働きがいのある会社を実現する「はてな」のフレキシブルワークスタイル制度

新しい働き方や独自の福利厚生制度、そして注目すべきカルチャーを持つ企業を紹介する本企画。今回はインターネット関連事業を手掛けている「株式会社はてな」にインタビューしました。事業概要や働き方、福利厚生制度、採用におけるポイントなどについてお聞きしています。

「株式会社はてな」とは

2001年7月に設立された「株式会社はてな」は現在、京都と東京の2カ所を拠点としてインターネット関連事業を手掛けています。

もともとは「はてなブログ」や「はてなブックマーク」などの個人ユーザー向けサービスを主力としていました。近年では、個人向けサービスで培ってきた技術やノウハウをベースにして、各種の法人向けサービスも積極的に展開中です。

また2020年11月には、独自の働き方を実現する「フレキシブルワークスタイル制度」を導入し、この制度を2022年5月にアップデートしたことでも注目されています。

会社名 株式会社はてな
住所 京都府京都市中京区烏丸通六角下ル七観音町630 読売京都ビル7F
事業内容 インターネット関連事業(UGCサービス事業)
・コンテンツプラットフォームサービス
・コンテンツマーケティングサービス
・テクノロジーソリューションサービス
設立 2001年7月
公式ページ https://hatena.co.jp/
働き方 フレキシブルワークスタイル制度(フルフレックス、在宅・出社勤務の自由選択)

「働きがいのある会社」を目指している株式会社はてな。2020年に導入した「フレキシブルワークスタイル制度」などの各制度、産休・育休の取得率が高い要因やそのための雰囲気づくり、社内カルチャーなどを中心に、コーポレート本部人事部の中館さんにお話を伺いました。

本日お話を伺った方
株式会社はてなコーポレート本部人事部の中館貴也さん

株式会社はてな
コーポレート本部人事部

中館 貴也さん

個人向けと法人向け。二つのインターネットサービスを展開中

株式会社はてなコーポレート本部人事部の中館貴也さん

編集部

まずは御社の事業内容について、ご説明をお願いいたします。

中館さん

はてなは、インターネット関連事業を手掛けているWebサービス企業です。

個人ユーザー向けサービスには、「はてなブログ」や「はてなブックマーク」などがあります。これらは、個人ユーザーがインターネットを通じてコンテンツを発信・共有するコンテンツプラットフォームサービス、いわゆる「UGC(user generated content)サービス」ですね。

そして法人向けサービスとしては、企業のオウンドメディアなどを支援する「コンテンツマーケティングサービス」や、弊社の技術力・ノウハウを提供する「テクノロジーソリューションサービス」などを展開しています。

編集部

はてなさんのメンバーにとって、仕事の面で特に面白さややりがいを感じる部分はどういったところでしょうか。

中館さん

BtoCとBtoBの双方のお客様に対してWebサービスを開発・提供しているのが、私たちの事業の特徴だといえます。自分たちが開発に関わるサービスを個人や法人のお客様にご利用いただき、その反響を直接知ることができる点には、やりがいを感じているメンバーが多いと思いますよ。

弊社には、インターネットが大好きなメンバーが揃っているので、自分たちが「ぜひユーザーさんに使って楽しんでいただきたい」と思えるインターネットサービスを開発していること自体が面白さになっていると思います。

編集部

なるほど。自分の好きなものに仕事として携われることが、やりがいや面白さにつながっているのですね。

中館さん

そう思います。「インターネットが大好き」というのは、弊社の行動指針である「はてなバリューズ」にも掲げられており、すべてのメンバーに共通しています。

在宅と出社を自由に選べる「フレキシブルワークスタイル制度」

株式会社はてなの「フレキシブルワークスタイル」制度概要
▲はてなさんの「フレキシブルワークスタイル」制度概要(公式ページから引用)

編集部

次に、働き方についてお聞きします。はてなさんは、2020年から「フレキシブルワークスタイル制度」を導入されました。これはどういった制度なのですか。

中館さん

フレキシブルワークスタイル制度は、「すべての従業員が在宅勤務と出社勤務とを自由に選択できる制度」のことです。在宅・出社の選択にかかわらず、在宅勤務手当や在宅勤務一時金などは支給されます。

2022年5月には制度をアップデートしており、所属オフィスから2時間以内という居住地制限が全国に拡大され、新たにフルフレックスも導入しました。変更後から2022年3月までの平均出社率は約9%だったので、90%以上の社員が在宅中心の働き方を選択しているということになります。

