世界中からメンバーが集まるグローバル企業の多様な働き方に迫る本企画。今回は、「kintone(キントーン)」をはじめとするグループウェアを手がけるサイボウズ株式会社にインタビューしました。
「kintone」などでチームワークを支援するサイボウズ株式会社
サイボウズ株式会社は、「チームワークあふれる社会を創る」というパーパス(存在意義)を掲げ、チームワークを支援するためのグループウェアを開発・提供しています。
スケジュールや掲示板、メッセージ機能などを備えた中小企業向けグループウェア「サイボウズ Office」や、コーディングなどのIT知識がなくても業務に合わせたアプリを作成できる「kintone」など4つのグループウェア製品を手がけているほか、2017年にはチームワークのメソッドを提供する「チームワーク総研」を設立し、組織づくりのための研修やコンサルティングなどを行っています。
会社名 | サイボウズ株式会社 |
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住所 | 東京都中央区日本橋2-7-1 東京日本橋タワー27階 |
事業内容 | ・グループウェアの開発、販売、運用 ・チームワーク強化メソッドの開発、販売、提供 |
設立 | 1997年8月 |
公式ページ | https://cybozu.co.jp/ |
サイボウズ株式会社はkintoneを中心に海外でのサービス展開を行っており、グループウェアを含む4つの製品ユーザー数は国内で1,250万人(2023年11月時点)にのぼります。アメリカ、オセアニア、中国、東南アジアなどに7拠点を構え、2022年には新規事業創出を目的とした多国籍チームも発足しました。
今回は、若手社員の活躍やグローバルで多様な職場環境について、採用を担当する平賀実莉さんとサンタナ イルハムヌル ファドリさんにお話を聞かせていただきました。
20代でチームを率いる!サイボウズの社員が第一線で活躍できる理由
編集部
サイボウズさんでは20代から30代前半の社員が多く活躍されていると伺いました。若手社員の皆さんは、具体的にどのような場面で活躍を見せていますか?
平賀さん
弊社にはキャリア採用の方もたくさんいますが、ここ数年は毎年30〜40名のペースで新卒社員を採用できているため、若いうちからオーナーシップを持って活躍しているメンバーが増えてきたと感じます。
例えば、私と同じ2018年に新卒入社して営業を担当している社員は、入社5年目でアメリカの拠点に転籍し、現地での販売活動に従事しています。ほかにも、入社3、4年目でプロダクトマネージャーに抜擢され、製品の新機能の開発をリードしている社員がいます。
編集部
平賀さんも2018年に新卒で入社され、20代のうちからチームリーダーを担当されていますね。
平賀さん
私は初配属から現在まで人事に携わっており、入社4年目で新卒採用チームのリーダーになりました。社内でも割と早いスピードでリーダーというポジションを経験させてもらったと思います。
編集部
リーダーになったことで、考えや行動にどのような変化がありましたか?
平賀さん
それまでは自分の担当業務のことだけを考える働き方でしたが、リーダーになってからは自分が担当する新卒採用だけでなくキャリア採用も含めた会社の採用戦略や事業戦略を理解し、会社の今後のために今どのような採用を行えば良いのか考えるようになりました。
編集部
視点が上がり、全体を俯瞰して物事を考えるようになったのですね。平賀さんは採用のほかに多様性理解促進チームのリーダーも兼務されていますね。
平賀さん
はい。多様性理解促進チームは、サイボウズの社員が多様性の観点をもち、主体的に協働しやすい環境をつくることを目的としており、「障害」「セクシュアリティ」「ジェンダー」「多文化共生」の4つの分野で啓蒙活動を行ったり、当事者の声を聞いて制度の見直しなどを行ったりしています。
編集部
「100人いたら100通りの働き方があって良い」と考えるサイボウズさんだからこそ、多様性の課題にも真剣に向き合っているのですね。
「社内の情報の見える化」が社員の視野を広げる
編集部
サイボウズさんに若いうちから能力を発揮し活躍できる社員が多い背景には何があるとお考えですか?
平賀さん
まずは、いい意味で「権限がかっちりと決まっていない」というサイボウズのカルチャーが背景にあると思います。弊社にはポジションに関係なく誰でも意見を持ち提案できる雰囲気があるので、年齢や年次によらず活躍できるのではないでしょうか。
また、弊社では自社製品を積極的に活用することで「社内の情報の見える化」を推進しています。ほかの部署に関する情報を入手しやすいため、社員が視野を広げたり、ほかの部署の人たちが学んだことを自分の仕事に応用したりすることができます。
編集部
平賀さんは、自社プロダクトをどのようにお仕事に活用していますか?
