独創的なビジネスモデルの開発や最新テクノロジーの導入、そして斬新な働き方や若手の積極的な活用など従来とは異なるビジネス手法で、業界に新風を巻き起こしている企業をインタビューする本企画。
今回は消費者信用市場に新規参入する事業者に向けて、与信プラットフォームを提供するCrezit Holdings株式会社に、メインのサービスであるZEN(Credit as a Service)の概要や、事業起ち上げの経緯についてお聞きしました。
さらには、若手の活躍を効果的に引き出す「ストレッチ」や「ミッションへの共感」という考え方についてお話しいただくとともに、採用におけるポイントも伺っています。
Crezit Holdings株式会社とは
▲Crezit Holdings株式会社のミッション(公式ページより引用)
Crezit Holdings株式会社は、ミッションとして「信用を最適化して、人の可能性を解き放つ。」を掲げています。
メインの事業は、消費者信用事業に新規参入したい企業に向けた与信プラットフォーム「ZEN(Credit as a Service)」を提供することです。これまで高いとされてきた金融業への参入障壁を大きく引き下げ、消費者向けファイナンスの選択肢拡大を目指しています。
会社名 | Crezit Holdings株式会社 |
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住所 | 東京都港区六本木4-8-5 Kant.6階 |
事業内容 | 与信プラットフォームZEN(Credit as a Service)の開発・運営 |
設立 | 2019年3月(Crezit株式会社創業)、2020年7月(Crezit Holdings設立) |
公式ページ | https://crezit-holdings.com/ |
働き方 | 原則リモート |
コンシューマー向け金融の選択肢拡大を目指すCrezit Holdingsは、自社のテクノロジーに磨きをかける一方、フルリモートでの勤務が可能であったり、若手の活躍を積極的に推進したりする点でも注目されています。
今回は、同社の代表取締役社長CEOである矢部さんに、若手の活躍を引き出すために必要となる環境や、その整備についての考え方、そしてスタートアップで活躍できる若手の共通点などをお聞きするとともに、採用におけるポイントもお話しいただきました。
メインの事業は与信プラットフォーム「ZEN」の提供
編集部
最初に、事業内容について、お話しいただけますでしょうか?
矢部さん
私どもCrezit Holdingsは、ミッションとして「信用を最適化して、人の可能性を解き放つ。」を掲げています。IT領域のスタートアップですが、基本的には、消費者信用市場におけるイノベーションに取り組む企業です。
借り入れやローン、分割払いや後払い保証といった金融サービスに関わる与信を一つのフックにして、事業を展開しています。
弊社自身も行政から認可を受けた消費者向けの金融事業者であり、融資などの金融サービスを提供することが可能です。しかし、この事業はメインではありません。
Crezit Holdingsのメインの事業は、消費者信用事業に参入を希望する事業者様に対して、必要なソフトウェアやシステム基盤などをプラットフォームとして提供することなんですよ。
与信サービスの申込から与信審査、債権管理・回収、そして督促に至るまで、一連の業務の流れをサポートしています。ソフトウェアを提供して終わりではなく、オペレーション構築から事業の成長までをご支援する事業です。
これら一連のサービスをZEN(Credit as a Service)と呼んでいます。
事業を通じて、金融業界の古い体質を改善して課題を解決したい
編集部
ZEN(Credit as a Service)の提供は、金融業界における既存の課題を解決する事業、というイメージでしょうか?
矢部さん
おっしゃる通りです。私自身、学生時代に組んだローンの返済が滞ってしまった経験があり、与信枠をなかなか確保できなくなるという、苦い経験をしました。このことを深掘りしていくと、金融業界ならではの非常に古い体質に突き当たるんですね。
直近の数十年間を眺めても、ほとんど業界内に変化がないですし、新しい発想を持った人材が出現しにくい構造になっていると思います。これらを解決したいと思ったことこそ、Crezit Holdingsを起業するきっかけでした。
編集部
御社の提供サービスで、ここが目新しい!といえる取り組みには、どんなものがあるでしょうか?
