するキャロット

編集部

フリマアプリ「キャロット」は、韓国で誕生したとのことですが、サービスを開始した時期や韓国での利用者数についてお聞かせください。

鄭さん

フリマアプリ「キャロット」は地域密着型フリマアプリとして、2015年に韓国で事業をスタートしました。ご近所さん同士が気軽に中古取引を楽しめるよう、時間をかけてサービスを構築し、現在は韓国の人口約5,000万人に対し、キャロットの月間利用者数は2,000万人を超えるまでになりました。

名実ともに人気No.1のフリマアプリに成長した「キャロット」は、韓国の国内ではフリマのみならず、街の商店街にある小さなお店の情報交換などができるコミュニティーサービスや、広告ツールでの活用を進めています。

また、フリマサービスは日本の他、イギリスの複数地域やアメリカのニュージャージー州、マンハッタン、カナダの一部都市でもサービスを開始しています。

月間利用者数2.5倍、出品数&取り引き数は3倍。日本でも急成長中

編集部

日本では2023年5月に東京都内でサービス利用地域を拡大以降、同年9月にもエリアを拡大されているキャロットさんですが、ユーザー数や取り引き数はどのように推移していますか?

鄭さん

2023年初旬から同年9月を比較すると、累積ユーザー数と月間利用者数が2.5倍、出品数と取り引き数は3倍と大きく成長することができました。2023年はずっと右肩上がりで、減少した月がひと月もないほどの成長ぶりです。

また、数字以上に成長を実感するのが、「広告を見ました」という方や、実際に使っている方にお会いすることが増えたことです。

編集部

数字はもちろん、肌感としても成長を実感できることは、スタッフさんのモチベーションにもつながりますね。

成長要因は健全性とフィードバックへの真摯な対応

編集部

キャロットさんの急成長の背景には、どのような要因があると思われますか?

鄭さん

まず、プロダクトが優れていることが挙げられます。そのきっかけとなったのが先ほど申し上げたアプリの健全性や雰囲気を良くするための安全面での努力です。

初めて「キャロット」を利用する方の中には、「知らない人と会いたくない」と、躊躇される方々も多くいらっしゃるかと思われます。ところが、実際に使ってみると簡単で使いやすいといったプラスの声が多く寄せられます。

そのため、まずは躊躇なくファーストトライができるよう、カスタマーサポートの強化などに力を入れたことが急成長の要因と分析します。ファーストトライをクリアした方がリピーターとなり、さらに紹介によってユーザー数や出品数、取り引き数が増えていったと思われます。

編集部

キャロットさんのnoteを拝見すると、実際にフリマアプリ「キャロット」を利用されたユーザーからの体験記が多く寄稿されています。カスタマーサポートへの問い合わせも含め、ユーザーの声は、どのようにサービスに活かされているのでしょう。

■フリマアプリ「キャロット」のnoteはこちら!
https://note.com/jp_karrot

鄭さん

ユーザー様の声を参考に、サービス向上に努めています。例えば、安全面から、性別がわかるようにしてほしいという声は多く、真摯に受け止めながら最も良い方法を社内で検討しながら進めています。また、一般的にカスタマーサポートへの問い合わせはクレームが多いのに対し、「キャロット」には感謝の手紙が寄せられることが多いのも特徴です。

以前私が住んでいる街で、妻が不要になった娘の自転車を「キャロット」で出品した際、「君が乗ってたものだからちゃんと見送ってね」と娘に伝え、一緒に取り引きの場所に出向きました。取り引きのお相手もその自転車に乗るお子さんを連れており、「キャロット」のサービスを通じて、子ども同士の交流が生まれたことが印象に残っています。

編集部

直接取り引き相手に出品したアイテムを渡すことができる、「キャロット」ならではの素敵なエピソードですね。

5大都市へのエリア拡大、タウン誌のデジタル化を目指す

編集部

「キャロット」さんの日本国内での今後の展望についてお聞かせください。

鄭さん

どこを起点にエリアを広げるかを考えた時、出品数やユーザーの高いニーズが必要となるため、人口が多い首都圏全域と、東京を含む5大都市(札幌市、東京都区部、名古屋市、大阪市、福岡市)を視野に入れた展開を考えています。

特に大阪市は街ごとに独自のカルチャーがあるので、個人的には明日にでもオープンしたいと思っています。

編集部

韓国のように「キャロット」をフリマアプリだけではなく、活動地域のお店の情報交換などができるコミュニティーサービス、広告ツールとして運用する場合、日本国内ではどのような展開を想定されているのでしょう。

鄭さん

最終的にはタウン誌のデジタル化を目指しています。最近は見かけることが少なくなりましたが、広告や求人、不動産、新しくオープンしたお店の情報などが掲載された冊子がスタンドに差し込まれ、無料で配布されていますよね。

