新分野を切り開く「感性AI株式会社」。若手エンジニアが自由な働き方で活躍

新しい働き方を実践している企業を取材し、その良さについて詳しく紹介していくこの企画。今回は「感性とAIの融合でHAPPINESSを実感できる社会に」を目標に掲げる、国立大学法人電気通信大学発のベンチャー企業、感性AI株式会社にお話を伺いました。

感性AI株式会社とは

感性AI株式会社は、人の言葉の感性を精緻(※)に可視化・定量化するAIシステムを使ったコンサルティング事業やサービス・プロバイダ事業を展開している企業です。主観的であいまいな感性を同じものさしで比較することで、消費者のニーズに的確に応える商品の開発や​サービスの提供をサポートしています。
(※)精緻(せいち:極めて詳しく細かいこと)

会社名 感性AI株式会社
住所 東京都調布市小島町一丁目1番1号
UECアライアンスセンター 309号室
事業内容 自社サービス「感性AIアナリティクス」の開発、AIシステム等の開発を伴うコンサルティング
設立 2018年5月
公式ページ https://www.kansei-ai.com/
働き方 リモートワークと出社を併用、フレックスタイム制

今回は、感性AI株式会社の取締役・管理部長の竹村俊さん、管理部マネージャーの鈴木希望さんに、ワークライフバランスを推進する施策や、若手が活躍する社内風土について、お話を聞かせていただきました。

本日お話を伺った方
感性AI株式会社の取締役・管理部長の竹村俊さん

感性AI株式会社
取締役 管理部長

竹村 俊さん

感性AI株式会社の管理部マネージャーの鈴木希望さん

感性AI株式会社
管理部マネージャー

鈴木 希望さん

独自のAIで「言葉の感性」を可視化し、企業の表現をサポート

感性AI株式会社の公式サイト
▲感性AI株式会社さんは、独自のAIで感性を可視化し、ものづくりにイノベーションを起こすことを目指す(公式サイトから引用)

編集部

最初に、御社の事業内容についてお聞かせいただけますか。

鈴木さん

感性AI株式会社は、2018年に京王電鉄株式会社と電気通信大学の坂本真樹教授との共同出資で設立されました。電気通信大学発ベンチャーとして認定され、坂本研究室で長年研究してきた知的財産を商用利用できる企業です。

私たちは「感性とAIの融合でHAPPINESSを実感できる社会に」を目標に掲げ、独自のAIで人の言葉の感性を数値に可視化・定量化することで、ものづくりにイノベーションを起こすことを目指しています。

AIは情報を導くスピードや正確さが強みですが、弊社はそのAIに、人が内に秘めている感性を搭載することによって、もっと人に寄り添ったサポートができると考えています。

弊社のコア技術は、坂本研究室で研究されていた、五感で捉えた曖昧な感性を数値化する「感性評価システム」です。日本人は見たり、触れたり、味わって感じたことを言語化するときに、「しっとり」「さらさら」のようにオノマトペという擬音語、擬態語をよく使います。

消費者データを学習した「感性評価AI」は、そうした言葉の印象を「明るいor暗い」「安心or不安」など数十種類の尺度で数値化します。このシステムを使って、お客様の感性に寄り添ったものづくりをしたいという企業へ、商品開発における様々なシーンをAIでサポートするコンサルティングやサービスを提供しています。

編集部

かなり新しい分野の事業ですね。感性AIさんと競業している企業はありますか?

竹村さん

感性の分野でサービスを展開している企業は数社ありますが、商品パッケージの印象評価など、単一のサービスが多いように感じます。

弊社のように、市場のニーズ把握、商品開発、ネーミング、パッケージデザイン、広告コミュニケーション等のブランディング・販促といった、ものづくりにおけるあらゆるシーンをサポートするサービスを提供している企業は少ない印象です。

編集部

感性AIさんのシステムを導入すると、従来のモニター調査はあまり必要ではなくなるのでしょうか。

竹村さん

おっしゃる通りです。商品開発の際にモニター調査を行うことは一般的ですが、それには人の手配が必要です。調査会社に依頼することも多く、調査の設計から実施、集計分析まで含めると、それなりのコストと時間がかかります。AIで印象評価した場合は一瞬で数値評価が出てくるので、期間短縮とコストカットが可能です。

一方で、リアルな声を聞くことも商品開発には重要です。今までモニター調査を複数回行っていたとすれば、今後は初期段階の調査はAIで、最終段階の調査はモニターでと併用すると、コストや期間の圧縮と、精度の担保を両立できると考えています。

編集部

今までモニター調査を3回実施していた場合、御社のAIシステムで2回調査すれば、モニター調査は最後の1回で済み、期間も例えば6ヶ月かかっていたのが3ヶ月程度に圧縮できるということですね。

リモートワーク&フレックスタイム制で自由度高く勤務

感性AIさんの社内会議の様子
▲感性AI株式会社さんの社内会議の様子

編集部

感性AIさんはワークライフバランスを重視した働き方を推進し、リモートワークとフレックスタイム制を導入されているそうですね。

竹村さん

はい。エンジニアとマーケターは、基本的にフル在宅勤務です。管理部門や営業は、お客様とオンラインでミーティングをするとしても、社内で担当者と打ち合わせしながらの方が都合がいいケースがあるので、出社と在宅勤務が半々です。1週間のうち、出社している日の方が多いかな、ぐらいのバランスで仕事をしてます。