矢部さん
大きなところで申し上げると、私どもはシステムをインターネット経由のSaaSとしてご提供しています。金融業界のシステムは、現在もなおオンプレミス型(※)の非常に古いパッケージ製品が主流なんですよ。
(※)オンプレミス型:自社内にシステムを設置し、自社で運用を行う形態のこと。
それに対して、私どもCrezit Holdingsは、必要なシステムをインターネット経由で提供できます。常に最新バージョンのプラットフォームをお使いいただけますし、金融業界においては新しい取り組みの一つです。
編集部
従来の審査では通らなかったケースにも対応できる、既存とは異なる審査基準を設けていらっしゃるようなこともありますか。
矢部さん
はい、あります。例えば、弊社がご融資をする場合にも、審査における独自の仕組みを用いているんですよ。そして、事業者様にプラットフォームをご提供する際には、新しい審査の仕組みやロジック、ルールなども併せてご提案しています。
働きやすさを優先して「リモートワーク」を採用
編集部
Crezit Holdingsさんは、基本的な働き方としてリモートワークを採用されていますよね。実際の運用について教えていただけますか?
矢部さん
弊社の働き方は、原則リモートワークとなっています。特にエンジニアチームの場合、完全フルリモートでの勤務といえます。
もちろん六本木のオフィスもありますので、週5日出社しているメンバーもいますが、多くはリモートワークを選択していますね。
とは言いましても、月に数回は全社で集まる機会があります。その際には、顔を合わせて直接話をする時間を設けているんですよ。お陰さまで、メンバーからは「働きやすい!」という声をもらっています。
固定の会議は最小限!チーム内でのコミュニケーションを密に
編集部
リモートワークをメインとする中で、メンバー間のコミュニケーションを円滑にするために、何か工夫をされているのでしょうか?
矢部さん
チームを分割することが、とても重要だと改めて感じています。私どもCrezit Holdingsは、まだ総員20名程度の小さな組織です。それでも、プロダクトごとの小さなチームを作って、チーム内でのコミュニケーション頻度を高めていくことを重視しています。
全社的なコミュニケーションの円滑化についても、いろいろと試行錯誤してきました。ところが、リモートを通じて全員集合した上での円滑化となると、なかなか難しい面も出てきます。
それよりも、小さなチーム内でコミュニケーションの密度を上げていく方が、今は効果的だと感じているんです。
編集部
チーム内でのコミュニケーション密度を上げる目的で、Crezit Holdingsさんでは、何か体的な取り組みをされているのですか?
矢部さん
特殊なことをやっているわけではありません。朝会・夕会を行っており、1日の始まりと終わりにメンバー同士が顔を合わせて、話をする機会を設けています。社内のほとんどのチームで実施中ですよ。
あと、固定の会議を極力減らしています。従来型のミーティングは、あまり多く設定しすぎないことが重要だと思っているんです。
その分、可能な限りリアルタイムで、必要なタイミングで気軽に声を掛け合える環境づくりに努めています。ツールとしては、Slackを使用しており、ハドルミーティング(短時間の打ち合わせ)機能も活用中です。
メンバーの特徴は、ミッションへの共感とチャレンジ精神
編集部
代表の矢部さんからご覧になって、御社の皆さんが共有するカルチャーや、共通の価値観のようなものはあるのでしょうか?
