ココピアが広げる障害者雇用の可能性。多様な個性と価値観の共存へ

独自の企業文化を持ち、新たな事業に取り組む企業にフォーカスする本企画。今回は、障害者に向けた就労支援施設の運営や、就職・転職支援サービスを展開する株式会社ココピアを取材しました。

株式会社ココピアとは

ココピアは、精神障害者向けの就労継続支援や障害者雇用の総合支援を通し、障害者の可能性を広げ、活躍の機会を増やす取り組みをしています。バックグラウンドの異なる誰しもが、持続的な幸福を追求でき、多様な個性や価値観が共存する未来の実現を目指しています。

会社名株式会社ココピア
住所東京都港区新橋1-12-9 新橋プレイス6階
事業内容・ココピアワークス:就労支援施設
https://cocopia-works.jp/https://assisty.jp/
・ココピアキャリア:障害を抱える方に特化した人材サービス
https://cocopia-career.jp/
・ユレカアフタースクール:探求学習に特化した民間学童保育
https://eureqa.jp/
設立2018年1月
公式ページhttps://cocopia.jp/

今回はそんなココピアの理念や事業内容、求める人材について、代表取締役の森島聖さんに話を伺いました。

本日お話を伺った方
株式会社ココピア代表取締役の森島聖さん

株式会社ココピア
代表取締役

森島 聖

障害者が働く機会をつくり、社会の意識を変える

株式会社ココピアが運営する就労支援施設「ココピアワークス」
▲ココピアが運営する就労支援施設「ココピアワークス」。精神障害を抱える方たちがIT業務に取り組んでいる

編集部

まず最初に、ココピアさんの事業内容についてお聞かせください。

森島さん

ココピアが取り組んでいる事業の一つは、精神障害がある方に向けて就労支援を行う福祉施設の運営「ココピアワークス」です。神奈川県の鎌倉市に2つ、仙台市と札幌市にそれぞれ1つずつ事業所を構えています。

ココピアワークスでは、障害を抱えるスタッフが中心となって、記事や動画の制作などITを使ったBPO業務を企業から受託しています。ココピアワークスを通して、コンテンツマーケティングなどのサポートをしている企業は100社以上になります。

障害者の就職・転職支援サービス「ココピアキャリア」では、求職者の将来を見据えたキャリア設計から就労先の紹介、職場定着までを総合的に支援しています。

また、探究型学習に特化した民間学童保育「ユレカ アフタースクール」の運営も行っています。

株式会社ココピアが運営する民間学童保育「ユレカ アフタースクール」の子どもたち
▲ココピアが運営する民間学童保育「ユレカ アフタースクール」

編集部

社会貢献に取り組む団体はNPO法人の形をとることがよくありますが、ココピアさんが営利企業として事業運営をしているのは何故でしょうか?

森島さん

NPOよりも、営利企業として事業を運営した方が社会にインパクトを与えられることもあると思ったからです。

障害者の方には「単純な仕事しか任せられない」というステレオタイプな見方があると思いますが、ココピアが変えたいのはその意識です。AIなどが発達し、世の中に単純な仕事がどんどんなくなっていく中、障害者の方の将来の仕事を開拓していく必要があります。

お客様にお金を支払ってもらう以上、より良い仕事をし、他社より秀でたコンテンツを提供すべきで、高い品質の仕事をすれば次の依頼にも繋がります。障害者を抱える方の仕事の選択肢を広げるためにも、同情やボランティア精神で仕事をもらうのではなく、ビジネスの成果を追い求めていくことが大切です。

障害者が活躍できる前例をつくり、雇用の枠組みに変革を

精神疾患による就労難のイメージ
▲精神疾患による就労難の現状(ココピアの公式サイトより引用)

編集部

厚生労働省による2014年の調査で、精神障害のある方が392万人いるうち、雇用者は5万人というデータがあります。ココピアさんは、そういった雇用者の数を増やそうとしているのでしょうか?

