独自の制度設定やカルチャーの浸透により、社員の皆様が能力を発揮しやすい環境を整えている企業にお話を伺うこの企画。今回は、1970年に設立された独立系大手のSIer(※)であり、働き方改革に長年取り組まれてきた富士ソフト株式会社にインタビューをさせていただきました。
(※)SIer:システムインテグレーター(System Integrator)の略。企画・構築・運用などシステム開発のすべての工程を一括して請け負う企業を指す。
富士ソフト株式会社とは
富士ソフト株式会社は、IT業界の成長にあわせ「挑戦と創造」を続けながら成長してきた、日本でも有数の独立系ITソリューションベンダーです。
2023年5月時点では、社員数はおよそ9,650人(単独)と、1万人に迫る規模を誇ります。「FUJISOFTは新価値創造カンパニー」というビジョンが示すように、常に新しい技術に取り組みながらクライアントに価値を提供してきました。
会社名 | 富士ソフト株式会社 |
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住所 | 神奈川県横浜市中区桜木町1-1(本社) |
事業内容 | ■業務系ソリューション 流通・金融・サービス・製造など、あらゆる領域に対するトータルソリューションの提供 ■組込/制御系テクノロジー 情報家電に使用される先端技術など、高い技術力を活かした組込・制御系テクノロジーの提供 ■プロダクト・サービス&アウトソーシング スマートフォンやロボット、デジタル家電など新規領域におけるプロダクトの開発・提供 |
設立 | 1970年5月15日 |
公式ページ | https://www.fsi.co.jp/index.html |
働き方 | ハイブリッド勤務 ウルトラフレックス制度(コアタイムなし、その他多様な働き方を実現する制度) |
今回は、富士ソフト株式会社に所属する若手および女性、またすべての社員が自分らしく働けるための制度や理念などについて、人事部長の滝野さんと人財開発部 キャリア採用推進室長の迎町さんにお話を聞かせていただきました。
創業50年を超えながら挑戦と創造を続ける大手SIer
▲AIやIoTなどの先端技術を「AIS-CRM」と名付け、重点的に取り組んでいる(採用ページより引用)
編集部
まず、説明不要かとは思うのですが富士ソフトさんの事業についてお教えいただけるでしょうか?
迎町さん
私たち富士ソフトは、いわゆる「独立系SIer」といわれるIT企業で、おかげさまで創業50年を超えております。本社は横浜市で、その他国内の拠点は北海道から沖縄まで37箇所、海外では台湾、韓国などの東アジアにネットワークを広げています。
事業内容はかなり幅広いのですが、すべてに共通して「IT技術を活用し、お客様の課題を解決するほか付加価値を提供することで、事業の成長をお手伝いする」という考え方がベースにありますね。
その中でも強みとなっているのは、社会インフラや通信、機械制御などの組込テクノロジーの分野を長年手掛けていることと、あらゆる業界のニーズに応える業務系ソリューションを提供していることです。それらのノウハウを活かして、新しいプロダクトも次々と産み出しています。
編集部
今おっしゃった新しいプロダクトについてですが、ビジョンで「新価値創造カンパニー」と掲げているように、最先端のテクノロジーにも力を入れていらっしゃるということでしょうか?
迎町さん
おっしゃるとおりです。私たちの会社の方針の1つとして、社員数が1万人に届こうとする中でも「ベンチャー魂を忘れずに挑戦し創造する」というものがあるので、変化の激しいIT業界の中でチャレンジを続け、継続して成長していきたいと考えているんです。
迎町さん
私たちが挑戦している技術領域は、「AIS-CRM(アイスクリーム)」としてまとめています。これは、対象としている分野「AI」「IoT」「Security」「Cloud computing」「Robot」「Mobile」「Auto Motive」から取ったものです。
近年はDXやサービスデザイン、5G通信、グローバル展開なども追加しているので、「DX+AIS-CRM+SD+(5)G2」という形になっています。ちょっと長いんですけども(笑)、それだけ新しい価値を創り出していきたいという想いが強いのだと受け取っていただければありがたいです。
▲プロダクトのひとつであるバーチャル教育空間「FAMcampus(ファムキャンパス)」
編集部
むしろ、そこが「富士ソフトさんらしさ」なのだと感じました。創業当時から変わらないビジョンを掲げつつ、技術面ではフットワーク軽くどんどん新しい分野に挑戦するという姿勢が、ひとつの社内用語にもあらわれているんですね。
各ステップでの研修制度など、若手への手厚いサポートあり
▲オンライン・オフラインで最新技術などを共有する「技術発表会」。富士ソフトさんは社員が学びを得る場を多数設けている
編集部
続いて、若手社員の皆様のご活躍についてお話を伺えればと思います。そもそも、富士ソフトさんには若手を積極的に採用されるカルチャーがあるのでしょうか?
