ファッションショーにもSDGsにも取り組む、一関市役所のアイディアを活かせる働き方

若手が活躍できる職場づくりを進め、SDGsに関する政策にも熱心に取り組む企業や自治体にインタビューする本企画。今回は、岩手県一関市にお話を伺いました。

平泉などの歴史豊かな中東北の拠点都市、岩手県一関市

中東北の拠点都市として、経済・文化・教育の中心となっている岩手県一関市。宮城県、秋田県に隣接し、市内には3県にまたがる栗駒山や一関温泉郷などの観光地があり、世界遺産登録のまち「平泉」や三陸方面への観光拠点ともなっています。年代を問わず新しいチャレンジを歓迎する文化、充実した研修制度など、若手職員が活躍できる環境が整っています。

会社名 岩手県一関市
住所 岩手県一関市竹山町7番2号
公式ページ https://www.city.ichinoseki.
iwate.jp/

今回は、一関市市長公室女性活躍推進室の岩渕大士さん、一関市市長公室政策企画課政策推進係の渡辺苑子さん、一関市総務部職員課人事研修係の千葉彦旭さんに、女性・若手職員が活躍できる組織や充実した研修制度、SDGsに関する政策に熱心に取り組む文化などについて、お話を聞かせていただきました。

本日お話を伺った方
一関市市長公室女性活躍推進室の岩渕大士さん

一関市市長公室女性活躍推進室
主任主事

岩渕 大士さん

一関市市長公室政策企画課政策推進係の渡辺苑子さん

一関市市長公室政策企画課政策推進係
主任主事

渡辺 苑子さん

一関市総務部職員課人事研修係の千葉彦旭さん

一関市総務部職員課人事研修係
主任主事

千葉 彦旭さん

「TGC teen ICHINOSEKI 2023」を初開催し、若者が集結

岩手県一関市役所で働く職員さんの様子

編集部

一関市役所で、活躍している若手の皆さんについてお話を聞かせてください。

岩渕さん

私が所属している市長公室女性活躍推進室は、市長が「人口減少に対処するため、女性や若者が活躍できる社会を目指す」ということで立ち上げた部署です。2023年5月に開催した「TGC teen ICHINOSEKI 2023」も担当しました。

編集部

「TGC teen ICHINOSEKI 2023」とは、どんな内容のイベントだったのでしょうか。

岩渕さん

TGC teenは、東京ガールズコレクションがプロデュースする若年層向けのイベントになりますが、TGC teen ICHINOSEKI 2023はTGC teenとして初の地方創生プロジェクトとして、ファッションモデルなどいろいろな方が一関市総合体育館に集まってくださいました。

私たちとしては、1年に1回、楽しいイベントがあることで「一関っていいところだな」とポジティブなイメージを持ってもらえることを目的に開催しています。

編集部

2023年が初めての開催だったのでしょうか。

岩渕さん

初開催でした。おかげさまで好評で、来年の開催に向けてすでに準備を進めています。

編集部

TGCを一関市で開催するというアイディアは、どうやって生まれたんですか。

岩渕さん

一関を応援してくれている首都圏の方の中に、TGCの運営会社と知り合いの方がいらっしゃったことが企画のきっかけです。

編集部

初めてのプロジェクトとなると、企画・運営は大変ですよね。

岩渕さん

ベースが何もなかったので手探りの部分はありましたが、「TGC teen ICHINOSEKI 2023」のメインイベント、ファッションショーの部分はTGCの運営会社さんに担当していただいたので、どちらかというと私たちはサポート的な役割でした。

ただファッションショー以外にも、会場の外でも同時開催で何かやろうということで、地元の皆さんと一緒に実行委員会的な組織を立ち上げて、独自イベントの企画・運営を行いました。

編集部

主イベントとは別に、一関市ならではの企画も行って、当日を盛り上げようということですね。

岩渕さん

屋外でおいしい物を食べられるブースを設けたり、ステージを作ってショーをやったり、という企画です。地元の人たちで組織した委員会の中で考えて、実行するやり方でした。

編集部

岩渕さんご本人は、どういった役割を担われたのでしょうか。

岩渕さん

1~2週間に一度、地元の皆さんと一緒に集まって打ち合わせを行いました。初めてのイベントだったので、調整は大変でしたね。皆さんが集まれる日程に合わせて場所を取って、話をして、という作業を繰り返しました。私を含めて、10人ぐらいの職員で一緒に頑張りました。

編集部

無事にイベントが終了した感想はいかがですか。かなり盛況だったのでしょうか。

岩渕さん

盛況でした。いつも市で行うイベントですとご年配の方も多いのですが、「TGC teen ICHINOSEKI 2023」の来場者は若い人がほとんどだったので、かなりの違いを感じました。アンケートでも10~20代の方が来場者の8~9割を占める結果だったので、開催した意義があったと考えています。