編集部

制度の内容は状況に応じて変わっていくのですね。

中館さん

そうです。フレキシブルという名前が表すように、基本的な方針は外部環境にあわせて柔軟に変えています。この制度を一言で言い表すとすれば、「柔軟に変化していくことを前提とした、出社を前提としない福利厚生を含めた制度」という表現になるかと思います。

編集部

在宅勤務一時金は12万円ということですが、これをメンバーの皆さんはどのように活用しているのですか。

中館さん

基本的には在宅勤務に関わる環境整備全般に使ってもらうことを想定しています。人にもよると思いますが、椅子や机の購入、そしてインターネット環境の整備などに用いているのではないでしょうか。

はてなの場合、入社時にオフィスでは、椅子を選ぶことができたり、モニターも良いスペックのものを用意しています。出社を選べばそういう環境が用意されますが、在宅となるとそうはいきません。そこで、予算の範囲で納得のいくものを選んで買い求めてもらっています。

“拘束力のないコアタイム”を備えたフルフレックス制度

編集部

では、はてなさんのフレキシブルワークスタイル制度の要ともいえる「スーパーフレックスタイム制度」について伺います。この制度の運用ルールは、どういったものでしょうか。

中館さん

いわゆるコアタイムのないフルフレックスを導入しています。ただ、少し緩い制限といえる「推奨フレキシブルタイム」があり、これは「この時間内で働くことを推奨します」というもので、今は7時〜21時に設定されています。この「推奨フレキシブルタイム」は、どちらかというと「深夜勤務をやめましょう」という意味合いが強いかもしれません。

さらには、「推奨勤務時間」という緩いコアタイムもあります。こちらは11時〜16時に設定されており、拘束力のないコアタイムといったところですね。

編集部

皆さんはだいたい、その時間内で働いている感じでしょうか。

中館さん

そうですね。以前の定時は10時〜19時でしたので、これをベースにした勤務時間を設定しているメンバーが多いですね。

過去から実践されてきた“リモートワーク的”な働き方

編集部

リモートワークについてはいかがでしょう。原則として出社のないフルリモートも選択可能とのことで、その導入がメンバーの皆さんにどんな変化をもたらしたのか教えてください。

中館さん

多くのメンバーは、それほど大きな変化を感じていないと思います。はてなはフレキシブルワークスタイル制度の導入以前から、東京と京都の2拠点で事業を展開しています。ですから、リモートワークをその延長線上と感じるメンバーが多いんです。

私の場合でいいますと、上司が二人います。どちらも京都で勤務しており、当初からリモートでのコミュニケーションが当たり前でした。ですから、フレキシブルワークスタイル制度の導入後も、それほど大きな変化を感じませんでした。

編集部

以前からリモートワーク的な働き方を皆さんが実践されていたのですね。

中館さん

そうです。ただし、オンボーディングやチーム開発においてはコミュニケーションが円滑であることがとても重要ですので、チーム単位、全社単位でコミュニケーションに関わるさまざまな工夫を実践しています。

そのなかのひとつに、独自のコミュニケーションサービスを自社開発するといった動きもありました。

編集部

ツール開発などで課題解決に向かう姿勢が、はてなさんの強みでもあるんですね。

コミュニケーションの円滑化を創業当初から重視

編集部

中館さんがおっしゃるように、リモートワークの推進にあたって重要なことは、コミュニケーションの円滑化だといわれます。さまざまな工夫をされているとのことですが、いくつか具体的に教えていただけますでしょうか。

中館さん

まず非同期的な取り組みでいいますと、メンバーのちょっとした日常だったり、人となりがわかるような気軽な投稿を促進するための工夫がいろいろとされています。

先ほどお話しした自社製のコミュニケーションツールだったり、一言日記のような短文を投稿するとSlackに流れてきてみんなの目に触れるようになっていたりというものです。

あとは、社長が従業員をゲストに迎えて近況や趣味について聞くラジオを配信したり、新しく入社したメンバーのインタビューが掲載される社内報も更新しています。

編集部

同期的な取り組みはいかがでしょうか。

中館さん

同期的な取り組みでいいますと、「全社朝会」を毎日開催しています。また、業績の報告会である「全社共有会議」を毎月1回実施しています。他にも、最近入ったメンバーと社長がオンラインランチをする「社長ランチ会」なども不定期で開催しています。

これらは、リモートワークの導入以前から継続的に実施してきたものです。弊社はもともと、メンバー同士でコミュニケーションを図る機会がとても多い会社だと思います。リモートワークによってオフラインでやっていたことをオンラインに移行したり、オンラインでできるようにやり方を工夫したりしたものが多いですね。