迎町さん
ありますね。私はキャリア採用推進室の室長を務めているのですが、元々は新卒採用を担当していました。現在、毎年800人規模で新卒の学生が入社していますし、中途採用の方も200人〜400人ほど入社しています。
中途入社の中には、20代の方も多く含まれています。会社の方針として若い世代に活躍してもらいたいことと、そのためにしっかり育てる体制を整えているということが、弊社の特徴だと考えています。
編集部
具体的には、どのようなサポートをして成長を促しているのでしょうか。
迎町さん
研修制度を充実させているほか、精神面でもサポートを欠かさないようにしています。
年度によって異なりますが近年の新卒の社員は、理系・文系でいうとちょうど半々ぐらいの割合で、中には「プログラミングなんて触ったことがない」という人も多いです。ですので経験を鑑みて「初級・中級・上級」などクラスを分けた上で技術研修をしっかり実施し、現場に配属された後もOJTをおこなうほかプロジェクトごとの追加研修を実施しています。
また、全員が受ける新入社員研修の他にも任意で受講できるものを開いていたり、リーダーや専門職になるなどステップアップのタイミングでも研修を用意しています。弊社は研修に力を入れていますので、学ぶ意欲があればスピーディーに成長できる環境だと思いますね。
もうひとつお伝えしたいのが、BS制度です。BSは「Brother&Sister」の略で、BS員は新入社員に対して1年間マンツーマンで指導やサポートをおこないます。困ったことがあったら相談できる先輩、メンターのようなイメージですね。
もちろんBS員以外にも同じチームのメンバーなどもサポートしてくれるのですが、業務と関わりのないところでもコミュニケーションをとって悩みを聞いてくれる人がいるというのは、特に若い社員にとっては助けになっていると思います。
「教えているうちに成長し、それが次年度につながる」という好循環
編集部
富士ソフトさんに入社された若手社員の皆様はどのようなキャリアを歩まれるのか、一例をお教えいただけますか?
迎町さん
近年の事例だと、入社初年度に研修を受けながらしっかり学んで「補助職」からスタートし、2年目には「専門職」で経験を積み、3年目には「リーダー職」を任されるなど、順調にステップアップされる方が増えている印象があります。
その理由としては、毎年新入社員が多いことが関係していると思います。2年目になるとすぐ先輩という立場になるので、後輩の面倒をみているうちに、やっぱり自分も成長するんですよ。「このあいだまで新人だったのに、すごく頼れる先輩になっている」と驚くことも多くて、すごく良い循環だと感じていますね。
編集部
キャリアを進めていく中で、「こういう仕事がしたい」と希望される社員の方に対しては、会社としてどのような対応をされているのでしょうか。
滝野さん
キャリアに関する富士ソフトの基本的なスタンスとして、「手を挙げる人には積極的に挑戦させてみよう」という方針なんですよ。新しいポジションに異動するというリスクを取りながらも、チャレンジをしたいという姿勢は歓迎しています。
現在、社員満足度調査と一緒に「キャリア調査」というものを年1回実施しています。その中で「将来の働き方としてこんなビジョンを持っている」「スペシャリストとしてこの部署に移りたい」といったような意見も出てくるので、人事からアプローチして各セクションに働きかけているんです。
これは大きなキャリアの転換だけでなく、異なるタイプのプロジェクトにアサインするなど、そういったものも含んでいます。どのようなケースであれ、組織として新陳代謝を促して、より活躍できる場所でいきいきと働いてもらうために私たちは全力でサポートしています。
編集部
社員の皆様の声を吸い上げ、より能力を発揮できる場所に移すということも実施されているんですね。会社全体が活性化するほか、個人の「働きがい」という意味でもすごくポジティブな仕組みができているんだと感じました。
「ウルトラフレックス」で柔軟な働き方が可能
▲女性を含め全社員が働きやすい環境を早くから整備している(採用ページより引用)
編集部
富士ソフトさんでは働き方改革をずっと続けてこられていると伺っていますが、詳しくお教えいただけますでしょうか?
