職員のアイディアを実現!平塚市役所の「想いを形にできる」働き方とは

若手のアイディアを積極的に活かし、活躍を後押しする企業や自治体にインタビューするこの企画。今回は神奈川県平塚市役所にお話を伺いました。

豊かな自然と暮らしの利便性が共存するまち・神奈川県平塚市

平塚市役所の屋上から見た風景

平塚市は神奈川県の湘南地域の中央に位置する、人口約26万人のまち。海・山・川の揃った豊かな自然環境と、市内には商業施設が充実しており、東京圏へのアクセスも良いという生活の利便性が共存する暮らしやすさがあります。市内の総合公園ではサッカーや野球などのプロスポーツに親しむことができ、夏には海水浴場に多くの観光客が訪れる、賑わいと活気も魅力のまちです。

自治体名 神奈川県平塚市
本庁舎住所 神奈川県平塚市浅間町9番1号
公式サイト https://www.city.hiratsuka.
kanagawa.jp/index.html

そんな平塚市に暮らす市民生活を支えているのが、平塚市役所です。平塚市は職員の人材育成に力を入れ、手厚い研修制度や庁内公募制度など、若手職員のキャリアアップを応援するさまざまな制度を導入しています。

今回は平塚市役所総務部職員課の相川さん、公営事業部事業課の齋藤さんに、平塚市役所の若手活躍の秘訣や、ワークライフバランスへの取り組みについてお話を伺いました。

本日お話を伺った方
平塚市役所総務部職員課主査の相川慎太朗さん

平塚市役所
総務部 職員課 主査

相川 慎太朗さん

平塚市役所公営事業部事業課主査の齋藤学さん

平塚市役所
公営事業部 事業課 主査

齋藤 学さん

1年目から5年目までの重点的な研修で、若手職員の能力を育成

平塚市役所の仕事風景

編集部

まず若手活躍のトピックについて伺います。平塚市役所では若手職員の方の成長を促すための手厚い研修体制があるとのことですが、具体的にどのような内容の研修なのでしょうか。

相川さん

平塚市では「市民と共に考え、何事にもチャレンジする職員」を目指すべき職員像に掲げ、職員の能力を引き出すためのさまざまな研修を実施しています。その中でも特徴的なのが、「基本研修」として採用1年目から5年目までの研修プログラムを組んでいることです。段階的な研修を通じて若手のうちにスキルアップし、今後の公務員人生をしっかりと歩んでもらうことを目的に実施しています。

1年目の研修は特に重点的に行っています。4月、6月、9月、12月、3月と定期的に実施し、ビジネスマナーや幅広い行政知識、地方自治制度や地方公務員制度について学んでいきます。9月と3月というポイントで半年間、1年の振り返りを行っているのもポイントです。最初の1年間で社会人として、公務員としての最低限の素養を身に付けてもらうと同時に、定期的な振り返りを行いながら改めて仕事に向かう姿勢を見直し、今後の方向性を考えてもらう機会としています。

また、1年目職員の育成に関しては「サポート職員制度」も取り入れています。入庁後半年間は同じ部署の身近な先輩がマンツーマンでサポートし、何でも相談しながら二人三脚で業務にあたることができる制度です。

編集部

研修で全般的な知識を身に付けつつ、実務では頼れる先輩にサポートを受けながら進めていくことができるんですね。

2年目以降の研修内容も教えていただけますか?

相川さん

5年目までは、年数ごとにテーマを設けて研修を行っています。研修内容は世の中の流れや時代に合わせて変更していますが、現在は2年目にタイムマネジメントと民法、3年目に説明力強化と行政法、4年目に企画力・業務改善と政策法務、5年目にキャリアデザインと平塚市行政の基礎知識という内容で実施しています。

編集部

仕事術的な内容と、法律などの知識研修がセットになっているんですね。法律の知識を学ぶのはイメージできるのですが、タイムマネジメントなどの仕事術も研修で実施されるのにはどのようなご意図があるのでしょうか。

相川さん

市役所の仕事というと定型業務が多いように思われがちですが、実際は仕事の幅はどんどん広がっており、職員に対しても仕事効率や政策立案力がより求められる環境となっています。若手のうちから知識だけでなく業務遂行能力を高めていけるよう、仕事術と知識をセットとして研修を行っています。