地域に特化したタウン誌を「キャロット」のアプリ内で閲覧できることでその地域にお住まいの方にフレッシュな情報を届けることができます。また、新たに引っ越しをされた方にとっても有意義な生活情報となるため、フリマサービスに付加価値をつけた情報を提供したいと考えています。

編集部

地域住民にとっては自分が住む街の良さを再発見することができ、新しく引っ越しをしてきた方にとってはどこに何があるといった、生活インフラを知ることができるというわけですね。

資源の再活用と地域コミュニティの活性化で社会に貢献するキャロット

編集部

“使わないけど、捨てるにはもったいない”中古品を、住んでいる街の中で循環させるキャロットさんのサービスは、SDGsや社会貢献にもつながると思われます。サービスを通じて地域に良い影響を与えていることを実感されることはありますか?

鄭さん

SDGsとしては、「ただあげキャンペーン」を毎月行い、資源の再活用に取り組んでいます。捨てにくいものを必要とする方に無料で譲渡することで、ゴミの削減や、経済面でのサポートができます。

また、中古品取引は当社の基幹事業ですが、それが全てではなく、フリマアプリ「キャロット」をきっかけに同じエリアに住む方と出会い、そこから会話が生まれ「キャロット」内でコミュニティを作ることで、地域社会の活性化にも貢献できると思われます。

例えば、フリマアプリ「キャロット」を、コミュニティサービスに発展させた韓国では、ゴルフクラブを同じ地域に住むユーザーさん同士で取り引きをした際、ゴルフを通じて交流が始まるといったケースがありました。そこから輪が広がり、初めて会う方が一緒にゴルフに行ったり、密な情報交換をすることで、街の活性化につながっていると感じます。

編集部

日本国内では現在、首都圏を中心にサービスを展開されているフリマアプリ「キャロット」ですが、サービスを通し、街単位で新しいコミュニティが生まれることで、地域の活性化に貢献できる未来を創造することができますね。

信頼をベースに衝突することで、より良いアイデアが生まれる

編集部

続いて、キャロットさんの働き方やカルチャーについて伺います。社長の鄭さんが感じる、社内の雰囲気についてお聞かせください。

鄭さん

役職やキャリアに関係なく、水平な関係を築くことを心がけています。そのため、社内では社長の私でも英語名のローガンで、「ローガン、これどうなっていますか?」というように、呼び捨てで呼び合っています。

また、反対意見があれば衝突を恐れず、誰でも意見を出すことができるのも当社のカルチャーの特徴です。信頼の上にある衝突は仮に喧嘩になったとしても良い意見が生まれ、結果として良い方向に物事が進みます。

編集部

なるほど。意見の衝突があってもそれは各々の個人的な感情ではなく、同じ志を持つうえでの衝突なので、関係性が崩れることはないというわけですね。

共に0から1を生み出すチャレンジャーを歓迎

株式会社キャロットのスタッフの打ち合わせ風景
▲フラットな関係性が築かれている株式会社キャロットでは、役職に関わらず、誰もが自由に意見を出せる

編集部

日本はもとより、海外市場も視野に入れたキャロットさんの将来性や、SDGsへの取り組みに興味を持った読者は多いと思われます。御社の採用ポリシーについてお聞かせください。

鄭さん

日本国内では約7名のスタッフがフリマアプリ「キャロット」を運営しています。少数精鋭で業務を遂行するには、必要なパズルがあります。そのため、採用では万能スキルを持った方よりも、当社に必要なスキル、パズルで言うところのピースを持った方を積極的に採用しています。

編集部

キャロットさんが描くパズルに重要なピースを持った方を集め、重要な方を集めることで、少数精鋭でも充実したサービスを提供し、企業としても成長できるのですね。そのようなキャロットさんには、どのような人材がフィットするのでしょう。転職を検討する読者に向け、メッセージをお願いします。

鄭さん

ビジネスには、いろいろなフェーズがあると思われます。0から1のフェーズにあるキャロットは今、最も楽しい時期であり、多くのことを試すことができます。

マーケターや事業開発など、決まったポジションで当社にジョインしたとしても、職をまたぐ仕事はたくさんあるので、実際に企画をしたり、デジタルコンテンツを制作することも可能です。このような経験は現在の当社の規模だからこそできることなので、さまざまな業務にトライしながら事業の成長を実感したい方はぜひ、キャロットに目を向けていただければと思います。

編集部

0から1を生み出すことへの挑戦は、働く意欲にもつながり、やりがいや生きがいを感じながら日々の業務に向き合うことができると思いました。

本日はありがとうございました。

■取材協力
株式会社キャロット:https://jp.karrotmarket.com/
採用ページ:https://careers.jp.karrotmarket.com/