森島さん

我々は、労働市場において障害を抱える方の活躍の機会はもっとあるのではないかと考えています。少子高齢化が進む日本では、本来、多くの労働力を必要としています。そんな中で、障害があったとしても仕事を通し自己実現ができる方が増えてほしい、というのが弊社の目指していることです。

必ずしもこの目標は弊社だけで達成しようとは考えていません。また弊社が担っているWeb関係の仕事が、障害を抱える全ての方にとって適しているというわけではないでしょう。ただ、我々のような障害者の活躍を後押しする会社が前例をつくることが、障害者雇用枠の考え方を変えるきっかけになるかもしれません。

編集部

自社の発展だけでなく、社会への貢献が念頭にあるのですね。森島さんがココピアさんを立ち上げ、障害者の方の雇用を促進しようと考えたきっかけは何だったのでしょうか?

森島さん

私の身内に障害のある者がいて、障害と一口に言ってもいろいろな形があることを目の当たりにしてきました。それが起業の際に、この事業を選んだきっかけです。

先ほどもお伝えしたように、障害者の労働というと「なるべく負荷の低い仕事をしてもらおう」となりがちです。ただそのような仕事では、自己肯定感が下がってしまう障害者の方もいます。障害の有無にかかわらず、それぞれのバックグラウンドに合った選択肢を社会が提供していくべきだと感じます。

編集部

障害者の方に責任のある仕事をこなしてもらうには、さまざまな課題に直面することもあると思いますが、どのように向き合っているのでしょうか?

森島さん

現状、全ての障害者の方に、弊社のサービスを提供するのは難しいと思います。弊社が運営している事業所では給与もお支払いしているため、PC作業や文章等の制作スキルが一定の水準を満たしていない方の受け入れは困難です。

ココピアが今やっていることが、全ての解決策に繋がるわけではありません。それでも、我々は小さい会社ながらに、可能な範囲で何ができるかを考えています。徐々に、できるだけ多くの方に活躍の機会を提供していきたいです。

編集部

SDGsは「誰一人取り残さない」という共通の目標がありますが、まさにココピアさんの事業とも関連してきますね。また、障害を持つ方を積極的に雇用する流れが生まれることで、今後IT業界などで発生する人手不足の課題解決にもつながると感じました。

障害者雇用に関心を持ち、状況の改善に意欲を燃やす社員がそろう

事業について話し合う株式会社ココピアのメンバー

編集部

現在はどのくらいの数の障害者の方を雇用しているのでしょうか?

森島さん

週3日勤務や時短勤務の方も含めての人数ですが、70人ほどになります。

編集部

スタッフの方は、どのような思いでココピアさんに入社しているのでしょうか?

森島さん

障害者雇用に関心がある方、業界に強い関心を持っている方が多いと感じます。一方で、我々は福祉施設を運営しつつも、顧客企業に伴走しながらWebやコンテンツマーケティングの支援をしているので、それらのスキルの向上も必要です。

ノウハウを自分なりにキャッチアップする成長意欲を持つこと、自分ができないことにもしっかりと向き合ってもらうことも求められます。

編集部

障害を抱える方が社会的に置かれた状況や、雇用のあり方について関心を持ち、かつ成長意欲のある社員の方がそろっているのですね。

OJTを重視し、社員の自助努力による成長を促す

業務に取り組む株式会社ココピアのメンバー

編集部

ココピアさんでは社員の成長のために、どのようなことを意識しているのでしょうか?

森島さん

ココピアでは基本的に、OJTを強く意識しています。具体的な仕事やお客さんとの関係の中で成長していく方が、学習の速度も効率も良いと思うからです。

編集部

社員の皆さんはどのように力を付けていくのでしょうか?