例えばタイムマネジメント研修では、限られた時間の中で自分で計画を立てて仕事を進めていくための実践的な手法を学んでもらっています。また市民の方への説明機会が多い市役所業務において、ちょっとした説明不足が市民の皆さまの不安や不満につながってしまうことがあるので、3年目という早い時期から説明力を身に付ける説明力強化研修を実施しています。

また今後の平塚市をより良くしていく上で、与えられた仕事をこなすだけでなく、自らアイディアを出し実現していく能力も必要です。そのため4年目は「企画力・業務改善」をテーマとしています。そして基本研修の最終年となる5年目研修では、それまでの経験などを踏まえた上で今後のキャリアを考えていくためのキャリアデザイン研修を行っています。

外部機関に出向く派遣研修も。さまざまな研修機会で自己成長を促す

編集部

5年目までに行う基本研修の他にも、平塚市さんで導入されている研修があれば教えてください。

相川さん

職位が上がった後に行う「昇格後研修」や、管理・監督職を対象に行う研修があります。その他にも職員の主体性ややる気を引き出せるよう、手上げ式でさまざまな研修に参加してもらっています。

派遣研修という、外部機関に出向いて行う研修もありますよ。友好都市である岩手県花巻市や神奈川県などに長期派遣を行い、市役所とは違う仕事のやり方や視点を身に付けてもらうための機会としています。

編集部

幅広い研修の機会があるんですね。自分から参加することで、年齢に関わらず自分を高めていくことができそうです。

新しい挑戦をしたい人が一歩踏み出せる、平塚市役所の「庁内公募制度」

編集部

市役所の場合、職員の方は複数の課を経験しながらキャリアを積んでいくのが一般的かと思いますが、平塚市役所の場合も同様の形でキャリア形成をされていくのでしょうか。

相川さん

基本的には同様です。平塚市役所には現在81の課があり、大体3年から5年ほどのサイクルで異動しながらさまざまな経験を積んでいきます。

それにプラスして特徴的なのが、平塚市役所の「庁内公募制度」です。これは新規事業や重点事業などのプロジェクトを行う際に庁内に募集をかけ、その部署の上長と面談した上で異動するというもの。意欲のある職員にとっては自分のやりたいことを叶えられ、部署にとっては広く職員の能力を活かすことができる制度となっています。

募集されるポストの数は年によって違いますが、大体10個程度です。今回インタビューに同席している齋藤は、その制度に手を挙げて異動したという経歴を持っているんですよ。

編集部

そうなんですね!齋藤さんが庁内公募に応募したのにはどのようなきっかけがあるのですか?

齋藤さん

きっかけは2つあります。まず1つ目は、与えられる仕事だけでなく自ら挑戦できる仕事をしたい、という思いが芽生えたことです。というのも、私は現在入庁15年目なのですが、それまでの部署への所属年数が4年、6年と比較的長かったんです。同じ部署に長くいるとどうしても仕事の型が決まってきてしまうこともあり、「自分が考えたことを形にできる仕事がしたい」と考えるようになりました。

きっかけのもう1つは、平塚競輪に携わりたいと思ったことです。競輪場というのは限られた自治体にしかないため、とても貴重な仕事なんです。せっかく平塚市役所の職員として働いているのだから競輪場に関する仕事をしたいと思い、競輪事業を担当する公営事業部に応募しました。

編集部

実際に異動されて、どのような業務を行っていらっしゃるのでしょうか。

齋藤さん

平塚競輪を盛り上げ、収益を上げていくための広報・プロモーションの部分などを担当しています。

編集部

平塚競輪に携わる中で、印象に残った仕事はありますか?