編集部

いつもと違う若い客層が、一関市に足を運ぶきっかけとなったイベントだったのですね。

現市長の新体制のもと、女性や若者の活躍に期待する新しい風が生まれている

編集部

岩渕さんは若手や女性の活躍がテーマとなっている部署の所属だと伺いましたが、新しいことにチャレンジしていくムードが庁内にあるのでしょうか。

岩渕さん

私は入庁して18年目になりますが、今の市長に代わってから女性活躍・若者活躍の取り組みが進んでいます。新しいことを取り入れていこうという考え方になっていると思います。

編集部

例えば、どういった取り組みが新しく始まっているのでしょうか。

岩渕さん

女性活躍会議、若者活躍会議、農業未来デザイン会議というものを行っています。今の市長は元市職員・元副市長という経歴なのですが、その経験から「行政の中だけで市政の話を進めてはいけない」という考えを持っている方です。現場目線の意見を直接聞く場として、3つの会議を立ち上げています。

市長が今までに出会った方々の中から、女性活躍・若者活躍にふさわしいと思われる人を委員に指名して、市長と民間の委員さんが直接懇談していろんなアイディアを出すスタイルになっています。

編集部

民間ならではのアイディアを吸い上げて、市の政策に生かすということなんですね。

「SDGs未来都市」として、全市的にSDGsに取り組んでいる

岩手県一関市の観光資源のひとつ、気球の様子

編集部

一関市役所さんでは、SDGsに熱心に取り組んでいると伺っています。具体的な例を教えてください。

渡辺さん

令和3年に、国から「SDGs未来都市」の選定をいただいています。当時、東京オリンピックに向けた取り組みとして、小型家電を各家庭から集めて、そこから集めた金属でメダルを作る「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」というものがありました。

そのプロジェクトを、一関市が他の市と連携してオリンピックの組織委員会に提案した取組が「SDGs未来都市」の選定を受けることができた理由の1つだと思っています。

編集部

提案・実現に至るまでには、どういった経緯があったのでしょうか。

渡辺さん

元々、一関市では小型家電の回収に取り組んでいたので、それがメダルプロジェクトに繋がりました。プロジェクト達成に向けては、市民の皆さんに回収に協力していただきました。

結果的には東京オリンピックで使われたメダルは、全て小型家電から回収された金属で作られたということで、良かったと思っています。

編集部

「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」に対する反響はありましたか。

渡辺さん

例えば、今の高校生に一関市のSDGsの取り組みを紹介するときにメダルプロジェクトの話をすると、「すごいね」と目を輝かせてくれるので、市の貴重な財産になったと思います。

ふるさと納税を活用して、市内・全国のこども食堂を支援する活動も実現

編集部

メダルプロジェクト以外にも、一関市役所さんでSDGsに取り組んでいる例はありますか。

渡辺さん

一関市役所では、SDGsを共通目標にして、市と民間企業が連携しながら一つの目標に向かっていく事業を進めています。例えば、その一つとして、ふるさと納税を活用してこども食堂を支援するSDGsの取り組みを行っています。内閣府の「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」を活用してスタートした事業です。

編集部

ふるさと納税で、こども食堂に寄付ができる取り組みなんですね。

渡辺さん

市内のこども食堂への食材の寄付を優先的に行いつつ、全国のこども食堂にも支援をさせていただいています。

編集部

SDGs未来都市に選定されて、さまざまな取り組みも実行されているということですね。一関市役所では職員さんのSDGsへの意識も高くなっているのでしょうか。

渡辺さん

SDGsという考え方自体は、職員はもちろん市民の皆さんにも浸透していると思っています。今後は、その次のステップとして、全市的にSDGsを推進していく体制を構築していきたいと考えています。

編集部

全市を挙げて、意識が高まっているのですね。SDGsの政策を進めていく上で、課題はありますか?

渡辺さん

SDGsは範囲が広いので、一関市役所の中でSDGsに関係のない部署は一つもないと思います。取り組むべき課題も多くあるのですが、一関市は8市町村が合併してできた大きな市なので、とても地域が広いんです。範囲の広いSDGsを広大なエリアの市全体に展開していくことに、難しさは感じています。

編集部

一口にSDGsといっても、切り口や推進方法は無限大にあるので、広いエリアで共通意識を持つためには推進役の努力が求められますね。

岩手県で第2位の広さ。多様なエリアが市職員の活躍フィールド

岩手県一関市役所の庁舎
▲岩手県一関市役所の庁舎

編集部

一関市役所さんの職員の皆さんの働く環境について教えてください。

千葉さん

一関市は、8つの旧市町村が合併してできた市で、岩手県の中でも2番目に広い面積を持っています。市役所の本庁は一関地域にあるのですが、本庁以外にも7つの支所がありまして、本庁、各所、各施設あわせて約1200人の職員が働いています。