森島さん

率直に言って、苦労をしている人もいると思います。障害のあるスタッフへの対応をとっても、正解がなく、思うようにいかないことがあります。

Web関係の仕事も、変化の激しい世界です。自助努力による成長が基本になっていると感じています。会社としては、キャリアラダーや育成制度の準備、充実を進めています。

編集部

自ら成長しようという姿勢が大切なのですね。成長を助けるような仕組みや環境は何かありますか?

森島さん

会社がまだ成長フェーズにあるため、経営陣やマネジメントを行うスタッフの人数は多くありません。コミュニケーションは比較的密に取れるため、一人一人が自身の成長と向き合いやすい環境にあると思います。

職場の雰囲気は良好で、地域を越えたコミュニケーションも活発

編集部

福祉施設のスタッフの方は、どのような仕事をしているのでしょうか?

森島さん

障害のあるスタッフに対する職業面でのサポートと、顧客企業に対しての仕事の納品や案件管理にわかれています。

編集部

障害者の方1人に対し、そうでない職員の方は何人ぐらい配置しているのでしょうか?

森島さん

一つの事業所で1日あたりに受け入れている障害者の方は、最大で20人ほどです。常に20人いるわけではないのですが、そこに対して配置する職員は3人から4人になります。そのうち1人は、サービス管理責任者という福祉専門の役職になります。

編集部

社内の雰囲気はいかがでしょうか?

森島さん

東京の本社と、各事業所で社員が分散しています。事業所によって雰囲気は若干変わると思いますが、どちらかというと和気あいあいとした職場だと思います。コミュニケーションを促すため、社員同士の食事会もなるべく頻繁に設けるようにしています。

鎌倉、仙台、札幌のそれぞれの事業所間での交流も増やそうとしています。施設を横断した連携や学び合いができるのは、ココピアの特徴になっていると思います。

編集部

さまざまな地域のスタッフ同士が情報交換や交流ができれば、仕事に与えるプラスの影響は大きそうですね。

対面で一つの事業課題を議論する「経営合宿」

編集部

ココピアさんでは社員同士のコミュニケーションを非常に大切にしていると感じるのですが、他に交流を促すために取り入れている制度はありますか?

森島さん

事業全体のマネジメントに関わるメンバー間では、合宿形式で会社経営について考える「経営合宿」を行っています。毎回、アジェンダは変わるのですが、コアメンバーで集まり、一つの事業の課題に対して長い時間をとって膝詰めで議論をしています。

日々の30分や1時間の会議だとアジェンダも明確に決まっていて、どうしても遊びがなくなってしまいます。経営合宿では、場合によって時間制約もしっかりとは設けず、あえて少しダラダラと話してみたりします。

リモートワークを取り入れているので、対面で長い時間会話ができる機会は非常に貴重です。経営のトピックだけじゃなくて、お互いを知り、価値観を共有するために、普段は喋ったり、一緒に仕事をしたりする機会がないメンバーに接点を持たせています。

「1on1制度」で現状と目標のギャップを解消

編集部

ココピアさんでは、「1on1制度」もあると聞きました。

森島さん

1on1のアジェンダや進め方については常に試行錯誤をしていて、人によっても中身が少し変わります。私が主に行っているのは各事業所の責任者との面談で、多い人だと毎日、少なくとも週1ペースでやっています。

基本的には、運営状況を見える化したダッシュボードを起点に、社員が持っているアジェンダの進捗と課題について、ざっくばらんに話しています。現状と目標とのギャップがある時に、そのギャップを埋めていくためにどういった解決策があるのかを考える時間にしていますね。

編集部

一人一人の話を丁寧に、親身になって聞くことを重視しているのですね。

今後は企業との連携強化も図る

株式会社ココピアが運営する民間学童保育「ユレカ アフタースクール」の子どもたち

編集部

ココピアさんの今後の展望について、お伺いできますか?