フレックスタイム制については、11時から15時までをコアタイムにしており、毎日11時にミーティングを行います。そこで全員のタスクを確認して、円滑に在宅勤務ができるようにしています。

ミーティング時間がコアタイムが始まる11時に設定されているのは、AIエンジニアの2名がたまたま夜型で、11時から仕事を始めて、20〜22時頃まで仕事をするスタイルだからです。

一方、他の社員に関しては、大体9時から18時の時間帯に働いている人が多いですね。ライフスタイルやその日のスケジュールに合わせて、自分たちで自由に設定してもらっています。

編集部

御社ではワーケーションも可能と伺いました。

竹村さん

はい。地方出身のメンバーは、帰省した際に在宅勤務をしたり、実家の近くのシェアオフィスを借りて働いたりするケースがあります。例えば1週間帰省する場合は、前半の2、3日を休みにして、後半は仕事をするということもありますね。

最近もGW前後の2週間、EUを旅行しながらリモートワークをしているメンバーがいました。社会情勢が落ち着いて、今後もっとワーケーション率が高まるかもしれませんね。

Slackに雑談チャネルを設置し、コミュニケーションを促進

Slackの雑談チャネル「♯random」の画面キャプチャ
▲Slackの雑談チャネル「♯random」の画面キャプチャ

編集部

リモートワークを導入している企業では、コミュニケーションを円滑にする施策をとっていることが多いですが、御社でも何か工夫をされていますか?

竹村さん

社内のコミュニケーションツールとして、チャットとSlackを導入していて、業務上の連絡だけでなく、「♯random」「♯tabetai」などの雑談のチャネルを活用しています。帰省先で働いているメンバーが「今日のお昼は地元のこれを食べました」という投稿をしたり、コミュニケーションが円滑になってきたように思います。

管理している鈴木や私も積極的に投稿するようにしているので、ほかのメンバーもいろんな雑談をしたり、仕事かプライベートか少し曖昧だけれど、社内で共有したい情報を投稿してくれるので、とても有効に活用できていると感じています。

編集部

最近、印象的だった投稿はありますか?

竹村さん

AWS(Amazon Web Services)やChatGPTなど、トレンドに関する情報共有の投稿が印象的でしたね。ほかには、弊社はオノマトペ、擬音語、擬態語を数値化する事業をしているので、そこから「ドラえもんのひみつ道具『オノマトペホーン』を感性AIで実現できたらいいな」という投稿もありました。

鈴木さん

「ザクザク」と言ったら、対象物がザクザクしたものになるみたいなツールがあったらいいねと。実際に弊社には、アップロードした製品画像をオノマトペに合わせて画面上で様々な質感に変換する技術があるんですよ。

竹村さん

全く仕事に関係しない雑談もあります。私はオフィスのビルに入っているコンビニで買った、昭和と平成と令和のチロルチョコの写真を投稿しました。昭和はプリンとクリームソーダ、令和はピスタチオとマリトッツォのチョコで、時代を反映していて面白いなと。

ほかにも「みんなでランチするならここへ行きたい」というつぶやきや、札幌に帰省していたメンバーによるスープカレーのお店やお土産の紹介などさまざまです。

編集部

ほかに、コミュニケーションを促進する施策はありますか?

竹村さん

週に1回完全に任意で、参加できる人だけでオンラインランチ会をやっています。社員数が少ないので、参加するのは大体4~5人です。私と鈴木はできるだけ参加して、在宅のメンバーとオンライン上で交流するようにしています。

まだまだ小さい会社なので、在宅勤務でもコミュニケーションは取れていると感じていますが、オンラインミーティングだと特に用件だけ伝える形になりがちです。そうすると本人たちの業務の進捗はわかるのですが、体調やメンタルなど、どうしても見えにくい部分が出てきます。

ランチをしながらの雑談であれば、話していない人がマイクオフにする必要もなく、雑音もあって、日常の会話に近い形で雰囲気なども感じ取れるように思います。

移動式ホワイトボードを取り入れて、発想を止めない環境作りを意識

感性AIさんの社内で、移動式ホワイトボードを使って勉強会をしている様子
▲感性AIさんの社内で、移動式ホワイトボードを使って勉強会をしている様子

編集部

最近オフィスをお引越しされたそうですが、オフィス作りで工夫されているところはありますか?