平賀さん
開発や営業、マーケティングなど本部ごとにポータルサイトがあり、各本部がどのような戦略を立て、チームごとにどのような活動をしているのかを把握することができます。採用担当者としてこのポータルサイトを見ておくことで、どこかのチームで体制変更があったり新しいプロジェクトが立ち上がったりした時には「採用にも影響するかもしれない」と早めにアンテナを立て、準備することができます。
また、マネージャー会議の議事録アプリというものがあり、全社に関わる重要な意思決定についても公開の範囲であれば誰でも閲覧することができます。決定事項だけでなく、決定に至るまでにどのような背景が考慮され、どのような経緯を経たのかということまで全社員が把握できるため、仕事への納得感が高まり、モチベーションを持ちやすいと感じます。
キャリア採用でも焦らずオンボーディングできる
編集部
サンタナさんはインドネシアご出身で、日本の物流会社を経て2022年9月にサイボウズに入社されたそうですね。中途入社ではオンボーディングが課題になることも多いですが、サイボウズさんの場合はいかがでしょうか。
サンタナさん
一般的なキャリア採用は、即戦力としてすぐに能力を発揮することが求められる傾向がありますが、職場が変われば文化やコミュニケーションの違いに戸惑うのは当然だと考えています。
そのため、「キャリア入社だからといって焦らなくても大丈夫」という雰囲気で迎え入れてもらいました。
編集部
キャリア入社のメンバーをサポートする仕組みには、どのようなものがありますか?
サンタナさん
複数回のオンボーディング研修や、人事メンバーとのカジュアル面談、kintoneを使って不安や悩みを解決するワークショップなど手厚いサポートがあります。
また、入社時期が近いメンバーが「キャリア同期」としてつながりを持てる企画があるので、私もあまり不安を感じることはありませんでした。
編集部
焦らずに社内の風土や仕組みに慣れることができる仕組みがあるので、中途入社でも安心して新たなスタートを切ることができますね。
「モチベーション3点セット」でキャリア形成を支援
編集部
社員のキャリア形成を支える取り組みとしては、どのようなものがありますか?
平賀さん
弊社が社員のキャリア支援やモチベーション管理を行う際、大切にしているのが「モチベーション3点セット」を意識してもらうことです。
モチベーション3点セットとは、「やりたいこと」(個人の希望や挑戦したいこと)、「やるべきこと」(チームの理想や、自分が周囲から期待されていること)、「できること」(スキルや知識)のことで、3つが重ね合わさったところで仕事ができるとモチベーション高く働けると考えています。
編集部
「やりたいこと」がなかなか見えない人もいると思いますが、そんな時は相談できる場があるのでしょうか。
平賀さん
はい。モチベーションの3点セットを周囲と擦り合わせる機会も大切にしており、マネージャーとの1on1のほか、キャリアコンサルタントの資格を持つキャリア支援チームのメンバーにいつでも相談できる仕組みもあります。
また、オープンな社風なので、自分が歩みたいキャリアを先に歩んでいる先輩がいれば気軽に相談することもできると思います。
人事に携わるふたりがサイボウズで目指すこと
編集部
おふたりが今後サイボウズで目指したい目標やキャリアについてもお話しいただけますでしょうか。
サンタナさん
サイボウズは、国内だけでなく国外でも「チームワークあふれる社会を創る」ことを目指しており、タイやマレーシアなど東南アジアでも拠点を拡大しています。将来、私の出身国であるインドネシアでkintoneをはじめとするサイボウズのサービスをスタートすることになった際には、人事の立場でサービスの普及に貢献したいですね。
編集部
その目標に向けて、どのようなスキルや知識を身に付けたいとお考えですか?
サンタナさん
まずは、キャリア採用担当者としてサイボウズの採用に対する考えやプロセスを深く理解し、実務の経験を積みたいと考えています。自分がサイボウズのカルチャーを理解していなければ、たとえ現地に拠点ができたとしても戦略に沿った採用ができませんし、求職者にサイボウズの魅力を正しく説明することもできません。
編集部
インドネシアでの事業展開をにらみ、まずは国内での採用業務を通じて成長したいとお考えなのですね。平賀さんは、いかがでしょうか?