編集部

同じ一関市役所でも、広いエリア内で働く場がいろいろ分かれているんですね。

千葉さん

それぞれの地域に個性があり、自然や歴史・文化も違いますので、いろいろな価値観を持った職員が一緒に働いています。

編集部

市全体で取り組んでいる課題はあるのでしょうか。

千葉さん

一関市の一番の課題は、人口減少です。人が減っていくことは避けられないのですが、人口が減っても市民が明るい気持ちで暮らしていけるように、若手からベテランまで、職員それぞれ創意工夫して頑張っています。

地方分権の時代、新しいアイディアが大事。DXによる効率化も推進中

編集部

時代の流れとともに、創意工夫を求められるシーンも増えてきたといえますか。

千葉さん

昔は国・県主導の政策に対して、市町村はこなすという時代でしたが、今は地方分権の時代なので、各自治体の創意工夫が大事になっています。今回の取材で話題となった「TGC teen ICHINOSEKI 2023」やSDGsも良い例ですが、若手の意見を積極的に取り入れて効率的に政策を進めていこうという動きが進んできています。

編集部

効率化というと、いわゆるDXも進んできていますか。

千葉さん

DXに関しては、例えば若手職員がプログラミングやデジタルツールなどの研修を受けて、業務改善に取り組んでいます。今まで紙ベースだったものをデジタル化したり、効率化したりする際に、若い職員の発想が数多く生かされています。

編集部

若手のアイディアで、作業の効率化が庁内でも進んでいるんですね。

千葉さん

はい、進みつつあります。2023年度からDX専門の部署が発足しまして、全庁的にDXを進めていく流れになっています。庁内に生成AIの検討チームもありますし、さまざまな分野ごとにチームを作ってDXの検討を進めています。

編集部

一関市役所で働くやりがいは、皆さんどんなところに感じていらっしゃるでしょうか?

千葉さん

同じ公務員でも、国や県の職員に比べると市職員は市民に一番近い存在です。住民と接する機会がとても多いので、頑張れば頑張っただけ「ありがとう」という感謝の言葉を直接いただけることが、職員のモチベーションになっています。

例えば一番の課題である人口減少に対しても、創意工夫をすることで、どんどん地域を良くしていける可能性がいっぱいあると思うので、若手の活躍に期待が掛かっています。

充実した研修制度が自慢。専門の施設に派遣されて、じっくり長期間学べる

編集部

一関市役所に入職した職員に対する研修制度はありますか。

千葉さん

一関市役所では、職員研修に対してかなり力を入れています。研修の量は、他の自治体と比べても多いのではないかと思います。

編集部

具体的には、どのような研修があるのでしょうか。

千葉さん

市役所内で行う研修もありますし、外部の研修施設で行う研修もあります。外部の研修施設で行う研修は、数日~数ヶ月単位でいろいろなところに送り出しています。例えば、市町村アカデミーや東北自治研修所のほか、東京の自治大学校に行って数ヶ月受ける研修もあります。

編集部

じっくり学ぶ期間をもらって、本格的に研修を受けられるんですね。

千葉さん

その他にも特別研修ということで、今このタイミングで必要な研修を、その都度企画して行うこともあります。一関市役所は限られた予算の中、工夫をしながら人材育成に力を入れています。

編集部

新しくスタートする研修メニューもありますか。

千葉さん

2024年2月に、特別研修として業務効率化研修を行います。現役の公務員でありながら業務改善に関する書籍を発行され、全国的に活躍されている方を一関市にお呼びして、業務改善のノウハウや生成AIの活用など、今の時代に合った知識をみんなで共有する研修メニューです。

編集部

とてもためになりそうな、面白い研修ですね。

コミュニケーション能力をベースに、多様な人とつながる仕事を

岩手県一関市役所の職員たち

編集部

最後に、採用についてお伺いします。一関市役所さんが求める人材、どういった方がフィットするのかを教えてください。

千葉さん

採用試験は、民間企業で多く導入されているSPI3(総合適性検査)を活用しています。採用をする上で重視するのは、コミュニケーション能力かなと思っています。

多様性が拡がり、変化も早い時代であり、様々な方々とコミュニケーションをとりながら対応していくことが求められます。また、民間企業とのコラボレーションも進んでいくことになるので、今後は様々な人と繋がりながら、一緒に仕事を進めることが重要になります。

一関市役所は人材育成に力を入れているので、知識や能力を伸ばせる機会がたくさんあります。基本的なコミュニケーション能力があり、地域に貢献したい気持ちがある方なら、やりがいを持って働いていけるのではないかと思います。

編集部

8つの市町村が合併してできた大きなフィールドで、さまざまな人と関わりながら仕事を進めていく環境だということですね。地域の皆さんとのつながりを大事にしながら、新しいアイディアにも挑戦していけるポジティブな現場だと感じました。本日は、ありがとうございました。

■取材協力
岩手県一関市:https://www.city.ichinoseki.iwate.jp/
採用ページ:https://www.city.ichinoseki.iwate.jp/index.cfm/7,0,115,html