矢部さん
率直にお話しすれば、まだ模索の段階ですね。言語化されて、統一されたカルチャーがCrezit Holdingsに存在しているのかと問われれば、今はまだなくて、そこに至る手前のフェーズにいるとお答えします。
それでも、各メンバーの共通項を見出すことはできまして、「ミッションへの共感」です。いろいろなミーティングや報告などを通して、すべてのメンバーから明確に感じ取れますよ。
さらに申し上げれば、私どもの事業活動では、古いレガシーな業界に切り込むことを実践しており、日々チャレンジの連続です。このため、「チャレンジしたい!」という強い気持ちを抱くメンバーが多い傾向にあります。
チャレンジに対するモチベーションが、とても高いんですね。これらの特徴は、私どもCrezit Holdingsのカルチャーを今後明確化していくに際して、ベースになるだろうと考えています。
若手活躍の鍵はストレッチできるチャレンジングな環境
編集部
Crezit Holdingsさんでは、若手メンバーが多く活躍されているようにお見受けします。
矢部さん
確かに、弊社は若手が多いスタートアップですし、実際に大いに活躍中です。例えば、エンジニアについてお話しすると、29歳のメンバーがテックリード(プロダクトチームのリーダー)を担当しています。
4名ほどの小さな組織のリーダーとして、プロダクト開発のプランを練り上げたり、どういった技術を採り入れるべきかを検討したりしながら、意思決定を日々重ねているんですよ。
編集部
矢部さんからご覧になって、若手が思い切りパフォーマンスを発揮するためには、どのような環境が必要だと思われますか?
矢部さん
現時点の能力よりもストレッチした、チャレンジングな環境が必要ではないでしょうか。とりわけテックリードを担う若手メンバーには、難易度の高いプロダクト開発を任せています。今までの経験よりもレベルの高い、チャレンジせざるを得ないミッションですね。
もちろん、そのチャレンジに見合った権限や責任についても、シッカリと持ってもらう必要があります。
編集部
矢部さんがおっしゃる「ストレッチ」とは、「背伸びして、今の能力よりも少し高い課題に取り組む」といった意味合いでしょうか。
矢部さん
はい、その通りです。「今すぐできることよりも少し上の、難しいテーマに取り組むこと」がストレッチになります。
Crezit Holdingsのようなスタートアップでは、すべてのメンバーにこの取り組みが求められるんです。常にストレッチを意識しながら、毎日の仕事に向き合ってほしいと思っています。
環境の整っていないスタートアップでの活躍には自走力も必要
編集部
ストレッチのあるチャレンジングな環境づくりには、どのような方策が必要だと思われますか?
矢部さん
先ほどの話と少々矛盾するかもしれませんが、若手が活躍するための環境をマネジメントがあまり整備し過ぎるのもどうかな、と思っています。
弊社のようなアーリー期のスタートアップの場合、事業の環境が整ってないことが当たり前です。整っていない中で、どうやって前に進むのか?これを考えて実行できる人材が大切ですし、そういった若手が実際に活躍しています。
Crezit Holdingsのようなスタートアップで、若手の活躍をより多く引き出すためには、むしろ環境が整っていないことの方が大切なのかもしれない、と最近は思うようになりました。
編集部
スタートアップでパフォーマンスを発揮するためには、どのような環境に置かれても、自ら状況を切り拓いていく力が必要、ということですね。
矢部さん
はい、そうです。ただし、これは一般的な企業経営から見れば、ちょっと違うのかもしれませんね。一般的な企業経営では、若手が活躍できる環境を整備することは、マネジメント側の重要な仕事だと考えられています。
ところが私どもスタートアップは、代表を含めて全メンバーが常に厳しい競争を強いられています。整った環境でないと踏ん張れない方や、自ら状況を打開できない方にとっては、ふさわしい環境ではないかもしれませんね。
Crezit Holdingsのようなアーリー期のスタートアップで活躍する前提として、自走力があるというか、自分で何とか対処できる力を持っていることが求められると思います。
周りのスタートアップを眺めても、やはり活躍している若手ほど、ストレッチする意識や自ら対処する力が強いものです。しかも、与えられることを良しとしないと言いますか、与えられていない中でも何とか踏ん張れます。
ミッションへの強い共感があればこそ踏ん張りが利く
編集部
スタートアップならではの環境の厳しさをいかに乗り切れるか、この力がメンバーには求められますね。
矢部さん