編集部

出社がメインであった時も、コミュニケーション円滑化の重要性は変わらなかったということですね。

中館さん

そうです。はてなは、創業時から会議の議事録や仕事にまつわること、そして自分が考えていることなどをすべてテキストに残すという「テキスト文化」を、ものすごく大切にしてきた会社なんです。リモートワークに取り組むメンバーとタスク共有をするときに、そのテキスト文化が非常に有効でした。

また、産休や育休から復帰したメンバーが、すぐに業務に追いつけるようになっているのも、このテキスト文化による貢献が大きいと思っています。フレキシブルワークスタイル制度で出社を前提にしなくなったといっても、テキスト文化のおかげで特に大きな変化がなかったのだと思います。

業務の生産性を高めている「ツール」と「社風」

株式会社はてなの東京オフィス会議室

編集部

はてなさんがリモートワークをスムーズに運用している要因の一つには、業務の生産性の高さがあるように感じるのですが、いかがでしょうか。

中館さん

確かに無駄な作業が少ない会社だと思います。人事系も含めて、申請や承認なども、ツールなどを使いながらほぼオンラインで完結できます。仕組みの高効率化が、会社全体の生産性を高めていることは確かですね。

編集部

はてなさんはIT企業ですから、そういう仕組みづくりはお手の物なのでしょうね。

中館さん

まだまだ工夫できる余地はあると思いますが、ツールの活用などについてはメンバーのリテラシーも高いのでかなりスムーズだと思います。

あとはオープンな社風があります。かなりフラットで、「誰々さんがこういったから、こうしておかなければいけない」というような、本質的ではないものを求められることはありません。仕事に向き合うことを最優先にしているという感じです。

編集部

オープンな社風が効率化にもつながるのですね。

中館さん

そう思います。はてなにはIT好きのメンバーが揃っているので、技術やツールをうまく活用して、効率化していくことが好きなんですね。仕組みで解決することを得意とするメンバーが多いので、無駄な作業をやっている人がいたら、すぐに仕組みを提案したり、ソリューションを用意します。そういうことを日常的に実践しているのが、弊社の特徴だと思います。

月に一度の成果発表会「ほたて賞」の目的とは

編集部

はてなさんでは、効率化を実現するツールや仕組みを開発したメンバーを表彰するような制度もあるのでしょうか。資料では毎月第4金曜日に「ほたて賞」という成果発表会を開催していると拝見しました。

中館さん

ほたて賞の”ほたて”は、「ホットなタスクを手掛けた」の略です。この取り組みの目的としては、情報の非対称性をなるべく下げるということが大きいですね。

隣のチームのやっていることを知れたり、ミッションやバリューが体現されている行動をみんなで共有しあえる機会になっています。また、報酬も出ますので、福利厚生の一環だともいえます。

編集部

最近受賞された方で、「まさにバリューを体現している」といえるような事例がございますか。

中館さん

最近自分が評価してもらった例ですと、「時間単位年休」の表彰がそれに当てはまると思います。有給休暇を時間単位で取得できる制度のことですが、これをフレキシブルワークスタイル制度に追加しようということで、主体的に提案して動いた結果、ほたて賞を受賞することができました。

編集部

提案のきっかけは、どんなことだったのでしょうか。

中館さん

きっかけは、入社後の面談で、時間単位年休のニーズを確認したことです。確かに時間単位の方が、休暇を効率よく消化できて合理的ですよね。しかも、フレキシブルワークスタイル制度との相性もいい。

ニーズもあるし、制度的にもマッチしているということで、上司と相談をしながら導入に向けて進めていきました。

産休・育休の取得率を高めるお互いをフォローしあう文化

株式会社はてなの東京オフィスの窓から見える風景

編集部

続いて、産休・育休制度についてお伺いします。はてなさんでは、出産するのが本人かパートナーかを問わずに産休・育休を取得できるそうですね。

中館さん

そうです。弊社では、2018年から2021年までの期間に、出産を迎えた従業員の82%が育児休暇を取得しました。内訳は本人が出産した場合が100%、パートナーの場合が74%でした。そして取得期間の平均は、本人の場合が12カ月、パートナーの場合が3カ月となっています。

編集部

男女を問わず産休・育休を取得しやすい環境なのですね。

中館さん

はてなには、チーム内でフォローしあう文化があるんですね。それに産休・育休取得は当然のことですので、みんなでカバーしあうのは当たり前という雰囲気があると思います。

編集部

お互いをフォローし合うことが、文化として根付いているのは素晴らしいですね。

中館さん

そう思います。パートナーが出産した場合の育休の取得は当初、マネジャー陣の方が積極的でした。メンバーはその背中を見てきたわけですから、「取得は当然」と考えることが当たり前になったのだと思います。

しかも、先ほどお話ししたテキスト文化があるので、誰かが急に抜けても、ログを残せばどうにかなるというところもあります。属人化しないように注意を払っていることも、産休・育休を取得しやすい要因の一つだと思います。

産休・育休後の復帰率100%を実現する独自の労働環境

編集部

産休・育休後の復帰率が100%という実績を残されていることも、はてなさんの特徴だと感じましたがいかがでしょうか?