齋藤さん

2022年に実施された「KEIRINグランプリ」という競輪界で最も大きなレースのプロモーションを担当したことは印象に残っています。「KEIRINグランプリ」というのはその年の成績上位9選手が1億円超の高額優勝賞金を狙って繰り広げる最高峰の大会です。どうしたらより盛り上げていけるのか、お客様に来ていただけるのかを考え、プロモーションの展開方法を工夫しました。

広告の出稿方法はテレビや新聞・雑誌、webなど多岐にわたりますが、今回は費用対効果が見えることに重点を置き、web広告の比重を大きくしました。web広告はエリアのターゲティングもできるため、平塚市内でたくさんの人が集まる場所や、より競輪に興味を持ちそうな人が集う場所にターゲットを絞って出稿するなどの工夫もしました。

そういった取り組みが功を奏し、結果的に売り上げ目標を達成することができました。新たな挑戦をしたからこそ成し遂げられた結果なので、とても大きなやりがいを感じました。

編集部

庁内公募制度がきっかけで一歩を踏み出したことが、齋藤さんの新たな仕事のやりがいにつながっていったんですね。新しいことに挑戦したいと思ったときに、転職をしなくても市役所内でその意欲を形にできる機会があるというのは素晴らしいことだと感じました。

職員の積極的なアイディアを歓迎する「職員提案制度」

平塚市役所の仕事風景

編集部

その他にも、若手職員の活躍を後押しするような制度があれば教えてください。

相川さん

若手職員も含めた職員の意見やアイディアを広く反映していくための取り組みとして、平塚市役所では「職員提案・業務改善報告制度」という制度を導入しています。「職員提案」は他課の業務や事業の改善の提案を、「業務改善報告」は自課の業務や事業の改善の報告を募るという取り組みです。

編集部

実際に形になった取り組みにはどのようなものがあるのですか?

相川さん

本市は2年前の2022年4月に市制施行90周年を迎えました。その時の記念事業の一環として、平塚市総合公園にインクルーシブ遊具広場を整備しましたが、その事業は職員の提案が実現したものです。また、昨年の11月22日の「いい夫婦の日」に、本市のご当地婚姻届けを活用したイベントを実施しましたが、これも職員の提案によるものです。

編集部

こういった大々的な取り組みが、職員の方の発案で実現するのはすごいことですね。この提案制度は、年齢に関わらず応募が可能なのでしょうか。

相川さん

年齢は全く問いません。実際に若い方の提案が通ることも少なくないですよ。

育休取得をスムーズにする「育児計画書」で育休取得率アップ

平塚市役所の仕事風景

編集部

続いてワークライフバランスのテーマについて伺います。平塚市役所では子育てをしながら働いている方も多いと思いますが、そういった方に対するサポート体制で特徴的なものはありますか?

相川さん

育休は子どもが3歳になるまで取得可能です。また復帰後も子どもが小学校に入学するまでは時短勤務や部分休業など、働く時間を調整しながら子育てと両立できる環境を整えています。

育休の取得や、復帰後の仕事と子育ての両立において重要なのは、職場の理解と協力です。そのため、平塚市役所では「育児計画書」という制度を導入しています。

女性職員の場合は自身の妊娠が分かった段階、男性職員の場合はパートナーの妊娠が分かった段階で作成する計画書で、育休や時短勤務の希望を記載していくものとなっています。自由記入欄には「こういう部分に考慮してほしい」という希望を書くこともできます。

育児計画書は所属部署の上長と共有し、職員のフォローや引継ぎの計画的な実施に活用しています。この育児計画書があるからこそ、職員は育休を取得しやすくなり、また職場でのフォローや引継ぎも円滑に進むようになっています。実際に、女性だけでなく男性の育休取得率も向上しているんですよ。

ノー残業・有給取得促進で、働きやすい環境づくりを進める

編集部

日々の業務においても、ワークライフバランスに関する取り組みがあれば教えてください。

相川さん

全庁的に「ノー残業デー」を実施しており、残業時間の削減はある程度実現しています。また有給休暇の取得促進も行っており、年間平均で13日から14日程度の取得がある状況です。

通常の有給休暇以外にも、勤続年数に応じて付与される特別休暇もあります。残業時間の削減と休暇取得の促進により、働きやすい環境は整備されつつあるのかなと思っています。

スポーツを通じた職員の交流が盛ん!サッカー全国大会にも出場

平塚市役所のサッカー部の集合写真

編集部

平塚市役所の雰囲気が伝わるようなカルチャーの部分もお聞きできればと思います。平塚市役所ではサークル活動が活発とお聞きしたのですが、どのようなサークルがあるのですか?