滝野さん
おっしゃるとおり、弊社は働き方改革についてはトップランナーといえる存在だと思います。たとえば在宅勤務制度についても、日本中の企業が採用を始めたはるか以前の1989年に導入しています(※)。また、勤務時間を柔軟にするスーパーフレックス制度も1990年に施行しました。
(※)1989年時点では育児・介護等の事由がある社員が対象。全社的には2013年に在宅勤務制度を施行している。
会社としてこだわっているのは、「法律の一歩先を行く」という姿勢ですね。子育てをする社員のサポートなどについては育児・介護休業法で定められていますが、法令以上の支援をできるようにしたいんです。
編集部
具体的には、どのような制度が挙げられるでしょうか。
滝野さん
特徴的なのは「ウルトラフレックス」という制度です。先ほど申し上げたとおり、元々コアタイムのないスーパーフレックスを導入していたのですが、それをさらに進めた形になっています。
このウルトラフレックスは、従来どおり時間の融通がきくだけでなく、時間帯を固定せずフレキシブルに半日有休を取得可能とする「フレキシブル有休制度」や、10分単位で業務中の休憩を認める「リフレッシュタイム制度」など、とにかく柔軟に働けるんです。常に「さらに働きやすくするにはどうするか」を考えて制度設計をしていますね。
女性が活躍できる職場環境は、外部からも高評価を受けている
▲開発プロダクトであり、社内でも活用しているバーチャルオフィスツール「FAMoffice」。リモートでも出社に近い感覚で働ける
編集部
IT業界はどうしても男性が中心というイメージがあるのですが、富士ソフトさんではどのような状況なのでしょうか。
滝野さん
弊社は、昔からずっと「女性だから、男性だから」という考え方はしていません。もちろん女性には特有のライフステージの変化もありますし、時代の要請などもあるのですが、基本的には男女で区別せずに、多様な働き方ができるような制度を整えてきました。
その結果として、弊社は「えるぼし」「プラチナくるみん」「準なでしこ」「Forbes JAPAN WOMEN AWARD」(※)などの認定や表彰を受けています。でも、これは受賞のために制度を作ったのではなく、富士ソフトの従来の働き方が評価されているんです。
(※)それぞれ、女性が活躍している企業を評価している制度。
えるぼし:厚生労働省による、女性が能力を発揮しやすい職場環境を満たしている企業への認定制度。
プラチナくるみん:厚生労働省による、「子育てサポート企業」を認定する制度。
準なでしこ:経済産業省による、女性活躍推進に優れた上場企業を選定する制度。
Forbes JAPAN WOMEN AWARD:株式会社LiBとグローバルビジネス誌「Forbes JAPAN」による女性アワード。
編集部
ことさら女性を特別扱いしているわけではなくても、社員全員の働きやすさを求めているうちに、女性が活躍できる環境が整っていたということなんですね。
滝野さん
そうですね。ただ、IT業界に進む人の比率としてどうしても男性が多いという事実があるので、女性管理職の比率など、実態としてはまだ足りていない部分があるのは確かです。また、男性が育休を取るケースも増えているとはいえ、女性は出産・育児のために、より長い期間キャリアがストップしてしまいます。
しかしながら、その状況は、少しずつですが変わってきていると感じていますね。実感として、若く優秀な女性社員は非常に多いですし、役職者や管理職の女性比率も上がってきています。
さらに、リモートワークや先ほどご紹介したウルトラフレックスなどの制度により、育児と仕事を両立してすぐに職場復帰できるケースも最近では普通です。男女におけるキャリアの差は、富士ソフトではどんどん縮まってきているんです。
「Lキャリア推進室」が、さらなる女性活躍のためのプロジェクトを推進
編集部
今までお話しいただいたもののほかに、富士ソフトさんで女性がさらに活躍されるための取り組みはあるのでしょうか?
滝野さん
当てはまるものとして、2021年8月に立ち上げた「Lキャリア推進室」をぜひ紹介したいです。この「L」は、厚生労働省が認定する「えるぼし」に加え、「Lady(女性)」「Labor(働く)」「Lead(手本)」「Laudable(賞賛)」の意味が込められています。
Lキャリア推進室では、女性の取締役がトップに立ち、性別・年代・職種などを限定しないワーキンググループを作って、環境・制度の見直しや女性のキャリア支援を実施しています。いろいろなプロジェクトが同時進行していますが、必要があれば経営層にダイレクトに報告を上げながら、課題解決をおこなっていますね。
迎町さん
実際に何をしていて、どのような点が改善されたかというのは、ワーキンググループの各メンバーが社内報でどんどん発信してくれているんです。私もいつも見ていますし、社内での認知度も高いと思います。
編集部
すでに充実した制度が用意されていると感じたのですが、異なるライフステージの方が活躍できる環境を整えるために、Lキャリア推進室の活動を通してさらに改善していこうとされているのですね。
成長のためにチャレンジできる人は、ぜひ応募を
▲2023年入社式の風景。富士ソフトさんには毎年、若い世代がどんどん加わっている
編集部
最後にお聞かせください。富士ソフトさんは、どんな人に入社してほしいと考えていらっしゃるのでしょうか。
迎町さん
人物像という面では、やはり「チャレンジしたい、成長したい」という気持ちを強く持っている方ですね。成長するために自分で考えて努力ができる方は、部署や職種、年齢を問わず活躍していけると思いますので、そこが一番大事でしょうか。
新卒を含めた若手の方は、どうしても過去の経験という意味ではそれほど積み重ねがないですよね。だから、「今まで何をしてきたか」よりも「これからこう頑張りたい」という想いを聞かせてほしいです。
富士ソフトは、お話しした数々の研修を含め、教育制度がすごく充実していると思います。ただ、そのような制度は本人の意欲があって初めて活かされるものなので、キャリアに対するイメージをしっかりと持って成長のために行動できる方は、必ず活躍していただけると思います。
編集部
入社後に活用できる研修制度や、ウルトラフレックスなど働き方に関する制度が充実している富士ソフトさんでは、その制度を活用する本人の意欲がより重視されるということなんですね。本日はありがとうございました!
■取材協力
富士ソフト株式会社:https://www.fsi.co.jp/index.html
採用ページ:https://www.fsi.co.jp/recruit/