森島さん

冒頭にもお伝えしたように、福祉においては、障害者の方の仕事を探求し、世の中の価値観を変えていくことを目標としています。今の事業所では動画の編集やコンテンツの制作をしていますが、その中身も環境に合わせて変えていきたいと思っています。

最近はAIの普及などもあって、我々が今やっている仕事も、長期的な目線で見ると変わったり、なくなったりしていくと思います。時代に合わせて、いろいろな仕事のノウハウを培っていかなければいけません。

企業との連携もより強くしていけるのではないかと考えています。人材サービス「ココピアキャリア」を通じて、企業の人事の方のサポートも行っていますが、多くの企業がダイバーシティや障害者雇用について悩んでいます。

ココピアの特徴は、エージェント機能を持っているだけでなく、我々自身も障害者の方と一緒に働いていることです。そのノウハウを生かし、いろいろな企業と一緒に仕事をつくっていったり、採用全体の設計を考えたりする機会は今後、増えていくのではないかと考えています。

編集部

事業拡大への思いは強く持っているのですね。障害者の方と社会との繋がりが深まるにつれて、ココピアさんの活躍の場がさらに増えていくのではないかと感じます。

必要なのは多様性を受け入れる包容力

談笑する株式会社ココピアのメンバー4名

編集部

ココピアさんの採用についても、お聞きできればと思います。障害がある方とこれまで触れ合ったことがない人でも、社員として受け入れることは可能なのでしょうか?

森島さん

未経験でも問題はありません。もちろん、一人一人のコミュニケーションの癖や仕事への適性は、精査をした上で採用の判断をしています。

ただ、多様性を受け入れられる心理的柔軟性、包容力は必要です。障害者のスタッフに対して、一方的なコミュニケーションは成り立ちません。良かれと思ってやったものの、うまく折り合いがつかず関係性が悪化してしまうこともあります。

それでも、相手のやる気を引き出した上で自律的に成長してもらえるよう、サポートしていかなければいけません。感情的になるのではなく、何故うまくいかないのかを冷静に考え、建設的に、関係性を整えながら手が打つことが求められます。だから、ある種の理不尽さを受け止め、乗り越えていく力も求められると思います。

編集部

経験の有無より、困難を乗り越える胆力や粘り強さ、様々な考えや状況を受容できる懐の深さが重要なのですね。

森島さん

そうですね。逆に、自分自身の価値観にこだわりすぎる方だと、なかなか思い通りにならないことが多いので、若干の難しさを抱えることがあると思います。正解のない課題に向き合うことをやりがいと感じる方が活躍し続けられると感じます。

「全ての人が持続的な幸せを追求できる社会」の実現を共に目指す人を募集

株式会社ココピアが取り組むウェルビーイングの仕組み作り
▲ココピアが取り組むウェルビーイングの仕組み作り(公式サイトより引用)

編集部

ココピアさんのお仕事に興味を持った読者に向けて、障害や福祉についての知識を深められるような書籍はありますか?

森島さん

障害者雇用という分野であれば、慶應義塾大商学部の中島隆信教授が書いた「障害者の経済学」、幼児教育でいうとポール・タフの「私たちは子どもに何ができるのか」が参考になるかと思います。

編集部

ありがとうございます。最後に、読者に何かメッセージがあればお聞かせください。

森島さん

ココピアのキーワードは「不確実な環境を乗り越える」です。多様な価値観を醸成し、どんなバックグラウンドを持つ方でも自己実現に没頭できる機会を提供していくことが目標です。

我々が取り組んでいる福祉や学童保育といった事業の可能性は非常に大きいです。今、取り組んでいることは、まだまだ限定的だと認識しています。

今後、できることを長期的に広めていく中で、「全ての人が持続的な幸せを追求できる社会」というビジョンに、共感し、志を共にできる方を求めています。少しでも関心のある方がいれば、採用という形に限らず、我々と接点を持っていただけると嬉しいです。

編集部

社会全体の幸せを見据えたココピアさんの仕事は、とても意義深く、やりがいのあるものではないかと感じます。本日は、貴重なお話をありがとうございました!

■取材協力
株式会社ココピア:https://cocopia.jp/