そうです。スタートアップで活躍できる若手人材に共通して見られるもう一つのポイントとして、ミッションへの共感が非常に強いことが挙げられます。
いざという時に踏ん張りがきかなかったり、本来のパフォーマンスを出しきれなかったりする人材は、シンプルにミッションへの共感が弱い可能性が高いかな、と感じているんですよ。
編集部
矢部さんはこれまでに、さまざまな壁を乗り越えて来られたのではないでしょうか?ご自身が「踏ん張りきれたな」と思われるエピソードがあれば、ぜひご紹介をお願いします。
矢部さん
課題は今も常にあります。それを何とか日々乗り越えているというのが正直なところですね。その中で踏ん張りきれた事例をお話しするならば、やろうとしていた事業に対して、それを実行可能な組織を作れなかった時の対応があります。
このようなケースでは、事業内容を調整・縮小したりして対処するという考え方もあるんですよ。しかし、その時の私は事業を絶対に起ち上げて、さらに先にあるビジョンを達成したい、という強い想いがありました。
そこで、チームのメンバー自体を大幅に入れ替えたんです。リーダーには辞めてもらった上、新たなメンバーを外部から起用するなど、相当強めのアクションをやり遂げました。
言うまでもなく、内部ではハレーション(マイナスの悪い作用)が起きましたし、不満を持つメンバーも出てきます。それでも私は、「ミッション完遂には必要なことなんだ!」と信じて、苦しいながらもやり切りました。あまりよい事例ではないかもしれませんね。
私がお話しする「踏ん張る」とは、まさしくそんなメンタル面でもハードな局面においてのことです。
「自分は何のためにこの仕事をしているのか?」これを自身の中で明確にできていない人材は、キツい局面でどうしても踏ん張りが利かないと感じます。「もう終わりにしよう。」「やっぱり辞めよう。」という結論を安易に出してしまいがちです。
隣の芝生は青く見えるとはよく言ったもので、今よりも恵まれた仕事・環境は常に存在しています。それでも、現在位置で結果を出すまで踏ん張れることが、スタートアップでは重要だと感じているんですよ。
クリアで分かりやすい3つの採用のポイント
編集部
最後になりますが、採用活動で人材を見極めるポイントについて、お聞きしたいと思います。Crezit Holdingsさんが求める人材・組織にフィットするタイプなどについて、お話しいただけますでしょうか?
矢部さん
弊社では現在、多様なポジションの人材を募集しています。ジョインいただきたい人材の特徴は多岐にわたるのですが、共通して求めていることは、先にも申し上げたとおりで、「ミッションへの強い共感」を持っていただけることです。これを最も重視します。
次に求めるのは、「やりきる力・挑戦したいという思い」ですね。何ごとも手を付けて終わりではなく、結果はどうあれやり切れる強いプロ意識・マインドセットがあるか否かを見ます。
そして、最後に自身の能力・スキルを現状に留めず、常に「ストレッチできる」ことです。
私どもCrezit Holdingsのようなアーリー期のスタートアップにジョインして、入社後にも活躍していただけるか否かは、これら3つのポイントで見極められると考えています。
編集部
とてもクリアで、納得できる人材を見極めるポイントですね。大手企業で活躍するタイプの人材と、スタートアップで貢献できるタイプの人材は、私も経験上、違うものと感じています。
自ら率先して、次々に現れる課題をクリアしていくことにやりがいを見出だせるような方には、御社はマッチする可能性が高いかと感じました。
矢部さん
ありがとうございます。例えば、大手企業からスタートアップへと転職する場合、現在働いている環境よりもグレードダウンする、という感覚を持つ方も多いのではないでしょうか。実際、当初の年収が下がるケースもあり得ます。
それでも私が思うのは、パフォーマンスを出す環境としての難易度は、スタートアップの方が高いということです。
素晴らしいキャリアをお持ちでありながら、スタートアップに転職後は、鳴かず飛ばずになってしまう方もいます。おそらく、環境面での難しさをクリアできないことに根本的な原因があると思うんです。
スタートアップには、そこを乗り越える覚悟を持った方にこそジョインしてほしい、そう切に思います。
編集部
パフォーマンスを出す環境としての困難さを乗り越える、胆力がある人材こそ求められているわけですね。
矢部さん、本日はお忙しい最中にお話を聞かせていただき、大変ありがとうございました。
■取材協力
Crezit Holdings株式会社 https://crezit-holdings.com/
採用ページ https://career.crezit-holdings.com/