平賀さん
採用担当者として、「新しい仲間が入ってくれて良かった」で終わらずに、入社した後もモチベーションを持って生き生きと活躍してもらえるようにサポートしていきたいと思っています。
100人いたら100通りの働き方があると考えるのがサイボウズなので、リーダーやマネージャーになることだけが「活躍」だとは思っていません。得意なことを生かして活躍してもらうなど、100通りの方法で生き生き働けるような環境を作りたいと考えています。
編集部
おふたりとも、それぞれ明確な目標を持ちながら採用のお仕事に取り組んでいるのですね。
グローバル展開を進めるサイボウズは世界中からメンバーを採用
編集部
ここからは、グローバルな働き方をテーマにお話を伺いたいと思います。海外展開に力を入れるサイボウズさんなので、海外の人材も積極的に採用しているのでしょうか?
サンタナさん
そうですね。グローバル展開を加速させるため、弊社は2022年10月に「New Business Division」という多国籍なメンバーで構成される部署を新設しました。
この部署は新しいプロダクトの開発を目的としており、アメリカやヨーロッパ、アジア、オーストラリアなど様々な国から高度な専門知識を持つメンバーが集まっています。チーム内では英語を公用語としています。
編集部
新部署の設置で、今後さらに多様性のある職場になっていきそうですね。サンタナさんがお手本にしたいと思えるような外国出身のメンバーがいればご紹介いただけますか?
サンタナさん
東京本社でブランディングを担当しているアレックスさんというスイス出身のメンバーがいます。彼は弊社のオウンドメディア「サイボウズ式」や公式インスタグラムを通じて、日本で働く外国人の視点からさまざまなコンテンツを発信しており、時には会社の「おかしい」と思う点について書くこともあります。
例えば、「日本人の同僚に知ってほしいこと──欧米人の僕が、日本企業で初めてマイノリティになった苦悩と期待」という記事では、外国人社員はロールモデルが少なくキャリアパスを描きにくいことや、外国人社員の評価基準に対する思いを率直に書いています。
このようなことを発信できる人がいることは、グローバル企業を目指すサイボウズにとって、とても意味のあることだと感じています。
編集部
このような情報を発信する人がいるため、社員がこれまで当たり前だと思っていたことを見つめ直すきっかけとなり、より多様性を意識した職場環境へと進化することができそうですね。
サンタナさんが入社を決意したのはサイボウズのメディア展開がきっかけ
編集部
サンタナさんご自身は、なぜサイボウズでお仕事をしようと思ったのでしょうか?
サンタナさん
私は2017年に来日し、総合物流商社の総合職として5年ほど総務や人事、営業を経験しました。人事部で担当した採用の仕事に楽しさを感じたものの、ジョブローテーションで定期的な異動があったため、ひとつの部署でスキルを高めることが難しい状況がありました。
「もう一度人事に携わりたい」と思っていたとき、ちょうど先ほど紹介したアレックスさんの記事を読む機会があったんです。東京駅近くの公園の木の下でその記事を一気に読んで、とても共感したことを今もはっきりと覚えています。
その後、サイボウズの人事本部の髙木(一史)さんという方が「社員が閉塞感を感じず、幸せに働ける会社をつくりたい」という思いから出版した「拝啓 人事部長殿」という本にも出会い、こんな会社で人事の仕事がしたいと強く思い、求人に応募しました。
編集部
実際にサイボウズで人事担当として働いてみて、どのようなことをお感じですか?
サンタナさん
サイボウズにはスペシャリストを目指せる環境があるので、人事に深く関わりたいと考えている私にとっては、理想的な職場だと感じています。
また、平賀の話にもありましたが、社内の見える化が進んでいるので会社の方針や進む方向性に納得したうえで前向きに取り組むことができますね。
拠点間の交流によって新たな連携が生まれることも
編集部
グローバルに事業展開をしているサイボウズさんでは、拠点間の交流を促すような仕組みはありますか?
平賀さん
弊社では年に1度、製品展示やトークセッションを行う「Cybozu Days」という大きなイベントを開催しています。そのタイミングに合わせて、海外拠点のメンバーの一部が日本の拠点に集合し交流する機会を設けています。
編集部
拠点間で交流を持つことによって、どのようなプラスの影響が出ていますか?