中館さん

他社さんのことはわかりませんから何ともいえませんが、はてなの場合でいえば、育休前から楽しく働けていたことが、この復帰率につながっているのではないでしょうか。マネージャー含めて復帰後も変わらず活躍されている方が多いことも、理由のひとつかもしれません。

編集部

復帰されるのが当たり前のような環境なのですね。

中館さん

そう思います。はてなは、優秀なメンバーが自律的にチーム力を高めていける環境です。そんなに強い強制力を設定していませんから、自由度とか、柔軟さとか、自分らしさとか、働きやすさなどが実現されているんです。

この環境を心地いいと感じる人は、育休を終えた後も引き続き働きたいと思うのではないでしょうか。

トップの思いが産休・育休制度の拡充や取得しやすさを実現

株式会社はてなの「ミッション
▲はてなさんのミッション(公式ページから引用)

編集部

お話をうかがっていて、産休・育休制度がメンバーにとても寄り添ったものだと感じました。この手厚さは、どんな思いから始まったことなのでしょうか。

中館さん

そもそもということでお話しをすれば、ミッションに「事業成長と働きやすさを高次元でバランスさせ、働きがいのある会社を目指します」と掲げているからです。それに基づいた施策であることが前提です。

さらにいえば、社長の栗栖(代表取締役社長の栗栖義臣さん)が、働きやすい環境を非常に大事にしているという側面が大きいです。そのことがミッションにも反映されていますし、福利厚生制度の拡充などにも繋がっているのだと思います。

編集部

トップの思いが制度に色濃く反映されているんですね。

中館さん

栗栖はかつて勤めていた会社で育休を取れなかったという経験をしており(2008年当時)、「自分が社長を務めている会社では取得率を高めたい」という強い思いが、はてなの福利厚生制度の根底には流れていると思います。

働き方が変わっても、特に変化をしていない人事評価制度

編集部

次に人事評価制度について伺います。はてなさんはフレキシブルワークスタイル制度の導入にあたって、人事評価もこれに応じた変更などを行ったのでしょうか。

中館さん

人事評価制度自体は、フレキシブルワークスタイル制度の導入後でも特に変えてはいないですね。仕組みや手順などは変えておらず、「フルフレックス・リモートにおいてチームそれぞれが工夫をしてください」というメッセージを発信したぐらいです。この一言を発信しただけですが、これが非常にインパクトのある強いメッセージになったとは思います。

編集部

チームとしてのマネジメント手法なども、特に変わってはいないのでしょうか。

中館さん

マネジャーが、メンバーとの1on1の頻度を積極的に増やすとか、そういう工夫はチームごとにしていると思います。会社としては、それを信じて任せています。

今後、会社の評価とメンバーの納得度にかい離が生まれてきたら、そのときには人事評価制度に手を入れることになるはずです。それが文字通りのフレキシブルな対応だと思います。今のところはまだ、その必要性を感じてはいません。

採用のポイントは、インターネットが好きであること

株式会社はてなコーポレート本部人事部の中館貴也さん
▲「インターネットが好きな方なら楽しく働けるはず」と語るはてなコーポレート本部人事部の中館さん

編集部

では最後に採用について伺います。はてなさんには、どういった方がフィットするのでしょうか?

中館さん

そうですね。メンバーにはいろいろな職種の方がいますが、全員に共通することは「インターネットが好き」ということです。そしてみんなが「インターネットを、さらによくしていきたい」とも思っています。

社内におけるインターネットの世界観が、非常に明快なんですね。お互いをIDで呼び合うほどです。なんといいましょうか、ツイッターの世界が、そのまま社内で再現されている感じですね。

ですから、はてなはインターネットが好きな方には本当に合いますし、とても楽しく働ける会社だと思います。働きやすさについても、先ほどお話ししたフレキシブルワークスタイル制度がさらにアップデートしていくので、ご安心いただいていいと思います。

編集部

共通するカルチャーとして「インターネットが好き」ということが根底にあるので、その点でフィットする方はぜひ採用サイトをご覧になってはいかがでしょうか。本日はありがとうございました。

■取材協力
株式会社はてな:https://hatena.co.jp/
採用ページ:https://hatena.co.jp/recruit