齋藤さん

私は今、サッカー部に所属しています。その他にもバレー部、野球部、硬式・軟式テニス部、卓球、バドミントンなど多様なサークルがあります。運動部だけでなく、囲碁将棋部などの文化部もありますよ。

編集部

サッカー部ではどのような活動をされているのでしょうか。

齋藤さん

今は結婚して子どもが生まれたこともあり頻繁には参加できていないのですが、それまでの10年間くらいは週2回ペースで仕事後の練習に参加しており、月1、2回は土日に試合がありました。公務員サッカー部を対象にした全国大会もあり、私も3回全国大会に出場しました。

編集部

想像以上に、かなり本格的なサークル活動なんですね!

齋藤さん

そうですね。本当に生活の一部のようになっていて、そのために頑張って仕事を終わらせよう、というモチベーションにもなっていました。

相川さん

平塚市は総合公園にサッカースタジアムや野球場があることもあって、市全体にスポーツ文化がとても根付いています。市役所での活発なサークル活動も、その文化があるからこそだなと感じますね。

実は平塚市役所では、部署対抗のスポーツ大会が月に1回ペースで行われています。4月は駅伝大会、5月はテニス大会、といったように種目を変えながら実施しています。それに参加することで職場の団結が深まったり、今まで接点がなかった人との交流が生まれたりという良い効果もあります。平塚市に根付くスポーツ文化が職場の雰囲気を良くしてくれていると感じる瞬間は多いですね。

採用は「人物重視」。公務員試験ではなく適性検査を導入

平塚市役所の仕事風景

編集部

最後に、採用について伺います。平塚市役所ではどういった点を重視して採用活動を行っていますか?

相川さん

平塚市役所では「人物重視」の採用を行っています。人柄や人間性に着目して面接を中心に採用を行っており、筆記試験も特別な対策が必要な公務員試験ではなく、民間企業で実施している適性検査を取り入れています。

編集部

公務員試験ではなく適性検査にされているのはどういった理由からなのでしょうか?

相川さん

やはり従来の公務員試験には特別な対策が必要で、そのための勉強をしていなければなかなか点が取れないことが多いです。しかし必ずしもこの勉強をしている方だけに適性があるわけではないと思っています。民間企業と併願できるような適性検査を行うことで、平塚市役所を志望してくださる方の間口を広げるのが目的です。

求める人物像は「素直な人」「貢献心のある人」「『平塚が好き』という想いがある人」

編集部

「人物重視」の採用を行う上で、平塚市役所が求める人物像はどのような方なのでしょうか。

相川さん

求める人物像として挙げているのは「素直な人」「貢献心のある人」「『平塚が好き』という想いがある人」の3点です。

「素直な人」というのは、言い換えると柔軟性がある人ということになります。社会情勢が目まぐるしく変化していく中で、公務員に求められる役割もどんどんと変わってきています。周りからの刺激や要望を素直に受け止め、自分を柔軟に変化させられるような資質のある方を、平塚市役所では求めています。

「貢献心のある人」というのは、公務員として市民の方の助けになりたい、まちを良くしていきたいという思いを根底に持つ人です。平塚市役所での仕事は多岐にわたりますが、どのような仕事に就いたとしても、その思いを根底に持っていれば良い仕事ができると思っています。

その上で、「『平塚が好き』という想いを持つ人」というのはとても大切な要素です。平塚市に愛着を持ち、平塚市の魅力や改善点を良くしていくための意欲を持てる人というのが、平塚市役所で活躍していけるのだと考えています。

齋藤さん

「平塚が好き」というのは、決して地元出身者であるということではありません。私は平塚市の出身ですが、一度平塚市を離れたことがあり、そのときに平塚市の良さを再認識することができました。外からの視点も含めて、平塚市の魅力を見つけられる方というのはまちを良くしていく上で重要だと思います。

相川さん

平塚市役所では、そういった気づきやアイディアを実現していける環境があります。「素直な人」「貢献心のある人」「『平塚が好き』という想いがある人」に当てはまる方、ぜひ平塚市役所で一緒に働きましょう。

編集部

自分の意欲やアイディアを受け入れてくれる環境がある平塚市役所では、型にはまることなく、自分をどんどん変化させ、挑戦できる方が活躍していけると感じました。

本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。

■取材協力
神奈川県平塚市:https://www.city.hiratsuka.kanagawa.jp/index.html
採用ページ:https://www.city.hiratsuka.kanagawa.jp/jinji/saiyo.html