平賀さん
違う拠点のメンバーと実際に話をしてみることで「もっと連携できることがあるのではないか」とか、「もっと効率的に進められるのではないか」といった気づきを得ることができます。
また、直接会ってコミュニケーションするからこそお互いのカルチャーの違いを認識し、前向きに受け入れようという気持ちが生まれていると感じます。
編集部
kintoneなどのプロダクトを世界展開するためにも、そのような機会を通じて拠点ごとの文化や特徴を理解することは意味がありそうですね。
平賀さん
その通りです。グローバル展開を成功させるためには、マーケットごとのローカル戦略を立てることが不可欠なので、拠点間の交流はこれからも密に行いたいと考えています。
引越しサポートなど外国籍メンバーが安心して働ける制度あり
編集部
世界中から人材を採用するためには、外国籍の方が安心して働ける制度や環境を整えることも欠かせないと思います。サイボウズさんでは、どのような取り組みをしていますか?
サンタナさん
弊社の外国籍メンバーのなかには、初めて日本企業で働く人も少なくありません。特に、日本の拠点で勤務する場合は言語の心配もありますし、私生活も慣れないことばかりで不安に思うことも多いと思います。
そこで、弊社では一定の条件はありますが、現在海外で居住している社員を対象に日本でのVISAの手続きや日本への引っ越しをサポートする制度を設けているほか、英語でのオンボーディング研修も実施しています。
■各種支援の詳細はこちら
https://cybozu.co.jp/en/company/careers/globalrecruitment/
編集部
多国籍メンバーからなるNew Business Divisionも創設され、今後さらに社内のグローバル化が進みそうなので、そのような制度があると安心ですね。
平賀さん
そうですね。外国籍のメンバーが大きく増え始めたのが1年ほど前なので、まだ制度的に整っていない部分もあると思います。この1年で入社してくれた外国籍のメンバーに丁寧にヒアリングをしながら、今後の環境づくりに活かしたいと考えています。
まだまだ成長するサイボウズ。型にはまらない挑戦者を歓迎
編集部
おふたりが感じる、サイボウズで働くことの魅力についてもお話しいただけますか?
サンタナさん
まだまだ成長の余地があると感じられる点や、型にはまらない働き方ができることがサイボウズの魅力だと思います。私が2022年に入社してから現在までの間にも会社は大きく進化しましたし、それに合わせて私も大きく成長できたと感じています。
特に今は世界展開をさらに拡大させるフェーズなので、とても面白いタイミングだと思います。
平賀さん
サイボウズは社員が経営者的な視点を持ちやすい会社だと感じています。社内の情報の見える化のおかげで社長と同じくらいの量の情報を得られるので、課題を見つけ出したり自分ごと化したりしやすい環境だと思います。
また、会社やチームに対して意見を言いやすいところも魅力です。何か意見を言った時に「それは違う」とか、「こういうルールだから」と言って跳ね除けるようなことをせず、「いろんな視点がある方がいいよね」と考え、まずは受け止めようとするカルチャーがあります。新入社員を見ていても伸び伸びと発言しており、こういうカルチャーが社員の成長や活躍にも良い影響を与えているのだろうなと感じます。
編集部
最後に、サイボウズさんで働くことに興味を持つ読者の方に、メッセージをお願いします。
サンタナさん
New Business Divisionという多国籍なメンバーで構成される部署もできましたので、多国籍の方を含めご自身のスキルを活かしてこれからのサイボウズを一緒に作っていっていただける方を大歓迎します。
平賀さん
もっと大きな裁量を持って働きたい方、何かに挑戦したくても年次やポジションを理由にそれができない方に伝えたいのは、サイボウズにはそんな想いを諦めなくて良い環境があるということです。
誰もが発言できるカルチャーがあるので、課題意識を持っている方や自発的に行動を起こしたいと考えている方には、きっとご活躍いただけると思います。
編集部
年齢や国籍に関係なく、誰もが能力を発揮して活躍できる組織づくりを行うサイボウズさん。グローバル展開にも力を入れているので、さまざまな価値観に触れながら刺激的な働き方ができそうだと感じました。
本日はありがとうございました。
■取材協力
サイボウズ株式会社:https://cybozu.co.jp/
採用ページ:https://cybozu.co.jp/recruit/