竹村さん

バーカウンターにコーヒーマシンを置いて、いつでもコーヒーを飲みながら雑談できるようにしたり、思い立ったらいつでもメモがとれるように移動式のホワイトボードを取り入れて、発想を止めない環境作りを意識しています。

また、エンジニアリングがメインの会社なので、エンジニアが集中したいときは壁に向かって仕事ができるように、コミュニケーションを取りたいときは人と向かい合って仕事ができるように複数のタイプの席を用意しています。

若手も興味のある仕事に関われ、実力次第で昇進・昇給

高尾山で行われた、感性AIさんのワーケーションイベントの様子
▲高尾山で行われた、感性AIさんのワーケーションイベントの様子

編集部

感性AIさんは少数精鋭で、20代の若手の方もすぐに活躍できる環境だと伺っています。具体的な事例を紹介していただけますか。

竹村さん

たとえば、AI技術を活用したモデルの開発を任せている、20代のAIエンジニアがいます。弊社サイトのニュースに技術ブログ「キャッチコピーの印象評価の予測を目的とした学習モデルの実装」についての記事を執筆しているエンジニアです。途中でいろんなメンバーとレビューをしながらですが、スケジュールから開発までを任せています。

鈴木さん

あともう1人、入社から半年で、一つの新サービスのベータ版を企画から作り込みまで担当した社員がいます。周囲とコミュニケーションをとって連携しながら、半年でどんどんレベルアップしました。弊社では実績をしっかり見て評価するので、がんばればがんばるほど、評価にも跳ね返ってきます。

編集部

実力がある方は、どんどん昇給や昇格されて、プロジェクトや仕事もアサインされる状況なんですね。

鈴木さん

興味や関心のある仕事をなるべく回すようにしているので、「こういうものに興味があります」と手を挙げれば、どんどん興味のある仕事を深めていくことができる環境です。

竹村さん

そこで実績を上げれば、短期間でも、昇進・昇給していき、昇進すれば新しい役割も加わります。モチベーションが高いメンバーが多いので、新しい役割もしっかりとこなしてくれているのかなと思っています。

鈴木さん

弊社の良いところは、20~50代のエンジニアたちが、年齢に関係なく「この人はここがすごい」とお互いをリスペクトしている点です。上だから下だからとかは全くなく、活発に教え合っているのがいいなと思います。

編集部

年齢に関係なく、情報交換ができたり、学び合いができる環境はとても理想的ですね。

目的に向かって、どんどん思考できる人が活躍できる

感性AIさんの社内勉強会の様子
▲感性AIさんの社内勉強会の様子

編集部

感性AIさんで活躍している方に共通する特徴はありますか?

竹村さん

自身の興味関心を深堀りしていく能力に長けてる人は活躍しやすいです。弊社が提供するニッチな技術・サービスに興味を持って入社し、興味をサービスに生かすための知識を探求して、エンジニアリングの技術を使ってサービスに実装していく。それができる人は、非常に成果を上げています。

具体的には、ひとつのテーマに対して、公開されている論文や他社の技術をしっかり調査して、内容をかみ砕いてインプットができることです。自分の関心事に関連するものを幅広くチェックして、自社のサービスに使えそうなものに当たりをつけていくことが必要だと思います。

鈴木さん

トレンドや、ほかの大学や企業の研究論文・ニュースをチェックして必要な部分を取り入れながら、弊社の強みを生かしていく。目的に向かって、どんどん思考できる人が活躍しています。

感性とは何かに興味があり、積極的にチャレンジしたい方はぜひ

感性AIさんと電気通信大学坂本研究室との連携の様子
▲感性AIのみなさんが、電気通信大学坂本研究室と連携している様子

編集部

技術向上や知識の更新などの勉強はどうされていますか?

竹村さん

現在のメンバーは中途入社なので、今までの社会人経験で素養が磨かれています。そのうえで、少数精鋭の中で、エンジニア同士が刺激し合っているように感じます。技術向上や知識の更新のために、いろんな調査や文献を読んでいる様子を見て刺激され、自分もやってみようとか。自分が読んだ文献のフィードバックを自主的にしてくれる場合もあります。

そういった学び合える環境は、大学発のベンチャー企業であることも関係しているかもしれません。研究志向のエンジニアが集まっているので。

鈴木さん

みんな研究自体にすごく興味がありますよね。「感性ってなんだろう。それをAIに搭載するってなんだろう」と興味を持って入社した人たちが、みんなでどんどん深掘りしている状況です。

編集部

クライアント企業にサービスを提供する際も、エンジニアも一緒に入りながら作っていく感じでしょうか。

竹村さん

そうですね。弊社はサブスク型のサービスと、それとは別に感性のコンサルティングを提供していて、窓口は営業ですが、必要に応じてエンジニアも入ります。エンジニアが分析した見解をフィードバックしたり、ときにはレポートを取りまとめて、お客様に説明することもあります。

編集部

エンジニアも、クライアント企業の生の声に触れる機会が多いということですね。最後に本記事を読んで御社に興味を持たれた方へメッセージをお願いいたします。

竹村さん

弊社は小さなベンチャー企業なので、自分から手を挙げていただければ、能動的に仕事ができる環境です。感性というニッチな分野を掘り下げている会社なので、感性とはどういうものかに興味があり、さまざまなことに積極的にチャレンジしたいという方に、ぜひ応募していただきたいです。

編集部

年齢や経験年数にかかわらず、興味のある仕事に手を挙げて、能動的に取り組める環境は素晴らしいですね。本日はありがとうございました。

■取材協力
感性AI株式会社:https://www.kansei-ai.com/
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